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2015年4月22日 (水)

火曜日のゲキジョウ【男前ファクトリー×ステージタイガー】150421

2015年04月21日 インディペンデントシアター1st (30分+30分 休憩10分)

今回の共通テーマは熱さだろうか。
熱さと言っても、色々な表現の仕方があるものだ。
熱情こもる演技力、とにかく駆け回り力で押す・・・
でも、最後に見たいのは、表面的な熱さでは無く、そこに潜む揺るぎない熱意が作品に埋め込まれていること。これが、この作品、熱かったと感じさせてくれる。
両作品とも、その魅せ方に巧さの差は感じられるものの、想いをじっくりと練りこんだ満足感の高いものだった。

・「男前ファクトリー」 : 男前ファクトリー

高校の卒業式。
卒業生の名前が呼ばれる中、ワタルは、これまで、そしてここから始まる新しい道を想う。
ワタルは母子家庭で育ってきた。母は体を売って、その金をホストにつぎ込む。
それだけじゃない。ワタルが日雇いバイトで稼いだお金をも取り上げる。
でも、仕方がない。
お前さえいなければ。何で生きているんだ。あんたには保険をかけてるんだから。
母は、そう毎日ワタルを責め続けている。
母からは疎まれ、学校では番長率いる不良グループにたかられる。バイト先でもクズ扱い。
憎しみだけが生きる力。復讐のために生きているかのようなワタル。
そんなワタルだったが、ずっと不登校だった女の子、サクラと出会ってから毎日が変わる。
彼女は父子家庭で育つ。父は不動産業を営んでいたが、人がいいのが災いだったのか、多額の借金を残して自殺。それでも、彼女は日々、笑顔で生きる強い子だ。おまけに喧嘩も強く、番長ものしてしまうほど。
そんなサクラと一緒にいれば、自然に笑顔が生まれ、たとえ死ぬ時だって、笑顔で最期を迎えられるような気がする。サクラも同じような境遇のワタルに気を許している様子。
彼女と一緒に死にたい。自分でも何を言っているのか、分からないが、とにかく生きることに前向きになれたことだけは確かのよう。
でも、そんな日々は長く続かない。
サクラは借金返済のために体を売っている。ワタルの母と同じ店で。
30オーバーの女と女子高生では当たり前だが、女子高生に客は持っていかれる。ホストに払う金が尽きたワタルの母は、ホストと組んでサクラを殺害することに。
サクラと連絡がつかないことに不安を感じたワタルは、サクラの家を訪ねるが・・・

結局、サクラはワタルの母に刺され、母はワタルにサクラが体を売っていたことを告げます。
逆上したワタルは、ホストと母を刺し、力尽きるサクラを抱きながら、互いに笑顔を見せ合う。
ラストシーンは、卒業式で名前は呼ばれるものの空席の二人の椅子が映し出されます。
どう捉えたらいいのかな。
冒頭のシーンは叶うことのなかったワタルの夢想で、厳しい二人の現実を映し出しているのか。それとも、名前が呼ばれることで、二人の生が確かとなり、厳しくても、二人はきっと手を取り合ってこれからを生きていくという意味合いだろうか。
オチをどうしたいのかがよく分からない。
卒業式で平然としている先生や番長グループの存在も謎だ。二人のことなど全く関係なく、はびこる社会をイメージしたらいいのか。
二人っきりの閉じた世界。悲しみだけが残る。
ただ、どうも全体的に破滅的な方向に話を持っていきたがっている感がある。それだけに設定や展開に安易さを感じる。
破壊や破滅を男前の象徴としたのだろうか。ロック魂のようなかっこよさはあるものの、這いつくばって生きていく者だからこそある優しさをもう少し醸し出し、光射す姿を映し出すことは出来なかったか。
ひねりが無いブラックさは、ただただ観ていて息苦しさを覚えるだけであまり好きになれない。
基準点の5点に、脚本のひねりの無さに-1点。好きな話じゃないのと、オチの不可解さに-1点。
ただ、ワタルとサクラをはじめ、役者さんの熱情は強く、また全体的に演技力の巧さは大きく感じる。今回は話がちょっと好きになれないことはあったが、実はかなり魅せる力を持っているのではないかと期待。そこに+2点とし、結局、5点評価。

