五月雨墓場(さみだれはかば)【しろみそ企画】150531
2015年05月31日 芸術創造館 (130分)
なんかわからんけどめっさ良かったという言葉をたくさん欲しいと、当日チラシに作・演の方が書かれています。
まあ、この感想でもいいですが、正直、めっさは控えさせてもらおうかな。
それと、なんかわからんではなくて、どうもわかりにくいかな。
良かったのは良かったと思います。墓という人の想いが埋め込まれる場所で、その場所や、供えられたもの一つ一つに、人生の中でその人が経験してきた大切なものが込められていることを感じさせる温かみが。
墓荒らしじゃないですが、そんな想いを、掘り起こして、人生最期の時を迎えられれば、幸せなんじゃないでしょうか。
どうもわかりにくかったけどまあ良かったという感想にさせていただきます。
少し、話を複雑化させ過ぎているように思います。
ミスリーディングを引き起こすように設定されたキャラが多過ぎて、その絡みで、あくまで筋は分かりやすく展開していきますが、話としてごちゃごちゃな印象が残ります。
絶対的にミスリーディングをさせる人や、重大な謎をもう少し絞った方が分かりはいいように思いますが。
ちょっと唐突な設定もありますしね。
謎や伏線が多過ぎて、だんだん、それが明らかになったり回収される時の感動が薄れ、悪いく言えば、何かもう考えて観るのめんどくさくなってきたみたいな感じになってしまったので。
まあ、いつものハートウォーミングに、謎説き要素が覆いかぶさってしまい、私にとっては一番のこの劇団の良さが薄れてしまったように思います。
舞台は岡の上霊園。つまりは墓場。その高台からは、海が見える綺麗なところみたいだ。
そこの営業として働く和也。口うるさい女上司に厳しく指導を受けながら、頑張っている。
清掃員の女性は、掃除をしているのかしていないのか、よく分からないが、霊園をウロチョロしている。
警備員は二人。一人はベテランみたいでキビキビとしっかりしてそう。その下で働く新米は、お化けが怖いとか情けないことを言っている。
墓場に警備員といったところもあるが、けっこう墓荒らしが頻発するらしい。
この霊園にも、今、怪しい奴が出没している。
浮浪者みたいで、勝手に地面を掘って、住み着いているみたいだ。
早く捕まえてしまいたいところだが、なかなかすばしっこい。しかも、地下に幾つか抜け道まで作ったみたいで、神出鬼没で難儀している。
霊園には、もちろん墓参りに来る人がいる。
毎日、墓参りに来る女性。どれほど、大切な人が眠っているのか。
そして、墓を購入しに来る人も。
若い女性、ひなたは、自分の墓を買いにやって来る。予算は1億円までと言っているが、それほど金持ちには見えない。話を聞けば、陶芸をしているらしい。最初は、一番広く高い場所を買おうとしていたが、やはり芸術家肌なのか、高台の海が見える綺麗な場所を選ばれる。たまにやって来ては、そこから見える海の風景をスケッチしている。
もう一人は、何かいかにも金ありますといった感じの男。予想どおり、一番高い場所を購入。そこに、父の大切な物をおさめるとかで、警備面について厳しく言われる。警備員がいるから大丈夫とは言ったものの、浮浪者の姿を見つけて、疑心暗鬼になっている。
和也は、ある日、おかしなグループに出くわしてしまう。
毎日、墓参りに来ている女性と一緒にいる女性と男。
どうやら、墓荒らしみたいだ。墓参りは事前調査だったのか。
和也は顔を見てしまったので、連れ去られる。そして、口止めと仲間として協力させられることに。
色々な事情があって仕方なかった。和也の父は幼き頃に蒸発してしまった。母は、亀の甲に絵を描くやらとかいういかがわしい商売に手を出している。儲かるわけもなく、多額の借金を。そして、その借金は保証人である自分が払うことに。これが知れたらクビになってしまう。墓荒らしたちは、その情報を掴んでおり、弱みを握られていた。
そして、実はそれよりも大事なことが。
