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2015年3月14日 (土)

怪人B子【大阪大学劇団ちゃうかちゃわん】150313

2015年03月13日 大阪大学 豊中キャンパス 学生会館2F 大集会室 (100分)

パフォーマンスというのか、演出というのか、とにかく凄い舞台を創り上げられるなあと感動。
当日チラシに一体感のある舞台を楽しんでと書かれているが、全くその通り。痺れる素晴らしき舞台を観ることが出来ました。
これは歴代の中でも相当なんじゃないかと、昨年の卒業公演の感想記事を見直してみましたが、けっこう同じようなことを感じている。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/105.html
毎年、感動してるということみたい。

話の感想は下記しますが、捉え方次第で、温かみを感じるいい話のようにも思えますが、一方、不気味さや恐怖を残している感もあります。
怪人B子。白い無機質な仮面を被るその女性の仮面の下に潜む本当の想いを探り、自らの生き方を見詰めるような感じの話でしょうか。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで、といっても、後数時間ですが、白字にします。間に合うなら、駆け付けてその舞台の凄さを感じて欲しい公演です>

大学卒業後、職に就かずにくすぶっている男、榎木。どこか自信が無いのか、パッとしない男だ。まあ、何かしないといけないとは思っているけど、それが何かは確信できず、流れに身を任せているような感じか。
一応、作家を目指している。デビュー作で芥川賞を受賞し、天才作家と世を騒がした姉がいる。自分にもそんな才能があるんじゃないかと、出版社に作品を持ち込むものの、いつも今ひとつの反応。
今日もそんな帰り道、仲睦まじく二人で歩く友達と出会う。
幼馴染で大学の同級生だった川島は、先日、直木賞を受賞し、ようやく作家として認められるようになった。売れた自負なのか、ちょっと嫌味っぽく上から目線のところがあるが、それだけ頑張っているという証拠だろう。まだ、印税で余裕ある生活とは程遠いみたいだが、自分の夢に向かってひたすら突き進んでいる。最近は、同じく幼馴染のナギサと同棲生活を始めたらしい。ナギサも保母として頑張りながら、川島を支えている。そんな話をするナギサの笑顔が眩しい。もう、昔、告白した自分をフったことなど忘れてるんだろうな。

家に戻ったら、母親がちゃんと就活してるのかとうるさい。自分はいいよな。家でどこまで本気なのか、DVD見ながらダイエットに勤しんでいればいいんだから。作家になるなんて言っても、現実を見なさいと一蹴される。よく、そんなことが言えるもんだ。父親なんて、50も過ぎて、夢だったお笑い芸人なると会社を辞めたのに。
まあ、でも父を責めることは出来ない。その理由はきっと別のところにある。姉の笑顔を取り戻したいのだろう。飛行機事故で自分一人だけが生き残ってしまったがために、何も喋らず、表情も変わらず、まるでお人形さんのようにじっとした生活をしている姉を少しでも元気づけられればいいと思ってのことみたいだ。

退屈しのぎで見るテレビの討論番組。美人アナウンサーの司会で、個性的な評論家が激論を交わす。あんまり面白くない。いや、ちょっとだけ面白いが、そう長く観れるものでは無い。チャンネルを変える。父が映っている。モノマネネタ。自分の夢への信念か、娘を想う覚悟か強い力に溢れているが、痛ましい。電源を切る。
そんな中、姉が発作を起こす。気が触れたように何かを床に書き出す。慌てて榎木は紙を渡す。次々と書き上がる紙。
何が書かれているのか。榎木は目を通してみる。

