アタックチャンス【ThE 2VS2】150614
2015年06月14日 インディペンデントシアター1st (90分)
難しい作品を観た時の感想はなかなか書くのが辛い時がありますが、こういう面白いという感想しか書けない時もまた同じく。
そうですね。
前回公演は、場外ホームラン1本、ホームラン1本、いい当たりのヒット2本、ポテゴロ1本、空振り1本といった感じでしたが、今回は場外ホームラン1本、いい当たりのヒット5本といった感じでしょうか。
要は勝ち試合だということは間違いないということです。
今回のオープニング、幕間、エンディングは、公演名にちなんで、5人の解答者によるクイズ形式。次の作品名が答えになったクイズで、おかしな解答をして、軽い笑いの後、作品が始まります。
・罪人
45歳独身の男。妙齢の未婚の妹と同居中。婚活パーティーで、全然、上手くやれていないらしい。そのことを女から厳しく、指導を受けている。男を巧妙に騙す女がいるんだから、しっかりしないと。遂に正体を現した。自分のことを白状したみたいだ。
女は結婚詐欺容疑で捕まっている。
男は、取り調べをする刑事の長橋、通称、長さん。
女は、自分にだって結婚をしようと思った人がいたが、夜逃げのように去られ、別の人とすぐに結婚してしまった過去を話す。
同情する長さんの下に、部下の番匠が女の資料を持って現れる。この男が、結婚しようとしていた人だ。
取り調べを受ける番匠。浮気をしていたのではないか。事情を聞くと、女とは別れた。でも、ストーカーのように付きまとわれていたのだとか。資料には、この女のテレクラ詐欺のことも記載されている。
本番をチラつかせて、お金を振り込ませる。こいつだったのか。経験がある長さんは、女を厳しく取り調べる。
でも、それって買春行為じゃないの。取り調べ対象は長さんに移る。
まあ、もういいじゃないか。誰も悪くない。みんな無罪で・・・
テンポよく、切り替えて展開するこの劇団らしい作品。
優位、劣位の立場逆転の妙が、面白く。
下島りえさんが、スレた性悪女を熱演。
・カレー
男は、今まで見かけないカレー屋を見つけて、入ってみる。
マスターは、何だこいつみたいな視線を送ってくるが、席に案内される。
常連なのか、若い女性がキーマカレーを食べている。ピクルスもサービスでもらっている。さらに、店主は女性のためにラッシーを作っている。
男は注文しようとしても、今、ラッシー作っているからときつく言われる。
ようやく注文を聞いてもらうが、要領を得ない。ビーフ、キーマ、本日のカレー。本日は何と聞いても、ビーフ、キーマだという。女性から寝かしたカレーかどうかだと教えてもらう。
その後も、訳の分からないことばかり。出てきたカレーも、異常なほど辛い。
やかましそうな男が入ってきて、ずいぶんといじめられている男を見て、またマスターやったなと。
そう、からかったみたいで・・・
えっ、そんなオチ。
この後の作品の長橋秀仁さんの落語でもいいじゃんといった感じの作品ですが、番匠真之さん演じる秘めた攻撃性を見せる怪しげなマスターや、塩尻綾香さん演じる、ちょっと飄々と痛い気味悪さを醸す若い女性のキャラが、まさにこの方たちじゃないと味が出ないですね。
・スペースシャトル
スペースシャトルで宇宙を目指す開発者たち。
開発所長、プロジェクトのリーダーである隊長は、これまで時間をかけて開発を進めてきた。もう、立派なものが出来上がりつつある。発射基地最前線の管制塔の参謀本部だろうか、直属の長と連絡を取り合って、発射の時を持つ。
一方、その頃、ある病院では、お腹が痛くなってしまったマイケルジャクソンが、医者による治療を施されている。
お腹に固いものがしっかりと溜まってしまっている。下剤で柔らかくしてしまいましょう。マイケルは飲んだ後、自分が痔であることに気付く。このままだと大変なことになってしまう。
スペースシャトル開発現場ではトラブル発生。
時間をかけて、がっちりと創り上げたスペースシャトルが何かにより危険にさらされている。このままでは、発射してしまう。
発射基地に緊急連絡を取り・・・
小腸、大腸、直腸ね。そして、お得意の下ネタ。
前も校門を肛門にしたネタがあったな。
