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2015年5月30日 (土)

くらい【もうまく企画チャリティイベント】150529

2015年05月29日 パシフィック・シアター (30分、30分、30分、15分)

網膜色素変性症を患う大山果さんが企画するチャリティイベント。
暗闇が、普通の人以上に敵となってしまうこの病気のことを広く知らせること、そこから拡がってしまう心の暗闇にどう光を射し込むかを考えるようなことを通じて、懸命に真摯に生きる輝く人の姿を浮き上がらせているようでした。
覚悟をもって、前へと進み、そこに光り輝くものがあることを信じて疑わない凛とした姿はとても素敵だったように思います。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

・地下アイドルライブ

ラジオ番組形式で公演は進む。
DJは、網膜色素変性症の、年齢不詳地下アイドル、みのりろりんさん。
暗闇で全く見えなくなる、いわゆる夜盲の症状が顕著にあらわれる。でも、同時に光を感じやす過ぎる羞明の症状もあるらしい。そうなると、睡眠にも支障が生じる。目を閉じて眠っていても、脳が休み切れていないのだろうか。睡眠時間が人よりも多く必要になるのだとか。そんな問題を解決してくれるのが、アイマスク。100均物でいいみたい。安っぽいガチャピンみたいな目が描かれた面白アイマスクを付けて笑いをとる。
この網膜色素変性症がどんな病気なのかを日常レベル視点で簡単に説明している。医学、学術レベルでの説明ならば、ネットで調べたらすぐに出てくる難病の特定疾患だ。視界狭窄、視力低下、最悪の失明までの可能性を示唆した進行性の明確な治療法が確立していない病気。これについては言及していない。恐らくは名前さえ覚えて帰って、少しでも病気のことを知ってくれれば、後は個々に任せるというスタンスなのだろう。それよりも、今のこの場で知って欲しいことは、暗闇が普通の人より大きな敵となり得るような者が、その暗闇に怯えるのではなく、立ち向かって、自分の輝きで明るくしてやるぐらいの覚悟を見せ、それが本当に今回の舞台となる小さな劇場の暗闇にみんなで光を灯すことが出来ることを証明することにあるようだ。
ライブの時間。
あらいぐまラスカルのアニメソング。地下アイドルライブで大事なのは、客に求められるヲタ芸。
この曲はその基礎となるppph、ロマンスという技を習得するのに優れているらしい。44歳のおじさん、基礎技を習得。これでいつでも地下アイドルライブに行ける。
初音ミク、助けてドラえもん。意外にいい曲で、ちょっと切なくホロリとくる。電脳アイドルにはまって引きこもりやら社会不適合やらのオタクの原因みたいなイメージだが、ちゃんと聞いてみるものだ。
オリジナルソング。作詞作曲は、私も大好きな劇団、Micro To Macroの石井テル子さん。力強さに溢れている元気いっぱいの歌。夢やら希望やら。石井さんの創られる作品は芝居だろうと歌だろうと、きっと前へ進む人の応援が込められている。それをガッツリと受け止めた凛とした姿が印象的。
正直、最初は、ちょっと痛いなこの子、舞台監督さんに誘われたので足を運んだが失敗したかもなんて思ったりしたのだが、けっこう楽しんでしまっている自分がいる。それもそのはず。私は、真摯に頑張る人の輝く姿を観たくて、劇場に足を運んでいるところもあるので、その点は完全にマッチしているわけだ。

・日替わりゲストコーナー

続いてゲスト登場。
シンガーソングライター、谷口春菜さん。久野まさみさんのピアノに合わせて。
DJ、みのりろりんさんが病気なので、病室から色々なことをお届けするといったブラック設定になっている。
見た目がスラッとして、たたずまいがとても綺麗な方。
ただ、どうも話を聞いていると、ぬいぐるみとお喋りをしたりするちょっと痛めの不思議ちゃんみたいだ。
みのりろりんさんとキャラが被るなあなんて思っていたが、これが歌い始めるとめちゃくちゃに綺麗で力強い歌声。いわゆる聞き惚れる状態になる。
最初の曲は忘れた。オリジナルソングの正直な嘘、スマイルアゲイン。なだそうそうのカバー。最後は未来地図。
基本、頑張る人、戦う人への優しいメッセージか。先ほどの助けてドラえもんとも意味合いは似ており、今、目の前にいない人にも、ずっと人は想われ、見守り続けられているという、安堵と勇気を与える。
人に想われるということは、同時に必ず人を想ってもいるわけで、そこに絆は生まれる。想い合いの精神は、人に前へ進む勇気を与え、立ち止まりや彷徨いから抜け出す機会を得させる。そんなことを歌詞や、その心を込めた歌声から感じるような時間。