作品は、U作というB子に翻弄される人生を歩むことになった男のことを、どこか世離れした雰囲気を醸す自分自身ともいえるストーリーテラーによってこれまでを回想するような形で語られていく。
ある日、学校に転校生がやって来る。白い無機質な仮面を被った女性、B子。彼女は、人と関わらぬようにいつも隅っこで独りでいる。何かを抱えているような雰囲気で、そのミステリアスさに、妙な艶めかしさを感じさせる女性だ。
クラスの女子たちは無気味、自分勝手、キモい、ブスだの、自分たちのことを棚に上げて非難の声をあげる。男子は神秘性が受けるのかちょっと興味津々。
U作もそんなB子がちょっと気になる一人。でも、このU作、学級委員長のA子に惚れらている。美人だが、かなり押しが強そうな感じで、気弱そうなU作はグイグイとやられたい放題。B子が気になるなんて口が裂けても言えない。
そんな二人、デートに出掛ける。テンションにかなりの温度差は感じられるが、まあ楽しそうだ。
しかし、そこに通り魔がナイフ片手に現れる。女性が襲われている。U作は助けようと通り魔にカバンを投げつけるが、逆に怒りをかって襲い掛かられる。
足が動かない。これで刺し殺されて人生終わりかと覚悟した時、雷鳴が轟き、一人の女性が現れる。そして、通り魔は突然倒れる。
B子。B子が自分を助けてくれた。U作はB子に礼を言うが、B子は私のせいであなたを不幸に巻き込んでしまった。自分はいつもそう。もう二度と会わないことを願うと言って立ち去る。
世間は、そんな不幸を呼ぶB子を面白おかしく囃し立て、いつしか怪人B子と呼び、都市伝説のように恐れられる。
・・・

榎木は興奮を抑えきれない。面白い。姉さん、この作品、俺にくれないか。
そこからはトントン拍子。
怪人B子と名付けた作品は売れまくる。今やちょっとしたブームだ。
やがて、榎木、今や榎木大先生の熱烈なファンもでき、彼氏を捨てて弟子入り志願するような、ちょっと危なそうな弾けた子も現れる。
この方が男にとって良かったのではないかといったものだが、なかなかそうもいかない。女に捨てられた。取られた。全ては怪人B子のせいだと男は恨みを抱き始める。

ここまで売れると、やはり気になるのは次作。怪人B子の続編を出版社からは求められる。最初はちょっとした遊び心だったが、もはや後には引けない。榎木は続編執筆を約束する。そして、姉の発作を待つ。

U作とA子は大学生になる。二人の仲は、発展したのか、それとも切ることが出来なかったのか、とにかく二人は恋人同士らしい。
A子は持ち前の美貌を活かしてミスコンに参加。なかなか本格的なミスコンらしく、何が売れるかなんて本当に分からないもので、かなりコッテリした今、人気爆発の男優をゲストに招いて開催される。数々の芸能人レベルの美人を差し置いて、A子はミスの座を射止める。しかし、その時、また、B子が現れる。恐れおののき、その場から逃げる人たち。
また、B子は不幸を招いた。
その後、U作とA子は結婚。でも、その生活の影にいつもB子が付きまとう。また、いつの日か、B子が現れ、私たちを不幸に陥れる。A子は、遂にB子と対決する決意をする。
直視できない衣装を身に纏い、戦う二人。
その結果、やはり、不幸にも命を落とすことになるのはA子だった。
・・・

姉が発作を起こすたびに、執筆される怪人B子の続編。
世間は、今や怪人B子、一辺倒。
しかし、これを快く思わない者も出てくる。なんせ、世界を変えてしまうぐらいの力を持つ作品となったので、恐れの方が大きくなったようだ。
そして、いつしか、あらゆる世の悪しきことは、この怪人B子のせいだという風潮が生まれる。それは、まさに作品中のB子のように。

川島は苦悩する。今や、榎木の活躍で影が薄くなってしまった。
積み上げてきたこれまでの自分の努力に揺るぎ無い自信はあるものの、この怪人B子に対する疑念は大きくなる。
そして、遂に、その真実を知ってしまう。
怪人B子は、あの天才作家と謳われた榎木の姉が書いた作品であることを。
そのことを糾弾する川島。
榎木は抵抗する。自分は才能にも恵まれず、不幸だったから。B子が全て悪い。さらに、おかしくなった世の風潮は、自分の不努力の言い訳に出来るB子の存在を消し去ろうとしない。
逆に川島は、怪人B子を消し去る危険人物かのように攻撃を受ける

