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2015年3月20日 (金)

卒業【劇団チェリーボーイズ】150320

2015年03月20日 大阪大学豊中キャンパス学生会館二階大集会室 (105分)

いつの時代においても、男にとって永遠とも言える普遍的なテーマが題材になっているからなのか、妙に古臭くベタな印象を受けます。
面白いとは思いますし、何かひたむきさも感じるけど、どこか荒く乱暴な創り。
上手い言葉遊びや例え方も、その巧妙さに自分で酔っているような。
まさに、劇団名そのまま、チェリーっぽいなと感じる作品でした。

立里貞。その名前が表しているように、童貞、チェリーボーイ。
大学入学後のみんなテンションが高くなっている時期を逃してしまったのか、女の子と疎遠な学生生活を過ごしている。
同じようなチェリーボーイ3人と、部室に集まりながら、傷を舐め合うように、どうしたら彼女が出来るのか、ぶちあけた話、オナニーじゃなくて、セックス出来るのかを語り合う。
俺たちは仲間。抜け駆けはしない。さながら、桃園の誓いのごとく、固い絆で結ばれる。
隣の部屋からは、体育会系女子の健全な明るいお喋りが聞こえてくるが、彼らにとっては、そこは国境を越えなくてはいけないぐらいに遠い世界だ。

そんな貞、ある日、試験範囲を教えてなんて、女の子から声を掛けられる。
大学で女の子と話すきっかけとしてよく用いられる常套手段。彼らもこの方法を意識していたものの、そこから会話を拡げる力に欠けている自分たちに気付き、断念している。グローブとボールを買ってもキャッチボールは出来ない。まずは、技術を磨かないといけないのだから。
それが、なんと女の子の方から声をかけてきた。再履の一つ先輩らしく、知り合いがいなかったみたい。
貞の心の中の影は、必死に貞を落ち着かせるべく振る舞う。天使と悪魔は正解の会話を導こうと真剣に戦い合う。色々な貞の分身たちが心の葛藤を戦うが、所詮は分身、基本、エロであるところは否めない。
もちろん、こんな状態では上手くいくはずもないのだが、ちょっと気が合うところがあったのか、いつの間にかデートが出来る段階までこじつける。

そうなると問題になるのが、仲間たちとの誓いだ。
チェリーボーイにとって、仲間が抜け駆けして女の子と付き合う行為は死罪に値する。先日も、抜け駆けして女の子とパンケーキなんて洒落たものを食べた奴には、二度とあそこが使い物にならないくらいに鉄槌を下したばかりだ。もっとも、一生トラウマを背負うくらいの辛いフラれ方をしたみたいではあるが。
他の奴も実はLINEで女の子と陰でこそこそとやっているみたいだ。それも、いつの間にか、好きが高まったのか、やりたい気持ちが高まったのか、ストーカーみたいになってしまい、えらい目にあったみたいだが。
自分は違う。あいつらとは。仲間だなんて言いながら、本音では見下し、軽蔑している。同じように好きだなんて言葉の裏には、単なる汚いエロ・性欲なんてものが隠れているのだろうか。
今の貞に答えが出るわけもなく、デートの日がやって来る。

夏祭り。隣には好きな女の子。チョコバナナやフランクフルトなんて食べられた日には、抑えきれぬ欲望が頭を駆け巡る。
んっ。好き。自分は彼女が好きなのか。やれればいいのか。
心の中で誰かが問いかけてくる。
そんな中、仲間たちが慣れぬナンパをして玉砕しているところを見かける。
知り合いなのかと聞いてくる彼女に、違うと言い張る。
あんな、女とやることだけしか考えていない奴と自分は違う。
仲間たちを無視して振り切って、彼女の家に。
チェリーボーイにとって、これ以上のシチュエーションがあるだろうか。
飲めぬ酒を飲んでいい感じになる。
好きって何なの。色々な本音を包むように建て前の服を着ているのが人間。だったら、性欲を隠す自分はおかしくはないのか。好きは本音なのか、建て前なのか。そんな自分は誠実ではないのか。
様々な葛藤が心を乱すが、いつしか、二人は体を重ね合う。
もう、チェリーボーイでは無くなった。卒業。でも、これで、本当に童貞卒業なのだろうか。身体は卒業したのだろうが。

それから、二年。
貞は彼女とは付き合っていない。
肉体的なセックスを実現して、好きの意味が分からなくなってしまった。結局、やりたかっただけじゃないのか。いつしか疎遠になってしまった。あんなに好きな気持ちでいっぱいになったのに、セックス一つで冷めてしまった現実。貞は、もう人を好きになることが自分で分からなくなる。
恋愛が出来ない症候群を発症している。
ちょっと怪しい女医ではあるが、彼女曰く、治療には、彼の心の中で分断された三つの因子をもう一度繋ぎ合わせる必要があるという。
それは、ときめき、触れ合い、スケベ。
人を好きになってときめく心、そこから生まれる肉体的にも、精神的にも触れ合いたいと思う気持ち、そして、人の本能、やること。
その恋愛のシステム回路を繋ぎ合わせて、正常化しないと、いつまでたっても、好きと性欲という本来は繋がった回路が童貞のように分断されたままって感じだろうか。
貞は、自らの心の中に入り込み、好きということを見詰め始める。
本当のチェリーボーイ卒業。心の卒業式を迎えるために・・・

