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2015年3月29日 (日)

珈琲が冷めるまでの戦争【futurismo】150328

2015年03月28日 コモンカフェ (60分)

非常に面白かった。
話としても、そして特殊な観劇スタイルや演出も。
これ以上、ネタバレ無しに感想が書けない。

観れて良かった。早々と満席になり諦めていたが、急にキャンセルがあったとTwitterで情報が入ったので、残り1席を運よくゲットできた。
こんな面白い作品を観逃さなくてラッキーだったということに尽きる。

<以下、ネタバレしますので白字にします。公演は火曜日まで>

喫茶店が舞台。
客はそのまま透明人間として椅子に座る。
これだけでもかなり新鮮で観る面白さが倍増といったところだが、最後に作品における私たち客の本当の存在が明かされ、唖然とさせられる。

男と待ち合わせをしている女性。
喫茶店の常連客で別れさせ屋とかいう嫌な仕事をしている彼氏がいる女性。
デリカシーに欠けたおとぼけ男性バイト。
待ち合わせの女性がこれから来る男と別れ話になるので、別れたくないから上手くフォローして欲しいとバイトに頼むところから話が始まる。
バイトは調子乗りなので、任せろと言って張り切っている。
別れさせ屋の彼女は人任せじゃなくて自分で決めることだと反対している。

どう考えても別れた方がいいような格好も言動もいい加減でチャラチャラした男がやって来る。
予想どおり、別れる、別れないの修羅場を迎える。男の取り繕った意味不明な言い訳や完全に的を外したバイトのフォローも思っていたとおり。
そして、その男の浮気相手らしい、これまたどう考えても手を出すべきでない性悪女がやって来る。
男は完全にこの女に騙されている。
女側に立てば、これを機会にこんな男とは別れた方が良しだが、男側に立てば、何とかよりを戻した方が間違いなく幸せだ。一時の気の迷いだったと許してもらえないものか。
幸い、女は元々は別れたくないと言っていたので、何とか踏みとどまってくれればと感情移入して傍観する。
ただ、どうもこの状況を影で操っているような人の空気が感じられる。スムーズに事が進みそうになると、何か邪魔が入っているような感じ。
そんな中、別れさせ屋の男がやって来る。
この状況は、もしかしたら、全てこの男の計画したものなのか。
でも、それにしては、別れさせ屋の男にも、上手く事が運ばない焦りの色が見える。
各々の着地させたいところが分からない中、この一連の顛末の真実が浮き上がり・・・

結局、二重の思惑が交錯して混乱を招いていたみたい。
別れたくないとか言いながら、本当は別れたかった女は、別れさせ屋の男に、自分が悲劇のヒロインとなるようなシナリオで上手く別れることが出来るように依頼する。
別れさせ屋は、部下の状悪女を使って、女の彼氏にハニートラップを仕掛ける。まんまと引っ掛かってくれたので、男から別の女を好きになったから別れたいと言わせることに成功。ミッションクリア。
でも、このシナリオに別の圧力が介在する。
別れさせ屋の彼女は、こんなことは良くないと、性悪女に接触。二人が別れることが無いように振る舞えと独自で依頼をしていた。
前半、この性悪女のひどい言動で、二人の仲に亀裂が入りそうになったが、何とかもちこたえたといったような別れさせ屋の彼女の思惑どおりにシナリオが進みそうになる。
ところが、その場に別れさせ屋がやって来てしまう。
当然、性悪女は上司と依頼者の狭間に立つことになり、言動が支離滅裂となる。
別れたがっている女は、一向に事が進まないこの状況に痺れを切らせる。もう無理だと開き直った別れさせ屋の部下。別れさせ屋の彼女は、どうなっているのか訳が分からずパニック状態の別れさせ屋に全てを告白する。

なるほど、少し別れさせ屋のキーワードから読めてしまうところもあるけど、面白く巧妙に出来た話だなあ。
そして、ひどい女だなあ。完全に病んでるけど、確かにフるより、フラれる方が気楽なところもあるからなあ。
性悪女は上手く立ち回って汚らしい。まあ、これも生きる手段か。男もいい経験になっただろうが、失ったものも大きいわな。
別れさせ屋の彼女は、いいことしようとした感じだけど、本当はこれを題材に、彼との仲を修復しようとしただけじゃないのか。人の恋愛を食い物にしてあざとさがあるな。大義名分を作って、自分の思いを正当化して実現する。やっていることは、彼女が非難する別れさせ屋を使って別れようとした女とさほど変わらない。
・・・と、色々と勝手に批評。ここに至るまでも、各段階で、男ひどいなとか女の子、可哀想とか好き勝手に思いながら観る。
実は、この一連は、バイトによってツイキャスされている。
最後は、そんな高みの見物を決め込んで、終始ニヤニヤしていたのであろうツイキャスを見ていた人たちに、別れさせ屋の彼女が本当に悪いのは誰なのかと強烈な皮肉を飛ばして終わる。
これは同時に、色々なことを勝手に考えてのぞき見をしていた私たち客への非難でもある。
私たちも、身の安全を確保した上で、心の中できっとツイキャスのように様々な罵詈雑言を発していたはずだから。

