ファーマーズROCK【劇団みゅーじかる.321♪】150711
2015年07月11日 インディペンデントシアター2nd (120分)
歌、踊り、殺陣と、関西でご活躍の若手中心の豪華キャストによる魅せる、豪華絢爛エンタメ舞台といった感じでしょうかね。
とにかく、観る者を圧倒させる力強い舞台でした。
そして、話も色々とゴチャゴチャしているところもありますが、突き詰めれば愛がテーマ。その愛に纏わる様々な形を見せて、歴史は時によって流されているのではなく、そんな想いを抱く一人一人の人間の力が動かしているんだということを描いているようでした。
時は1600年。
世は関ヶ原の戦い迫り、西軍、石田三成と東軍、徳川家康が、各地の武将を勢力に引き込もうと密書が飛脚らによって飛び交っていた。
一方、そんな騒がしい世のことなどいざ知らず、米獲頭村では、史書によれば、天下を左右した戦い、応仁の乱以来の厳しい干ばつに見舞われ、稲の収穫に危機が迫っていた。
いかがわしさ漂う村長は、陽気で騒がしい村人たちを集めて、効果があるのかよく分からない踊りで祈祷を始める。その息子、甚右衛門は、からくり人形を動かそうと必死。なんでも、二期作を実現すべく、その労働力としてからくりの力が必要で、色々と研究をしているようだ。そんなことをしているので、せっかくの男前も台無し、女とは全く縁がない。時代が時代なので夜這いなど当たり前だが、口を聞いたこともないくらいの始末。
そんな甚右衛門の家に転がり込んでは、自らの肉体向上、剣の稽古に励む大門。肝っ玉母さんという言葉がぴったりのような女性の息子で、剣など持たず、鍬を持てと口うるさく言われる。それでも、なぜか血が騒ぐらしく、大門は懸命に自分を高める。時折、怒号ひしめく燃えさかる炎の中、誰かに抱きかかえられながら泣いている、覚えの無い自分の姿が脳裏をかすめる。
ある日、からくりが動き出す。ただ、制御方法が分からない。南蛮語で書かれた説明書を解読しないと。からくりは人を襲うかと思えば、農業に従事したりと何を考えているのか分からない。どうにせよ、その力は凄まじく、敵に回したら大変だ。ましてや、戦に利用でもされたら、その勝敗を左右することは間違いないだろう。
そんなからくりが動き出した頃から、村には怪しい影が忍び寄る。その仲間なのか、村人のある男は、からくりの説明書を盗み取る。村には恋仲の女性もいるが、その女性の親からは、村に最近やって来た新参者ということで、怪しいと反対されているようだ。肝っ玉母さんとよく連絡を取っている。
大門は、村にやって来る怪しい影を追ううちに、肝っ玉母さん、そして自分の母と連絡を取り合う村人の正体を知り、自分自身の過去を思い出す。
そう、自分は忍びの頭領の息子。からくりの暴走で、忍びの里が被害に見舞われ、その時に、仲間に助けてもらった。それが、今、母と呼んでいる肝っ玉母さんだ。肝っ玉母さんは、自分の本当の子供を家から追い出し、大門を実の子として、戦うことの無い生きる道を進ませようとしてくれていた。ずっと育ててくれた肝っ玉母さん。自分のために影の存在として、傍にいてくれた息子さん。
やはり、今の自分に出来ることは、からくりを始末すること。大門は刀を握って、からくりの下へと飛び出していく。
一方、石田三成。
日々届く、たくさんの密書の中から、何かを探している。田中吉政という武将からの密書。愛しの人らしい。今は徳川方に付いているこの人からの密書の内容次第で戦への意志は弱まるような感じだ。ちなみに三成は妖艶な美女として描かれており、その側近も、スタイリッシュな美人となっている。側近はどうも悪だくみを考えている。戦も絶対にしてもらわないと困るといった様子。三成に仕える振りをしながら、やがて始まる徳川との戦いに乗じて、自分が天下を治める計画らしい。そのために必要なもの。それはからくりの力。からくりが動いたという噂を嗅ぎつけ、お抱えの忍びを動かし、盗み取るつもりだ。
田中吉政と言えば、その重臣、田中長吉が、全国を行脚しており、今、米獲頭村にいる。色々とあって足止めを食らっている状況。徳川方につけと、全国の武将を説得する使命を殿から受けているが、実は三成宛の密書を託されていたこと気づき、早く大阪に行かねばならぬのだが。
