« ドロップキック・シスターズ【DOORプロデュース】150314 | トップページ | ぶた草の庭【MONO】150319 »

2015年3月16日 (月)

MoNoKuRo【TrouBleMaker*people】150315

2015年03月15日 インディペンデントシアター1st (105分)

感覚的には前作と似た感じだろうか。閉鎖空間からの脱却が描かれているようである。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-6.html
感情を色に見立てて、それに囚われる人が、その支配から解放される姿を見せる。
人はきっと人生の色々な時点で、様々な感情に支配される。その色で描かれた自分を表現する絵は、どうであればいい、どうであれば普通なんていう概念は無い。
単色でしか絵が描けなくなっている人がいるなら、違う色も素敵なことを教えてあげればいい。モノクロな絵には、豊富な様々な色のクレヨンを渡してあげればいい。
独りで絵を描かなくてもいい。
様々な色を持つ人たちが、各々が好きな色を持ち寄って、描いた絵はきっと素敵な作品として仕上がる。
複雑な話であったが、そんな人の想い合いが、こうあるべきというおかしな普通の概念を崩し、より良く生きる道を切り開くはずといったことを感じさせるような話だった。

彩は眠りから覚めると、なぜか病院に。それも閉鎖病棟らしい。
何でこんなことになったのか全く記憶が無い。
冗談かと思いきや、何か妙にイライラした恐い看護師さんに、明るく調子が良さそうな医師もいる。
患者なのか、何にでもケラケラ笑っている男に、死ねと暴言を吐き続ける荒れた女、自分が子供だと思っているのかロリータ風の服を纏う女、死にましょうと誘いかけてくる女。
確かに閉鎖病棟にいることは間違いないようだ。
時間もどうやら、もう5日ぐらい経っている。
自分は画家。その仕事もあるし、それだけでは食べられないからバイトもある。こんなところで休んでいる訳にはいかないと訴えても、措置入院だからと外にはどうも出してくれない様子。
気を落ち着けるために、中庭のようなところで休息。まともそうな男と突然出会う。ごめんなさい。弱気になっているのか、元々の性格なのか、ついつい謝ってしまう。どうして謝らないといけないのと諭される。いい感じの人だ。あの人も患者なのか。とりあえずは、少しだけ安心する。
続いて女性がやって来る。胡散臭い奴を見る目で、どこかきつい感じで自分を睨んでくる。何でこんなところにいるの。
おかしいんです。私は普通なのにこんなところに連れて来られたんです。
そう訴えるが、逆に普通って何と返される。
確かにそうではあるが・・・

しばらく、観念して入院生活を続ける。飯は異常なほどまずいが、少しずつみんなとの接し方も分かってきた。自分の思う普通の幅が変わってきたのだろうか。
絵を描いたり、歌を唄ったりの心理療法を受けたりもする。あの恐い看護師もちょっと付き合ってみたら、ぶっきらぼうを装っているだけで、けっこう患者のことを優しい目で見守ってくれいるみたいだ。
みんな思い思いの好きな色を発表する。彩は、絵描きだから、たくさんの色で絵を描いて楽しむ。
ここにいる患者たちは、各々、何らかのトラウマを抱えている。
営業だったのか笑顔を強要され過ぎていっぱいいっぱいになってしまった人、大好きな母が愛する再婚相手の父から虐待を受けた憎しみを抱える人、愛する夫を病気で失ってしまい悲しみに暮れる人、楽しい音楽会に参加したがため観に来てくれた母を事故で失ってしまい罪悪感に苛まれる人。
昼間はみんなと接しているからか、そんな潜んだ負の感情を抑え込んでいる。でも、夜になると孤独の中、そんな感情が溢れだしてきて、怯えうなされているようだ。
医師もそんな地獄の中にいる一人だ。大切な人を救えなかったトラウマから、何かが出来るはずだと、こんな患者を集めて治療方法を開発しようとしている。でも、その見通しに暗雲が立ち込めた時、自身の限界が再び蘇り、自暴自棄になってしまうみたい。
自分に何かは出来ないのだろうか。中庭にいる女性は医師を悲しそうに見詰める。辛い思いをした医師を一番間近で観ていたから。その時は猫の姿だったが。でも、その想いは医師には伝わらない。
中庭の男は彩を見詰める。どうにかしないと。それに時間があまり無い。ここには、感情の欠片を奪い去って集める奴がいる。そいつに感情を獲られたらもうお終いだ。自分にはもうそいつの姿が見えてしまっている。だから、直に感情をそいつに獲られる。彩にはそうなって欲しくない。そうなる前に、彩を元の世界に戻さないと。

そんな中、ロリータ風の子が自殺する。自分がなぜ、こんな状態になっているのかを思い出してしまった。ずっと、内に潜む悲しみの感情を封じ込めるように、純粋で楽しい感情で自分自身を包み込んでいたことに気付いてしまったのだろうか。この閉鎖病棟にいる患者たちと、どこか異なる、彼女視線では普通じゃない彩を見てしまったからだろうか。
自分を抑え込んで、閉鎖空間に追いやっている感情から自分を解放する。その唯一の手段が自ら死を選ぶということに行き着いたみたいだ。
この死によって、医師の精神は崩壊する。やはり限界。ここにいる患者たちを救うことは出来ない。元々救うことなど考えることではなかった。自分は医師だから治療をするだけ。その治療が、みんなを死へと向かわすことしかないと決断してしまったかのように、残りの患者に対して、全員、死へと誘導する行動を起こす。