よく考えますね。作家の方は、世の中のあらゆることを、こうした擬人化したような 形で頭の中で想像を膨らませているのでしょう。きっと、楽しい毎日なことでしょうね。
・落語-へ-
芋を食いながら飲む二人。
ひょんなことから、どちらの屁が臭いかということでケンカ。
そこにやって来た二人の友達。
彼にどちらが臭いかを決めてもらうことに。
ルールは簡単。男の握りこぶしに屁をためて、臭くなくなるまで走ってもらう。その距離が臭さのバロメーターとなる。
早速、開始。
ブー。男は走る。家を出て、角を曲がり、橋までたどり着く。まだ、臭い。橋を渡ってようやく。
次は俺だ。ブー。男は走る。家を出て、角を曲がり、橋までたどり着く。まだ、臭い。橋を渡ってもまだ。山を越えて・・・、その日、男は帰って来なかった。
翌日、男が帰って来る。二山ほど向こうの町まで行っていたのだとか。
馬鹿じゃないか。それだったら勝負は決まったのだから、途中で帰ればよかったのに。男は、いやそうもいかなかった。まだ勝負はついていないからと答える。
どういうことだ。道草でも食っていたのか。
いや、そうではない。男は拳をひろげ、そこに付いたビチグソを・・・
まさかのウンコネタ二連発。
よく考えると、先の作品、カレーをウンコオチにしなかったのが不思議なくらい。
長橋さん、落語うまいですね。キャラ変化がとても上手。顔芸も入れ込まれたりして。
・天国と地獄
結婚詐欺女の逮捕に失敗した刑事、長さん、部下の番匠は、今は誘拐事件を追っている。
番匠は電話がかかってくるたびに逆探知を試みるがうまくいかない。
長さんは、電話をとる。焦っているのか、かなり急いで。
電話の向こうでは、こちらの気持ちなど全て分かっているかのように、余裕の言葉回しで話してくる女。
どうやったら、接触できるのか。長さんは必死に探りを入れるが、電話を切られる。
再びかかってくる電話。長さんは自分がとると必死。
ようやく、会う条件が成立。人が多い場所の方が、逆に目立たなくていい。
長さんは一本の花を、相手の女性は日刊スポーツ。それが目印だ。
長さんは、ようやく進展した話に浮かれている様子。それは、向こうの女性も同じみたい。
現場に向かう長さん。一人で向かう。そんな長さんの姿を番匠は怪しむ。まさか、誘拐犯と繋がっているのでは。
番匠は長さんを尾行する。
ここが接触する予定の現場みたいだ。赤い観覧車のあるHEP FIVE。
番匠は、そこで、衝撃的なことを目の当たりにする・・・
長さんはテレクラ。誘拐犯との電話のやり取りと交錯させるパターンで、これまたお得意の形。
そして、先の作品、罪人が伏線になっているようで、相手の女性は妹という悲劇。互いに、ごまかし合う、切ない姿で締められます。
妹は40歳で、塩尻さんが演じますが、ちょっと年齢的には厳しいかな。そこまで妙齢ではないでしょうが、下島さんの方が適役でしょうか。でも、結婚詐欺女をやってしまっているし。逆でも成立できるかと、先の作品を思い出させるという巧妙なテクニック。
・アタックチャンス
幽霊部員の長橋、番匠は試験期間中で空いている部室で、くだらない双六で遊ぶ。
出た目に書かれたことをしたり、質問に答えるという双六みたい。
ちなみに、この双六は、サイコロのおまけと共に、公演を観たらもらえる。
好きな子は誰。長橋は同じクラブの塩尻さん、番匠は同じく下島さん押しみたい。
そんな中、部室の外に下島さんの姿が。二人は覗き込む。
そこにちょっと高校生には見えないけどイケメンの太陽君がやって来る。クラブのキャプテンで、モテる奴だ。
太陽君、下島さんに告白。番匠はショック。長橋は、フラれろと念を送り、固い友情の絆を見せる。
下島さんはことわる。塩尻さんが太陽君のことが好きみたい。いい子だから付き合ってあげて欲しいと。
今度は長橋がふてくされる。番匠はとりあえず、安堵している。
そこに、塩尻さんがやって来る。
下島さんの押しもあって、二人はちょっと意識し合う仲にまですぐ発展。
下島さんの好きな人は。そんな質問に、クラブにはあまり来ていないけど、背が高くて、ちょっと変わっていて・・・と。
番匠じゃないか。違うと言いながらも、まんざらでもなく、完全に意識している様子の番匠。長橋は、番匠に今、出ていけと言う。
