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2015年7月17日 (金)

キャンディ遊園地、1705。【劇団赤鬼】150717

2015年07月17日 KAVCホール (130分)

嬉しい。
この劇団で、生でずっと観たい作品だったから。
大袈裟ですが、夢一つ叶った思いです。

2009年、観劇を始めた年。
ここを何で知ったのかは記憶が定かではありませんが、とにかく劇団HPから過去DVDをまとめ買いしたことは覚えています。
それから、一番昔の作品から、毎日のように遡ってDVD鑑賞。そして、この作品を観た時の感動と言えば、もう・・・
何て素晴らしい作品なのだと、涙を流しながら感激したことは、今でもしっかり覚えています。
ブログをこうして書くようになってから、すぐに感想記事を書いていますね。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/dvd1705-d47e.html

そんな私にとっては思い出深い大切な作品を、今日、生で観てきました。
もうそれだけで十分嬉しいのに・・・
またこれが最高に良かった。
あの時、DVDを観て感動した気持ちが、そのまま劇場の客席で味わえるんですもの。
こんな最高で贅沢なことってあるでしょうか。
ありがとう、キャンディ遊園地、ありがとう、赤鬼の言葉しかありません。
素晴らしき作品。
この土日で、多くの人に楽しんでもらえますように。
私も千秋楽をもう一回予約してあるので、今からまた楽しみ。

<以下、再演なので白字にしていませんが、ざっくりしていますが、ちょっとあらすじを書いていますのでネタバレにご注意願います。下記、ぐだぐだ書きましたが、感想は上記したように一言。最高です。是非、足を運んで欲しい作品です。公演は日曜日まで>

2015年、アメノイケ遊園地。
呑む、打つ、買うと、32歳のだらしない男、山内のいい加減な経営によって、長い歴史に幕を降ろそうとしている。
この遊園地、何と言っても名物は、綺麗な電飾を施された観覧車。戦争で一度、全壊したけど、戦争前から最新の技術を持つ米国から購入した逸品。
山内は、最後だからと、祖父の代から働いてくれている技師、トラキチに観覧車に乗せろと言い寄る。
危険だから無理だと断るものの、こんな奴は痛い目にあった方がいいかもしれないと乗せることにする。
山内も、こんな人生、いつでも終わっていいと思っているので、事故が起こって死んでしまってもそれはそれでいいかといった感じ。
そして、本当に事故は起こり、観覧車は見事に山内   を乗せたまま、崩壊する。崩れ落ちる中、山内は派手な服で身を飾った男の姿を見る。

気付くと、山内はやっぱり遊園地にいた。多くの人で賑わっている。観覧車も健在だ。
人の遊園地に勝手に入り込んでどういうつもりだ。出て行け。明日には遊園地は閉鎖。外資に持ち株も渡したので、利益重視のアウトレットとなる予定。
そう怒鳴り散らすものの、誰も言うことをきかない。それどころか、狂人呼ばわりされる。
血の気の多い若い男と喧嘩になり、じいさん、身重の女性、子供たち、女学生、変な外人、よく喋る女、そしてみんなをまとめている男に仲裁に入られる中、突然、サイレンが鳴り響く。
空襲警報。そう、今、山内は、1944年のアメノイケ遊園地にいる。

みんなをまとめていた男が、この遊園地の責任者らしい。周囲に気を配り、実直そうで、リーダーにふさわしい人で、みんなからの信頼も厚いみたい。身重の女性は奥さん。とても優しそうな人だ。苗字は山内。つまりは、おじいちゃんとおばあちゃん。ということは、お腹の子は、親父だ。
と言っても、未来から来たなんて信じてもらえるわけもなく、戦地から逃げて来た従兄弟ということで認識されたみたいで、しばらくは厄介になることに。
一体、どうしてこんなことになったのか。先祖の罰でもあたったのか。それとも、何か見せたいものがあるのか。山内は、自分にしか見えていない観覧車事故の時の派手な男に問い正すが、飄々としらばくれるばかりだ。

