Windows5000【壱劇屋】150619
2015年06月19日 インディペンデントシアター2nd (120分)
原作を創られたヨーロッパ企画が面白いのか、そこに目をつけてご自分方で公演にまで持っていった壱劇屋が面白いのか。
とにかく面白い作品であることは間違いないだろう。
ある集合住宅のようなところに住む人たちの生活を覗き見する実況放送。アナウンサーと解説者のような振る舞いをすることになる男二人の掛け合いは見事。笑いが絶えない。
近未来を描きながら、現代社会への痛烈な批判も組み込まれる。特に、最近、大阪では話題になっていることもあるので、その感覚はひとしおだろう。
そして、舞台セットの凄さ。
この作品の感想は、ネットで少し調べていたが、オチがあっさりし過ぎというコメントがちらほら。観ていると、確かに最後の方で、これで終わるなら、本当にオチが弱いなと思っていたが、オチは何も話だけでつけるものではないだろう。
最後に観る舞台での姿そのものが、この作品の見事なオチになっており、感動する。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで。下記の白字部分に記していますが、ゲスト目当てで観に行くのもなかなかおつなのでは。それと、この作品は面白い。ヨーロッパ企画が面白いのは、私もよく知っていますが、観に行ったことは数回しかありません。その理由は、すぐに席が埋まってしまうから。仕事の都合上、早くても1週間前ぐらいじゃないと予約できない者としては、なかなか厳しいのです。それが、なんと。この劇団には失礼ですが、まだ席は十分あるという。それなら、せっかくだから観に行かないとね>
舞台は近未来の浪速区。
その河川敷に、狭苦しい箱の集まりみたいな集合住宅を作って住んでいる人たち。
近未来になっても、やはり政治家たちはしっかりしていないのか、格差を生む社会構造は改善されていないのか、ネットに依存する情報社会の中に埋もれて人と人とのコミュニケーションはより冷たく寂しいものになっているのか、ホームレスは消えていないようだ。
おまけに、そのホームレスの人たちも、若者を含むごく普通の人たちである。
そして、相も変わらず、国はそういった問題を矮小化して、除去するという手段で見映えを整えようとしているみたいだ。
再三の撤去通告を無視して、ホームレスたちはここに住み続ける。
公務員の男二人は、最新のWindows5000のカメラ機能、5000になって、さらにうっとうしく進化したイルカのアシスタント機能を駆使して、その箱一つ一つの住人たちを観察し、強制撤去のタイミングを計っている。
パソコン、テレビ、スマホと画面を行き来するだけの日々を過ごすニートのような男。大家なのか、共通スペースらしき居間のようなところでだらけた時間を過ごしている。ハンガーを頭に挟むと自然と首が動くみたいなくだらない身体の不思議情報を仕入れては、それを住人たちに得意そうに教えるというのが唯一の楽しみみたい。パソコンの中には、片時も目を離せない大切なものが入っているらしい。
床が斜めになっているので、ずり落ちそうになりながら寝転がり、ゴミだらけの部屋で、オレオレ詐欺をしている、まさしくゴミのような男。
ヒップホッパーなのか、スタジオと自分では呼んでいる、椅子と音響システムを揃えたパソコンだけの部屋で創作活動にいそしむ男。住人たちに声をかけては、今の気持ちをラップにさせてレコーディングする。外には出ない、内にこもったラッパー。
この世に存在しているのか、心霊のような、よく言えば妖精のような不思議な女の子。ファンシーな部屋に住み、純粋そうオーラを醸しているが、ここの住人の男を平気でたぶらかしているみたい。
風呂場に住むOLらしき女性。アイドルおたく。疲れて帰っては、空の風呂に入り、おっさんが湯船につかっているかのように、声を出し、疲れを癒す。生活備品も全て、風呂桶、シャンプーボトルなどを使用する徹底ぶり。部屋は風呂でも、本当に風呂に入るときは、ここに備え付けられた共通のシャワールームを使用する。
普通のサラリーマン。部屋の中から、外の川で釣りをして、釣り上げた魚を食べる。
