ワンマン・ショー【崖淵五次元】150510
2015年05月10日 音太小屋 (115分)
難しい。さっぱり分かりません。
というか、何となく描きたいことは分かるのですが、時系列を歪ませたり、現実と虚構の境界を曖昧にしたりと、その話の構成が複雑過ぎて。そして、言わんとしていることも、認識や存在といった哲学的な要素も多く含まれているようで。
振り返って、解析し直していますが、混乱する一方。
自分が見ているある人。その人は、他の人から見られているある人でもあり。それが、同じではなく、別として存在したら。例えば、色分けしてしまったら。
その分かれてしまった、ある人をまた組み合わせるとどうなるのか。そもそも組み合わすことなど出来るのか。
色の混じり合ったある人は黒となり、暗闇に封じ込まれる。混じり合わないものは、世界にただ漏れるように溢れかえる。
そんな不気味なイメージを抱く作品でした。
懸賞マニアの男、青井歩。
自分の名前はもちろん、妻や義兄の名前も使って大量のハガキを送っている。
好意を寄せてくれる地域サービスの仕事をする女性の薦めもあって、ただ応募に必要な事項を書くのではなく、その人の現況、特徴、癖、悩み事なども書いている。
仕事は航空写真家。だから、この町の変遷を、普通の人とは異なる別視点で見ているようだ。
妻はよだれをすぐに垂らしてしまうという恥ずかしい病気を患っているが、歩は怒ることもなく、特に気にはしていない。
義兄は無職のお調子者。一人っ子だったので、兄さんと呼ぶのに抵抗があるので、いつも名前で呼んでいる。突然、訪ねてくるが、知らぬうちに頭に大きなこぶが出来たらしく、何か色々なことを忘れがちになっているみたいで少し心配している。最近、アルバイトだが職に就けたらしい。
隣の家の男は、歩の家の庭の池をいつも覗く。なぜか泥まみれのズボンを履いて家にあがりこみ、池が大きくなっているとか言ってくるが、家を購入した時から放置している池が大きくなるはずもない。この男は、奥さんの義弟らしい。旦那は姿を見せない。離婚をして、義弟と再婚することを考えているみたい。
奥さんは、歩の義兄の仕事の依頼人。これから呼び出す男と会って、自分のことを知らない振りをして欲しいというよく分からないことを頼んでくる。
その打ち合わせで出会うたびに、義兄はその奥さんのことを知ることになり、知らない振りがしにくくなることに疑念を抱く。
歩は撮影した航空写真から、ある家が増築をしていることに気付く。その家を訪ねる。
奥さんと義弟がいる。義弟は運送業者の仕事をしている。首に絞められた跡なのか怪我をしている。その怪我が原因なのか、少し記憶が曖昧なところがある。
増築に関しては知らないと、明らかな事実なのに、なかなか白状しない。旦那は自分と同じ懸賞マニアらしい。
一度、会いたいが、いつもはぐらかされてしまう。
歩は、唯一、当たった人形を大事にしている。色々な人物の特徴を記載したハガキたちの唯一の成果。歩はそれを自分が創り上げた人たちを代表する象徴かのように扱っている。それを気味悪がる妻。書いたハガキは全て、箱の中に入れて、投函していない。当たるわけがない。人形をゴミ箱に捨てたら、普段は温和な歩が激怒する。
ハガキのことがばれたら、ただ事では済まない。妻は、義兄に頼んで、そのハガキが入った箱を山に捨てさせる。
でも、その箱が、なぜか、家の前に戻ってきた。
義兄は地域サービスの女性と一緒に山に箱を捨てに行く。
そこでは、隣の家の義弟が姉を埋めていた。死体となった姉は、見つからないように自分を埋めろと義弟に指示している。
誰も来るはずもない山だったが、義兄はその横たわる死体を見てしまう。義弟はスコップで義兄の頭を殴って気絶させる。
車の中で待機している地域サービスの女性の下には、増築している家の運送業者の義弟がやって来る。車の中の箱を見つけるが、地域サービスの女は誤魔化すために、あなたが落とした荷物じゃないかと引き取らせる。