墓荒らしのグループには、もう一人、若い女性がおり、その凛庫と名乗る子に惚れてしまったのだ。
墓荒らしがあったことを受けて、霊園は探偵を雇う。
墓荒らしは和也の協力もあって、捕まらずに済んでいるが、仕事はやりにくくなった。
その代わり、浮浪者が墓荒らしの疑いで捕まってしまう。取り押さえられ、連行される時に男のポケットから落ちた写真。そこには、幼き頃の和也が写っていた。もしかしたら、あの人は自分の父なのか。
その後、一応、疑いは晴れたみたいだが、霊園からは立ち退こうとしない。まあすることがあるのだとか。
墓を購入した男は、霊園の管理がずさんだと、自分が墓の管理をすると、泊まり込みで墓の前に居座る。
警備員、探偵、この男と、しっかり見張っているはずなのだが、霊園では、墓荒らしが頻発する。和也が協力する墓荒らしたちは行動を控えていたので、犯人ではない。誰か隙をついて犯行に及んでいる者がいるみたいだ。
墓荒らしたちは、何か焦っている。
再び、墓を荒らそうとした時、ついに見つかってしまう。その場に居合わせた和也は、墓荒らしのグループをかばい、自分が捕まり、こってりと絞られる。
完全に怪しまれてはいるのだが、解放された和也は、墓荒らしのグループの下に向かい、凛庫を連れ出す。こんな人たちと一緒にいてはダメだと。
でも、凛庫は、あの人たちはいい人で、自分のために色々としてくれるのだとしか言わない。
彼女のまっすぐな視線に、和也は仕方なく、またグループの下に戻ることに。その帰り道、凛庫が海をみたいと言うので連れて行く。ちょっとしたデートみたいで気分良くしていると、凛庫が急に倒れる。
あまりに急なことで右往左往していると、全てを知っていたかのように、浮浪者が現れ、凛庫を担いで、グループの下に戻る。
墓荒らしたちは、自分たちが墓を荒らしている理由を語る。
全ては凛庫のため。急がないと、凛庫が消えてしまう。
凛庫は、一通の手紙と一枚の絵、そして欠けた皿の傍で横たわっていた。
手紙には、凛庫は皿の化身であることが書かれている。欠けた皿なので、このままでは消えてしまうと。ただ、日付は今から数十年後になっている。未来からの手紙ということになる。そして、その絵は、この霊園の高台から書かれた海の風景。ひなたが描いたものと同じだ。
ひなたは、もうすぐ、一枚の皿を完成させる。その皿を守れば、凛庫は消えないということなのだろうか。
浮浪者も語り出す。
若い頃に墓なんか購入したからなのか、早くに亡くなってしまった妻。
その妻を想い、墓参りした時に、頭をぶつける。
気付けば、この霊園にいた。
そして、あの頃の自分を見つける。今の和也だ。
自分が経験したことが、走馬灯のごとく、そのまま進んでいる。
和也は、凛庫を消し去らないために、墓荒らしのグループ、自分の未来の姿である浮浪者、そして、我が愛する妻となるひなたにも全てを話し、救いだそうとするが・・・
ラストはちょっとしんみり、切なく。
でも、そんな想いがそこにあったことは確かなんだということが大切なのでしょう。
墓や仏前に供えるものって、みんなそうですよね。
そこには、その人の人生と共に、自分の人生もあり、その一緒に過ごした時にあった想い想われの繋がりが込められているはずです。
想いは目に見えるものではないですから、自分で掘り起こさないといけない。
自分の身の回りにある物や自分の周囲にいる人たち。それは分かつことで形が無くなったとしても、そこにあった大切な想いはいつまでも消えない。
私たちは、いつもそんな想いと共に、人生を歩んでいることに気付けることは素晴らしいことなのだと思います。
作品中に描かれる、火葬場からの煙。
上がった煙は、やがて空へと向かい、薄くなって消えてしまいますが、その煙の源となるものへの想いはいつまでも消えないのだと感じます。
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コメント