ノッポな男。体に合わせたのか、縦長の高い箱の中に住む。部屋の感じはスタイリッシュ。ただ、ワインを一気飲みしたり、オシャレを勘違いしているところがあるみたい。常に、はしごを登って、部屋の高い場所で暮らす。酔って落下するのを防止するのか、命綱は必須。
その部屋の下側で暮らす大学生。みんなの気を惹こうとしているのか、ケガをしているとしつこく言い続ける狡い男だ。
ジャングルのような部屋で、上半身裸で過ごす、勘違いしたナチュラリスト。部屋では、自身の糞尿を肥料に野菜を栽培する。先の釣りをする男と合わせて、一応、自給自足の生活がここでは成り立つ。
最初の30分ぐらいで、各部屋の住人の説明、その後は、この住人たちの生活を覗き見しながらの実況放送。
公務員の二人の男の掛け合いが光る。ツッコミも巧みで、終始、笑いっぱなし。
最後は、いっこうに言うことを聞かない住人たちに痺れを切らせ、自らが住人になって、空いている一部屋に潜入することに。
歓迎会が開催されることを利用して、全員を連れ出す。
オレオレ詐欺の男だけは警察に引き渡すのだが。
そして、パソコンから離れられないという大家らしき男も、パソコンごと一緒に持ち出して、外に連れ出す。どうやら、パソコンの中には可愛らしいメイドが入っているらしい。これがゲストとなる。この日は松永渚さん。残りの6公演も様々な方がご出演される。この姿を拝みに行くだけでも、ちょっと価値ある公演かもしれない。こういうことなら、観に行きたかったなという回があるが、今週は公演激戦週なので、もう余裕が無い。
そして、いなくなった隙に、国家権力は強制権を発動する。
住人たちのスポッチャでの楽しい時間が映像で流される。
楽しい時間を終え、帰って飲み会をして、さらに楽しもうと考えるみんなだったが、そこには・・・
舞台は、非常に精密に作りあげられている。
ごちゃごちゃしている中で、各々の住人たちの生活が浮き上がるように。
それが、最後、国家権力により、見事に消し去られる。
その姿は、楽しかったこれまでの時間を全て消してしまうという、あまりにも哀しく切ない気持ちを溢れさせる。
| 固定リンク
「演劇」カテゴリの記事
- 【決定】2016年 観劇作品ベスト10 その3(2016.12.31)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その2(2016.12.30)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その1(2016.12.30)
- メビウス【劇団ショウダウン】161209(2016.12.09)
- イヤホンマン【ピンク地底人】161130(2016.12.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
SAISEIさん
面白かったです。ヨーロッパ企画のものも演劇なんですか? それとも映像?
壱劇屋お得意のパフォーマンス系ではなくこういう静か系でも(厳密な意味では静かではないがw)魅せられるというのがわかりました(笑)
最後の映像シーンが終わったあとのガランとした舞台上。あの舞台所狭しとあった舞台美術は何処に? と今でも不思議に思っています。
投稿: KAISEI | 2015年7月24日 (金) 13時49分
>KAISEIさん
先日はどうも。
やっぱ、ヨーロッパ企画のものも舞台作品みたいですよ。
5本ぐらいDVD持ってるんですけどね。この作品も観たいですね。
紀伊国屋で販売しているんだけど、梅田は品揃え悪いからなあ。
HPから通販で買うしかないか・・・
壱劇屋の魅せる力がまだまだ多様であることを知らしめましたね。次回のサンプリングデイで、さらにどうなるかが楽しみなところです。
投稿: SAISEI | 2015年7月26日 (日) 21時14分
SAISEI 様
御教示ありがとうございましたm(_ _)m
今日は火ゲキですね。楽しんで来てください(>_<。)
私はSAISEIさんのblogで楽しみます。
投稿: KAISEI | 2015年7月28日 (火) 11時22分