好きの形は、人それぞれだから、本当の答えもまた、人それぞれで出さないとダメなんでしょうね。
相手がいることだから、自分だけじゃなく、その時その時出会った人と一緒に。
でも、好きの形が違うと言っても、それは鋤と鍬ぐらいの程度の違いみたいな表現をされています。
実はどちらも、大した違いじゃなく、自分の心を耕すことが出来る大切な道具なのでしょう。
豊かな心を得るには、その心の畑も有機栽培で育てないと。有機肥料、勇気は必要。人間を形作る有機物というものにはきっと想いも含まれている。
やっぱり単なる物質の無機化学肥料では、長い目で見たら畑はダメになってしまう。むきになっていては、その畑の土壌は魅力的じゃなくなる。
そんな感じのことを、言葉遊びや巧妙な例えを用いながら伝えているような印象でした。

当然、かつては自分もチェリーだったわけで、色々と考えさせられます。
この作品、一部の身体の卒業、二部の心の卒業に分かれており、まさか、俺、一部で終わっているなんてことは無いよなと自問自答して不安になってみたり。
実際は、この作品のように、経験して分かる好きの形なんてものもあると思います。出会った人やその時の自分の環境、歳とかも絡みながら。男と女の性別は関係なく。
今から思えば、一緒に卒業を迎えられたら良かったのになと思ったりする出会った女性もいますが、きっと、互いにどちらが先かは分かりませんが、その後、卒業式を迎えたのだろうと信じたいところです。
それでも、自分の心の中で鋤だか鍬だかは知りませんが、好きを生み出してくれて、自分の心の畑を豊かにしてくれた大切な出会いだったことは間違いないはずです。
本当は、自分も相手に対してそうあらなければいけなかったのでしょう。相手の心の畑を耕す鋤や鍬をあげられなく、自分の心を耕すためにそれを相手にただただ求めたこともあるような気がします。
幼かった、所詮、心のチェリーだったみたいな感じでしょうか。

本当の好きって何でしょうかね。
大学生だった時とかに、友達と話し合ったりしたことが確かにあるかな。覚えているのは、やるやらないとか性欲の問題じゃなく、勃起するかどうかが好きの証明なんだと思うようなことを言ったかな。
これも、当時の若かりし頃は、性欲は関係なしに、勃起は心が身体と結びついて起こる生理現象だという理論から言ったのでしょうが、40歳を超えた今、その生理現象に衰えが見られるようになることは、当時の自分は知る由も無かったようです。
ときめく。触れ合いたいと思う。こんな心は今でも抱くものの、それが逆に性欲へと結びつかないような歳を迎えているのでしょうか。そうなると、なおのこと、何を持って好きという自分の中で生まれた心を確かなものだと証明すればいいのか。
そう思うと、こんな若い頃の好きって、とても純粋で分かりやすくていいように感じます。
作家の方には、20年後、同じテーマでまた作品を創ってもらいたいなと思います。

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コメント

blogを拝見するとメッチャ面白そうですね。おそらくSAISEIさんの筆力なのでしょう。これも少し興味があった作品。行けないと思いますが …好きって何なんだろう?よく考えたことです(笑)とても共感できる作品?blogでした。

投稿: KAISEI | 2015年3月21日 (土) 09時29分

>KAISEIさん

学生のノリは超えられていないので、素晴らしいとまでは言いませんが、このテーマに真剣に向き合ってみた面白さは十分、楽しめると思います。
KAISEIさんもアラフォーですよね。
今度、この世代の好きって何かを話しながら飲みましょうかね(゚ー゚)

投稿: SAISEI | 2015年3月21日 (土) 18時09分

是非に(笑)まあでもみんな同じようなこと考えてんねんな~、と思います。ご自分の体験を入れて書かれている時は特に共感できる感じがしますね(笑)今週末は完全に被りませんでしたね(笑)パッチ・ダブルスチューデル・劇団音芽どれかは被ると思いましたが。次は火ゲキ。そして次週は芸創・KAIKACommon Cafeしか行けなさそう。太子堂って面白いですか?行きたいんですが無理っぽい。あとDVDどうしましょ?

投稿: KAISEI | 2015年3月23日 (月) 01時32分

>KAISEIさん

私も先週末は日曜日、観劇できませんでしたから。
火ゲキでまた、入れ替えの時間にお会いするかな。
太子堂は、どうでしょうね。私もかなり昔に拝見した覚えが。感じ的にはほどよしとかと似たイメージですが。私もどうするかは、まだ未定で。
DVDは借りると観ないとというプレッシャーが嫌なので、またの機会に自分で購入しますわ。
ありがとうございます。

投稿: SAISEI | 2015年3月23日 (月) 09時17分

ありがとうございます。他人に左右されるわけではないですが「先達はあらまほしきことなり」と兼好さんも仰っているので(笑)『幕が上がる』面白かったです。ももクロは全然知らなくて(笑)主役(5人主役だそうですが演出役の子がメインっぽい)の女の子も別に好みの顔ではなかったですが最後にはいいとは思わされたので。撮り方にもよるのでしょうがそう思わされたらこちらの負けなので(笑)『アリスインデッドリースクール』も含めていろいろ感じ考えることはあります。それでは明日夜に(笑)コメ返は特には。

投稿: KAISEI | 2015年3月23日 (月) 17時18分

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