番匠が、寝ていたというていで部室を出る。
下島さん、塩尻さんは、誰だと気味悪がる。とんだ勘違い。
長橋も勢い余って、部屋を出る。気でもおかしくなったのか、塩尻さんに告白。
虫けらのように罵られる。
結局、二人は汚いものを見るかのような視線を残して去っていく。
残った3人。長橋、番匠は、太陽も誘って双六を。
それから、時が経ち、3人は、酒を酌み交わし合うようなすっかり仲良しになり・・・
長橋、番匠に挟まれ、太陽はすっかり、二人の馬鹿さに染まってしまったみたい。すっかりモテなくなったが、二人のように楽しい人になったみたい。
そして、長橋は、今、塩尻さんと結婚している。一瞬のチャンスをものにして、勝利をおさめたのだろう。
まさに、人生、アタックチャンス。
長橋、番匠という、お得意の実況ネタをまた違った形で魅せる。二人のテンポのいい掛け合いは毎回、絶賛だ。
そんな二人の姿に翻弄されながらも、何とか、イケメン役をこなす太陽さんの姿が、みかけのごつさと違ってとても可愛らしい。
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コメント
千秋楽に観劇しました。土曜日の夜以外スカスカと聞いていたのに満席(笑)
役者さんの観劇率も高い感じもしましたがめちゃウケてました。それに影響されたのもあるかもしれませんが今回は良かったです。前回公演は粗いと思いましたが今回はネタ云々というより間合いとかなのかなあ、要するに話芸として必要なもののバランスがとても良かった、という印象です。
全ステージ満席は初めてと言ったはりましたがウケてもいたので気分よくノリノリでやったはったのもあるかもしれませんね。私も職業柄わかるわかる(笑)
これなんですね。Iさんが薦めたはったりSAISEIさんも観劇される理由は。これやったら毎回行きたいと思いますわ。
長橋さんの話芸キレキレでしたね~ 役者というより芸人に近いかもしれませんが看板役者というのは頷けます。落語もSAISEIさんほどの高評価ではないかもしれませんが玄人芸でした。
塩尻さんは『目病み猫…』以来2回目。美人なだけやないんですね。職業柄話し方にどうしても気が行くのですがイントネーションや強弱など使い分けがウマイなあ、と。
太陽さんも『キリコの諷景』から注目した役者さん。顔と名前が一致したのは今回ですが(笑)終演後番匠さん自身も誰かに言うたはった気がしますがいいアクセントになったはったと思います。
番匠さんと下島さんもうまく絡んだはったし。
魅力的な役者さんという具材がうまく生かされた作品(料理)といった感じでどのピースが抜けてもこの味は出せないんだろうな、という公演と感じました。
ダブルコールが興って慣れてないのか番匠さんが後から登場というハプニング? もありましたとさ(笑)
ちょっと今回2VS2さんには借りができたので今後何かで返したいと思います(笑)
投稿: KAISEI | 2015年6月15日 (月) 14時22分
>KAISEIさん
ダブルコールだったんですね。
そりゃあ、皆さん、焦ったことでしょう(*^-^)
一つ一つの作品の面白さはもちろんですが、ここは全体の繋がりというか、テンポというか、バランスというか。
それがはまる時と、いまひとつの時で評価が異なるように思います。
今回は、全体的に安定していたんじゃないですかね。
一つ一つの作品だったら、まだまだもっと面白かったものがありますが、今回は総合力の勝利のように感じます。
長橋さんは、一度だけ、こんな芸人に近い形でなく、不器用で冴えない男を演じる二人芝居で拝見したことがありますが、実に味のある真面目な演技でしたね。看板役者だからこそ、ここまで面白味に溢れた作品が出来上がるのかもしれません。
塩尻さんは、いわゆる器用な役者さんみたいで、何でもこなされますね。けっこう注目株です。可愛さも相まって。
そうか、太陽さん、キリコの諷景に。覚えが・・・あのいかつそうな姿だから、記憶に残りそうですがね。確かに、これまでの2VS2の公演には無かった新しいアクセントがあったように思います。
投稿: SAISEI | 2015年6月15日 (月) 19時25分