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2015年7月19日 (日)

愛染学園戦争 前編!! ~体育館は、燃えているか~【劇的細胞分裂爆発人間 和田謙二】150718

2015年07月18日 人間座 (70分)

漫画の実写版みたいなくらいに、個性強いキャラたちが繰り広げる学園モノ。
荒廃した学園。
様々な思惑が見え隠れする中、学園に平和が訪れる日は来るのか。
今回は前編。
真の平和への道を進むためには、その平和への信念をただただ貫けばいいのか。それは支配によるものなのか、協調によって得なくてはいけないものなのか。
真剣に生きるからこそ生じる心の揺れに翻弄されながら、各々が進むべき道へと邁進する若き人たちの姿が描かれている。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで。ほとんど満席になったので、月曜に追加公演があるのだとか>

舞台は、スポーツで有名な名門高校、愛染学園。
というのは昔の話。8年前に起こった不良同士のケンカから発展し、今では各運動部が戦いを繰り広げる荒廃した高校となっている。
特に剣道部、卓球部、バスケ部など、屋内スポーツ系の部による体育館の覇権争いは熾烈だった。これを制したのが剣道部。現在、体育館の使用権は、剣道部の独占状態にある。
剣道部の主将は番堂仁。部員には、文武両道に秀で才能ある仁にはかなわぬものの、実力派の男3人と、仁に憧れや想いを寄せている、まだ未熟だが懸命に稽古に励む女の子がいる。その女の子の友達に、仁の妹。恋愛も含め、色々と相談に乗ってもらう仲良し。妹は、兄の仁にはかなわぬものの、日々、兄に朝稽古をつけてもらい、実力は秘めている。でも、本人は普通の女子高生でいたいと頑なに入部は拒絶している。ただ、兄と似て、曲がったことが嫌いなまっすぐな性格で、かっこいいとはよく言われるものの、容姿は申し分無いにも関わらず可愛いとはなかなか言ってもらえない。
仁は持ち前の正義感の強さから、この体育館の使用権を平等にすることにした。これで、少なくとも体育館には平和が訪れるはずだった。しかし、浮き上がってきたのは、剣道部内部にあった、仁の実力への妬みから生じる憎しみ。剣道部は、主将、仁と想いを寄せる女の子 VS 男の部員という形で分裂する。

仁は、ある日、生徒会長から呼び出しを受ける。
生徒会長は、同級生で高校3年生だが、もう6年目。今の学園紛争のきっかけとなったケンカを唯一知る者。
名目は学園の支配者。先生たちやPTAなども含め、学園の様々な権限を掌握している。ただし、その権限はB棟という校舎に留まる。この校舎だけは戦いから一線を敷かれ、平和だ。だから、普通に授業も行われるし、一般生徒も通常の学園生活を送ることが出来て、彼の功績は大きい。彼が、学園を完全に掌握して平定してくれればと願う生徒も多い。
生徒会長が仁を呼び出したのは、最近、起こっている事件の解決への依頼。
バトミントン部を名乗る、テンションのおかしい怪しげな二人組の女が、部潰しと称して、屋内スポーツ系の部をことごとく襲っているらしい。先日はバスケ部がやられた。学園にはバトミントン部など無く、何か裏の組織が動いているに違いない。
これは剣道部にも関わることである。
仁は犯人を突き止めることを約束する。

その頃、偽バトミントン部は、卓球部を襲っていた。全部員がやられる中、一人だけ必死に逃げる者が。
逃げ着いた先は、仁の妹。ちょうど、剣道部の友達の女の子と、明日の放課後に兄に告白する計画を立てて、別れた後だった。
卓球部の部員はモジモジして、よく分からない奴だが、兄と同じく正義感の強い妹は、追っ手の偽バトミントン部の片割れと戦う。戦いは妹が優勢。相手は逃げていく。
時同じく、偽バトミントン部のもう一人の片割れは、体育館をウロついていたところ、仁と出会う。
仁は、部潰しの犯人と睨み、戦いを挑む。
仁は学園で四天王と呼ばれる実力者であるが、相手の腕も相当なものだった。
戦いは改めて、明日の放課後につけることに。

