« ~ゲキゲキ短編集Vol.2~【劇団「劇団」】150426 | トップページ | ゲシュタルトの肌【meyou】150429 »

2015年4月29日 (水)

火曜日のゲキジョウ【Micro to Macro×トランスパンダ】150428

2015年04月28日 インディペンデントシアター1st (35分+30分 休憩5分)

お題があるわけではないのですが、共通テーマは自分自身の卒業みたいな感じでしょうか。両作品とも、一人ぼっちで自信が無く、道を知らずうちに彷徨ってしまっている人が、その彷徨いから、自分自身を見詰め、さらにはその周囲に自分を想う人がいることに気付き、新たな道に踏み出すような話だったように思います。
そんな話を、生演奏を交えて熱く優しく描くミクマク色、不条理設定の中で切なく苦しみの葛藤から光を見出すトラパンというか、上田耽美色っぽい感じで、描かれていました。

・「クレイジーオレンジフォーユー」 : Micro to Macro

ママオレンジのいい匂い。
いつか一緒に本物のオレンジ畑に行こうね。そんな風景を想像しながら、母は思い浮かんだメロディーを息子と一緒に口ずさむ。
そんな息子も今や立派な小説家。
恋愛小説で賞を獲得。世間では恋愛の神様と呼ばれているのだとか。受賞会見に多くの記者たちから質問が飛ぶ。ご自分の経験談ですか、登場するツキコという女性は実在しているんじゃないですか・・・
本当は人と話すのは苦手だ。ましてや恋愛なんて。ボーッとしていると、バイオリンを弾くおかしな天使みたいなおっさんが現れる。会いたいんじゃないの。会わせてあげるよと。
翌日、男は担当の編集者からお叱りを受ける。あの会見の態度は何なの。ボーッとしちゃって。弟もやって来て、しっかりしてよと。仕方がない。どうやら、二人には天使のおっさんは見えていないみたいだから。
そんなことより、続編。恋愛経験が無いものだから、この二人に協力してもらい、シミュレートしながら設定を決めていく。二人が出会うまでを描いた前作。当然、続編は二人が付き合っていく姿を描かないといけない。経験が無いから苦労しそうだ。
何とか筆を進める中、寝てしまったらしい。目覚めたら、女性が料理を作ってくれている。ツキコだ。自分が思い描いている小説中のツキコが目の前にいる。急いで二人を呼ぶが、幻覚でも無い様子。
その日から、自分が描く小説のままに言動するツキコとの生活が始まり・・・

ある小説と映画を基に創られているみたいですが、映画は分からないけど、小説はきっとライ麦畑でつかまえてかな。人付き合いから逃げて、当然、恋愛からも逃げて、社会からも逃げているような男が、何で小説家になって、今、そんな経験も無い恋愛小説を書いているのか。それを幼き頃の母との思い出を思い起こすことで、自らがその分身として描き出したツキコという女性を通じて、見詰め直していくという、成長物語でしょう。
ちょっと短かったような気がするかな。じっくりと進むツキコとの時間に対して、その時間にピリオドが打たれる最後の方が少々、慌ただしさを感じる。
ツキコとの時間は、何をしても、とにかく楽しい恋愛の陽の部分と、いつかは終わるんじゃないか、分かち合い、想い合いがどこかで飽和するんじゃないかみたいな影の部分も垣間見せながらの恋愛像がコミカル、かつ綺麗に描かれていたように思います。
最終的に、男は自分の思いのままに存在するツキコには、心が無くなってしまうことに気付き、彼女もまた、その心が自分のどこにあるのか悩み苦しみます。
ツキコには心のままに生きて欲しい。本当に男が小説の中で描きたかったツキコはそんな女性だったようです。
男は、幼き頃に母と約束したオレンジ畑にツキコを連れて行き、そこであの歌を唄うツキコを見詰めながら、彼女が自分自身で輝き生きていける時間と場所を与えて、自分との決別を決意します。
女性の名前がツキコ、月をイメージするからでしょうか。観終えて、こんなことを考えています。
子供は、年齢的な問題じゃなくて、大人になれていないという意味で、自分もそんなところがあるような気がしますが、太陽のように自分を照らしてくれることを相手に求めてしまうような気がします。それは、相手に大きなエネルギーを求めることになり、自分が照らされるだけ、相手を輝かしてあげれていないことに繋がるように思います。要は、勝手で逃げていて、本当に想い合えていないような幼稚な恋愛観。
でも、大人は自分、地球を照らしてくれる太陽では無く、相手自身も同じように何かに照らされて輝いている月であることを求めるのではないでしょうか。そして、月のようにいつも寄り添っていて欲しいみたいな。地球と月を照らす太陽。そんな二人を共に輝かせる太陽を一緒に見つけようとしながら、同じ時を過ごすのが本当の想い合い、恋愛のような気がします。
基準点5点に、役者さん、特に主人公の方の熱演に+2点、少しラストが急速なのと、全体的なメッセージがぼやけ気味に感じるところに-1点、この劇団、好きだから+1点の7点評価。