暮らしてみると、遊園地の人たちはいい人ばっかり。
おじいちゃん、おばあちゃんは、優しく接してくれる。もっとも、ちょっと頭がおかしい、可哀想な人といった扱いも否定できないのだが。
喧嘩になった血の気の多い男は、おじいちゃんの弟。クソ生意気で腹の立つ奴だが、素直で熱く優しく不器用で。あんたと似ているなんて、技師のじいさんに言われるが、血の繋がりって奴だろうか。いや、自分はあいつほど信念を持っては生きていない。
技師のじいさんは、トラキチの祖父になる。色々と口うるさい奴だ。ここではトラキチは、まだ可愛らしい素直な子供だ。将来、あんなに憎たらしい奴になるは、遺伝だったのか。
トラキチの友達も、元気で明るく素直な子たち。空襲で家が潰れて、母親が行方不明になっている子もいる。お母さんが帰ってくるまでここで暮らせと言われているようだが、おぼろげながら気付いてはいるだろう。そして、お父さんはもちろん、戦地に赴いている。
学校の先生である母と憲兵の父の息子もいる。時代が時代だ。疎開する子も多く、学校はほとんど機能していない。子供たちの楽しみであるはずの、音楽会などは人不足で開くこともできない。子供たちに我慢を強いることは、学校の先生としては口惜しい日々だろう。だから、子供たちはこの遊園地に集まる。でも、この遊園地だって、もうすぐ閉鎖だ。戦況がさらに厳しくなり、娯楽は世から排除しないといけないし、遊園地の遊具は貴重な戦闘機の材料となる。憲兵は、遊園地を取り締まらないといけない。いくら、自分が幼き頃、よく遊んだ遊園地で、息子や妻をよく連れて行った大事な思い出の詰まった遊園地であっても。それが、自らの職の責務であり、それが、今、戦争で敵国に脅かされているこの国を守るための唯一の手段なのだから。
怪しげな外人は、見た目は異国の人だが、母がイタリア人、父は日本人であるだけで、立派な日本人らしい。ここでは、いかがわしさ漂うが、一応、奇術師として働いている。幼き頃は、スパイだなんていじめられていたみたいだが、持ち前の明るさで、ずっと頑張ってきている。よく喋る人は、奥さん。活動弁士だったらしい。夫婦揃って、明るく元気。こんなご時世でも、この遊園地に楽しい空気が流れているのは、この夫婦の影響も大きいだろう。そんな夫婦の子供とは思えない、しっかりした女学生の娘さん。ぶっきらぼうな、おじいちゃんの弟に想いを寄せている。おじいちゃんの弟だって、彼女を大事に想っている。それでも、今の時代のようにイチャイチャなどは出来ない。おじいちゃんの弟は、日本を敵国から守ることが、彼女の幸せに繋がると信じて、今、自分が出来ることを必死に模索する。

山内は、そんな戦時中に身を置くことで、この厳しい時代の中で、必死に遊園地を守ろうとしてきた先祖やその周囲の人たちの想いに触れていく。
そして、戦争は、非情な現実をも突き付けてくる。
赤紙召集令状により、戦地に赴くことになったおじいちゃんを止めることは出来なかった。
そして、特攻隊として配属されたおじいちゃんの弟の出撃も、ただ見送ることしかできなかった。
山内は未来を知っている。この戦争は日本が負けることを。そして、おじいちゃんもその弟も、この戦争で死んでしまうことも。
自分は何も出来ない。誰一人、守れない。みんなが守ろうとしていた遊園地だって、未来の自分によって潰すことになる。
戦況はさらにひどくなり、遊園地に大規模な空襲が襲い掛かる。
ここにいるみんなを守る。この空襲で遊園地は壊滅する。でも、その遊園地をまた、みんなで盛り上げていく。その先の遊園地の姿が、自分が生きている未来にある。
山内は、今、自分が出来ることをするために走り出す・・・

生きているのか死んでいるのか、よく分からないような生き方をしていた山内。
彼にとって、遊園地など、親が残した負の遺産に過ぎず、そんなもののために経営で苦しめられたぐらいにしか思っていない。
でも、そんな遊園地には、戦争という厳しい状況の中でも、みんなが楽しめる場所として必死に守ろうとしていた多くの人の想いが詰まっていることを知る。
戦時中に身を置いた山内。そこには、死がいつも身近にある。それでも、自分だけでなく、周りの人たちのことを想いながら必死に生きている人たちがいた。
守りたい。
みんなの大切な想いが詰まった遊園地を、そしてこの観覧車を。
山内は、身を置くことになった戦時中に、守りたいという意志を持ちながらも、時代の悲劇の中で命を失った者たちから託された願いを受け止めて、みんなを守る。そして、そんな時代の未来である今、これからを、触れ合った人たちの想いを受け継いで、この大切な遊園地、観覧車を守り抜いていく。
そんな一人の男が、自分がただ生きるのではなく、大切な人たちといつまでも一緒に楽しく生きていくために、その平和な日々を守るために生きるということに気付いたような話。

ちょうど、安保法案で揉めている日本。
守るということは、どういうことなのか。
皆の夢や希望が刻まれた大切な、こんな遊園地は、人それぞれにきっとあるはず。それを、これからの未来ずっと守るために、私たちがしなくてはいけないことは、何なのかを考えるきっかけになる話でした。
遊園地は、先人たちが、これからを生きる私たちに残してくれた、迫る死の怖れを感じることなく、誰もが生の喜びを感じて日々を過ごして欲しいという真摯な願いの象徴だと思います。そう思うと、多大な努力により、今の世の中自体が、遊園地のようになってくれているのかもしれません。これを単純な損得のような概念で、私たちが勝手に潰すことは許されないことでしょう。どういう想いが込められて、今があるのか。そこに想いを馳せれば、私たちが守らないといけないものがおぼろげながら見えてくるように感じます。

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コメント

SAISEIさん


18日(土)14時~観劇。SAISEIさんの言葉にイツワリなし。メチャ良かったです。いや時間の経つのが早かった。泣いたしね。


20年続いている劇団の凄みを感じた気がします。

SAISEIさんを信じて前回のDVDとパンフレット、今回のパンフレットを購入しました(笑)

投稿: KAISEI | 2015年7月18日 (土) 16時58分

>KAISEIさん

o(*^▽^*)o
でしょ。
これは自信あったんだ。

前回DVD、観られたら分かりますが、今回と役が替わってたり、あの役が無かったり、テノヒラ湯浅さんとかご出演されていたりと、また違う味が楽しめますよ。

投稿: SAISEI | 2015年7月19日 (日) 11時13分

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