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2015年4月22日 (水)

ゆうれいを踏んだ【突劇金魚】150421

2015年04月21日 アトリエS-pace (95分)

話としては、頭に桜の木が生えた女なんて不可思議な設定ではあるが、とても分かりやすく進行。計算された言葉の数々が、絶え間なく、くすりとした笑いを誘う。
ツルコの出会う人たちも、ちょっと不思議な面白い人たちばかり。
そんな表面的に拡がり続ける楽しさとは裏腹に、どこかモヤモヤと不安な気持ちも煽られていく。
多分、これはいいことにはならない。話の終結に向かって、心がずっとざわつく。
そんな気味の悪さがずっとあるんだけど、それが楽しい話の展開で打ち消されたと思えば、露骨に出てきたりと。
嫌だなあと思いながらも、それがまた心地よしといった感じか。

家族とか、絆とかって実はこんなんじゃないのってことをジワジワと知らしめていく。
それはけっこう残酷なこと。
固い絆で結ばれているとか、無条件に愛し合えるのだとか、決してそれを否定はしないけど、逆にそんな綺麗なものじゃないのかもなってことは、歳を重ねたら気付いてしまったりする。
そんな嫌なところを見せつけられたよう。
でも、だからこそ、それを受け入れて、人と付き合っていけばいいのではないか。人や社会に合わせる自分じゃなくて、そのままの自分でいることの正当性も証明されたような気はする。
深く考えることや汚いものを見ることはしんどいから、知らぬ間に避けてしまっているのだと思うけど、それをちょっと思い出させてあげましょうという残虐性が感じられると同時に、そのことでへこますのではなく、少しだけ気が楽になるかもしれないよといった優しさもあるところが、観終えて、何か心ざわつくけど、救われたような安堵も覚えるのかもしれない。

<以下、ネタバレします。白字にはしていませんのでご注意願います。今週末から東京公演があるようです>

ツルコ。
難産だったのか、生まれた時に母を亡くす。
父は、まだ幼き頃に祖母と一緒に花見に行った時に、女を連れてどこかへ失踪してしまった。
その花見で、ある男の首吊り自殺を見てしまい、トラウマを抱える。
以来、祖母と二人の生活。
風呂が大好きな祖母。毎日、体を拭いてあげて、食事も作る。年寄り好みの薄いしょうゆ味がベース。
いまどきのチャラチャラした若い子とは違って、清楚で控え目。汚い言葉なんか一切使わない。
バイトで学費を稼ぎながら大学を卒業、銀行に就職。近所にも自慢できると祖母も大喜び。
祖母の期待どおりの姿のツルコ。
祖母は、これで、あとは安定した銀行員と結婚して、孫を産んでもらい、幸せな老後生活を過ごす。
・・・のはずだった。
ところが、ツルコは突然引きこもってしまう。
さらに、久しぶりに部屋から出てきたかと思えば、頭から桜の木を生やしてる。
ツルコ曰く、夜、コンビニでソースたっぷりのコロッケを食べようとしていたら、幽霊を踏んでしまったのだとか。ヤバイと思って、家に帰ったら、幽霊が付いてきている。
とりあえず、眠りについたら、夜中に幽霊が頭に水をかけてくる。鏡で見たら、頭には芽が生えていた。
ヤバイなんていまどきの若者っぽい乱暴な口調、ソースコロッケなんてジャンクフードを食べるツルコに驚く祖母。
そして、何よりも頭の上の桜の木。
これでは銀行に勤められないではないか。それに銀行員との結婚なんてとんでもない話だ。私の老後はどうなるんだ。
お前はツルコじゃない。激昂する祖母と揉み合いになり、祖母は突き倒され、目に怪我を負う。
そして、ツルコは家を飛び出す。
こうして、頭に桜の木を生やしたツルコの数奇な人生が始まる。ずっと付いてきて花見を楽しむおじさんの幽霊と共に。

まず向かった先は淡路島の牧場。そこで働いて、いつしか、そこの人たちと家族にみたいなことを夢想したらしい。
フェリーの中でギター弾きの怪しげな若い男に、ノコギリで切ればなんてからかわれる。そんなことはとうの昔に考えている。体の一部なのか痛くてそんなこと不可能だ。
そして牧場では当然のごとく、相手にしてもらえず。

次に向かったのは遠い親戚。
両親が事故で入院中の兄妹がいる。
妹はアイドルになるつもりで数々のオーディションを受けるが、妹の部屋を覗き込んで常に監視する兄に邪魔されている模様。最終オーディションの日に両親が事故だなんてちょっと偶然すぎやしないか。これまでだって、オーディションが決まりそうになれば、ペットとかに災いが及んでいた。
妹は、ツルコの強烈な個性を利用して、一緒にユニットを組んで、家を出て行こうとする。
兄の妨害を何とかしないと。ツルコは妹に頼まれ、意を決して兄と話し合いに向かう。相当な異常性を持つ兄。場合によっては殺されてしまうかも。
でも、今回は兄は邪魔をしてこない。ツルコに金を渡して妹を頼むなんて言っている。自分は留学するつもりらしい。
それを聞いて妹はなぜか兄とツルコにイラダチを見せる。
知らずうちに、自分の能力の無さからアイドルになれないことを、兄が邪魔するからだと言い訳にしていたのだろうか。気持ち悪いとののしっていた兄だが、自分のことだけを絶対的に見ていてくれると信じて疑わなかったのに、裏切られた気持ちになったのだろうか。
3人は揉め合う中、不可抗力でツルコは兄を崖から突き落としてしまう。
兄は命は助かり、足に障害を負うだけで済んだが、ツルコは半年間、刑務所で過ごすことに。
妹はアイドルにはなれなかったものの、ちょっと痛々しいタレントとして一応、活躍しているみたい。