・「ケミカル・ブラザーズ」 : トランスパンダ

ある日、何か部屋に違和感を感じる男。彼女に聞いたら、掃除をしたのだとか。嫌な予感がする。
そう、自分の大切なケミカルが捨てられた。
どうしてそんなことをと、高ぶる怒りを抑えながら、彼女を責める男。
私とケミカル、どちらが大事なの。そんな言葉を背中で聞きながら、男は家を飛び出す。
気付くと、ド田舎の道でひっくり返っている。どうやら車に轢かれたみたい。そして、記憶も定かじゃない。
頭の悪そうなギャル二人組に病院に行けと言われるが、事情を話す。おぼろげに残っている記憶だが、自分はケミカルを探さないといけない。
見た目とは違い、親切な子たちで町まで車で送ってくれる。
とりあえず、しまむらに入ってみる。さっきの子たちとそっくりな店員がいて、接客をしてくれるが、求めているケミカルではない。
彷徨っているうちに、天神橋筋商店街に着いたみたい。浜翔を歌うおかしな男がいる。ケミカル探しに協力してくれるらしい。巨大な商店街だから、ありがたい。
そんな中、ケミカルを全身に纏うイケてるのか、イケてないのか分からない男が現れる。西のケミカルマスターらしい。尾崎を唄い、そのかっこよさで地元のキャバ嬢とも付き合っている模様。
そこに東のケミカルマスターも現れる。東だからか、ちょっとクールだ。東のケミカルマスターは引退するらしい。いつまでも、こんなものにこだわって生きているわけにはいかない。結婚もしないといけないんだから。
男は思い出す。幼き頃のことを。近所のケミカルが似合うお兄さんと母が一緒にどこかへ行ってしまったことを。その日から、父との会話も少なくなった。
傷つきたくないから、人と深く接しない。一人が好きだけど、一人は嫌。そんな逃げていた自分。
自分のとって、ケミカルは逃げている自分の正当化だったのか。
男は決意する。帰ろう。全てを壊して・・・

自分を縛っている価値観を壊して、前へ進むようになる男の成長物語でしょうか。
男にとって、ケミカルは自分をかっこよく魅せるとか、輝く自分を創り出すものでは無かったようです。過去の辛い経験から、自分が想われていることに自信が無くなったのか、そんなケミカルにしがみつくことで逃げていたのでしょう。
西のケミカルマスターみたいに、勘違いのようにも見えますが、まあ、きっと本人自身はケミカルで自分が輝いていると思っているのですから、それならケミカルというものにこだわり、ポリシーを抱くことはいいようにも思います。でも、、何かから逃げるための材料としてケミカルがあるなら、それはいつの日か捨ててしまわなければいけません。例えば、東のマスターのように。きっと、それは西のマスターがケミカルを捨てるよりも、ずっとずっと辛いことだと思いますが、そうしないといつまでも囚われたままになってしまう。
本当の想いを曝け出すように熱く唄う尾崎ではなく、どこか斜に構えて社会を俯瞰するかのような浜翔みたいな形でも、そんな何かに縛りを受けて生きる人を描いているようです。
男はケミカルを探す旅で、ケミカルによって生み出される自分の可能性と対峙したようです。
なぜ、こんなにまでケミカルにこだわっているのか。ケミカルは自分にとって何なのか。本当にケミカルが好きなら、西のマスターのような道だって選択できたはず。でも、それは今の自分の進むべき道ではなく、ケミカルに抱く想いも異なったのしょう。むしろ、ケミカルを捨てる東のマスターの姿こそが、今、自分が進まないといけない道だと考えたようです。その答えが出た時、彼はケミカルを捨てる、これまでの自分を破壊する決断をします。その決断は、本当なら、いつも自分は一人なんじゃないのか、また傷つくんじゃないだろうかと思ってしまう男にとっては難しかったはずです。でも、男はもう一つ、大事なことにも気付いています。それは、今の自分には帰る場所、帰って待ってくれている人がいること。そして、そんな彼女がいたからこそ、自分がこんなケミカルを探す旅に出られたことを。
男はきっと、帰って、今度は愛する女性と一緒に、自分を縛り付けるのではなく、二人が喜び合えるような素敵な価値観を探す旅を始めるはずです。
基準点5点に、不条理設定なのに、妙に納得のいく面白さ+1点、主演の上田耽美さんの狂おしくも魅力的な姿に+1点の7点評価。

|

« ~ゲキゲキ短編集Vol.2~【劇団「劇団」】150426 | トップページ | ゲシュタルトの肌【meyou】150429 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

SAISEIさん
観劇ありがとうございます
そして、いつも
丁寧な感想ありがとうございます。

月と太陽と
相手を光らせて自分も光ること目指そうとする
人間を感じてもらえて
もうそれだけでとてもとても嬉しいです。

役者のみんなはほんまに大汗かいて
楽器で指にタコつくたり腫れあがらせたりして
がんばってくれて
短期間でもの凄い集中してつくった
私にとっては心に残る作品になりました

好きな劇団と言ってもらえて
凄い嬉しいです
本当にありがとうございます

またぜひ、ご観劇ください!
よろしくお願いします

テル


投稿: teru | 2015年4月29日 (水) 13時08分

>teruさん

コメントありがとうございます。

長編にしても見応えがあったような作品でしたね。
役者さんの熱はいつにも増して感じました。
一言一言が、ビリビリと物理的にも心理的にも響いていましたから。

また、次回作で。

投稿: SAISEI | 2015年4月30日 (木) 15時27分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 火曜日のゲキジョウ【Micro to Macro×トランスパンダ】150428:

« ~ゲキゲキ短編集Vol.2~【劇団「劇団」】150426 | トップページ | ゲシュタルトの肌【meyou】150429 »