« ツキノウタ【満月動物園】150308 | トップページ | オルタソフィア -憂国の革命因子-【劇団ZTON】150312 »

2015年3月11日 (水)

火曜日のゲキジョウ【Sweet Dreams×努力クラブ】150310

2015年03月10日 インディペンデントシアター1st (30分+30分 休憩10分)

火ゲキ復活から、観た二つの作品の評価用紙をもらうことになっていますが、今回初めて、両作品ともに10点満点をつけてしまいました。
真逆の感覚の作品だったのですがね。
何か共通のキーワードを考えるなら、距離でしょうかね。
父と母と娘という家族の距離。現実から逃れる男と非現実世界に身を置く女の距離。
その触れ合いが描かれているようでした。
まあ、観終えて、光り輝く青空を見上げたくなるような感覚になるのと、地面の中に潜り込んで身をしばらく潜めたくなるような感覚になるという最後があまりにも対照的ではありますが。

・「あした天気になぁれ」 : Sweet Dreams

高校生の娘の部屋にヒュッと入ってきた父。
年頃の娘だから、娘もそりゃあウェルカムというわけにはいかない。
不機嫌そうな顔をして、父を睨みつけるが、父はおちゃらけてばかり。
まあ、いいじゃないか。もうこれで最後なんだから。
そんな父の言葉に娘は複雑な表情を浮かべる。
階下からは、母の早く支度をしなさいという声が聞こえてくる。
父は娘にこれまでのことを思い出しながら会話する。
幼き頃、自分が目を離したばかりに娘が怪我をした時のこと。病院で怒る母に正拳を喰らい、あばらをいかれたらしい。
母との馴れ初め。武道に優れた女性だったらしく、チンピラに絡まれているところを助けてもらったのが出会い。自分が母を助けた話に捏造して話すが、既に娘は母から真実を聞いていたみたいだ。ということは、あの恥ずかしいプロポーズも。僕を幸せにしてください。最後だというのに、娘にカッコつけるのはなかなか難しい模様。
娘も心を開いて喋り出す。母はあの性格だから、何か突っかかってくるみたいで、ついつい反抗しちゃう。見舞いにあんまり行かなかったのは、やっぱり怒ってるのかな。ずっと、これまでも、これからも一緒が当たり前だと思ってたから、不安で。病院に行けば、そこには幾ら逃げても事実が待ち構えているから。
悲しみと不安が交じる複雑な感情を押し殺して喋る娘。この子も母と一緒で気丈なんだけど、とても優しい子なんだろう。残して旅立たざるを得ない娘に対して父は言葉を残す。
あした天気になぁれ。辛いことがあった時は、いつも母とこう言って乗り越えてきた。
そろそろお別れかな。幸せだった・・・

