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2015年8月17日 (月)

SKY vol.5【SKY】150816

2015年08月16日 シアターカフェ Nyan (115分)

劇団空組の方々が中心となった、音楽、歌、踊り、芝居を融合させた総合表現の作品を公演する企画。
前からずっと観たいと思っていたのですが、少人数制だから、予約が取れず。
今回はお盆だったからかなあ。前日夜にまだ席ありますみたいなTwitterがあったので、即座に予約。
この日は、この前に劇団SOLAを観に行く。空繋がりで、若い可愛らしい女性ばかりがご出演という共通点。お盆休みといっても、この一週間ずっと働き詰めだった自分へのご褒美の日となりました。

今回は笑い無しのホラーがテーマ。
ホラーといっても、お化けとかじゃなくて、人の心の怖さみたいな心理ホラーの要素を組み込んだ作品でした。
そして、それに怖さを感じながらも、怯えるのではなく、乗り越えて、自分を大切に育てていきましょうといった前向きで力強いメッセージが込められているように感じます。
短編オムニバス公演ですが、芝居の作品自体はしっかりしており、融合する歌や踊りは、この劇団のお得意とするところ。
濃密で楽しい時間が過ごせました。

・ I am I

いつも、自分を主張できず、一歩引いてしまう絵里那。
嫌われたくない。みんながそれでいいなら、自分が我慢すればいい。
ずっと、そういう生き方をしてきた。
友人とは、いつも一緒にいるものの、本当に友達となんかは思ってくれていないのか、いつも二人で遊んで、自分は誘われない。
彼氏は、浮気しているようだが、それを責めることもできない。
母は再婚。だから、もう別々に暮らそうと言われる。私はもう不要なのか。
そんな、ある日、鏡の中から自分が出てくる。閉じ込められた心を持つ、本当の自分が。
本当の自分は、絵里那を鏡に閉じ込め、友人、彼氏と話をして、自分が本当に思っていることを伝える。
友人にも彼氏にも裏切られていたことを知る。
でも、それは自分が本当の気持ちを伝えてこなかったから。嫌われたくないから、一人ぼっちは嫌だからと、ずっと黙っていて、結局、孤独の中にいた。
鏡の自分は涙を流している。きっと、自分だってそうだったのだ。
絵里那は自分と向き合う。誤魔化すことなく、一人を怖れている自分、寂しさで胸いっぱいの自分を。
そして、そんな自分を受け止める。
絵里那は、部屋に入ってきた母に本心を話す。
母は別に絵理那を避けていたわけではない。絵里那のことを想っての言動だった。本当の心をぶつけたから、相手の本当も知れるようになった。
きっと、友達や彼氏にも自分の本当をぶつければ・・・

人に嫌われたくない。人を傷つけたくない。相手を尊重してあげたい。
それは優しさや思いやりとも言えますが、同時に自分を封じ込めてしまうことでもあるのでしょう。
自分のしたいこと、好きなことを、いつも封じ込めて、相手に合わせてしまう。
そのうち、人から勝手に自分はこうだと決めつけられてしまうようになり、自分が何者なのかが本当に分からなくなってしまう。
絵里那は、自分のしたいことや好きなことが分からないどころか、自分の辛さ、悲しみ、寂しさまで分からなくなっており、もはやその限界にまで達してしまっていたようです。
自分を救うのも、やはり自分なのでしょう。
彼女は自分を見詰めることができ、本当の自分を取り戻します。それは、かなり強引な荒療治でもあり、彼女が恐れていた人に嫌われるとか、人を傷つけるようなものだったかもしれません。でも、そんな未熟な自分も自分であり、それは恥じるべきことでもありません。
人も同じように、嫌われたり、傷つけてしまったり、傷ついてしまったりしているのでしょうから。こうして、自分を育んでいくことも生きることなのかと思います。

自分は自分。これはその自分が言う言葉では無いように思います。劇中でも、自分でもあり、自分では無い、鏡の自分が、自分に投げかけた言葉となっています。
それは、人のことを考えずに、自分だけが自己主張するのではなく、傷ついた時の痛さや、苦しさ、悲しみ、寂しさを知る、相手に思いやりを持って接することが出来る者が、人に投げかけてあげる言葉なのだと思います。

絵里那役の、細野江美さんの熱演。情熱的で、一つ一つの心情を丁寧に積み重ねていく、心動かされる姿でした。MCとかでは、支離滅裂なことを喋ったりして、ちょっ変わった頭のおかしい子みたいな感じで、そんな役もされることもあるが、こういった情熱的な役では、見事な魅力を醸される。
今日もMCで、あり得ないような勘違いトークされてたな。あそこまでいくと計算なのかな。ちょっと、怖くて引いてしまうぐらい。ある意味、一番のホラーだったかも。

・ 夢やぶれて

歌。ダンスもあり。ピアノも。
白いロングドレスに身を包んだ空山知永さんの力強い、心情込めた歌声と、同じくではなく、衣装が思ったものではなかったらしく、サービス気味に短めの白いドレスを纏う植松友貴さん中心の華麗なダンス。
ピアノは加藤瑞希さん。ピアノは弾けるだけで、かなり女子力アップですよね。

・ 企画コーナー

男の夏のデート服ファッションショー。
星本恵李さんが、旦那さんの服を借りて登場。カジュアルでなかなかの男前。
でも、この劇団で男前といったら、卯津羅亜希さんですよね。ビシっときめてきたら、誰も敵わないはずなのに、ちょっと中途半端なお姿。しかもどんくさいことして、足を怪我しているという始末。まあ、このちょっと抜けた感じが、見た目のかっこよさとのギャップもあり魅力でもあるのですが。
代わりに、ビシっと宝塚ばりにきめてきたのが、丁野優紀さん。シックに、かつエレガントに。客席の拍手もこの方が一番でした。世代交代ですかね。

