キスインヘル【悪い芝居】150617
2015年06月17日 HEP HALL (140分)
2年ぶり。
かなり歪んだ恋愛像を描いたラブストーリー。
・・・を、ベースにその愛を叫ぼうとするライブみたいな公演だろう。
歪な設定なので、その姿に変態性や異常性を感じてしまうが、よくよく深く見詰めてみると、狂おしいぐらいに好きという純粋な想いから成り立つ純愛がしっかりと隠されている。
そんな愛の素敵さを、最後に爆発させて、公演は締められる。
私は突然の爆発に唖然としてしまって、申し訳ないことに立つタイミングを失って呆然と観ていましたが、刺激を受ける作品だと思います。
立たなくても、その愛を感じて勃てばいいんじゃないですかね。
そんな作品だったように思います。
<以下、あらすじがネタバレします。大阪公演が火曜日まで、その後、東京でも公演が続き、公演期間が長いので、白字にはしていませんのでご注意願います>
デザイナー会社を名乗る詐欺会社。
要は色仕掛けで、ターゲットとなる人をたぶらかして、何かを買わして儲ける。
裏社会に通じているのか、影を潜める男がトップみたいだ。愛人なのか、雑用係なのか、怪しげな女もいる。
容姿が綺麗なワタ、イケメンでモテるサダメ、ノリで勝負するが決め手に欠けるアタルが働く。みんな、これまでの人生で闇を抱えているみたい。
トラブルも多いのか、アタルに騙されたという女が、とんかつ屋を営む兄と一緒に殴り込んでくる。この兄、妹にDVを平気でし、妹もそれを受け入れる異常な関係性があるみたい。
トップはこれを冷静に巧く対処し、さらにはチラシをデザインする仕事まで請け負う巧妙さをみせる。
ワタの今のターゲットは、アツデという男。先日はラブホで、指輪をプレゼントされる。サイズが合わなかったので交換してくるという男に、初めてのプレゼントだからと女は受け取るという巧妙さ。買い直しさせれば、2個も指輪が手に入る。
この日は生理だからと、ワタは体を許さない。いつもの手段だろう。それでも、どうやら貯金だけの寂しい男にとっては、女が素敵な姿に映るのだろう。キスをして、一緒に時を過ごしているだけで、地獄の中の安らぎを得た感を抱いている。
ワタはもう一人、ターゲットを持つ。
デートの待ち合わせ場所の出会い喫茶で、その男と出会う。
ギターを片手にするお付きの男との同性愛をはじめ、世間にはなかなか認められないかなりの個性を持つ男。アラビキと名乗る。
普段はとんかつ屋でバイトをしているみたいだが、キャベツ切りに飽きてとんかつを揚げたいとごねるが店主に拒絶される。その時、たまたまいたセレブな女に見初められてスポンサーになってもらうことに。
そのお金で、アラビキは自らの本体の化身である最高の精子にふさわしい、最高の卵子を求める。
ワタは仕事なので、アラビキの強烈な異常性を全て肯定する発言を繰り返す。承認欲をついたのか、アラビキはワタにその卵子提供を求める。断る理由は無い。金がスポンサーのセレブ女によっていくらでも振り込まれるのだから。
ワタは、アツデと再び、とんかつ屋で会う。
目的は、もちろん、もう一つの指輪の回収。
ごはんの中に入っているというサプライズ。ベタベタな上に、またサイズが合わない。今回は取り返させる。要らないサプライズで価値が落ちたから。
これに、アツデは前は受け取ってくれたと少し、愛情を疑う。
そんな中、アラビキのお付きの男が現れる。卵子採取の準備が整ったらしい。
ワタはアツデに全てを告白し、手切れ金を渡して、その場を去る。
サダメのターゲットは、ある女優。
一緒にCM撮影をしている人気俳優に仲介をしてもらい、言葉巧みに誘い出し、接触することに成功。
しかし、サダメはその女優に惚れる。
3人でデートをして、オシッコを我慢できなくなった、その女優のオシッコを飲むくらいに。人気俳優は泥酔してしまい、ちょっと女優と抱き合った瞬間をスクープされてしまう。
サダメは、本気で女優と付き合おうと考え始め、会社を辞めようとする。しかし、裏の社会。辞めることは、殺されるということに等しいことを改めて、トップに脅される。
サダメと女優はラブホに向かう。
そこで女優は、サダメにあるロケの話をする。お宅訪問みたいな番組で、鑑定士が家にやって来た。そこで、ある絵を鑑定され、偽物だと言われた。その絵は、サダメから買わされたもの。
騙すなら騙し続けて欲しかったという、女は悔しさを露わにしながら、二人の関係は終局を迎える。
ワタは卵子を抽出。アラビキの精子。顕微鏡で観察すると、そこには拡がる宇宙。自分はその宇宙を創る星たちの本体。
そんな中、サダメは、アラビキからワタを救い出すべく、乗り込んできて、アラビキを刺す。そして、自分は愛される資格が無い汚い女だというワタに、騙されていても構わない、何度でも出会って、一緒になりたいと訴えかけ・・・
サダメは、女優の出待ち。全てを告白する。会社を辞めようとしたけど、死にたくないから、怖いから辞められないことも。そして、それでも、自分の抑えきれない女優への想いを告げる。何度でも出待ちをする。そして、また、出会いからやり直して始めていきたいと・・・
ワタとアツデ、サダメと女優の騙し騙されの歪んだ恋愛を、シーン切り替えしながら、話を展開して、最後は二人のそれでも終わらしたくない、抑えきれない愛の想いを爆発させて締める。実際に、最後はライブのようになり、しっちゃかめっちゃかの状況に。
理屈じゃない、感じるしかない、人を愛する狂おしい想いだろうか。
好きになってしまうのに理由はきっと無いのだろう。どうして好きだとか、言葉じゃなく、もうワーワー言うしか無いくらいに、その想いが湧き上がる。そんな愛なのだろう。そして、騙されたから、何をされたから嫌いとかいう気持ちを覆いつくして、消し去ってしまうくらいに、人の好きは力がある姿を魅せられる。
数億個の自分の本体の想いをのせた精子は、拡がる宇宙の中、たった一つのあなたの卵子の下へと突き進む。
広い世界の、流れる長い時の中、また出会える瞬間を信じて、いつまでも、あなたへの想いを抱いて待ち続ける。
そんなアツデとサダメの愛を信じてみたくなるような話。
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