まあ、この時点で、父と娘のどうしても距離がありながらも、互いに近づいていき、優しく心を触れ合わす姿にウルウル。
森崎正弘さん(MousePiece-ree)の父として、男としての優しさ溢れる姿に惚れ惚れ。
話には続きがあります。
この後、シーンは切り替わり、母と娘の会話に移行します。
世の中は、こんなことがあっても、別に普通に動いている。どうして、うちがこんな悲しいことになるのだろう。言っても仕方が無いことを口にしながら、悲しみを押し殺す母。
娘は父が自分に残した言葉を叫びます。あした天気になぁれ。
どうして、この言葉を娘が。驚きの表情を浮かべる母。あまりにも声がでかいので、近所迷惑だしと、得意の絞め技を娘にかけて黙らせますが、その言葉は母の悲しみを優しい想いで包み込んでしまったようです。
自分の父が亡くなった時、こんな感覚になったなあ。
通夜、葬式を終え、火葬をして、遺体の焼却を待つ間、夏だったのでギラギラと暑い中をブラブラと散歩していた時、ビュンビュン走る国道の車を見ながら思ったのだっけ。
何か、自分だけが世の中の外にいるみたいで。本当に世の中の外にいるのは、まさに今焼かれている父のはずなのに。孤独や不安、そしてなぜか苛立ちの交った怒りが湧いてきたことを覚えています。だから、この作品の母の言葉にはとても納得がいきます。
この作品、凄く感情移入できるなあと改めて思うのは、父は娘に姿を見せますが、母には見せないんですよね。
ちょっと話は違うかもしれませんが、私の父はアイスバケツチャレンジで少し有名になったALSだったので最後、寝たきりでした。
だから、下の世話、それこそ鼻くそ、耳くそまで、そんな介護は全て妹にさせていました。私にさせなかったのは分かります。男同士でプライドがありますから。でも、父は娘を溺愛していましたから、どうしてそんな汚い介護を母ではなく、大好きな妹にさせるのかがずっと分からなかったのですが、そんなことをこのブログに書いたら、ある方からコメントがきて、それで理解できた気がしています。父にとって、妹は娘ですが、母は女だったんだろうと思います。父は父でもありますが、男でもありますから。最後まで女にはカッコつけたいし、出来ることなら不安な想いを少しでもさせたくない。だって、きっとプロポーズは互いに幸せになることを誓って結婚したのでしょうから。
この作品で父が母の前に姿を現さないのもそんな感じなのかなと思います。
愛といっても、娘に対して、妻に対してはまた別のものなのでしょう。
そして、この作品からはそんな愛を超えた、人を想う優しい気持ちが浮き上がってくるのです。
父は娘に、父としての想いを伝え、娘からもその想いを受け止めて旅立ったみたいです。
娘は、その受け取った父の想いを、自分の娘としての母への想いと共に伝えたようです。それが、娘の気が触れたように連呼するあした天気になぁれのシーンに繋がっているように思います。
母は、結局、娘を通じて、愛した夫と娘の二人の想いを受け取ったのでしょう。
確かに、何で自分のところだけがこんな悲しい目になんて思ってしまうでしょう。残された母と娘の空間は、悲しみに溢れ、世の時の流れから、一時止まって存在しているように思えます。
でも、同時にそこは、そんな悲しみ全てを包み込んでしまうくらいに、家族の想いに溢れる空間ともなっており、そんな想い合いをこれまで刻んできたという大切な時間が、残された二人をこれからの時間にまた繋げていくように感じます。
基準点5点に想いを描いた素敵な脚本に+1点、森崎さんのあまりにも素晴らしい名演に+2点、女優さん方の心の内に潜めた心情表現の巧みさに+1点・・・
もう10点満点でいいやということで、満点評価にしました。

・「憶えていてもらえない人の冒険」 : 努力クラブ

同棲していた彼女に突然、出ていかれ、友達に誘われて初めて風俗にいく20歳の男。
付いてくれた27歳の女性。
最初は何気ない会話。でも、突然、孤独の中に放り込まれたような男にとっては安らぎの時間になったらしい。
指名して、2回目、3回目と店に通う。
つい、こないだ道で彼女、正確には元カノと出会った。無視された。自分のことなど知らないふりをされた。
さみしい。
そんな気持ちをここは癒してくれる。
ここでは、自分のことを憶えていてもらえる。甘えることもできる。
お金を払っている嘘の世界だとは分かってはいるが・・・

舞台には椅子二つだけ。そこに男と風俗嬢がマイクで囁き合うような会話劇。
30分で男が沈み込んでいく姿を見る。
一緒に沈み込んでしまいたくないから、引いて見る。
舞台にいる男の姿は、もしかしたら自分となる可能性だって否定できないぐらいの現実感が漂うから。というか、ちょっと近い経験があるなあなんてことも頭をよぎる。
あれが自分だったら笑えない。でも、舞台にいる男の姿には笑える。
安全な場所にいて、ズブズブと沈んでいく人の姿を笑うのはとても不謹慎だと思う。でも、だからこそ面白かったりする。
観終えてモヤモヤするのは、そんな罪悪感か。虚構とはいえ、男を救ってあげられず、堕ちるところまで堕ちた姿を見てしまったからだろうか。
20分ぐらいで、もういいよ、辞めようよこれ以上、最後、絶対やばくなるってと思いながらも、堕ちるところまで堕ちた男の姿を残りの10分で期待してしまっている。
そして、本当に、見事にダメになってしまった男の姿を見る。
なぜか泣けるのは、哀しき男への憐れみの涙か、救われなかった男と自分を重ねた悔し涙か、それともずっと苦笑いしていたから出てきた涙なのか。
評価はよく分からない。とにかく、これは凄い作品だわと10点をつけてしまった。なんか、騙された感も残る。