気を取り戻した義兄は、地域サービスの女に就職決定を告げられる。義兄は喜んですぐに妹に電話。明日、家を訪ねると伝える。
死体を埋めていた義弟は、家に戻り、隣の家の池が大きくなっていることを訴えに向かう。そして、ある男のところへ向かう。歩の義兄が働いている。姉のことを尋ねるが、義兄は一切知らないと言い張ってくる。
運送業者の義弟は家に箱を持ち帰るが、奥さんに見つかり、箱にうっすらと残っていた住所の家に置いてこさせる。
歩は、増築している家を何度も訪問する。
ついに、奥さんが真相を話す気になったみたいだ。
増築した場所に、懸賞マニアの夫がいるのだろう。
義弟は今までずっと黙っていたのに、おかしいと抵抗するが、歩はそれを振り払って扉を開ける。
中には誰もいない。
誰もいないじゃないか。そうつぶやく声を、歩は自分自身で聞いている・・・
時系列がバラバラ、ループしているかのような感じで、さっぱり分からない。
結局、各家の登場人物は歩が創り出した産物で、彼の頭の中で動く自作自演のようなワンマンショーといったことなのだろうか。
地域サービスの女性が人形。どれが本物なのか、全てが虚像なのかは分からないが、歩が色々な視点でハガキのように創り上げた妻や兄弟から構成される家族の絡みを見せられているかのよう。全てが歩が別視点でそう見えている人たちなのだろうか。心の奥に隠した想いが露呈しているみたい。
自分は多視点や客観的な視点では見られなかったのか、ブラックボックス化されている。
そう考えると、人形、地域サービスの女のワンマン・ショーのような気もするが、この人形自身も歩の願いを全て叶える自分を正当化するような産物なので、結局は歩に依存した歪んだ世界ということなのだろう。
ただ、どうも気にかかるのは、登場人物は基本、色の名前を持っている。色が付いていないのは、増築している家の人たち。実像がここにあるような気もする。
ここの主人も懸賞マニアだし。この人が頭の中で増やし続ける人たち。その色を持つ人たちで書きなぐった絵は、混ざり合って結局、真っ黒になってしまい、自分を暗闇の中に閉じ込めてしまったみたいな印象も受ける。
ある人を断片的に見て、その側面からのみ創り上げ続けた多数の人たちは、組み合わさることもなく、ダダ漏れの状態で世界にあふれ出す。よだれみたいなイメージか。
人を見て、その人を認識するということはどういうことなのか、何をもって存在を立証するのか。それは、もちろん自分自身も含めて。
そんなことに対して、答えが分からないというラストのようで不気味さが残る。
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コメント
遅くなりましたが、御来場有難うございました。
いつもこんなに深くまで考えて頂き、ありがとうございます。
難しい話と言われ、それを自分なりの解釈として伝えきることが出来なかったのは自分の力不足なのだと痛感しております。
個々人が観て抱く感想・疑問・謎
そこ自分で落としこんでいくことこそワンマン・ショーだと思います。
何卒、今後共宜しくお願い致します。
投稿: 林和弥(崖淵五次元) | 2015年5月14日 (木) 17時22分
>林和弥さん
コメントありがとうございます。
これは難解。
よくあることですが、かなり悩まされる作品でしたね。
時間、空間と切り取った断片をバラバラに見せる、sundayなんかで観ることの多い話みたいな感じかなあ。
観た者は、パズルのようにそれを組み合わせるのでしょうが、それが、個々によって異なり、各々の感じ方、真相へとたどり着く。
話が作品の中のある登場人物のワンマンショーであると同時に、この作品自体もそんなワンマンショーになっているような感覚でしょうか。
また、次回作を期待しております。
投稿: SAISEI | 2015年5月16日 (土) 11時17分