« ようこそアトリエ【こみかさ】150607 | トップページ | 七人のふたり【クロムモリブデン】150608 »

2015年6月 9日 (火)

楽園【南河内万歳一座】150608

2015年06月08日 シアトリカル應典院 (85分)

これまで拝見した中では、この作品と非常に似た感じでしょうか。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/120613-49f4.html
どこか懐かしく、切なく、哀愁を感じるように、その視点は過去にあるのに、なぜか妙に明日への活力が湧いてくる不思議な感覚。
明日へ向かってやっていこうぜみたいな熱い気持ちのノリではなく、気付けば自然と足が明日へ向かって、その気持ちもジワジワと火が灯り始めているみたいな。そして、瞬時の勢いではないので、その歩みはゆったりでも力強く、その心の炎もちょっとやそっとでは消えやしないという覚悟を感じます。

<東京公演が6/17から始まります。まあ、大丈夫なレベルだと思いますが、一応、下記、ネタバレにご注意願います。白字にはしていません>

駅から入り組んだ細い路地を幾つか入ったどこかの居酒屋。
この先の住宅街までに、もう店はない。
何でも200円の最後の楽園と呼ばれるこの店で、多くの人たちがワイワイと飲んでいる。
迷い込んできた若い男。
話を聞けば、全く逆方向からやって来たみたい。はるか向こうの駅を降りて、取引先に向かう途中、道に迷い、遅刻。さんざん叱られ、会社に戻ろうと思えばこの有様。
いつもそうだ。道に迷い、曲がらないといけないところで曲がらず、曲がらなくていいところを曲がる。最後はとりあえず行ってみるということになる。そして、今に至る。
でも、たどり着いた先が楽園ならいいじゃないかと、客や店員たちにのせられて飲む。いや、これではいけない。せめてきちんと会社に戻らないと。取り返しがつかなくなる。今日のうちに。今日があの日になってしまう前に。
男は店を立ち去ろうとするが、おかしな人たちが次々に店に入り込んでくる。

パチンコで勝ったのか、どこかで万引きでもしてきたのか、スカートの中に大量に物を仕込み、太もも露わに店に入って来る女性。
店に入って来たというか、トイレにずっと籠っていた男。痴漢を犯したのか、冤罪なのか、店の開店前から、駅からダッシュで店に入り込んでいる。痴漢をされたと言い張る女。
駅前の放置自転車を撤去されて、かなりの距離を歩いて取りに行かないといけなくなってしまった若い男女。同じような人たちの行列が今、出来ているのだとか。
歩かないといけないのは、どうやら電車が止まっているから。
事故だろうか。駅に飛び込みでもあったのか。そう、あの時のあの男のように。
ずっと、ここで待っているけど、やって来ない男がいる。もしかしたら、その男が・・・

伏線や謎解き、ミスリーディングの誘導などが色々あって、よく把握は出来ていません。頭がこんがらがりますが、何か分かりませんが、この劇団を観劇するときは、まあ、そんな感じで観てりゃあいいかみたいな感覚になります。
それよりも、面白キャラたちの言動に統率が取られた独特のパワフルな、舞台への惹きつけに心をゆだねるみたいな感じでしょうか。
数々の想いが交錯する中、時間が止まったかのような居酒屋、楽園で各々の人の生き様が浮き上がります。
そして、謎や疑いは、最終的には全て解消されて、電車も再び動き始めます。
同じように、居酒屋の面々たちは、明日も生きるために、もう戻ることは出来ない今日をあの日とするために、再び、生きる活力を得るために酒を煽ります。
このあたりは、上記したように途中でこんがらがっているので、よく分からないのですが、みんな死んでるのかなとか、死んで時を止めた人と明日への時間がやって来る生きる人が混在した空間になっているのかと感じさせられるところがあります。
何か、撤去された放置自転車を取りに行列を作る人たちなんか、死者たちの無念の想いみたいなものが感じられます。かつての事故というのも、現実にあったあの日の事件のイメージなのかな。
この居酒屋、楽園では、こんな日々がずっと繰り返され続けているのかもしれません。明日は来ず、いつまで経っても、あの日となった今日が続く人たち。
そこに、たまたまたどり着いてしまった、若い男。彼に明日、生きるということの素晴らしさや、明日になったら取り返せないあの日となる今日を大事にして欲しいということを伝え、この一時の楽園から、現実の世界へと送り出し続けているみたいな。
そこに、今、苦しんでいるあなたも、必ず、あなたを想ってくれている人がいるはず。それは、苦しみの中にいるのではなく、生きているということの楽園に身があるんだよと優しく伝えているように感じます。

|

« ようこそアトリエ【こみかさ】150607 | トップページ | 七人のふたり【クロムモリブデン】150608 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 楽園【南河内万歳一座】150608:

« ようこそアトリエ【こみかさ】150607 | トップページ | 七人のふたり【クロムモリブデン】150608 »