行く宛もなく、河川敷で草むらに身を潜めて過ごすツルコ。
ホームレスに花見をさせて、食べ物を恵んでもらっていたらしい。
そこで、フェリーで出会った男と再会。同棲生活を始める。
仕事は消しゴム工場。妙齢の豪快な女性と恋愛話に花を咲かせたりする。
同棲生活の方は順調。男はいい加減そうだが、優しいところがあるみたい。
少々、自意識過剰で熱が入り過ぎの曲だが、自分のためのラブソングを弾き語りしてくれたり。
こんな普通の生活でいいのだろうか。
桜の木には毛虫が増えてくる。幽霊は必死にそれを取り除く。
床に叩きつけられた毛虫を見て、ツルコは自問自答する。
そんな中、消しゴム工場の女性が劇団の主宰だったらしく、劇団員になることに。
役はもちろん、木の役。
劇団員はツルコの他に、あんまり個性の無い女性だけだが、なかなか話題を呼ぶ。
海外公演まで実現するが、長続きはしなかった。
いつしか劇団は廃れてしまい、ツルコも男を残してどこかへと姿をくらましてしまう。

ツルコが去った後、男はツルコを探す旅を始める。
消しゴム工場の履歴書を基に、実家の祖母、親戚の兄、タレントの妹、劇団員とツルコのこれまでをたどり、ついに再会。
祖母は益々、目が悪くなり、怪しげな占い師をしているらしい。
ツルコは未だ、祖母のことを気にしている。自分のことを何か言っていたか。男に尋ねる。ツルコは死んだ。祖母は確かにそう言っていた。でも、それをツルコには伝えられない。気にしていたと答えると、ツルコは満面の笑みを浮かべる。
そして、家政婦を募集しているということで、正体を隠して、それに応募することに。
目が悪いとはいえ、さすがにずっと一緒に暮らしていたからか、気付かれてしまう。
祖母は自分の人生を狂わせたツルコ、その頭に生えた桜の木に、思い出したかのように怒りを表す。
ツルコと揉め合う中で、ついに桜の木の枝が折れてしまう。
幽霊は姿を現し、桜の木を折るなと激怒。そして、折れた枝部分から腐ってしまうだろう桜の木を掘り返す。
頭にぽっかりと穴が空いたツルコ。そんなツルコに一緒になろうと男はプロポーズするが、ツルコは辞めておくと答える。
家族になると期待してしまうから・・・

家族をはじめ、友人、恋人など、自分の周囲にいる人たち。
関係性の深さはあれど、自分と付き合いがある人たちは、自分をどう見て、関係を築き上げているのだろうか。
自分が知っている、思っている自分じゃなくて、相手のその人が知っている、勝手に創り上げられた自分と付き合っているのではないか。
それ、多分、自分じゃないよ。
そう言いたいけど、そうしたら、関係が終わってしまうような気もする。だったら、そんな自分でいてあげたらいいのだろうか。頑張って努力すれば、相手の人が思っている自分を見せることは出来るから。
でも、それじゃあ、自分って何なんだよ。

毛虫が桜につく。幽霊は必死にそれを取る。
多分、ツルコのことを思ってじゃない。どうも、ツルコは普通の幸せ状態を感じると虫が出てくるみたいだから。
要は、ツルコがどうであろうと関係なく、ただ、いいねえと眺めて楽しめる花見の素材であればいいわけなのか。
だから、枝が折れてしまえば、抜いていしまう。大切に育ててきた木でも、朽ちていく姿などは美しくないから。
自分のことを想ってくれているんじゃないんだ。大事なのは、自分じゃなくて、桜の木なんだね。

といったことを感じながら観ていました。
ツルコは、祖母との日常生活の中で自由を失い、誰も本当の自分を見てくれていないという自己疎外みたいな感覚を得ていたのでしょうか。
桜の木は、だったら、この木に首を吊って死んでしまうと問いかけられているように感じます。幼き頃の花見で、自分自身に生えた桜の木だったのか、首を吊って死んだ男のように。
でも、ツルコは数々の人たちと出会い、特に男の影響は強いのか、そんな考えから救われたようです。
こうあるべき自分から解放されたような感じでしょうか。
桜の木は無くなり、もうツルコを死へと導こうとするものはありません。
ぽっかり空いてしまった穴は、これまでのツルコの鬱積し続けたものが取り除かれ、その穴を少しずつ埋めながら、新たな芽をいぶかせる土台みたいなものでしょう。
最後は男とのごく普通の日常の食卓のシーンで締められています。
結婚は拒絶していたみたいですが、どうなったのでしょうか。少なくとも他人に受け入れられる自分を感じ取り、相手を受け入れることも出来るようにツルコはなったように思います。
自分が無力であること、人は依存したりされたりし合う弱さがあること、でも、そんな自分でも想いを寄せてくれる人がいること、といったような、酸いも甘いも知ったツルコが、これからを自分らしくイキイキと生きていく姿として最後は映し出されているように感じます。

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