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2015年5月10日 (日)

彼女じゃない人に起こしてもらう【努力クラブ】150509

2015年05月09日 シアトリカル應典院 (100分)

本公演を拝見するのは、これで4回目。前回の火ゲキも入れたら、これで5回目。
これまでの集大成のような作品だと当日チラシには書かれているが、ここは未だに掴めない。でも、毎回面白い。というか、興味惹かれる作品ばかり。
そして、今回も非常に面白い。何だろうか。この後ろめたい感覚は。そして、後に残る不快な納得いかない感は。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

普通の大学生の男。
彼女と一夜を共にしている時、バイトの先輩から電話がかかってくる。いまから、駅近くのファミレスに来て欲しいと。
真夜中だったが、男は行くことにする。だって、その人のことが好きだから。

深夜のファミレス。ぶっきらぼうな少し動きがおかしい店員。
援交している必死のおじさんがいたりする。
男が到着する。先輩はドリンクバーをおごってくれて、自分はチョコレートパフェを食べる。精神的なものなのか、少々、過食気味みたい。
先輩は、あさって海に行こうと誘ってくる。始発で出発して、遠いところまで行くらしい。
断る理由は無い。

男は明け方に帰宅して、疑いのまなざしを向ける彼女を誤魔化して眠る。そして昼から大学へ。夜はバイト。先輩は来ていない。無断欠勤なので、他の人もかなり怒っている。自分も残業をする羽目に。
先輩は翌日もファミレスへ。店員は噂好きそうなお姉ちゃん二人。
彼氏を呼び出す。別れ話。
もし、一緒に死のうと言ったら死んでくれる。そんな女の質問にはっきりと答えられない男。
結局、うやむやになって別れる。女の意志は固いので、復縁はなさそうだが。

早朝。駅で男は待つ。始発電車が来たが先輩は来ない。携帯に電話するが出ない。
しばらくすると、先輩が現れる。切符も買ってくれている。
先輩はお腹がすいているらしく、コンビニに行くことに。店員とその悪友がだべっている。
弁当とパンを購入して、次の電車を待つ。先輩は弁当を食べながら、海を観に行って、その崖から自殺しようと思っていると言い出す。それで一緒に死んでくれないかとも。
冗談ではないみたい。携帯も持って来ていないみたいだから。

とりあえず、そんなことは聞かなかったことにする。先輩も言わなかったことにすると。
電車の中では、先輩は窓の外の景色をずっと見ている。男は眠りにつく。
乗り換えのホームで、先輩はパンを食べる。よく食べる。
目的の駅に到着。おかしな名産品があるみたいだが、無視して食堂へ。そこでも名産品を薦められるが、普通のカレーを食べる。先輩はカツカレー。やっぱり過食気味だ。
隣の席ではおばちゃんが好きなだけ騒いでいる。

海へ行く。観光案内所で聞けば、バスが出ているのだとか。
バスに乗る。うまくいっているのか、ズレているのかよく分からないカップルも乗っている。
崖に着く。ベンチに座って、ボーっと海を眺める。
若い二組のカップル。ちょっとバカップルっぽいのと、妙に感動してしまっている不思議なのと。逃亡中の中年カップルも。男二人のハイテンションコンビも。
男は飽きている。寒くなったし、帰ろう。そう言っても、先輩はもう少しだけと言う。やがて、陽が沈む。夕陽は絶景だった。
土産物屋さんに寄る。男の提案。そこで、可愛らしいぬいぐるみを買う。もちろん、先輩のために。

予定では、今日は宿泊。明日の朝一番にこの崖に戻って来て、そして自殺。
駅にとりあえず戻る。
帰りのバスの中では、あの崖が自殺の名所だという話題を話すカップルが。
駅に着く。先輩は帰るなら帰ってもいいと言っている。男は迷う。一緒に帰る提案もしたが、あっさり却下。
結局、男は残る決心をする。

タクシーでラブホに。
調子の良さそうな運転手さんに明日、観ておくべき場所を聞いてみる。やはり、ここには崖しかないみたいだ。
朝陽は綺麗なのか聞いてみたが、夕陽の方が有名みたいで、よく分からないみたい。それに、明日は朝から大雨だから朝陽は無理だと教えてくれる。
ラブホに着く。死にかけのラブホの店員に鍵をもらって、部屋に。
少しでも手を出したら、明日、知らない間に一人で死ぬと先輩に脅される。
最後の夜。暗闇の中、二人は語り合う。
どうする、明日。死ぬのか死なないのか。
延々と繰り返される不毛な会話の最後に男が出した答えは、先輩が死ぬなら一緒に死ぬ。でも、死なない方が嬉しい。
明日、朝、先輩が男を起こす。そしたら、そのまま、崖に向かう。
部屋の電気が完全に消えて暗闇に。
雨音が聞こえる。夜更けのベッドに二人の姿は・・・

こんないとも簡単に死へと進めるんだなあ。生きてても絶対にこれからいいことなんてない。生きてても死んでも同じ。こんな言葉が、本当に素直に出てきてしまう心境はカラッとし過ぎていて怖い。死から目を背けているようにも思えず、しっかりと対峙した上で言っているような言葉だからなおのこと。
女は、男から愛情を感じ取れたように思うのだけど。食べることに異常な欲を示す彼女。食べるは、けっこうセックスと同調して描かれることが多いみたいだが、その愛に対して、女はとても真摯だ。食べながら話すなと彼氏に言ったり、自分が食べ物を口にしていた時、それを飲み込むまで言葉を発するのを待つような仕草を見て、そんなことを感じる。
男から愛情を受け、夕陽の美しい風景で心は満たされなかったのか。いくら食べても腹いっぱいにならないように、そんなものでは、満たされないくらいに彼女の心は空虚であり、なにものも無のような空虚なものとしか受け取れなくなってるのか。
認めてもらいたい欲みたいなものだろうか。
食べ物はいくら食べても腹を満たさないが、男が女を想って発した言葉は愛であり、心を満たすものとなり得たように思うのだが。
それ以上に、認知欲の究極は、死を持って存在を知らしめる、その死に同調する人がいるみたいなところに行き着いてしまうのか。
理解はできないが、全く分からないでもないみたいなところに不快を抱くのかもしれない。

今回は、普通に笑えるところがチラホラ。これまでも、そんな感じではあったが、ここまで話に巧みに合った感じでは無かった。シュールで、ジワジワくる笑いが多い。
アフタートークで月亭太遊さんが、ボケだけでツッコミが無いみたいなことを言われていたが、確かにそうだな。ボケをボケじゃないみたいにスルーしている。でも、強いてツッコミと言えば、それが暗転なんじゃないだろうか。暗くなる瞬間が一番面白い。何でやねん、そんなアホなことあるかみたいな感じで、逆に暗くしないとそのまま続けられないような状況を利用して無言のツッコミを生み出しているように感じる。

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