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2015年7月15日 (水)

火曜日のゲキジョウ【エリーの晩餐会×にもかかわらズ】150714

2015年07月14日 インディペンデントシアター1st (30分+35分 休憩10分)

両作品とも恋愛を描いている。
描き方は、あまりにも異なり過ぎだが、どこかじんわりと心に響いてくる良作。
熱演。といっても、これまた、その熱きパワーの使いどころが全く異なるのだが、想いに溢れていることが伝わってくるのでしょう。
ブレることが出来ない、真っ直ぐに人を見詰めるしか出来ない人たちの、純粋な愛を感じさせてくれる作品でした。

・「土肥嬌也のふんどし一丁あれば怖くない」 : エリーの晩餐会

おやすみ前のひと時。ナイトキャップにパジャマとおやすみの準備万端のお母さんに、おっぱい飲ませて、本を読んでとうるさいおっさんみたいな子供。そんなおっぱい大好きの、変態として育つのに将来有望な息子に、本を読み聞かせるお母さん。
ある町で活躍していたふんどし一丁のヒーロー、土肥嬌也と一人の女性の恋物語。
悪い奴らを倒し、町の治安を守る。警察のように、町の人から信頼されるかたわら、そのふんどし一丁の姿から変態を見るかのような視線を受ける。これでいいのだろうか。少し、迷いが生じていた土肥。
ある日、変態たちに襲われていた栗田という女性を助ける。
あまりの可愛らしさに惚れてしまい、名前を聞いたりと少しでも接触を試みるが、どうも反応は悪い。聞けば、彼女はブリーフ派。それもブリーフを自ら被るファッションをするほどに、ブリーフを愛している。
今は亡き祖父、父もずっとふんどし一丁だった。そのふんどしへの想いは先祖代々、大切に受け継がれており、今でもふんどし一丁、愛した女性への想いなのか、幽霊の三角頭巾代わりなのかパンティーを被った姿で現れる。土肥家に生まれた以上、自分も人生をふんどし一丁で全うし、そんな姿となるのだろう。
でも、栗田さんが好きだ。
土肥は、ふんどしを脱ぎ、ブリーフを履く。
楽しい日々。彼女が好きなディズニーも勉強した。モノマネをしたら凄く喜んでくれる。栗田さんと一緒にいると幸せ。私もなんて返された日には天にも昇る気分だ。
でも、ふと頭を不安がよぎる。これでいいのか。無理した自分。本当の自分はどこにいったのか。
そして、町の治安は、ふんどしヒーロー、土肥が消えてから、悪くなる一方だった。
裸に全身網タイツを纏い、ブラジャーとパンティー。変態要素を詰めたいだけ詰め込んだ変態、白井宏幸が現れる。
白井は栗田さんを襲う。
土肥は抵抗するが力が出ない。ふんどしじゃないと、こんな変態の雑魚一人倒せない自分に気付く。
栗田さんは白井にさらわれた。今頃、ひどい変態な仕打ちを受けているだろう。
どうしたらいいのか悩む土肥に、祖父は声をかける。
お前の父親はブ男だったが、自分のふんどしを信じて必死に戦った。その姿に母も惚れた。
自分の本当の姿を見せて戦え。それで嫌われるなら、それだけの女だったってこと。お前の見る目の無さを恨めばいい。
土肥は栗田さんの下へと走る。愛する女性一人すら助けられない自分は嫌だ。彼の股間にはふんどしがひるがえる。
白井を撃退。でも、ふんどし姿の土肥を見て、栗田さんは別れを告げる。目に涙を滲ませながら。
お母さんは本を閉じる。こんな寂しい話と息子もちょっとしんみり。
少しだけ続きがある。
また、ふんどし姿で町の平和を守る土肥は、ある日、栗田さんと再会する。その姿を見て、土肥は驚きと同時に喜びが込み上げる。栗田さんはもう、ブリーフを被っていなかった。代わりに・・・
これは、まっすぐなふんどし一丁の男と、その姿に惚れた女の少し昔の恋物語。そう、あなたのお父さんとお母さんのお話。お母さんはそう言いながら、ナイトキャップを外し・・・

まあ、これだけ毎日暑かったら、頭もおかしくなるだろうし、脱ぎたくもなるだろうなといった作品。
あそこを締め付けるブリーフ。蒸れてジュクジュクする様は、相手の心をうかがうばかりで、自分をがんじがらめにして、ウジウジと悩む姿と同じか。
あそこが蒸れることなく自由にフィットするふんどし。それでいて、自分の心をしっかり締め付けて、気合を入れてくれる。相手にとらわれ過ぎて、自分が見えなくなった男の心の風通しを良くする。そんな解放された本当の男の姿に、ふんどし同じく、その男の魅力に気付いてくれたのだろうか。
にしても、男がパンティーを被ると情けないの一言だが、女がブリーフを被るのはありだな。人によるのかな。彼女に被ってみてと言ってみるか。こうして、変態はきっと蔓延していく。ふんどしヒーローの休まる時は無いのだろう。
関係無いが、このブログ、仕事もあって、あまり時間が無いので、出張中の電車の中で書いている。変態、変態と書きまくっていたからだろうか。変態では有名なあの劇団、がっかりアバターの主宰に声をかけられた。変態の力、恐るべし。
基準点5点に、土肥嬌也さんの思いっきりの良さ、白井宏幸さん(ステージタイガー)の変態っぷり、青木道弘さん(Artist Unit イカスケ)の安定した貫禄、古川愛さん(らぞくま)の優しげな語り、栗田ゆうきさん(ドアーズ)の飄々とした可愛らしさに各々+1点。満点としたいところだが、変態に満点つけると、自分も仲間のようになってしまうので1点減点で9点評価。

