ハローハローハロー【TheStoneAgeヘンドリックス】150425
2015年04月25日 トリイホール (100分)
ネタバレなので、ここでは書きませんが、あっと驚く展開。
でも、この展開が、いつも以上に、互いの心に触れる時の人の優しさや温かさを醸しているように感じます。
想いが通じ合っていく。それが互いの身体の中を流れていく。
そんな姿が、本当の分かち合い、家族としての絆であることを考えさせてくれる作品でした。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は水曜日まで>
今日は亡き母の13回忌。
仕事で大阪に出てから数年。ようやく大阪での生活にも慣れてきたミト、26歳は田舎に戻っている。
13歳の娘を残して、31歳で亡くなった母。
それからは、母の親友が母代わり。厳しくも優しく、母として振舞ってくれた。
もちろん、お父さんだって父手一つで大切に育ててくれた。大学にも行かせてもらって、今では経理の仕事をしている。ちょっと辛いこともあるんだけど、まあ楽しくやっています。みんなから聞かれたらそう答えている。半分は本当、半分は嘘、強がりってところだろうか。
法事も済ませ、みんなが家に戻って来る。
懐かしい顔ぶれ。
父のお兄さんは、ちょっと変わっているが、とてもいい人。奥さんと別れた後は自由奔放に生きている様子。母の親友、つまりは自分の母代わりの人にどうも想いを寄せているらしく、彼女の到着を今か今かと待っている。彼女は、自分は親族じゃないからと式には参加せずに線香だけをあげに来ることになっている。しびれを切らせて、息子に様子を見て来いなんて言って、何のPRなのか、いつの間にかダサい若者風ファッションに着替えている。
息子、つまりは従兄弟になるのだが、彼とは同級生なので仲良し。その彼女との方が仲がいいかな。何でも相談し合える仲。彼女もまた同級生で昔のバンド仲間であるから。自分はもう辞めてしまったけど、彼女は未だロック魂を燃やしているらしく、ファッションもバリバリだ。恐らく、後から来るであろう母代わりの人にきつく叱られるだろう。
母の弟も。つまりはおじさん。とても楽しく気のいい人なんだけど、どこか裏があって怖い。いつも笑顔だけど、目の奥は笑っていないような。他の人曰く、彼はこの家を乗っ取ろうとしているのだとか。でも、このおじさんは、母が亡くなった時、血縁がない父の家にいるのは辛いだろうと自分を引き取ろうとまでしてくれた。
そう、父とは血が繋がっていない。いわゆる連れ子。
まだ高校生で父親が誰かも分からなくシングルマザーとなるはずだった母と結婚したのが今の父。母を父に紹介したのが母の親友だったというわけ。まさか、結婚に至るまで父が惚れるとは思っていなかったようだが。
みんな、揃ったよ、お母さん。
この日ぐらいは、あの世からやって来て、久しぶりに、この家に戻って来ているのかなあ。
そんなことをみんな思いながら、仏壇に手を合わせる。
実は、本当に戻って来ている。お母さんは。なぜか、怪しげなロシア人と共に。
皆には見えぬ姿で、ロシア人が色々と物珍しいものにテンション高くしているのに付き合いながら、大きくなった娘、すっかり妙齢になってしまった親友、いつまでも自分を愛し続けてくれているのであろう夫たちを見詰めているようだ。
ミトは初めて会う人がいる。
父の会社で働く経理の女性。少し話しただけだけど、とてもいい人だと感じる。不思議と懐かしい優しさなんかも感じたりして。
父に呼ばれる。何か話があるみたい。でも、どうも父がウジウジしてはっきりしない。何。言いたいことあるなら言ってよ。それでも、歯切れが悪い。
そんなことをしていると、従兄弟と彼女がやって来る。お久しぶりです、おじさん。あの女性とはもうそろそろ結婚するんですか。父の顔色が変わる。従兄弟の顔は明らかに何かをしくじった時のものだ。不用意な発言をしてしまったと焦りまくっている。