そんな米獲頭村。ガラシャと名乗る女性がいきなり空から降ってくる。細川家の正室。徳川方に付く決心をした細川家。殿はガラシャに、人質として三成に捕まり、お家に恥をかかすことのないよう、自決を命じている。ガラシャはキリシタンであるがため、自決が出来ぬが、お家のために死ぬ意志は固めている。
そんなガラシャ、三成軍の襲撃時に、女の嫉妬から、側室に命を狙われる。おかしな飛脚上がりの二人組を仲間にして、側室はガラシャを崖から突き落とす。ついでに、自分の犯行を知る二人組も戦に乗じて葬り去る。ガラシャは記憶を失っており、名前ぐらいしか思い出せない。ただ、胸の十字架から、キリシタンであること、そして、なぜか男に対して抑えられぬ怒りを覚えてしまうことぐらいしか分からない。
そんなガラシャに惚れてしまったのが甚右衛門。夜這いを仕掛け、想いを告げるが、恐らくは殿から受けた裏切りの仕打ちが心に潜むガラシャが男を受け入れる訳がない。あっさりとフラれ、村では情けない男だと噂に。甚右衛門も、ショックで完全に自身を喪失している状況。父である村長に、男なら何度でもアタックしろと言われ、何度も接触を試みるが、そのたびにぶん殴られて終わり。
からくりは、依然続く干ばつから村を救うべく、山の方へ向かう。そこから水を引くつもりだ。ただ、手段は荒々しい。洪水のごとく山から水が流れ出し、山の上の村に住む者は、麓の村である米獲頭村に流されてくる。
流されてきたのは、細川家側室とおかしな二人組。ガラシャを葬ろうとした人たちだ。
側室は、まだおかしな二人組が生きていたことを知り、改めて葬ろうとする。その辺りに倒れていたお侍さんの刀を奪って。そのお侍さんが田中長吉。刀を奪われた長吉は、これでは使命を全うできぬと、側室を追い回す。側室に追われる二人組は、男日照りの村人の家にかくまってもらったが最後、責任を取れと追い回される。
ガラシャは側室と出会い、全ての記憶を取り戻す。憎しみはあるが、この時代に女として生まれ、生きてきた辛さは誰よりも理解できる。側室を許し、自分は大阪の武家屋敷に戻り、キリシタンを捨てて、そこで自決する覚悟を決め、村を旅立つ。
甚右衛門は、ガラシャへの想いを捨てることが出来ない。
彼女が大阪に向かい、自決するつもりでいることを知り、自分も大阪に向かう。
関ヶ原の戦いが始まっている。戦場の中、一人の男が修羅のごとく、次々と人々をなぎ倒し、大阪へ向かっている。
からくり。いや、からくりは米獲頭村で大門と戦っている。
甚右衛門。甚右衛門は、自分の想いを愛してしまったガラシャに届けるべく、突き進み・・・
時系列はめちゃくちゃになっていますが、覚えている限りの出来事を連ねてみました。
非常に事細かに練られている話なので、まとめて書くのは難しいですね。
要は甚右衛門とガラシャの恋物語といったことでいいでしょう。
そこに、親子、友人、男女、主従、仲間といった関係の中でも存在する想い合いを絡めて、どんな時代でも存在する愛が、時代を変えるだけの強さを持っていることを描いているようです。
からくりの名前は阿守。アモはスペイン語で愛を意味するそうです。そのまま読んで、あもりもネットで調べたら天降るみたいな意味があるらしく、実際は崖から突き落とされただけですが、天から降って来た者との間で生まれた愛が歴史を動かしたということに繋がるようです。
そして、そんな二人の愛が描かれる中で見えてくる、登場人物一人一人に用意されている、人を想う気持ち。世がどんなに戦いに興じていようとも、親を子を、好きになった者を、上司を部下を、友を仲間を、出会えて時を共にする者たちの間に生まれる人への想いがある限り、戦いはやがて終息を迎え、新たな時代の始まりを告げることを示唆しているような形で話を締めているようです。
からくりは、この村の干ばつを荒々しい手段で救いましたが、同じように心が渇いてしまったかのようなこの時代の人たちに、自分たちにだって、大きな力があるじゃないかと潤いを、むちゃくちゃな手段で与えたような感じでしょうか。
ダイナミックで豪華な舞台の最後に待っていた、これからを感じさせる優しい姿がとても気持ちよく心に残ります。
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