・「犬の僕にできること」 : にもかかわらズ

男は今日もジャムパンをかじりながら缶コーヒーを飲んでいる。仕事の現場近くのこの場所で休憩するのは毎日のこと。そして、いつも女の子が声をかけてくれるのも。ここでティッシュ配りをしているらしい。とりとめのない会話をしていると、目の前の道路向こうにボブがいる。ここで、たまに餌をあげたりしている野良犬。
ボブは、フラッと道路へと歩き出す。危ない。男は飛び出す。
気付くと、よく分からない場所で、スーツ姿の男と妙に馴れ馴れしい男と一緒にいた。
どうやら死んだらしい。男は驚きはするものの、どこか安堵の表情を浮かべる。スーツ姿の男は自称、天使だと。事故現場に供えられたドッグフードがけっこうイケると飄々と食べている。
もう一人の男は。向こうは自分のことを知っているようだが。ボブ。魂となったので、男には人に見えているらしい。
ボブは必死にここから出て行こうとしているが、どうやらスーツ姿の男に術でもかけられているのか、弾き返されて無理なようだ。
ボブも男も、もう冥界へと旅立たないといけない。それを拒否したら、ここで地縛霊となるだけ。ボブはそれも辞さない覚悟だ。どうやら、この事故現場に女の子が毎日のように花とお供え物を持って来て、助けてと口にして帰るらしい。何が出来るわけではない。でも、このまま、放っておくことは出来ないと。
そんな中、冥界から連絡が入り、男はまだ死んでいないことが判明する。肉体は病院でまだ、その姿を残したままらしい。
ボブはあの子を助けてあげてと願いを託し、成仏する決心をする。
ところが、男は奇妙な提案を持ちかける。
ボブが、自分の肉体に入って生き返ればいい。男は生き返っても、死ぬのを待つような生活しか出来ないからと。ボブはそれを受け入れて、この場から急いで去っていく。
男はスーツ姿の男に、自分の過去を語る。昔、自分の不注意な運転で事故を起こした。スピードの出し過ぎ。無傷な自分に対して、彼女は即死だった。遺族に言われた。全ての感情を捨てて、ただひたすら悔いて生きろと。その日から、ずっと笑わず、喜ばず、悲しまずと、ただ死ぬのを待つ日々を過ごしている。あの世に行ったら、彼女と会えるのだろうか。
スーツ姿の男は、さあ、あの世は広いからと答えながら、相変わらず、美味しそうにドッグフードを食べている。薦めてくるので少しだけ口にしたら、確かにけっこうイケる。本当ならビールが合いそうだが。スーツ姿の男はビールを知らないみたい。冥界に旅立つ前に飲ませてあげられればいいのだが。
ボブが血相を変えて戻って来る。やっぱり、入れ替わるのは中止だと。
ボブは病院で眠る男の肉体の下へと向かったらしい。そこには女の子がいた。彼女は毎日、見舞いに来ては男の意識が戻るのを待っていた。事故現場にドッグフードを供えていたのは、犬が成仏していないから意識が戻らないと誰かに言われたからみたい。
誰かに好かれる。それがどれだけ幸せなことか。野良犬だったボブには、誰かに想われることがどれだけ素晴らしいことか、それだけで生きる価値があることをよく分かっている。
生き返るべきは、やはり男の方だ。
男はそんなボブの言葉を聞き、最後にボブと二人っきりで話をする。
事故現場に、松葉杖姿の男と、その男を支える女の子が現れる。ドッグフードとビールをお供えして・・・

本当のラストは一転させています。
冒頭のボブを野良犬と思わせないような流れとか、ミスリーディングを起こさせる巧妙な運びは、さすがの上田ダイゴさん作品でしょう。
最後の松葉杖姿の男は、実はボブ。やはり、好かれること、好きになることの大切さを知るボブに生きることを選択させたようです。男は、もう人を好きになることが出来ませんし、好かれることも許されませんから。それよりかは、あの世で彼女と出会い、死をもって始めて人生をリセットした方がいいのでしょう。逆にボブもこれまでをリセットし、新しい生の中で、幸せを追い求める時間を過ごせばいいのでしょう。想うこと、想われることを拒絶せざるを得なかった男と、それを願い続けてきたボブが、生と死で分かつことになりましたが、各々、これからを視点に置いた決断だったのだと信じたいところです。
スタージャックスで幾度か拝見しているかな。男演じる下浦貴士さんの、抱えるものを持つ苦しみと覚悟をベースにした真摯な演技が目を惹きます。
基準点の5点に、巧妙な脚本に1点、役者さんの単なる熱さだけでなく、緩急つけた丁寧な心情表現が見える演技に1点、その個性的な登場人物たちのバランスとれたチームワークに1点、痛快なオチに1点。
ただ、時間が35分超えているので2点減点で、7点評価。

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