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2015年7月29日 (水)

秘密基地【HPF高校演劇祭 東百舌鳥高校】150728

2015年07月28日 ウィングフィールド (45分)

この高校は4年振りに観劇。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/110726-3fd0.html
その時の感想を読み返しましたが、ちょっと同じような感想を今回も抱いていることに気付きました。
淡々とし過ぎているかな、もう一声何かがあると深みも出るんじゃないかなといったところがそれに当たります。
でも、それがきっとこの高校の持ち味なのでしょうね。
けっこう深刻な問題を淡く描く、深みに入り込まないようにするといったような。

作品は、悩みを抱えた女子高生が、同じように悩む仲間と共に、自分自身を屋上で見詰めて、自分らしさを追求していくような話。
上記したように、実は深刻な問題で、本当の自分ってどうなのだろうと悩んでいる人は、屋上にやって来る4人の女の子たちに、どこか同調して、共感を得るのではないでしょうか。
らしさの追及は、多感な高校時代は、未成年であることの縛り、将来の夢や恋愛なども絡んで、心苦しいことでしょう。ただ、これを乗り越えても、実は大人になっても、ずっとそんなことは付き纏うように思います。
44歳のおっさんの私でも、この女子高生たちの悩みに共感するところがたくさんありましたから。
淡々と無難に流れる日々に熱く燃えることも出来ずに、一匹狼を気取ったり。
同じようなことしているのに、あいつは認められて自分はないがしろにされてと、妬みの感を持ったり。
存在感が薄く、自分をアピールすることが苦手で損をしているなと嘆いたり。
そつなく物事をこなす優秀な人みたいな、いつの間にか勝手についてしまったイメージに翻弄されて自身を見失ったり。
高校生は屋上に行くんですね。私はショットバーとかで酒を煽っていますが。
大人の隠れ家ですね。
でも、この作品を拝見して、その隠れ家が単に逃げ場所になっていてはいけませんね。文字通り、隠れているだけですから。
そこで自分を見詰め、そこで様々な人の想いに触れて、自分が楽しく豊かに生きる道を見つけて歩み始める。
そんなワクワクが生まれる場所でないといけないのでしょう。
そんな場所。確かにそれは、幼き頃にそこにいるだけで、自分が何者にでもなれ、どんなことも出来るみたいな、ワクワク感に包まれていた秘密基地のような気がします。
最初は逃げ場所だった屋上を、自分たちの楽しき未来への出発点である秘密基地に変えた4人の女子高生の悩み苦しみながらも、懸命に輝こうとする素敵な姿が浮き上がる作品でした。
観終えて、このクソ暑い中、どこか爽やかな夏風が吹き込んだかのような、心地よさが残っています。

新学期が始まった学校。
立ち入り禁止の屋上に入り込み、スケッチをする女の子、中松楓。
ここに常々出入りしている女の子、笹岡郁実はその姿を見て、ここは自分の場所だと言い張る。楓が座っている木箱も自分が持って来たようで。
ここで絵を描きたいと楓は郁実にお願いし、郁実も嫌々、了承。
話していると、郁実はズケズケと物を言い、ちょっと横暴な感じ。でも、悪い子じゃなく、虚勢を張っているようなところが見受けられる。
続いてやって来た二人。
一人は人見知りなのか、知らない人がいると驚いて帰ってしまう。園田人美。
何か騒がしくなったので、今日は帰ると、郁実も去る。
残った女の子、綿貫陽子。楓と同じクラスらしいが、影が薄いのか覚えていない。
少しだけ話をする。
ここは秘密基地みたいなところらしい。
この日から、4人の時間が始まる。

翌日、楓がスケッチをしていると人美が現れる。
昨日、すぐに帰ってしまったので、楓は初めましてのご挨拶。
人美は何かを言いたげだが、おとなしい性格なので、タイミングを外すともう話せなくなるみたいでずっと黙っている。
人美は小説を書いている。
楓は興味を持ち、読ませてと言うが、きつく拒絶される。誰にも読ませたことはないらしい。
どうやら、人美は、自分の殻に閉じこもってしまっているような感じの子らしい。

