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2015年4月 9日 (木)

火曜日のゲキジョウ【C4 CriticalCreation & ClickClock】150408

2015年04月08日 インディペンデントシアター1st (50分+60分 休憩10分)

両作品とも、舞台にリズム良く散らばる言葉から、その景色が自然に浮き上がる。
この心地よさたるや。
美しい2作品を味わえたように思います。
そして、どちらも生を見詰めるような話になってるようです。
一作目は世界の中にいる一人の自分という姿から、二作目は死という誰にでも必ず訪れる厳しい姿から。
そこから、自分の幸せ、世の幸せはどういうものなのかを考えさせてくれる話だったように思います。

・「目病み猫と水のない水槽」 : CriticalCreation

オドオドした様子で毎日のようにペットショップの猫を見に来る若い男。
貯金をおろして、意を決してお目当ての猫を買う決心をするものの、想定外の値段に動揺を隠せない。
そんな時、今までは目も向けなかった茶トラの目病み猫が視界に入る。そして、何となく、その猫を購入して連れて帰る。
男の部屋は殺風景。最低限の食事と睡眠が出来る程度の生活で、たまにスケッチブックを取り出し、水彩絵の具で絵を描くぐらいしかしないから。
部屋の真ん中には水だけが入った水槽が置かれている。この部屋にやって来て初めて購入したもの。綺麗な熱帯魚も一緒に購入したが、翌日、全部死んでしまった。ヒーターをサーモスタットに接続しなかったら、一晩で水が煮えてしまったらしい。死んだ魚をコンビニ袋にいれて、公園に埋めようと外に出るが人目が気になって、裏通りのゴミ箱に捨てた。家に帰って来て、部屋に充満していた生臭さに吐いた。
水はベランダに捨てて、その日から水槽にはミネラルウォーターだけを入れている。
猫は、そんな部屋を落ち着かない様子でウロウロしながら、光が射し込むカーテンの後ろに隠れてみたり。
ふと気付くと、床に点々と液体が。おしっこをしたみたいだ。その時になって初めて、男は猫のトイレや餌を何も用意していないことに気付く。
男と猫が一緒に暮らすようになってしばらくしてから、男は部屋に女性を連れて来る。酔った勢いで猫を飼っているから見においでと誘ったらしく、女は明るい笑顔で猫にちょっかいをかけている。
女は水槽にも興味を示す。水だけしか入れていない理由。男は説明しようとするが、緊張しているのかどもりが出てしまい、女はよく分からない様子。そこまでは興味ないし、もう、いいよとも言えず、女は気まずい時間を過ごす。
それでも、女は遅くなっても帰らない。
夜中、目を覚ます女。隣ではいびきをかいて男が寝ている。猫が女に気付いてじゃれてくるが、女はそれを制止し、音を立てぬように身支度を整え部屋を出る。猫も一緒に出たがったようだが、それも玄関先で足で制止される。
翌日、男は目を覚ますが、ひどい二日酔い。女もいなくなっており、現実から逃げるように眠りにつく。
水槽の水の中にモヤモヤしたものが浮遊する。光が当たるとクラゲみたいにも見える。
男はそれを見て、水槽に水彩絵の具をぶちまける。水槽の水は様々な色が混じり合い、黒く濁る。
男は引きこもり、自暴自棄の生活を過ごすようになる。猫の餌もいい加減になり、苛立ちからきつく当たってしまうことも。背中を掴んで本棚に投げてしまい、猫の背中の一部の毛は抜けていたりする。
そんなある日、夜中、男はピチャピチャいう音で目を覚ます。暗闇の中、目を凝らすと、猫が水槽の上で踏ん張り、中の黒い水を飲んでいた。殴る振りをしたら、急いで飛び降り机の下に隠れる。
眠れぬ夜を過ごし、翌日の朝、男は水槽を綺麗に洗う。そして、疲れ切って眠りに就く。
猫は水が無くなったアクリル板で囲まれただけの水槽が光に当たって歪んだ模様を作り出すのに興味を示す。そして、水槽の中に入り込む。
狭い空間に慌て、外に出ようとするが足が滑って思ったようにいかない。男も眠り込んで気づかない模様。
ようやく、縁に足を引っ掛け脱出。でも、爪が剥がれ、血が出ている。
猫は光の射し込むカーテンの後ろに身を隠す・・・