SAISEIさん
ここ最近お忙しいようですね。5月6月は激戦週が続いて調整が大変ですf^_^;
昨日は私からすると意外な2劇団を観劇されたみたいですね。片方は私も候補に入っていましたが片方は公演があることさえ知らず。ただそこから導き出される今日のご予定はMouseとしろみそだろうな、と(笑)どちらが先かは迷いましたが(笑)私は最終選考で魅殺陣屋と遊気舎を捨て(土)USAGI PROJECT→Mouse Piece-ree(日)劇団しようよ→しろみそ企画を選びました。
実はしろみそ企画は同じ回だったんです。いろいろあって20分程遅れて入ったのでお会いできませんでしたが… 遅れたので評価が難しいのですが前作の方が良かったと感じました。前作はゲストタイムが無ければ2014年度マイベスト5入りしてたんじゃないかな、と言う作品だったのでそれと比べるのは酷なんですが… 遅れた分このblogを拝見するのを楽しみにしてました。
前説に書かれてることまんま感じたことでした。気持ち悪いくらいピッタシ思っていたことを書かれてました。そうですよねって。あともう1つ付け加えるならば前作の配役の方があってたかな、と。例えば伊与田さんは今回も悪くはなかったのですが前作の蟻の女王の好演の方が印象に残っていますしあかさかさんも前作のカタツムリ(実はナメクジ)の方が好きかなあ。あかさかさんは役によってあんなに変わらはるんですね。前回はノロマなイメージ、今回はスピーディーなイメージでした。岡田由紀さんは最近メッチャ観てる気が(笑)12月の空組『ロミオとジュリエット』の時は御名前を知らず。キンヘビの旗揚げ公演で御名前を知って黄金週間のカメハウスでも拝見。今回が一番印象に残ったかな。お話したかったのですが周りに沢山人がいらっしゃって話せず。でも客出しは良かったです(笑)年末に当blogで話題になっていた松田ジョニーさん(某劇団の欠けてるDVDで熱演されていたという)がどなたかわかったのも収穫でした。
最後に質問ですがこの劇団、舞台美術凝らはりますよね。あと普通の話題を取り上げたはるのですがこの世的でないものを登場させる(私が読んだ本の中では浅田次郎の小説が近い感じですが)、と言うイメージがつきました。そしてラストは優しい感じに。毎回だいたいこんな感じと考えていいのでしょうか?
投稿: KAISEI | 2015年6月 1日 (月) 01時04分
>KAISEIさん
いらっしゃったんだあ。
あの後、食事会があって、いつも以上に速攻で帰りましたので。
まあ、あそびの部分を不要なまでに入れてしまうのも、この劇団らしさなので、それはいいと思いますが、今回はちょっとそれが、作品自体の話の展開や、込められたメッセージに、少々良くない影響を与え過ぎてるんじゃないかなあといった感じですかね。
役者さんの役への違和感も、そんなまとまりの欠けた部分が少なからず、関係しているような気がします。
ちなみに、あかさかさんは、私は今回の役のイメージですね。多分、最初に観た刷り込みですかね。
ジョニーさん、いいでしょ。あの奥深さが。
確かにこの劇団は、そんなイメージがあるかもしれませんね。
この世的でないというか、アニメや漫画に影響を受けた、いわゆる中二病的な要素が入っているように思っていますが。
ラストは必ずと言っていいほど、切ないけど優しく締めるように思います。
恐らく、作家さんの、周囲の人たちと一緒に楽しくやっていき、その成果をみんなにも楽しんでもらいたいといった、人の繋がりや想いを意識した作品創りをされているからなんだと思います。
投稿: SAISEI | 2015年6月 1日 (月) 13時08分
あかさかさんは結構今回の役で気になりましたよ。いろんな役ができはるんやと。次回出演作も楽しみです。
帰りに映画『ビリギャル』を観て帰りました。良かったです。
投稿: KAISEI | 2015年6月 1日 (月) 17時01分