みんないなくなってしまった。みんなが囚われていた各々の感情を残して消えていった。その感情の欠片をたくさん集めて喜ぶ奴がいる。
中庭の男や女は、彩を救おうとする。
自分のことを思い出して。そして、今、持っている数々の感情を、もう一度肉体に戻して。
彩は全てを思い出す。自分は、入り乱れるたくさんの感情で心がいっぱいになって、どうしようもなくなっていたこと。そして、それから解放されるために死を選ぼうとしたこと。
普通じゃない。だから、死を選んだのか。でも、普通じゃないって何だろう。ここで出会った人たちも、自分と同じように心を痛めて感情に飲み込まれてしまっていた。それは、本当は人として普通のことだったのではないか。そんな人の弱さは、異常でも何でもなく、どうしようもなく普通のことで、だから、ここではみんなが触れ合う中でそのバランスを保って何とか消えないように頑張っていたのではないか。そして、今、自分にそんな触れ合って想いを寄せてくれる人がいる。自分の肉体が眠る本当の病院には、きっと自分の手を握ってくれている人がいる。弱くくじけてしまった当たり前の普通の自分を。
実際にどんな思考回路が彩に働いたのかはよく分からない。
彩は、この閉鎖病棟から感情を残して消えることなく、元の世界へと戻っていく・・・

彩が出会う4人の患者は、各々、喜怒哀楽の感情に囚われた人たちに対応しているみたい。
この患者たちはバランスがとても悪く、脆い姿を見せる。トラウマからの自分を崩壊させてしまうくらいの悲しさを封じ込めるためなのか、たった一つの感情で自分を包んで隠そうとしているみたいだから。
好きな色と聞かれたら、単一の色を言う。描く絵も単色になってしまう。だから、その色のクレヨンがすぐに無くなっちゃう。そして、無くなったらもう絵は描けなくなってしまうみたいな感じだろうか。この作品でいう消えるというか。
感情に飲み込まれず、その時その時の色で自分を表現する力があればいいのだろうが、悲しみが長く続き、一つの感情に囚われる時間が長くなると、いつかその色は尽きてしまうのかもしれない。
補充が出来ればいいのにね。一つ考えられる手段としては、その色が無くなっても、同じように単色ばかり使って違う色が無くなった人のクレヨンセットと合わせて使えば、また絵は描けるんじゃないだろうか。
そもそも、全ての色のクレヨンを均等に使って絵を描く人なんていない。そんな人を普通と定義するのだろうか。そうだったら、普通なんて人はいない。普通の定義は、感情に支配されやすく、一つの色で自分を表現してしまいがちな人じゃないか。
だから、普通じゃないと呼ばれる普通の人たちが、色を貸し借りして、一緒に絵を描く。世は独りでは生きていけず、誰かに想い想われ生きていくということに繋がっているように感じる。これが治療法開発の一つの行き着く先のようにも思う。
彩は画家だけにあらゆる色を使って絵を描く。患者たちにとっては、自分とは異質に映ったのかもしれない。そして、ここでの普通が脅かされ、バランスを失ってしまったかのように見える。でも、彩だって、そんな入り乱れた様々な色の整理が出来ず、結局、感情に飲み込まれてしまっていのだ。そして、自分が何色なのか分からなくなった。作品名のモノクロのイメージ。
彩は、そんな状態で描く絵もまた自分の表現の一つで、何もおかしくないことに気付いたようだ。ここの患者と同じく、悩み苦しみ懸命に生きようとした中で描かれた自分の絵なのだから。描かれた絵に普通も普通じゃないもきっと無い。それはその人の一つのスタイルであり、その時の自分を表現したものなだけ。
患者たちはそんなことに残念ながら気付くことが出来ず、消えてしまった。
患者たちを捕えていて、病棟に残した感情は、その欠片を集める奴に獲られてしまったのだろうか。
せめて、感情の支配から解放され、肉体に感情を戻した彩の中に取り込まれ、彼女のこれからの絵の中の一つの色として、描かれればと願うのだが。

|

« ドロップキック・シスターズ【DOORプロデュース】150314 | トップページ | ぶた草の庭【MONO】150319 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

流石にSAISEIさんは引き出しが多いΣ( ̄○ ̄;)今週はあまり観たいものがないな、と思ってたのですがこんだけ観たはるとは(-.-;)これも観たかったんです。御意さんや西田さんを久しぶりに観たかったな…

投稿: KAISEI | 2015年3月16日 (月) 17時28分

>KAISEIさん

この週は、結局、ニットキャップシアターが残念だったかな。あと、近畿大学覇王樹座の卒業公演。
どちらも、お目当ての役者さんがご出演だったので、何とかしたかったけど、仕事の絡みでどうしても厳しかった。
御意さんは主役でがっつりと演技を魅せていました。西田さんは、相変わらずちょっと強気な感じの持ち味を出しながら、心のこもった演技。
なかなかの良作でしたよ。

投稿: SAISEI | 2015年3月18日 (水) 09時57分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: MoNoKuRo【TrouBleMaker*people】150315:

« ドロップキック・シスターズ【DOORプロデュース】150314 | トップページ | ぶた草の庭【MONO】150319 »