男と女が、時折、物語中の若い男や猫の、その時を思い出すかのように視点をコロコロと変えながら話を展開する。
外界とは隔離され、純水だけが入った空虚で閉塞感のある水槽と、何事においてもどこか安易で、他人とのコミュニケーションを拒絶というか、閉じこもってしまい上手く出来ない、ある意味、純粋培養で育ってきた男が時間を過ごす狭苦しい殺風景な部屋みたいなものが同調しているのでしょうか。
純水でも純粋培養でも、現実世界に身を置いている以上、本当にピュアでなんていられる訳もなく、また、自身もそうなることを望まず、何かを求めてしまうのか、純水の中にはいつの間にやらモヤモヤと濁りが出来るし、男の心にも不安を煽るような黒い影がいつの間にか現れたようです。
それは、やがて、自分自身で汚れを大きくし、真っ黒になるまで追い詰めてしまったかのよう。背中の毛が抜けて傷ついた猫も、それは同時に男自身の今の姿になっているように見えます。
もう光は射し込んでも、その明るさは分からないでしょうし、黒さで外も見えないでしょう。
でも、男は夜中の暗闇の中で音に気付きます。そこに浮かぶぼんやりとした猫が黒い水を舐める姿。
男がどう感じたのかは定かではありませんが、濁りきって傷ついた自分の心を慈しみ舐めてくれる存在がいることへの安堵や、そんな濁りなどものともせずにたくましく生きることだけを見詰めて時を過ごす猫のたくましさみたいなものをイメージさせられます。
洗われて空っぽになった水槽は、少しすっきりした男の心のようです。
良かったようにも思えますが、世の中の嫌な事も含めて色々を吸収するクッションみたいな水を捨てて、空っぽから、またやり直してみるようなこれからの厳しさという印象を受けます。
何も無くなってしまった男が改めて見る外の世界は光が乱反射するアクリル板から外を見るように歪んでいることでしょう。
それに不安を感じ、焦り、慌てふためいて、きっともがき苦しむことになるのでしょう。
でも、いつまでもこんな閉塞空間の中でもがいていても仕方ありません。必死に自分の力を振り絞って、たとえ傷つこうとも外に出なくてはいけないのでしょう。最初は、傷ついた自分を癒し、不安から逃れるようにカーテンの奥に隠れてじっとしていたとしても、光を直接浴びる外に自分の身を置かなくてはいけません。
きっと、深い眠りから覚めた男は、猫の姿からそんなことを感じ、この部屋から勇気を持って出て行くように感じます。

濱本直樹さん(DanieLonely)と塩尻綾香さんの二人芝居。
洗練されたというか、上質というのか。
お二人で特に会話をするという形態をとらずに、話の筋を、淡々と言葉で重ねていくだけで、その景色を創り出し、その世界に惹きこんでいく。
まあ、何て素敵なお二人なんだと感動した作品でした。

・「キリコの諷景」 : ClickClock

昨年、拝見しているためか、変にストーリーを追わずに、心地よいリズムに身を任せて観る。
この作品はそんな風にリラックスして観た方がいいみたい。
昨年よりも、この力強い物語の魅力を味わえたように感じる。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/clickclock14071.html

汽車に乗った旅という設定からどうしても銀河鉄道の夜をイメージしてしまい、前回の感想は妹の死と決別して、自分の生を強く全うしようとする姉の姿にたどり着いているみたいです。
ただ、今回は何でか分かりませんが、そこはあまり強く感じませんでした。
上記したように、少し、漠然と観る感じにしたからかもしれません。
生と死を描いているのは確かでしょうが、姉妹の話は狭義的なものであり、作品自体にはもっと大きな人間としての生の捉え方という大義が隠されているように感じます。

世の中には、様々な人がいます。
金持ちもいれば、食うだけで精一杯の人もいる。そんな人たちの間には主従関係が生まれ、支配する、支配されるなんて不平等な社会も出来上がる。
健康な人もいれば、病気の人もいる。病気が治る人もいれば、治らない人もいる。その要因に金や地位が関わることだってある。
元気に長生きする人もいるし、若くして病に侵され死を迎えてしまう人もいる。
世の中、不平等と言えば不平等だろう。
でも、そんな人たち誰にでも、死は必ず訪れる。それはきっと、誰もが命を与えられ、生を得た時から決まってること。これだけは、人がどうであろうと、万人に共通のこと。きっと、誰にでも、太陽の光は平等に降り注ぐように。
だから、私たちには大切な権利がある。
それは、生の時間において、各々の幸福を追求すること。
幸福になることは、必ず祝福されるべきことである。二人が愛し合って結婚したら神に祝福されるように。
生あるものは、その生が終わる時まで、その権利を達成するために懸命に頑張る。それが生きること。
金やら地位やら健康やら。神様はみんなに同じものを与えて命を授けていない。万人に同じように降り注いでくれるのは太陽の光ぐらいか。
だったら、その浴びた太陽の光から、各々が幸福を得られるための種を作り出しながら、いつかは迎えに来る死という終着駅まで走り続けよう。
そんな感じの印象を受けました。

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コメント

SAISEIさん
観劇と丁寧な感想ありがとうございます。
自分が携わった作品もそうですが
関西小劇場の様々な上演作品に、
またSAISEIさんの観劇ブログがあがってきていて
嬉しく読ませていただいています。
キリコ初演も観られているのですね。
ありがとうございます
そして今回も
たくさんのことを受け取って下さり
本当にありがとうございます

投稿: teru | 2015年4月10日 (金) 01時09分

>teruさん

コメントありがとうございます。

久しぶりに拝見できて嬉しかったです。
まだまだ本ペースに戻っていませんが、徐々にまた、たくさんの作品を楽しませていただこうと思っています。
観るたびに、作品が成長するのか、観る者も成長するのか、感じ方が変わるのも、また長く観続けることの楽しみの一つですね。

投稿: SAISEI | 2015年4月11日 (土) 15時50分

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