・ 瑠香

小さい頃からいい子だった瑠香。
だから、母が若い男に熱を上げていても、邪魔にならないようにしていた。
若い男が浮気をして、悲しむ母には気遣いを見せた。思ったことを何でも口にするな。浮気の一つぐらい認められる女じゃないと。別れ際、男が母に言った言葉が耳に残る。
男なんて浮気をする者。だから、浮気をしたら別れ、また誰かと付き合う。
友人からは、浮気をしない男を求めているのでは。だったら、早くそういう男と出会えるといいねと。
浮気相手の女からは、彼を許して欲しいと。彼はしんどかったのだろう。あなたが本当の気持ちを見せないから。愛されていないのかもと思うようになってしまったのだと。
瑠香は、目を閉じ、数を数える。かくれんぼ。
目を開けた先には、一人の男が自分を探していた・・・

シリーズものらしいです。
最後に瑠香を本当に愛してくれる人に出会ってめでたしめでたしかと思いきや、その男、これまでに、すごい浮気性という設定で登場した男らしい。
ということは、また不幸が繰り返されるといったオチなのかな。
今回はホラーがテーマとなっているらしく、ブラックオチなのかもしれません。

I am Iと同じく、瑠香は自分を封じ込めてしまっている女性なのでしょうか。
幼少期のトラウマからか、瑠香は自分は人から想われることは無いように思いこんでしまっているようです。
いい子でいることが当たり前。だから、自分はそのいい子を認めてもらうだけ。想いはいつも瑠香側にあるように感じます。本当に愛されることを知らないような。
愛されることを知らないから、愛することも相手に伝わっていない。
男との付き合いも、自分で想う人を見つける。でも、その想いは伝えない。その間、いい子でいるから男は見続けてくれるが、そっぽを向くようになったら、もうお終い。
その終わりはいつも、相手の浮気。破滅的な人との接し方のように見えます。終わること前提で人と付き合っているかのような。

かくれんぼで、目をつむり、数を数える。数を数え終えると、鬼となって、隠れている人を探す。捕まえたら、また鬼となって目をつむり、数を数える。
追い続ける。捕まえても、また隠れてしまう者をずっと。
そんなイメージから、上記したような瑠香像を考えます。
この話の最後では、瑠香が見つかります。
瑠香はがいつも探す人でしたが、探される人でもあったことを知ったような感じです。
自分も人から想われていることを知り、そこから生まれる相手への想い。
それはきっと愛へと繋がるように思うのですが。

・ 輪舞曲 -ロンド-

華は夢を見る。
友人の佳純、その彼氏、佳純の弟。
四人は仲良かったが、戦争に巻き込まれる。
弟は姉をかばって死んだ。そして、そのすぐ傍で、彼氏も命尽きた。
現実。彼氏と弟はもういない。そして、佳純は、最近、体調が悪いみたいだが、元気でいるということ。
そんな佳純の下に、彼氏が現れる。
あの時、自分が差し出した手を佳純は取らなかった。その代わり、弟の手を取って、弟は佳純をかばうように死んだ。自分が守りたかった。でも、なぜあいつの手を取ったのか。あいつは姉を好いていた。二人に何があったのか。その妬みの心が、憎しみとなり亡霊となって現れたようだ。彼氏は、佳純を共に連れて行こうとしている。
華は語る。それは違う。佳純が手を取らなかったのは、あなたがかばって死ぬことを恐れたから。弟は確かに姉を好いていた。でも、それ以上にあなたのことを好いていて、幸せになることを誰よりも願っていた。
たった一つの出来事。これだけで、今までの四人の絆が壊れてしまうのか。これまでの想い合いが全部、嘘ということになってしまうのか。
華の言葉に、彼氏は、佳純とお別れをして昇天する。
華は喜びの微笑みを浮かべる。
あの時のことを思い出す。私は佳純の手を掴んだ。もちろん、差し伸べられるであろう彼氏の手を取ることができなくするために。私には振り向きもしてくれなかった彼氏。もう、あいつと一緒になどいさせない。華は彼氏を死へと追い込む。
現実。そこには、生き残った香純が、ショックで三人と共にいる妄想世界の中で時を過ごす姿が映し出されている。

心理ホラーですかね。
現実に起こったことの真相を描いたとも捉えられるし、全ては彼氏や友人の死で狂った佳純の創り上げた妄想世界として捉えることもできるし。
たった四人ですが、その仲良し四人組の中にあったのであろう、渦巻く妬みや憎しみを考えると、自分たちを死へと導いた戦争ですら、自分たちが引き起こしたようにも思えます。
一番怖いものは、お化けや幽霊では無く、こんな人に潜む負の心ですね。これが、いさかいを引き起こし、不信や裏切りを呼び起こし、やがては戦いにまで発展する。そして、その戦いによって身を滅ぼす人間。
全てが人の心に委ねられているような世界が、こうして負の視点からだけ見ると、おぞましいほど醜く映ります。
華を演じる、今池由佳さんが、こういった秘めた妬みみたいなドロドロを、淡々とあっさりとした感じで冷たく演じており、背筋に冷たいものを走らせます。

・ 表現

宣伝とか、みんなで歌と踊りとか。
音楽、歌、ダンス、芝居のバランスがよく、しっかりと練り込まれた公演でした。

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