恐らく、ここに持っていきたかったんだろうな。
恋愛もつれ話という誰もが興味を持ってしまう話をベースにして、自分は安全な場所に身を置いてその解決に乗り出そうとはしない。ニヤニヤ、第三者として、所詮、他人事とちゃちゃを入れるのみ。そんな今のネットを含めた風潮を描きながら、同時に観劇という映画とかとは異なり、生身の人間同士が創り手と受け手として狭い空間に置かれながらも、しっかりした境界線を引かれた状態にあるという特殊な空間をあらためて感じさせているようです。
最初、どの席に座るのかけっこう迷った。本当の喫茶店スタイルの客席になっているので。
予約席と書かれたところは役者さんが座るので、そこには座れない。
その隣も何か嫌だなあとか思う。いじられたりするのが嫌いだから。
でも、注意書きに、あなた方は透明人間として振る舞い、役者さんの会話に入り込んだりしないように書かれている。ということは、絡まれる心配はまず無い。
これで、自分の安全は確保された。
それだったら、役者さんを近くで観れる隣でいいじゃないか。運が良ければ、可愛らしい役者さんが隣に座ってくれるかも。
そんな気持ちで観始めている。
私の隣には、別れさせ屋の可愛らしい彼女が座られる。
そして、芝居が始まっても、絶対に安全なことをいいことに、表情とかをマジマジと観る。そして、心の中で好き勝手なことを思う。また、話に入り込んでしまいやすそうな、恋愛もつれ話だから。
時折、役者さんと目が合うのは何でだろうと思っていたけど、あれも演出だったんだな。基本、目は合わせないと信じ込んでるから、一瞬ドキッとする。
のぞき見をしていることを意識させているのでしょう。
匿名投稿しているのに、急にあなたが誰だか知っているとIPアドレスを曝されたような感じだろうか。
最後も高みの見物を決めて人の恋愛に入り込みやがってと、めちゃくちゃに蔑むようなきつい目で睨まれる。ジロジロ観てたの分かってるからなと見透かされた感じで、何か恥ずかしく後味悪い。
別にただ芝居を観に来ただけ。でも、その観方は、役者さんと客が混在する舞台になっていながらも、絶対的な境界があることを意識していた。いや、無意識にそう思うように誘導されていたのか。
まんまとトラップにはまったのは、きっと私たち客なのだろう。

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コメント

久々に福谷ワールド爆発,といった公演でしたね。いあやいや見ごたえがありました。『ガラスの仮面』でこういった上演形式の漫画内劇が描かれていた記憶があるのですが個人的には初体験です。おもしろかったですね~。最初は29日16時~観る予定でしたが予約変更して30日21時15分~に変更してもらいました。まさかそのキャンセルした席がSAISEIさんに行ったんじゃないでしょうね?(笑)現段階で今年度トップかもしれません。今公演では壱劇屋の西分さんがけっこう印象に残ったかなあ。初めは後ろ姿しか見えなかったのですが途中から巧い役者さんやな~,と記憶に残りました。お名前は前から知っていましたが今回ようやくお顔とお名前が一致しました。佐々木誠さんも表情を見てるとおもしろいですし。珍しく?Sキャラではなかったですが(笑)終演後初めてお話できたので満足でした。佐々木誠さんも今は好きな役者さんですから。佐々木ヤス子さん,相変わらずお綺麗。かのうとおっさんの『うっかり婚活スターウォーズ』に引き続いて魔性の女っぽい役をあてられたはりましたね。木ノ瀬さん,どこかで見たことがある,と思ったら昨年7月京都芸術センターでKUNIO11『ハムレット』の主役ハムレットさんでした。松永さんが席的にほとんど見れなくて残念。でも好役者を集めた公演だったように思えます。全体通じて匿名劇壇色が強かったですね。当たり前ですが(笑)不満としては公演外のことですかね。最初席を案内されたんですが2回ほど変更がかかってイラッとしました。あと公演中の注意が挟み込みチラシと一緒に渡されたみたいですが最近公演前に読まないんですよ。読んどいてください,とか一言あったほうが良かったかな。あんな自然なスタートをするとは思わなかったので。あと当日パンフ(キャスト表含む)ってなかったですよね。最後にアンケートがなかったこと。みんながツイッターやブログしてるわけではないので。以上かなあ。私が座った席はカウンター寄りの四人席。あとの三人の方もどこかでお見かけしたことのある方ばかり。観劇好きならではの公演でしたね。 

投稿: KAISEI | 2015年3月31日 (火) 15時54分

>KAISEIさん

いやあ、本当にラッキーで。
夜、たまたまTwitter見てたらキャンセルあったと書かれていたので急いで予約。確か土日で1席ずつだったかな。
私は28日だったので、違う方のキャンセルですね。

なかなかの名作ですよね。
公演スタイルも面白いですが、話としても巧さがあります。
私は松永さんの隣だったので、終始、お顔を拝見しておりました。最後、睨みつけられましたが・・・

投稿: SAISEI | 2015年4月 1日 (水) 09時51分

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