・「ララバイを、君に」 : ステージタイガー

実業団駅伝大会のスタート地点に二人の男。
そんな二人を見詰める多くの視線。
監督、同僚、部下、・・・。
二人は走り出す。次のランナーにタスキを繋ぐその場所には、一人の女と幼き子供が待っている。
ある会社に勤めている女性は、最近、上司の様子がおかしいことに気付く。
でかい鞄を持って、いつもサっと帰る。
跡をつけると、そこにはグラウンドを走る上司の姿があった。
そこにいた監督が上司のことを語ってくれる。
大学時代。箱根駅伝。彼はそのランナーだった。
その優しき性格からか、決してエースランナーではなかった。でも、堅実にペースを守り、実直に走る安定した姿は誰もが認めるものだった。
監督を神様として成り立つ厳しい上下関係の体育会系。グチグチ言いながらも、みんなで懸命に走って練習した。
癒しと言えば、可愛らしいマネージャーの甲斐甲斐しい励まし。いや、それよりもテンションおかしい栄養士の作るおいしい飯か。
いや、栄養士の下で働く美しい女性だ。みんなの憧れだったその女性のハートを上司は掴んだらしい。
近づく箱根駅伝。エースランナーが怪我で出場できなくなった。優勝は望めない。でも、上位を確保はしたい。その時に抜擢されたのが上司の安定した走り。
監督は、勝たなくていい、負けなければと上司に伝え、送り出す。でも、エースランナーは彼にどうしても優勝したいと告げる。
レーズが始まる。そんな弱気な考えが甘かったのか、チームはかなり遅れて、上司にタスキが渡される。
スタートした上司は、これまでとは違う激しい走りを見せる。完全なペースオーバー。明らかな脱水、低血糖状態。監督はフラフラになって走る彼に駆け寄り、走りを止める。
棄権。でも、全てを背負い、あれだけの走りを見せた彼を責める者は誰一人いなかった。
それから、上司は引退して、二度と走ることは無かった。
でも、今、目の前に実業団駅伝大会を走る上司がいる。
上司が再び走ることを決めた、その理由・・・

エースランナーは、箱根駅伝の時に上司にあんなことを言ったがためにペースを乱してしまい、最悪の結果となってしまったことをずっと悔いていたみたい。
だから、もう一度、走ろうとずっと誘い続けていたようだ。
それは監督も同じ。
でも、上司は首を縦に振ることは決して無かった。
そんな彼が再び走り出す。
あの時、叶えられなかった夢をもう一度実現するため。自分へのけじめ。
いや、違う。
全ては子供のためだったみたい。
保育園でうちのパパはランナーだなんて言ったところ、みんなから普通のサラリーマンだろうと馬鹿にされたらしい。
たったそれだけの理由。でも、それが今の彼にとっては全てだったのだろう。
箱根駅伝の時は、上司は仲間から受け取ったタスキを持って、自分のために、ひたすら走ったのだろう。今は、きっと、これから自分を繋いでいくのであろう息子のために走っているみたいだ。
彼は笑顔で走り、そのタスキを仲間に渡す。同時にその走り切った姿は、我が子がこれからを走るために、自分が繋げられる大切なタスキとなって手渡されたはずだ。
30分のうち、25分ぐらいはとにかく熱いというよりかは、騒々しく暑苦しい人たちが舞台を駆け回る。いわばドタバタ。
これが最後の数分で、しっかりと芯を持った熱さに変わる。
メリハリというのか、作品の、役者さん方の真髄がしっかりしているからだろうか。
基準点5点に、上記のようなしっかりとした熱さを魅せる巧みさに+2点。あとは、久しぶりに舞台でお姿を拝見したお気に入りの役者さんがいらっしゃったので、舞台復帰と今後の期待にご祝儀の+1点で、8点評価。

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コメント

いつもご丁寧なあらすじと
ご意見をありがとうございます。
今回男前ファクトリーで
サクラ役をさせていただいた
劇団ほどよしの村上琴美です。
今回の反省を生かして
これからも精進していきますので
よろしくお願いします!!

投稿: 村上琴美 | 2015年4月22日 (水) 13時19分

うわああああ!また!またここで!御礼を言える日が来るなんて!
いつも素敵なご感想と完璧な考察、ありがとうございます!!
舞台に立った瞬間に、最前列にうっすらと見えたSAISEIさんのお姿に喜びと緊張が走りました!

最後の、ご祝儀は、私が受け取らせていただいたと自惚れても良いのでしょうか!?
これから、何度でもお目にかかれるように精進して参ります!頑張ります!
本当にありがとうございました!

投稿: 今村こころ | 2015年4月22日 (水) 17時50分

>村上琴美さん

コメントありがとうございます。

熱演でしたね。
深い悲しみが涙になって溢れそうになりながらも、強くまっすぐに生きているサクラのお姿には、引き込まれました。

低評価は個人的な好みの問題が大きいので。
悲劇を描くのなら、悲しみや苦しさだけでなく、そこから見出せる人の優しさや強さを、表現はされているのだと思いますが、もっと心に響かせてくれていたら、熱演と相まって最高の評価をしていたと思います。

投稿: SAISEI | 2015年4月22日 (水) 17時53分

>今村こころさん

コメントありがとうございます。

ご無沙汰でしたねえ。
2年ぶりぐらいかなあ。
一度、何の公演だったか、客席で近くに座ったことは覚えているけど。

ボディ&ビルディングの時に拝見した、ぐいぐい押し迫ってくる感がある熱い姿だったように思いました。
久しぶりにも関わらず、他の役者さんに負けじと劣らずの迫力ある姿。さすがにアミジロウさんや白井さんには及んでないけど。
ばっちり仕上げてきたんだなあと。
お休みの間も、きちんと走っていたからこそ、今回の舞台でもしっかりと疾走する姿を魅せられたのでしょうね。
その頑張りと、決して捨てなかった舞台に立つ熱意にご祝儀というか、敬意と感謝の1点です。
素人おっさんの単なる1点ですが、これからの活動の上で、自信と誇りにしていただけたら幸いです。
また、どこかで拝見できることを楽しみにしております。

ちょっと頬がこけたんじゃない?
厳しい鍛錬のような稽古なのだろうけど、お体には気を付けて。

投稿: SAISEI | 2015年4月22日 (水) 18時13分

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