さらば、ロミオ【劇団ぎぶあっぷ】150425
2015年04月25日 芸術創造館 (100分)
めちゃくちゃ面白いし、巧い。
見事な喜劇。でも、悲劇でもある。色々な意味で。
舞台の表裏を切り替えながら、片や喜劇、片やミステリーといった同時進行で話を展開。
そして、最後には、客を楽しませて帰らせるという劇団のポリシーが浮かび上がる仕組み。
巧妙な作品にとても満足。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は、日曜日まで>
ある劇団の公演。
作品はロミオとジュリエット。
スーツ姿の作・演の方が前説をする。舞台には出ないのだろう。
舞台にはまだ半透明の幕が張られており、しっかりと作り込まれた舞台セットと華麗な衣装を身に纏う役者さんがシルエットで映し出されている。
やがて、前説も終わり、一同、礼をして、順に舞台を去る。最後に残ったのは、顔は見えないが恐らく、主人公のロミオか。華麗に礼をきめて、立ち去ろうとしたその時、彼の頭上に天井に吊るされていた月が落ちてくる。卒倒したかのように、直立不動で舞台に倒れる。一瞬、ドキッとしたが、かつてのドリフのような演出か。掴みで笑いをといったところなのだろう。
一向に舞台が始まらない。何か裏でバタバタしている空気も漂う。
先ほどの作・演の方が再び出てきて、トラブルがあったため、少しお待ちくださいと消えいるような声で語り出し、暗転後、舞台が映し出される。
舞台にはほとんどの役者さんが集まっている。いない人は、ロミオを病院に搬送しているのだとか。
舞台にこびりついた血痕をひたすら拭き取ろうとしている者、あまりの出来事に腰を抜かしている者、この状況を他人事のようにちょっと楽しそうにしている者、どうしていいのか分からず手持ちぶさたの者・・・
とりあえず、ロミオがいなくなってしまったという事実。
公演中止か。いや、代役を立てて何とかするべきか。
演劇を始めて数ヶ月の新人を抜擢するか。彼なら練習でロミオのセリフや動きを全部覚えている。ちょっと試してみたらまずまずの出来。稽古で出来ていることが、本番では出来ない。それが新人。そんな厳しい意見もある。
気の強さそうなジュリエットは、こんなロミオじゃ自分の魅力が完全に出せないなんて言っている。事故で搬送されたロミオは、狂気的なファンが毎回、劇場に押し寄せるほどの人気者。確かに、相方としては、不十分過ぎる。じゃあ、私がジュリエットをしてもいいけど。自分の役に納得いってないのか、私なら自分の魅力を引き出しますけどなんて、ちょっとケンカ腰の女優も。
ちょっと落ち着こう。人が死にそうな状況で公演も何もあるものかと正論を唱える者。
だったら、作・演がロミオをしたら。いいや、ダメ。彼は舞台には立ってはいけない人だから。劇団の古株はかつてのことを思い出すように、否定する。昔、何かあったようだ。
結局、公演中止での損害など、大人の事情も考慮して、公演は続行することに。新人は無理だ、嫌だと泣き叫んでいるが、おだてて、なだめ、なんとかその気にさせる。
舞台が始まる。
上手くいくわけがない。
結局、ロミオは舞台で醜態をさらし、その姿にジュリエットがブチ切れるという有様。
何とか1幕を終えて、休憩。
舞台セットを組んだ役者の一人が、気になることがあると天井を調べる。
ワイヤーが切れている。しかも、自然ではなく、誰かが故意にした形跡がある。
恐らくは関係者。つまりは、この中に犯人がいる。
しかも、ロミオは死んだという連絡も入る。
殺人事件。
これでも、まだ公演を続けるのか。
弔い公演だと急に張り切る者、やってられないと舞台を去る者・・・
再び幕が上がる。
果たして、犯人は見つかるのか。そして、この舞台の行方は・・・
舞台の表裏を切り替えながら、表では、明らかにおかしくなってしまったロミオとジュリエットで笑いをとる喜劇、裏では殺人事件の謎明かしが進行するミステリーといった感じの巧妙な作り。
役者さんも、役としての自分、役者としての自分を切り替えながら、役を魅せたり、役者としての考えを押し出されていきます。
作品としてのロミオとジュリエットという単純そうで複雑に入り組み合う人間関係と、この劇団内でも色々とある人間関係が複雑に相互に絡み合うという形で、話が進行させながら、最後は、その中に、自分たちには楽しませたい客がいるという、この劇団としてのポリシーみたいなものも垣間見られます。
非常に巧妙で楽しい作品でした。
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