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2015年6月28日 (日)

ヘルタースケルター -リブ・アンド・レット・ダイ-【TEAM☆RETRIEVERS】150628

2015年06月28日 オーバルシアター (90分)

いまひとつ解釈できないところが残ってもどかしさがありますが、役者さんの熱演光るいい作品だったように思います。
他人と自分を比較しても仕方が無い。他人は自分を貶めるために存在しているのでは無い。あなたが、生きるために、様々な考えを与えてくれて、自分の生きる道を拡げてくれるためにいる。だから、自分を見詰めると同時に、他人にも目を向けて、その関わりの中で、自分の生を豊かにすればいい。
不器用で巧く生きられなくても、それは死に通じるものではない。あなたが生きるということで、他人も生かされている。
与えられた生をただひたすら全うすることが、人としての大切な使命です。
そんなことが感じられるような話でした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

気付くと、何も無い部屋に閉じ込められている4人。
こんな緊急事態なのに、やたら冗談交じりで喋り、場を盛り上げようとするフクシマという男。
その勢いに飲み込まれ、いつの間にやら仲間みたいな感じになる気が弱く、流されやすそうな男、キタハラ。
この場を冷静に捉え、うるさく騒ぐ二人を制止する男、オオクマ。
訳の分からない場所に閉じ込められ、見知らぬ人に囲まれ、脱出できるかも分からないというこの不安な状況に怯え、他の人を拒絶するフタバという女性。
4人がこれからどうするかを、何とかコミュニケーションを取りながら話す。誰かが助けに来ないだろうか。友達、家族。どうやら、自分たちは、そんな人たちとの関わりを失っていたことに気付く。
そんな中、神らしき者が現れる。

神と言っても、ずいぶんと手厳しい。お付きの二人の女性も、表情は厳しく、冷たい。
話し合って、どうするかを決めろとしか言わない。戻るのか、このまま消えるのか。
みんな気付いているはず。もう一度、初めからやり直せと。
再び4人となる。
最初に気付いた時間に戻り、再びやり直す。
フクシマは気付いていた。自分がここに来る瞬間を。工事現場で働いていた彼は、機材が自分の上に落ちてきて・・・
つまりは死んだということ。でも、ここは生死の狭間らしく、もしかしたら戻れる可能性があるみたいだ。
フタバもおぼろげながら、思い出す。自分がここに来た時のことを
オオクマとキタハラは、出来ることなら戻りたいと考えている。死んだ時のこともあまり覚えていない。オオクマは離婚したとはいえ、家のローンが残っているし、養育費だって払わないといけない。キタハラだって、まだやりたいことを残している。
フクシマは、毎日、工事現場で過酷な労働をして、大した金も稼げず、現世に幻滅している。来世では、金持ちに生まれて今よりもいい生活を送りたい。ちょうど良かったぐらいの考え。
フタバは、家は裕福みたいだが、価値観の異なる両親に、優秀な妹と、家族の中で疎外感を抱いている。何事も上手くいかず、空回りの人生。生まれ変わってやり直せるなら、その方がいいような気がしている。自分みたいな者が戻っても仕方ないという気持ちが頭をかすめる。
2対2。生まれ変わっても人間に生まれ変わるとは限らないとか、オオクマとキタハラは色々と説得を試みるが、うまくはいかない。
そんなことをしているうちに、再び神が現れる。

もう少しだけ時間をという願いも聞き入れてはもらえない。
それどころか、もう、各々がどうなるかは決まっているらしい。
それでは、話し合う意味も無い。それでも、やり直し、意見をまとめないといけないようだ。
時間がまた巻き戻る。
螺旋の時間を彷徨う地獄かのように。
フタバが告白する。自分は飛び降りて死のうとした。結局、怖くなって死にきれなかったところで記憶が途絶えていると。
みんなと異なり、自分の意志でここに来てしまった。だから、みんなを巻き込んで、こんな状態になっているのかもしれないと。
そんな言葉に、一番、現世を見限っていたフクシマが反論する。
空回りや、劣等感を抱くことなど、誰もがある。それでも、今の生きている時間をしっかりと希望を持って全うすることが大事なのだと。
自分にも言い聞かせることになったのか、来世と言いながらも、本当はしっかりと現世を向き合っている人だったのか、彼の考えも、やり直していいかなというものに変わる。
4人の考えがまとまった。
これを神に申告して、再び、生きようと。

しかし、神がいつまで経っても現れない。
ただ、4人の考えは、変わってはいないようだ。
そして、現世に戻ったら、ここでの記憶が消えてしまうことに、悲しみや不安を抱くようになる。
その時、神が現れる。
各々の傍に神が寄り添い、この場から連れ出す。
ただ、神は3人。フクシマだけは・・・

フタバとフクシマは、現世での自分を否定しているが、オオクマとキタハラはそうでも無い様子。
共通項が見つからず、そこに生死への関わりをどう捉えればいいのかが、よく分からない。
強いて言えば、4人は、人と関わりを持って生きていることを忘れてしまっているようなところがあるだろうか。
閉じこもり、一匹狼を気取り、周囲の人は自分を貶める比較対象でしかないといったような。
様々な人に助けられて、生かされている。そして、自分もまた、きっと人を生かしている。
リブ アンド レット リブといった考えでしょう。
でも、この世の中では、作品名のとおり、リブ アンド レット ダイ、訳すと死ぬのは奴らだという考えの方がうなずけるところがあるようには思います。
でも、死ぬのは奴らでは無く、自分だというのがこの作品の4人の置かれた状況。
不器用で巧く生きることが出来ない、世の中からも疎外されてしまっている人たちだから、死んだ。
そこで、同じような人たちと語り合うことで、辛い思いを抱えているのは自分だけでないことを知る。そして、そんな人たちは、決して死ぬことは無く、生きていてもいいことを理解し合う。
死ぬのは奴らだという概念の世の中で、その奴らが、本当に死んで、決してそうでは無いことを知り、自分たちは生きる、そして、人も生かすという結論にたどり着いたことが、この作品に込められた願いであるのではないかと考えます。

最後のオチは、4人に神様3人だから、1人だけ、逆になるであろうと想定はしていたものの、どう捉えればいいのかが分からないなあ。ブラックジョーク的な感覚なのか、それとも、現世の生をしっかり見詰めた上で、来世を考えるというポジティブな考えなので、その死に、新たな生を与えることが許されたのか。

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