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2015年5月31日 (日)

VS魂【MousePiece-ree】150531

2015年05月31日 HEP HALL (100分)

あかん。おもろい。とにかく、おもろ過ぎる。
ブログなので、中年男の絆の深みをじっくり味わえただとか、VS、争いが起こっても、それは互いを思いやる気持ちから生まれていることに気付け合う仲の素敵さだとか、口では大きいことばかり言っていても、本当の気持ちを伝えることに関しては、幼く、未熟な男の幼稚さへの同調だとか、これまでの劇団のお三方に加えて、味のある役者さん、そして華やかなダンサーさんを加えることで、ミュージカル要素も盛り込んだ最高のコメディーエンタメ舞台を実現しているだとか、色々と作品については書けるのだが、多分、これは後付けで思ったことで、観ている間に思っていたことは、ずっとおもろいだ。
ちょっとしたシーンでも、どうしてこんなにおもろくなってしまうのと驚く。少しでも目を離したら、もうそこにおもろいことが始まっている。
このおもろいパワーはどこから生まれるのか。
その源が、この劇団のお三方にあるなら、あまりにも凄過ぎるおっさんたちだと思う。

時代の流れか、店をたたむところも多く、人通りも寂しくなった花咲商店街。
八百屋の春ちゃん、本屋のよっこん、寿司屋のせっちんは、この商店街で生まれ、地元の人たちに叱られ可愛がられしながら、育ってきた幼馴染同士。
今では、立派なおっさんとなり、なかなか商売は厳しいが、この商店街で頑張っている。
本当はもう一人いたが、今はどこで何をしているのか分からない。商店街を出て、どこかに就職してしまったらしい。幼き頃は、くだらない遊びで一緒に盛り上がり、調子に乗ってからかい過ぎて、泣かせてキレさせたりしたものだが、元々、頭のいい奴だったので、大きな会社で活躍しているのだろう。花屋のやっちん。今となっては顔が大きかったぐらいしか思い出せないぐらい久しく会っていない。妹の佳代ちゃんが店の切り盛りをしている。それでも、幼馴染はじめ商店街の人たちは、佳代ちゃんに会うと、兄ちゃんからは連絡あったかと、今でも気にかけられている。

春ちゃんは、ちょっと自分勝手なところがあるが、まっすぐで熱く、それでいてナイーブなところがある。佳代ちゃんのことが好きなのに、なかなか言い出せず、せっちんと仲良くしたりしているとすぐに拗ねたりする子供みたいな大人だ。大根が大好きで、自分の仕入れる大根には誇りを持っている。
よっこんは、ボケまくりのおとぼけさん。おまけにキャッチボールもできない運動音痴なので、その言動全てにツッコミを入れなくてはいけず、周りも大変だ。今は、草野球で、自分が下手過ぎて負けることが多いので、毎日、練習に励んでいるが、残念ながら上達の見込みは厳しい。
せっちんは、そんな子供みたいな二人の面倒見役といったところか。二人は何かあれば、すぐにコントみたいなことを始めてしまうから。一応、全体を見渡せて、常識的な判断ができるようだが、二人と一緒にいると昔に戻ってしまうのか、ついついおふざけが過ぎてしまうようだ。寿司屋の経営はかなり厳しく、借金も抱えている。正直、もう潰れてもおかしくないくらいの状況らしい。
佳代ちゃんは、スラッと綺麗な美人さんで、声をかけてくる男は多いはずだが、未だ、彼氏はいない。好きな花は、はなみずき。花言葉は私の思いを受け取って。そんな片思いの言葉に彼女の想いは隠されている。まあ、男はバカだから気付かない。今日も、大好きな大根には話しかけているぐらいだから。

このまま商店街を終わらすわけにはいかない。
お祭りを催すことに。
春ちゃんは大根をみんなで持って踊る企画を考える。こういうところが、ちょっと自分勝手なのだ。自分以外に大根にそこまで惚れ込んでいる人はそういないことに気付けないのだから。先日も、草野球でサインを無視して、強引なプレーをした。そんなことも挙げられて、せっちんに責められ、ケンカになる。仲介役はよっこん。険悪な空気になっても、すぐに仲直りしてしまう。互いのことを分かり合っているし、その想いはみんな同じであることを信じているから。
結局、みんな好きな物を持って踊ろうということになる。
まあ、プロたちに創ってもらったダンスは、あまりにもレベルが高過ぎて、何を持つとかはもはや関係ないことになるのだが。

