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2015年5月19日 (火)

組みしだかれてツインテール【劇団子供鉅人】150519

2015年05月19日 インディペンデントシアター1st (115分)

少女たちの等身大の成長を描いた爽やかな学園青春物語と言ってもいいし、セックス・エロ・物欲といった疚しい人の姿を描いたお下劣な妄想、奇天烈コメディーと言ってもいいし。
自信が無く、自分の妄想世界に閉じこもった人が、その中で、自分の殻を破り、仲間たちと力を合わせて、何かをやり遂げることが出来たという感動物語として、少し心を震わされてもいいし、ただエロでバカなことを好きにやって、暴走して行き着く先が収拾つかなくなるくらいのメチャクチャを楽しむ笑いに圧倒されてもいいし。
まあ、そんなもの、全部吹き飛ばしてしまう、凄まじいまでの熱を放つ、個の力と、それが合わさった舞台での爆発に衝撃を受ける作品だと思います。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は木曜日まで>

ヘアーズ学園に通うツインテールの女の子たち。
ちょっと気弱、おとなしめで、家がお金持ちだからか、世間知らずで、何事もお金で解決してしまおうとするところがあるイモくさい女の子、小野トモコもその一人だ。
シンディー、マライア、マドンナを名乗る、おっさんみたいなツインテールたちが、トモコをはじめ、クラスの女の子たちのパンツをずり下ろして風紀検査をしている。クラスを仕切るギャルズらしい。
トモコのパンツはスケスケ。ブスなのに、こんなパンツを。自分のことは棚に上げたシンディーたちの怒りを買い、思いっきりビンタ。他の者たちも次々にビンタされていく。
お前らは奴隷だ。そして、そんな奴隷たちをまとめる奴隷の女王にトモコが任命される。戸惑うトモコだが、シンディーたちを他の者はビビって押し付けてくるし、何か女王様なんて言われて気持ちよくなってしまったみたいで、知らずうちにそう決まってしまう。

こんなことになったからと言って、特に学園生活が変わるわけでは無い。
彼女たちは、自分が辛かったり、悲しかったり、逆に嬉しくてワクワクしている時に、自分たちが妄想で作り上げた彼氏を頭の中に呼び出す。年頃なので抑えきれぬ性欲に、そんな妄想彼氏とセックスをしたり。
トモコの妄想彼氏は、ノリオとかいう幼馴染みたいだ。幼き頃は愛し合うことを誓った仲だが、それは、まだ子供だったから。あまり好きなタイプでは無かったみたいだが、他の男をあまり知らないのか、ノリオのまだトモコを愛する念が宿ったのか、トモコの頭の中には常にノリオがいる。
他の子たちも同じく。仲良し三人組は、共通の野球部の先輩を、潔癖性の女は、まだ綺麗なショタがいいのか線の細い幼き中学生男子を、歴女は、自分の露払いとして、両脇に武将を。
トモコは、どうもそんな妄想世界に深く入り込むことが多いようで、時折、現実との区別が曖昧になる。学園の先生を抑えきれず誘惑したりして、二人のきわどい姿を、同級生に写真を撮られてしまった。
そして、そんなトモコを同級生たちは抜け駆けだと非難する。さらには、シンディーたちに納めるお金を建て替えたりするのだが、それが金持ちを鼻にかけていると反発心を煽ってしまった。
そんなわけで、トモコは女王なのに、最も身分の低い奴隷のような立場に立たされる。それでも、事なかれ主義なのか、どこか抜けているのか、それに逆らうことなく、波風が立たないように日々を過ごす。

夏になる。
カミコという女の子が転校してくる。どこで何をしてきたのか、鍛え上げた肉体に、経験豊富な戦闘技術。スカートの中には銃も隠し持つ。
好き放題しているギャルズにパンツチェックの洗礼を受けるが、これを瞬く間に制圧。
カミコはトモコの良きアドバイザーみたいな感じになり、ギャルズを完全に追放し、クラスに平和をもたらすべく、一緒に頑張ろうということになる。
まずは、体育祭のリレーで優勝すること。そうすれば、自分たちの凄さをみんなに分かってもらい、この学園にはびこるおかしなカースト制度に終止符が打たれるはずだ。
しかし、三人組の一人が誘拐、歴女が下剤を飲まされるというギャルズの策略にはまってしまう。
でも、奴隷たちの意気込みはこれまでとは違った。歴女はウンコを漏らす覚悟で走る。トモコは必死に監禁されていた子を救出して、リレーに走らせることが出来た。
トップでバトンが潔癖症の女にわたる。これでトップを守れば、あとはアンカーのトモコに全てを託すのみ。
のはずだったが、潔癖症の女は、おかしな舞を踊り出し、バトンをトモコにわたさない。トモコにバトンがようやくわたったのは、他のみんなが全員ゴールした後だった。
完全な敗北。
ギャルズは、潔癖症の女を陰で取り込んでいたみたいだ。新女王はこの女。
そして、三人組もみんなギャルズ側につくことに。