また、ある日、いつものように楓がスケッチしていると、陽子が現れる。
3人の出会いのことを聞く。
みんな、友達同士だったわけではない。
ある日、たまたま、この屋上に来たところ、出会った。
陽子が一人、屋上にいて、そこに人美が怒っているのか泣いているのか、駆け込んできて。お互い、こんなところで人と会ったのでびっくりしているところに、飄々と郁実が現れ、ここは私の場所だと言い張り始め。
境界線を決めたりして、一人になりたいだとか、色々と言い合いになったり。
今でも、友達というわけではない。
何で、こんなとことに来たのか、来ているのかを、互いに語り合ったことはない。
ただ、ここにいて、互いに刺激を与え合う関係を続けている。

夏を迎える。
みんな、少し明るくなった気がする。
あの郁実も、水玉ふうせんで遊んだりしている。
明るく、友達もたくさんいる楓の影響か。
人美や陽子は、自分と違う楓のことを思う。
人美は楓のスケッチを見る。
男の子の横顔。授業中だろうか、ペンをもって、その後ろには窓からの空の風景が広がる。
クラスメートで好きな子がいるのだろう。人美の推測は鋭い。
楓は絶対誰にも言うなときつく口止めする。

財布盗難事件が勃発。
盗まれた財布が人美のカバンから出てきたらしい。
人美がそんなことをするとは思えない。
金目当てなのか、財布の持ち主がいじめの対象なのかは分からないが、とにかく、おとなしく何も言えない人美に誰かが罪をなすりつけたってところだろう。
そして、その通りに、人美は罪を被ったみたいだ。
体育で着替えの時に誤って入れてしまった。中のお金については知らない。そういうことにしたらしい。それで、事が済むなら。
そんな考えの人美を郁実は責める。
何でも言える郁実とは違う。言いたいことが、口に出せなくなってしまう。人美は思いの丈を郁実にぶつけ、去っていく。
人美のことが理解できないと憤慨する郁実。楓は、理解しようと思っているから、腹が立つのだと答える。
郁実は、自分と人美との違いをよく分かっている。自分は、確かになんでも言えるし、器用なのか、大概のことは要領よくやってのける。でも、それは努力していないから、そこそこの結果しか生まない。でも、人美はあんなんだけど、努力している。だから、生み出すものも素晴らしい。彼女の小説を盗み見したけど、非常に良い出来だったらしい。羨ましい。
努力しない自分への劣等感。そんな感情が溢れてきて、一匹狼気取りで、この屋上にも来た。郁実は心の内を楓に告白する。

事件の翌日も、人美は屋上にやって来た。
楓と話す。
人美は楓のことを初めから知っていた。
たまたま美術室に飾ってあった楓の絵を見て綺麗だと思った。とても素敵な空の絵だった。その時、名前を覚えていた。
その絵がコンクールで入選。全校集会で表彰される楓。
ある日、小説を見せてと言ってくる同級生に、いつものように嫌だと拒絶してしまった。
同級生は、気分を害して、小説書くなんておかしい子だと罵られる。絵だと人気者で、小説だとおかしな子だなんて、悔しくて。気付けば、屋上にいた。
人美も心の中に潜む傷を語る。
人美は楓にみんなの絵を描いて欲しいとお願いする。
郁実がやって来る。人美は昨日のことを謝り、自分なりに努力すると言う。
郁実もそれに応える。努力しないといけないのは自分の方なんだけど。
事件は、4人の中ではこれで終わり。
そんなことより、もっと重大な事件がある。
人美はお喋りしてしまっていた。楓の好きな子の話を。
みんなから冷やかされ、冗談を言われて、楓は憤慨するが、そんな打ち解け合いができる間柄にいつの間にかなっていたようだ。

陽子も好きな人がいる。中学生の時の同級生。
告白もしたけど、やんわり断られる。
それでも好きで、同じ高校に入った。
そして、新学期を迎え、初めて話せるチャンスを得た。
挨拶するが、向こうは覚えてもいない。影の薄い自分、これまでの自分の想いに幻滅して屋上へ来た。

みんな、屋上に悩みを抱えて来たようだ。
楓は絵を描きに。
でも、本当は違ったかも。
明るく、人付き合いも良く。でも、疲れる時もある。
らしくないといけない。自分らしく。でも、それは本当の自分なのか。
絵のコンクールだって、好きな子に良いと言われて出しただけ。自分ではあまり気に入っていない作品だ。