翌日、仁は部員たちに本日の稽古の中止を告げる。偽バトミントン部の連中と戦うことも告げる。大会前の大事な部員に怪我をさせたくないから、自分一人で戦うと。部員はなぜか素直に了承。女の子は戦いが終わった後、話があると仁に告げる。
妹は、友達の女の子の告白計画のスタンバイ。でも、友達が来ない。剣道部は、今日は稽古中止という情報も入ってくる。何かが起こったに違いない。妹は体育館には急行する。
仁と、偽バトミントン部二人の戦いが始まる。
剣道部員たちの裏切り、それによって囚われの身となった仁に想いを寄せる女の子、駆け付けてくる妹、事態の収拾に向かう生徒会長、そして、学園を裏で操ろうと企む女が現れ・・・

結局、仁、死にます。
殺したのは裏組織の女。学園では風紀委員を名乗っています。
ただ人が戦い傷つけ合うのが愉快でたまらないこの女。美貌を活かして、偽バトミントン部の二人を虜にし、さらには仁への妬みを抱く剣道部員たちを上手く利用したようです。
その敵討ちとして、妹が決起して、裏組織を生徒会長と共に壊滅することを誓う。
そんな形で、後編へと続くようです。

単なる学園モノではありますが、ちょっと現実を捉えているところもあるように感じる話です。
仁は、とにかくまっすぐな男で、学園の誰もが平和に過ごし、平等であることを信念として貫こうとします。
なるほど、ご立派な精神ですが、これだけで、本当に平和や平等な世界が訪れるはずがありません。
平等が困る人もいます。世には利権がありますから。結局、学園は戦争を望んでいます。
そんな人たちにとって、仁の信念ある行動は、抑圧に過ぎず、ある意味では、暴君ともなりえるのでしょう。
あそび幅を持って、学園をバランスよく調整する。これが、真面目一辺倒の仁には出来なかったようです。信念に囚われ過ぎて、自分へ想いを抱いてくれている女の子の気持ちも分からず、漠然と感じていても剣道部員がどれほど不満を募らせていたかには対峙しようとしなかったのですから。
常に向き合うのは自分。これは奢りと捉えることもできるでしょう。
学園を一般社会や世界にまで見立てたら、そのクラブは、様々な個性を持つ国民や国家。個性がぶつかり合うのは当然で、その多様性を認めつつ、調和が満たされるためには、平等を前提とした支配だって必要なのかもしれません。

自分が思う正しき道を貫く。
それに執着し過ぎて、周囲は見えなくなっている。
いつの間にか、大きくなっている妬み、本当に影で支えようとしてくれる人の信頼を見失い、気付けば、大きな裏組織が出来上がっていた。
懸命で真摯ではありましたが、仁の行動では学園に平和は訪れませんでした。
妹は、その兄の過ちに気付くでしょうか。そして、荒廃する学園の救いとなるのか。
続く後編で、どのようになるのかを、また観に伺いたいと思います。

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コメント

SAISEI さん


この公演はこの記事を読むまで知りませんでした。すぐに行けるか調べてみたのですがムリでしたね。


主人公死んじゃうんですね。他の方のblogで眼鏡美人(笑)劇団しようよの山中さんが出演されていたみたいでしたが何の役だったんでしょう?


脚本の方っておいくつくらいなんですかね? この記事を読んで私がフッと思い浮かんだのは週刊マガジンに連載されていた『コータローまかりとおる』です。SAISEIさん題は知ったはっても読んだあらへんと思いますが(笑)背景は似てますね。影響はあるのかな?(*^_^*)

投稿: KAISEI | 2015年7月24日 (金) 01時15分

>KAISEIさん

山中さんは偽バトミントン部の片割れです。
今回も、抜けた悪役でご活躍でしたが、後編でも恐らくメインどころとなるキャラだと思います。
次回は10/16-18でスペースイサンです。

脚本の方は、多分20代中盤じゃないでしょうかね。
マンガの影響は、以前の作品から強く感じられ、思い浮かばれた作品も絡んでいるかもしれませんね。
私は、元ネタ知識に乏しいので、ほぼ全く分かりませんでしたが。

投稿: SAISEI | 2015年7月24日 (金) 09時23分

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