二分裂した学園。
優勢なのはもちろん、ギャルズの方。潔癖症の女は、女王気取りですっかり偉そうになっている。妄想彼氏も、あの可愛らしい中学生だったのに、今ではやくざと見間違うぐらいに柄が悪くなっている。ちなみに、もう妄想では無い。何でかよく分からないが、彼女たちの妄想彼氏は、全員、現実に姿を現すことになっている。だから、三人組の共通の野球部先輩キャラの妄想彼氏は、威勢よく、ギャルズの手伝いに励んでいるみたいだ。その、こきつかわれる姿に三人組は違和感を持つが、逆らうことは出来ない。
トモコの方は。仲間は、姿を現した幼馴染の妄想彼氏。そして、歴女とその妄想彼氏の武将だけ。カミコはいない。初めての敗北だったらしい。彼女は、どこかに行方をくらましてしまった。
文化祭が始まる。
新女王の提案で奴隷カフェを催す。トモコたちは、下働き。
Pat-micさんという、もしかしたら一番ツインテールが似合っているかもしれない、スマートな男のボイパで女王のご機嫌をうかがう。
なかなか、お~っとなる技を見せてもらい、客もけっこう盛大な拍手で盛り上げたのだが、それでも女王は気に入らないらしい。
暴れ出す女王。そこにカミコが戻って来る。
しっかりギャルズと戦える体制を作り上げるために、身を潜めていたらしい。
この戦いで、歴女の妄想彼氏の一人の武将は命を失う。妄想なのに。
そして、捕まってどこかへ連れて行かれてしまった者も。

カミコとトモコは処女寺というところをアジトにして、ギャルズへの攻撃の機会をうかがっている。
そこに三人組の一人が逃げ込んでくる。
ギャルズや新女王の、振る舞いはさらにひどくなっており、遂には全クラスを制圧したのだとか。
そして、囚われた者は、妄獣とかいう、恐ろしい生き物にされてしまっているらしい。
情報によると、新女王は、妄想彼氏と結婚式をするらしい。
その時がチャンス。
カミコとトミコ、そして仲間たちは、決戦に向けて・・・

この後は、数々の犠牲者を出しながら、トミコ勝利。
でも、かつて撮られた先生との写真をばらまかれ、女王返り咲きにはならず。
それでも、学園のおかしなカースト制度は少しましになる。
そして、卒業式。
気付けば、トミコの隣にカミコはいない。あれも、トミコの妄想だったのだと教えてくれる幼馴染の妄想彼氏。全部、自分でしてきたこと。そして、もう、自分もトミコから消える存在なのだと。
もう妄想の中に逃げ込むことはない。自分で考えて、行動し、お金を渡すのではなく、相手に自分の想いを伝えることで繋がり合うことが自分には出来ることが分かった。
トミコは仲間たちと共に、最後にシンディーをぶっ倒しに行く。

といった感じで、結局は、閉じこもっていた女の子が、殻を破って巣立っていく、卒業を迎えるまでの時間を描いていた話だったということなのだと思います。
スクールカーストは女子高はけっこうえげつないということは聞きますし、性への妄想力も、男が単純に女の裸を見て抜くのとは違い、女はシチュエーションや背景、物語性を確立した設定を創り上げるというところで、その力が強いようなことを聞きます。
グループを作って、一人を避けるのは、弱さや不安などが、常に自分の中に渦巻いており、繊細な少女の本能的な行動なのかもしれません。
男のように、肩組み合って、馬鹿みたいに熱く何かをやろうぜみたいなことも、あまり女性には無いように思います。偏見かもしれませんが。相手との本当の強い絆を結ぶことに抵抗があるのかもしれません。それは、互いに相手の深くまでを見てしまうような女性の賢さからきているような気もします。
この作品における学園での生活は、そのまま普通の人の学校での生活そのものなのかなあ。ちょっとむちゃくちゃ過ぎに描かれてはいますが。
そこでの時間を過ごし、若い女の子たちは、妄想世界の人たちと別れを告げて、リアルな世界の人たちと、その経験を活かしてこれから付き合っていくのでしょう。
妄想世界といえど、そんな数々の経験が、男は女に叶わないとか、女の方が何事も賢明な判断が出来るとかいうことに繋がっているのかもしれません。
何か、繊細で脆さのある少女が、成長して底力のある強くたくましき女性へと変わっていく姿が、包まれる笑いの中に隠されているような気がして、ちょっと怖いなという感が残っています。

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