そう、ここ、屋上は自分が自分でいられる場所。
ありのままの自分を見せることができる。
そんな本当の自分がどうであるかが分かったのだから、戦おう。
自分が自分でいられるために、勇気を出して、今までとは変わった本当の自分を、この屋上だけでなく、教室や外の世界でも出してみよう。

人美はクラスメートに小説を読んでと渡す。読んで、感想もくれるようだ。そして、クラスメートは財布盗難事件のことを言及する。人美は自分では無いことをしっかりと告白する。クラスメートも分かっていた。人美がすぐに認めてしまうから。これからは違う。自分のことをはっきり言うつもり。きっと、人美はクラスメートととも分かり合うことが出来るようになるだろう。。
郁実は張り切って学校に来る。今までは遅刻なら遅刻でいいやみたいだったのに。投げやりにならず、懸命に頑張ってみる。彼女の努力することの一歩みたい。
陽子は、もう一度、あの好きだった子に挨拶する。また、そこから始めればいい。ただ、ちょっと暴走して、段階を踏まずいきなり告白する暴挙に出たりするが。
楓は、人物画をコンクールに出そうと思うと好きな子に相談する。好きな人の横顔。出来上がったら見て欲しいと伝える。自分の想いを、自分らしさを一番表現できる絵に込めて、伝えるつもりのようだ。

夏休みを迎える。
しばらく、屋上ともお別れ。もしかしたら、もう屋上は4人にとって不要かもしれないが。
4人にとっての、逃げ場所、隠れ家だった屋上は、今、本当に、皆が楽しめる秘密基地へと変わった。
楓が人美に頼まれて描いた絵が完成している。
4人の目は互いに向き合っている。
夏休みはどんなことをして遊ぼうか。
自分らしさを見出して、それに向かって自分を磨こうとする4人の、これからに胸膨らます姿で話は締められる。

2点ほど。
一つは、キャラ付けが非常に上手く機能していること。
容姿も良く、頭も良さそうで、性格も良さそうで、何の問題も無さそうな楓、山口莉彩さん。そこに恋愛も含め、他人から押し付けられた抑圧を感じている苦悩をほのかに滲ませています。
かなり横暴で、デリカシー無くズケズケしている郁実、山田紅葉さん。その外見とは裏腹に、内にある弱い、ダメな自分を見つけては劣等感を抱かされており、そんな嫌なところを他人の姿として見てしまうとまたイライラしてしまうという葛藤がよく表現されています。
自分を前に押し出すのが苦手ですぐに引いてしまう人美、栗田瑞穂さん。少々、自分が犠牲になっても場が乱れなければそれでいい。空気を読んでしまうことで、のしかかる自分への重圧に押しつぶされそうになりながらも、強く生きている。オドオドの中にも一貫した自分のポリシーを持っている強さを感じます。
目立たない、影が薄いことで、自分の存在価値や、想いを伝えるような関係を持つ意味合いに疑問を抱いてしまっている陽子、松本美夢さん。非常に自然体で、平凡な自分に納得しながらも、恋愛となるとどこか魅力が突出していないと叶わないことに焦るような、不安感を滲ませます。
楓のスケッチの横顔の人かな、斉藤春さん。作・演の方みたいです。純粋にストレートに、今あるみんなの悩みと、それと向き合って高校生として日々を過ごす時間を描いているように思います。
陽子が告白した人かな、川崎咲さん。ちょっとぶっきらぼうだけど、優しさがある。きっと、この男の子も、らしさを追求している一人なのでしょう。

あと一つ。
技術的なところは分からないので、あまり言及しないようにしているのですが、気になったので。
照明は、屋上と言えば、頭上に広がる青空。それがイメージ出来るような空気が優れているように感じます。
どうにかならなかったのかなと思うのが、暗転の多さと単一パターン。新学期から、夏休みを迎えるまでの話。場所は屋上。舞台で変わるのは時間軸だけで、物理軸の変化は無いので、暗転じゃなくても、シーンが始まって数十秒で、あっ時間が経過したんだと分かるようなことも出来ると思うのですが。
もちろん、必要ではあるとは思いますが、普段、観劇していて、もっと気にならないような演出で、スムーズに転換する作品も観ており、そんな技も必要に応じて取り入れられたらいいのではないかと思います。特にこの作品は、思いっきり、盛り上がるというところは無く、比較的フラットな展開なだけに、単調な転換が後半になって飽きに繋がってしまったように感じます。

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