結婚。再婚ってこと。あの経理の人と。お母さんはどうなるの。もう、この家に戻って来れないじゃない。酷過ぎる。勝手過ぎるよ、お父さん。
ミトは家を飛び出す。
お母さんも知らなかったみたいで、とりあえずウォッカを飲んで気を落ち着かす。
さすがのロシア人も、その酒の煽り方に心配そう。
でも、すぐに気を確かにする。
それでいい。あの人が幸せになってくれたら。
ロシア人は、仏壇の傍にある犬のぬいぐるみを見つける。昔、ミトが気に入っていたものだ。可愛く動くなんて教えたら、またテンション上がって動かそうとする。でも、動かない。電池切れか。代えの電池は無いようだ。がっくりするロシア人から、ぬいぐるみを母は取り上げ、電池をいじる。こんな時は、ちょっと電池を入れ替えたりしたら、動く時がある。ほら、動いた。ロシア人、大喜び。可愛い犬のぬいぐるみに、お国のおもちゃ、マトリョーシカを見せて遊んでいる。
それにしても、ミトももう少し大人にならないと。お父さんの気持ちが分からない訳じゃないんだろうけど、素直になれないのかねえ。
そんなことをつぶやきながら、ミトを心配する母。
電池みたいに入れ替われたら、気持ちが分かり合えるのに。ロシア人はおかしなことを言っている。でも、本当にそうだ。入れ替われたらねえ。
ここまでで、だいたい、この家族の状況は掴める。
血の繋がらない父と娘。亡くなってしまった母。
再婚したら、今までの家族が壊れてしまうんじゃないかと思ったのだろうか。
でも、自分を大切にしてくれた父が愛するようになった人。その人とまた家族となっていく。
そんな姿が、まさにこの劇団お得意の家族の温かさを醸しながら、もはや、作・演の朝田節と言っていいのではないか、これまで拝見した作品のごとく、優しく明るく楽しく、周囲の人を絡ませながら、父と娘の分かち合いへと繋げていくのであろう。
そんな気持ちでどっしり構えて観ていた。
ところが、予想を超える展開が用意されていた。
マトリョーシカには願いを叶える力があるらしい。
入れ替われれば・・・
本当に入れ替わる。父と娘が。役者さんで言えば、緒方晋さんと片山誠子さんが。
いや、それはベタ過ぎるし、無理だろうなんて、衝撃を受けて、その後を見守る。
これが、見事にはまっている。両役者さんとも、小演劇界では名を馳せる名役者さんだから当たり前と言えば、そうなのだが、実に巧い。
互いの身体に入り込み、分かっているようで分かっていなかった相手の気持ちが、じんわりと染み込んでいく姿。切なく、優しく、温かく。そんな、心が通じ合っていく、気持ちの流れが見えるかのような素敵な演技。
そんな相手の気持ちが伝わって、少し痛かったり、じっくりと噛みしめたりする様がまあ素敵で素敵で。ホロリと涙ものでした。
父と娘が入れ替わってしていることは、全て、相手の想いを汲み取ること。入れ替わった本人同士だけでなく、再婚相手となる女性や母代わりの人、従妹や彼女、おじさんの想い。
そこから、自分でも分かっていなかった本当の気持ちが浮き上がっていく。
相手に寄り添い、その想いを汲み取り、そこから、自分が想われていることや自分の本当の想いを知る。そこから絆が生まれる。
それが家族なら、同じ血が流れているとかではなく、通じ合った心の中にある想いが互いに身体を巡っていることこそが大事なのかもしれません。
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コメント
ブログ拝見しました。どんな展開になるか楽しみにして、水曜日に観に行ってきます。(^-^ゞ
投稿: 南洋 | 2015年4月27日 (月) 20時30分
>南洋さん
コメントありがとうございます。
きっと、あっと驚く展開に、さすがの役者さんの魅力を存分に味わえると思います。
お楽しみください(゚▽゚*)
投稿: SAISEI | 2015年4月28日 (火) 09時35分