|

« ツキノウタ【満月動物園】150308 | トップページ | オルタソフィア -憂国の革命因子-【劇団ZTON】150312 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

昨日いやもう一昨日は寒い中立ち話させてしまってすみませんでしたm(_ _)mお風邪などひかれてませんか?さて「明日天気になあれ」ですが三原さん堂々たるものでしたね。「おぼろ'14」でミ~だかケ~だかされててSAISEIさんへのコメントで澤井(さんでしたよね)を印象に残った役者に挙げていたら三原さんもいいよ、とコメ返いただいて今回それを楽しみに予約しました。そして小野愛寿香さん。今My boomの女優さん。今が旬の役者さんですね。無理なく幅広い年齢の役や境遇を演じられる方だと思ってます。そして森崎さんの好演。私も印象に残りました。初見だと思いますが今回の役はハマリ役でしたね。ちょっと調子のいいお父さんですが(笑)芝居のほうは良かったのですがキレイすぎたのと何か足りない感じがして9点つけようと思ったんですが8点かなあと思ったり(笑)8.5点があれば(笑)でもSAISEIさんの感想読むと9でもいいかと思います。あ、ちなみに私は最高9しかつけないつもりなので(笑)10は勝手に書いてしまうくらいの作品にしたいなと(笑)失礼ながらSAISEIさんが今の心情的にそんな感じやったんちゃうかな?と思います。でも確かに良かったです。「憶えていてもらえない人の冒険」はこう来たか、と(笑)面白かったですね。観る前に合田さんとお話して好き嫌いがわかれると思いますと言われたのに合田さんの作品はいつもそうでしょ、と失礼なツッコミをしてましたが。合田さんの作品の中では一番僕には合いました。ただ20分くらいがベストな作品かと。あまり動きがない作品なので30分やと後半だれるしだれた空気も漂ったように感じます。でももともと50分の作品だったんですって(笑)振られるところからシーンはあったようです。でもよく30分続けたな、とその勇気に敬意は表します(笑)過去作品面白さがわからなくて月曜日に検索してたらやっぱり合田さんの面白さがわからなくてワークショップに参加して何となく合田さんが何をやりたいかわかった、というのを読んだりして合田さんへの理解を深めています(笑)まあアハハというからっとした笑いではなくニヤニヤという笑いを追究したはる感じはするかな。ひつこく続けたりとか…スペドラにも参加しはるし大阪に出てきましたね。ちなみにトリビアですが努力クラブのクラブは蟹ですよ(笑)ご存知でした?

投稿: KAISEI | 2015年3月12日 (木) 01時31分

>KAISEIさん

Sweet Dreamsはいい旗揚げ公演になりましたね。
共に関西を代表する役者さんを両親に備え、三原さんご自身も負けずの熱演。今後の期待も込めての満点でした。
努力クラブ。あれ、凄い好きなんですけどね。でも、50分は確かにきついですわ。本公演も楽しみです。
凄いトリビアじゃないですか。そんなこと知っている人、珍しいじゃないんです。考えることなく、倶楽部だと思いますもの。

投稿: SAISEI | 2015年3月14日 (土) 13時10分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 火曜日のゲキジョウ【Sweet Dreams×努力クラブ】150310:

« ツキノウタ【満月動物園】150308 | トップページ | オルタソフィア -憂国の革命因子-【劇団ZTON】150312 »