そんなイベントの準備が進む中、あの男が突然やって来る。
やっちん。いかしたスーツを身に纏い、少々、おかしなところがあるようだが綺麗な秘書を連れて。さぞ、大きな会社で活躍しているのだろう。
彼の目的は、この商店街の活性化。そのための手段として、大型のショッピングモールを建設する。もちろん、今ある商店街は潰す。店には全て、立ち退いてもらう。
説明会が開催され、やっちんから、地元の人たちにその計画の全容が語られる。
熱い春ちゃんは声を大にして反対の意見を唱える。
でも、本当にそれでいいのか。店に客は来ているのか。経営が危ないのではないか。生まれ変わって、儲けることができるなら、その方がいいのではないのか。
だから、今、自分たちで何とかしようと頑張っている。生まれ育ったこの商店街を消し去りたくない。幸せは金ではない。
そんな意見がぶつかる中、せっちんは、大型ショッピングモールに店を構えて、やり直せるなら、それでもいいような気がすると、みんなとは異にする意見を述べ出す。
春ちゃんは、当然のごとく怒り、お前こそ自分勝手じゃないかと吐き捨てて、その場を跡にする。

イベントの準備は、こんな揉めている中でも進む。
佳代ちゃんは、兄さんにイベントを見に来て欲しいと伝える。
せっちんは、色々と考えて、また、その準備に戻って来る。
店がはやらないのは、自分の腕に問題がある。商店街のせいにして逃げようとしていたことを謝罪。
春ちゃんは、それを拒絶しようとするが、よっこんの一言で、閉ざしていた心を開く。店の経営が厳しくて、一番、悩み苦しんでいたのはせっちんだ。友達が苦しんでいることを知っていながら、何もしてあげられなかった。春ちゃんは、立ち向かおうとした。せっちんは流れに乗ろうとした。互いに違う行動を取ろうとしたが、その想いは商店街を救いたい、この商店街の仲間たちを救いたいということには、何も違いが無いことを。
本当は春ちゃんも分かっている。
だから、またすぐに手を取り合える。問題は解決したわけではない。でも、今、するべきことは、自分たちで創り上げようとしているイベントを成功させること。
みんなは手を高らかに上げて、あの幼き頃のように団結して、頑張ることを誓い合う。

イベントが始まる。
ダンスが始まる前に、せっちんが提案した小芝居が始まる。
佳代ちゃんが悪い奴らに絡まれる。そこに春ちゃん登場。得意の大根で、悪い奴らを滅多切り。二人は愛を誓い合い、盛り上がったその時、ダンスが始まる。
という設定だったが、春ちゃんは、悪い奴らとの闘いで傷ついた大根を気にし始める。
私と大根のどちらが大事なんだ。これまでだって、ずっとそう。いつもいつもはっきりしない。
怒った佳代ちゃんは、その場を立ち去ってしまう。
追いかけなよ、今こそ本当の想いを伝えなよ。芝居が続いているのか、本当の言葉なのか分からない状況になってしまうが、春ちゃんへのエールがみんなの口々から発せられる。
春ちゃんはけっこう単純だ。勇気を得た春ちゃんは佳代ちゃんを追いかけ、その勢いで告白。
ちょっともったいぶる佳代ちゃんだが、もちろんOK。ずっと互いに好きだったのだから。男同士なら、思ったことをそのまま伝え合えるのに、男と女だとなかなか上手くいかないみたいだ。ずいぶんと時間がかかったが二人の想いはようやく形となって通じ合う。
最高のハッピーエンドの中、練習していたダンスが始まる。
見ていたやっちんも引きずり込まれる。
昔から、やっちんは、みんなに調子にのられて、ひどい目に合うキャラだった。ノリで裸にひん剥かれ、パン一で彷徨うことに。

イベントは少々混乱したが、成功に終わった。少なくとも、みんなで頑張れば、きっとどうにかなるという気持ちは生まれた。
あれから、各々、自分たちが出来ることをしながら、変えていこうとしている。
時間はかかるのかもしれないが、きっとそれは自分たちの大切に思ってきた商店街を守りながら、時代の流れに沿った姿に変えていくに違いない。
やっちんも、会社に勤めながらクビにならない範囲で協力するつもりらしい。
春ちゃん、よっこん、せっちん、やっちゃんの4人は、これから始まる新しい商店街の改革を楽しもうと、かつての幼き頃のように、手を高らかに上げて絆を確かめ合う。そんな男の輝く姿を佳代ちゃんは温かい目で見詰めている・・・

といった感じの、まあ、ありがちな話ではあります。
これをどう魅せるかが、きっと勝負で、この劇団らしい、中年男の哀愁を感じさせながらも、まだまだやったるぞという勇気溢れる姿は、今までの延長線上にあり、今回はそこに、上記したようにダンサーさんや、安定した実力派役者さんの魅力を加えるといった色々と新たなチャレンジをしているようです。
見事にはまっているように感じます。
中年男だけでは、恐らくは無理なのだろう、華やかさが上手くはまり込み、舞台に、いつもとはまた別の輝きが見られました。もちろん、これまでの熱い男たちの輝きは、きちんと残した上で。面白さも相乗的な効果を示しているような気がしますし。
まあ、とにかく、最高におもろい舞台でした。
前から好きな劇団ですが、これはもうはまりましたわ。

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