・一人芝居「ミズトラノオ」

50歳、神戸で葬儀の花屋を営む征夫。
彼は、この歳なのに、部屋を明るくしないと眠れない。暗闇の中だと、あのことを思い出してしまうから。阪神大震災のトラウマだ。
妻、明実、28歳。網膜色素変性症を患う。
結婚の挨拶に神戸の西の方の妻の実家に行った。
緊張して、自分の名前を忘れるほどの失態。巧く、両親との間を取り持ってくれたのは妻だった。
散歩をして、見つけたミズトラノオが群生する池。夕日に照らされたその池は美しかった。その池で溺れていた黒猫。
たんばと名付けて、二人で育てる。子供がいなかった二人にとっては子供のような存在だった。
そんなたんばも阪神大震災の時に行方不明になる。
あれから、もう二十数年が経つ。その前の結婚生活も計算すれば、もう銀婚式だ。
その間、ずっと傍にいてくれた妻。
未だに暗闇を恐れる自分。妻は、光があってもそこは暗闇なのに。自分が彼女の光になるなんて思って結婚したけど、そんなうまい具合にはいかない。
そんな弱い自分のことを彼女は分かってくれていたのだろうか。ずっとずっと心配してくれていたみたいだ。
そう、あの時、暗闇の中、逃げることも出来ず、きっと苦しかっただろう、熱かっただろう中で、命が尽きても、私のこれからを考えてくれた妻。
その願いは、可愛がっていたたんばに託されたのか。
私のあの時からの年月は、妻と共に、そして、その意志を継いだたんばと共にあった。
震災の日。明実を確かに失ったその日からの、蘇った明実との時間。それは嘘の時間だ。でも、その嘘は、明実が自分を想ってくれる気持ち、たんばが二人の下で幸せに過ごしたことから生まれた感謝や良心に基づく。
あの日、妻との結婚生活の始まりの日に見た美しいミズトラノオの群生する池に夕日の光が照らされた風景。良心からの嘘。その花言葉を持つミズトラノオの美しい景色を再び見ようと、往夫は、抑制された暗闇から、外へと一歩を踏み出す・・・

震災で大切な妻を失う。網膜色素変性症を患うその妻の暗闇の中で、自分は光になると決意して一緒になったのに。
その日から、自分に暗闇が訪れる。その暗闇は、明かりで照らしても消えることなく、自分を捕える。自分の暗闇の中で光になってくれたのは、傍にずっといてくれた妻だった。自分が見ていたもの。それは確かに妻だった。でも、その姿の真実に男は気付く。
自分は妻のために生きようと決意して一緒になった。それは、片側だけの決意では無い。妻もまた、自分のために生きようと決意してくれていた。その想いは、二人の始まりの日に見た美しい景色の中で出会った一匹の猫に託される。
自分の心の中に拡がってしまった暗闇に光を射し込み続けていたのは、妻の自分への愛の想い、そんな想い合っていた二人に愛された猫の感謝の意志だったのか。
長い時間がかかったが、自分を捕える暗闇の中で、本当の人の想いを感じ、その本当の姿を見ることができるようになった男は、二人の思い出の景色の中にあった優しく美しい光を感じようとしたみたいだ。
暗闇の怖さを知るから、そこに光を与えてあげたいと思う。相手の痛みを知るから、優しくできるみたいな感じだろうか。
男の妻への想いは、妻の中に受け止められ、妻の男への優しい想いへと繋がる。たとえ、この世を去ったり、別れることで共に過ごすことが出来なくなっても、その想いは二人が共に過ごした時間の中で得た共通のものに宿される。
猫という姿だけでなく、ミズトラノオの池の景色とかでもいいのかもしれない。それが放つ光を感じ取り、そこから本当に見えてくるものを認識できた時、人の暗闇は消えるのだろう。

・全員参加型くらやみイベント

そこは暗闇の世界。
ある星の話。
人の不満や嫉妬みたいな負の感情から生まれてしまった敵対心。
それは、燃える小さな太陽となってぶつかり合う。
緑の大地は、何もない乾いた砂漠に。やがて、世界は何も無くなる。
そんな悲しい暗闇の世界の住人が私たち。
でも、私たちは、ほのかな光を各々持っている。
この光は、当日チラシに貼られた蓄光シールで表現される。私たちは、それをおでこに貼り付け、自分たちが暗闇の世界でもかすかに光を放つ存在となる。
自分たち自身はその光には気付けない。
でも、暗闇の中で、そのかすかな光は、それを見る者の道標となる。
暗闇の星に旅人がやって来る。その旅人は言う。
そのかすかな光をたよって、隣の人と手を繋ぎなさい。不安だった心が癒されるように涙が溢れてくるはず。その温かさを持つ涙は暗闇の世界に光を射し込ませるはず。
それをそのまま暗闇となった舞台、客席で実現する。

