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2015年6月 9日 (火)

七人のふたり【クロムモリブデン】150608

2015年06月08日 HEP HALL (100分)

ネット依存、安易な殺人、自殺、過剰化する自己顕示欲、・・・
今の社会状況を冷たく、淡々と覗き込んだような話。
スピード感ある話の展開に身を任せていたら、結局とんでもないラストに導かれる。
そのこと自体が、今の社会の行き着く先の狂気ですと伝えているような感が、非常に気味悪さや恐ろしさを残す。

日々、退屈な高校生。それは、大人である先生も同じ。みんな、退屈に嫌気がさして、何かしようと考えている。
演劇部を作ろう。高校生は、気の弱そうな先生を捕まえて顧問にする。
部室も確保。でも、そこは過去に監禁事件があったところ。則平という生徒が殺され、同じ部員のキミヒコが疑われ自殺。真相は則平のみが知るが、精神病院に入院中。本当に病気なのか。それとも、彼も退屈なのか。
部として認めてもらうためには、7人の部員が必要。勧誘活動をする中、動画の再生回数のトップを目指すことに。外部から、ネットで探した元アイドルの演出家も呼んで本格的に活動することに。
みんなの気を惹くには、やはり犯罪映像。それも、殺人の動画を投稿しようとする。

向かった先は組事務所。一番、殺人に近いという安易な発想。
頭と舎弟がいる。彼らも退屈している。
借金を抱える人がやって来て、返済遅れの弁明をしている。そいつに人殺しをさせることに。妻を殺させるか。さすがに無理なので自殺希望者を探す。
やって来たのは悩み事相談所。ふくよかな女性が経営している。人を殺して、自殺をしたがっている人が相談に来ている。
ちょうどいい。これでキャストが揃う。
撮影開始。警察に見つかるがごまかす。拳銃は手に入らなかったので、日本刀。見事に斬られる映像をおさめる。
死体は放置して逃亡。
外人かぶれの売春婦が、死体を病院に運ぶ。まだ、意識はあるみたい。
ミュージシャンになりたかった男と、ミュージカルスターになりたかった女の医師がオペ担当。オペ中に、歌い踊る姿。入院中の則平が動画撮影。

警察。ここでも、警官たちは退屈している。もう懲戒免職でいい。ピストルでふざけて面白動画を撮影しようと考えている。
売春婦がカバンを拾って持って来る。中には女性の着替えと台本。拾得物を勝手にいじる、第一発見者を犯人に仕立て上げるというありがちな悪行を撮影。きっと、大衆はそんな警察の不祥事を望んでいる。
売春婦は牢屋の中へ。キミヒコの母が捕まっている。則平のことで、その母親の首を締めるという暴行を犯したらしい。何やらよく分からないハンガーラックを改造した大がかりの武器で復讐の機会を伺う。二人ともスマホ依存らしく、獄中生活で禁断症状が出始めている。
ホテルに女性がやって来る。荷物をひったくられ、時期外れの大雪で助けを求めにきたらしい。高校に演出を依頼され、大切な台本も入っていたのに。
支配人は、一晩泊める。その姿を監禁として動画撮影。翌日からは、さらに過激度を増す。女性が演出家なので、一緒になってノッテしまい、しっかりしたコンセプトのある映像になっていく。

悩み事相談所。人を斬ったという男が罪悪感から自殺をしたいと相談。それなら、自殺願望者を買い取ってくれるところがあるからと、女性は男を組事務所に連れて行く。
組事務所では、男たちが投稿した殺人動画の視聴回数が、オペ室で医師がふざける動画、警官がピストルで悪ふざけする動画、ホテルで監禁される女性の動画に負けて悩んでいる。
悩み事相談所が男を連れてやって来る。お前か。運命の再会。
今度は、ストーリー性を持たせよう。ホテルで監禁されている女性はよく見ると演出家。こちらも、きちんとした演劇性を持たせて勝負。
今回は切腹。介錯人は舎弟。でも、勢い余って、切腹前に斬ってしまう。どこかに捨てる。

また、釈放された売春婦が病院に運ぶ。
病院では、注目を浴びる禁忌的なこととして、クローンを製造。
牢屋では、キミヒコの母が脱獄。病院へ向かう。
則平と母は戦い合う。則平、倒れる。再び、意識を取り戻すが、あの時のことは思い出せないと言う。
スマホにインプットした過去のデータを組み込む則平のクローンを製造すべく、緊急オペ開始・・・

せっかく繋がっていく話にワクワクしていたのですが、クローンが出てくるあたりから、付いていけず失速。
何か退屈な日々。自分の存在感を見せようと動画を投稿して注目を浴びようとする。そのネタは反する行動で、頑張って賞賛されることと悪いことをして非難されることのどちらでも、注目されさえすればいいという安易さ。それならば、悪いことの方が簡単に出来るからそちらに心が向くのか。
情報源はスマホ。何の苦労することなく、真偽はともかく、情報は安易に入り込んでくる。
安易に人を殺してしまい、安易に自殺を願う。それは罪への償いの意識なのか、ただ単に人としての本能なのか、悩み苦しむ自分を救いたい欲望なのか。
退屈というストレスなのか、普通は制御がかかる行動を、本能剥き出しのように起こしてしまう。安易に喜びの感情を得るために。
喜びはすぐに消える。薬物中毒のように、どんどん強い刺激を求めるようになる。
でも、その表面に露出する喜びの内側には、憎しみや怒りが渦巻いている。
そんな憎しみや怒りは消えることなく、クローンのように増幅していく。
浮き上がる気味悪さは、現実社会と実はそれほどかけ離れたものではなく、漠然とした不安を抱えながらも、流れるように展開する話に身を任せていたら、いつの間にかばっさりと終わる。
知らないうちに社会は狂ってしまう。動き始めたその狂気はもはや止まらないといった感覚がより怖ろしさを残す。

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