最終的には客席を客が取り囲んで、手を繋ぎ合った状態でその光を得るような形になります。明転した時に、みんなが輪になって手を繋いでいるみたいな。
まあ、私のお隣さんは足がちょっと悪い方みたいで、席から動かれなかったので、私もその場でじっとしており、その手を繋ぐ輪に入りきれずに最後を迎えたのですが。
気持ちは、暗闇に光射し込むことが叶った世界の住人です。

網膜色素変性症ねえ。
再生医療の研究をずっとしてきているので、この病名は学会とかで聞いていました。
網膜再生で有名なある先生の研究発表では必ず出てきます。
視細胞はじめ網膜組織を形成する細胞の培養は難しいですからねえ。私が経験している皮膚、軟骨、角膜、リンパ球などとは比較できないぐらいに大変でしょう。
でも、この研究もかなり進んでいると聞きます。
あとは、それを治療現場にどう下ろしてくるのかが大事なんだと思います。
日本はすぐに規制をしたりして、その機会を狭めてしまいますから。もちろん、安全性確保は最重要視されるべきですが、それに囚われ過ぎていては何もできません。
医師法の範疇で、もっと最先端でやっている研究成果を臨床現場におろせればいいのでしょうが、これもまた、今、新しい法律で規制する方向にありますし。
私は、なかなか医療現場に普及しない再生医療にイラダチを感じ、今はクリニックで、この医師法の下、医療に携わっていますので、厳しい規制が敷かれたら、路頭に迷うことになるかもしれないなんて不安を抱えています。
このあたりの、もっと医療現場に最先端技術をおろせということは、患者となり得る私たちが声にしないといけないように感じています。
そもそも、私は最先端の研究をしているという言葉が嫌いで。最先端だったら、私たち一般民は治療を受けられないですもの。風邪ひいたら、風邪薬を飲む。そこまでとは言いませんが、それぐらいに再生医療の治療を簡単に受けられるようにすることこそが、本当の最先端研究の最後の姿であるべきだと思うのです。
それを医療に関わる研究者は常に認識するべきだと思いますし、私たち自身も、そういう研究スタイルで頑張ってもらえるように、声にしないといけないように考えます。
この公演の一部売上げはもうまく基金に寄付されるみたいです。
私も微力ながら、チャリティグッズの購入という形で募金しました。
願わくば、この病気の治療法開発の研究資金となるにしても、単に研究援助をするのではなく、きちんと医療現場に普及できるような考えを持ち、それを実現するべく行動しようとしている人、組織への手助けとなればいいなと思います。

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演劇」カテゴリの記事

コメント

SAISEIさん
ご来場くださり、ありがとうございます。
曲も聴いて貰えて嬉しいです。

大山さんと話をして彼女の考えや人柄とか
色んなこと、いっぱい想ってつくりました。

芝居も企画当初二人芝居だったのが
急きょ一人芝居になって、何度も台本を直しながら、
ほんとうに必死になっていましてね。
もう全力で応援したくなりました。

演劇が、こうした難病を知ってもらう機会になったり、
色んな形で、困難に立ち向かう人たちの、ほんの微力だけど、一助になっていくこともできるんだと実感しました

本当にありがとうございました。


投稿: teru | 2015年6月 5日 (金) 23時56分

ご来場ありがとうございました。
大山です。
細かいところまで書いていただき大変恐縮です。
まだまだ先、道程は長いです。
でも、道があるなら歩いていける。
そう思いながら頑張っていきます。

投稿: daisenminori | 2015年6月 6日 (土) 02時18分

>teruさん

コメントありがとうございます。
いやあ、この公演でteruさんのお名前を拝見するとは思いませんでした。
元気一杯、素敵な姿で歌われる大山さんはとても魅力的でした。
芝居は、本当は舞台監督さんの久しぶりの役者さん姿を楽しみにしていたのですが、あれは一人芝居で良かったのかもしれません。
暗闇の怖さや不安を知る大山さんだからこそ、相手が暗闇に陥った時に本当に想える優しさがにじみ出ているようで。
私も、ご活躍を観に伺うことで、この難病を含め、日本の医療が何かいい方向へと変わっていく一助になれればと思っています。

投稿: SAISEI | 2015年6月 7日 (日) 09時32分

>daisenminoriさん

お疲れ様でした。
コメントありがとうございます。

歩いている中で、きっと今は無理だったことが、現実になる明日がくるのだと思います。
信念もってその道を進まれようとされる大山さんのご活躍を今後も観に伺えればと思っています。
SSOとか、日程が合えばいいんですが・・・

今後も益々ご活躍ください。

投稿: SAISEI | 2015年6月 7日 (日) 09時35分

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