姉は、あの日から、心を失ったまま、最後の怪人B子を書き上げる。
その中に、姉の心の内に潜む本当の想いが隠されていた。
怪人B子は不幸を招く、人々から忌み嫌われる存在。全ての悪しきことは、B子のせいにすればいい。そんな存在なのだから仕方がない。
でも、その中に、自分を認める人たちがいることで・・・

卒業公演なので、お一人お一人にコメントしたいところですが、あんまり時間も無いので、あらすじの中にその感想も交えました。
最後の方が混乱気味で、どこに焦点を絞ってメッセージを読み取ればいいのか分からなくなったかな。
いい話だと感動するところもあるのですが、どこか不気味さと恐怖が残る感覚が、自分の中で整理できていません。

負う必要のない罪悪感ではあるが、それに囚われて、感情を捨てて精神を守る状態にならざるを得なかった姉。自分があらゆる不幸の元凶。白い無機質な仮面を被るB子は、姉が生み出した産物なのだろう。
姉は、その凍りついたような閉じこもった暗闇の世界から、分身ともいえるB子を描く作品を通じて、何を世に伝えたかったのだろうか。
飛行機事故で自分だけ生き残った彼女は、作品中の世の人々のように、近寄りがたい存在として避けられ続けるだろう。事故にあった人たちには、当然、恋人や家族もいたわけで、彼氏を失ったような人は、作品中のA子のように憎むべき存在として彼女を捉え、恨み続けるのかもしれない。
だから、B子は世から姿を消すように生きる。でも、彼女はたびたび現れる。それは、作品中のU作のように、自分を認め、存在を否定しないような人がいるからだったのではないだろうか。たとえ、自分の存在自体が不幸であっても、自分を認めてくれる人と共にいれば、幸せを得られる。そこから、自分は変わっていける。そこに姉は一筋の光を見出そうとしていたようにも感じる。彼女が生み出したB子は自分の不幸と同調させたのではなく、感謝と希望への願いが込められた存在だったように思う。
B子のとってのU作は、姉にとっては家族だったように思う。自分がこんな状態になっても変わらず明るく気丈な母、人生を変えてまで姉のことを想ってくれる父。そんな、ありがとうという感謝と、今はこんな状態だけどいつかは仮面を外して自分の表情を見せます、ごめんなさいということを、伝えたかったように感じる。
その手段として、天才的な作家の本能が、一つの作品を生み出した。

これだけなら、何かいい話なのだが、気になるのは榎木。
榎木はこんな姉の気持ちを理解していたのだろうか。少なくとも、最後に理解できたのだろうか。
彼は、姉の生み出した作品を、自分の正当化に利用した。夢を達成できないことの言い訳に使った。
自分にチャンスを与えてくれた怪人B子を、自分の不努力から目を背けて、不幸の元凶として扱うようになった。作品中のU作やストーリーテラーを通じて、それではいけないというメッセージを発信し続けていたように思えるが、榎木がそれを最後に理解して、考えを改めたようなことを感じるところが見当たらず、そこに何かモヤモヤした不安を残す。
それは人の弱さから、怪人B子は必ず必要で、世はこれからもそんな存在を創り続けるし、榎木もしっかりと自分を見詰めなおさない限り、また、怪人B子と名付けるべき何かを見つけ出すだろうといった、皮肉めいたブラックなラストにも感じた。

作品のラストで、怪人B子は仮面を外す。姉が発作を起こし、最後に描いた原稿は川島によって破り捨てられている。
この最後の怪人B子の作品は榎木が創ったものなのだろうか。
彼は、今回の事件をきっかけに、夢をしっかりと見つめ、自分の努力でそれを掴む決心をした。そして、時が経ち、本当の作家となった榎木は、今回の経験で自分が得たことも含めて、罪悪感に囚われる姉がそこから解放されて幸せを得ることを願う想いと、自らが創り出した不幸を言い訳に歩みを止める愚かさを描いた、本当の怪人B子の最終編を自分の手で創作した。
この公演の作品がそんな榎木の創作物となっているならば、不気味さや恐怖は消え、安堵と温もりを感じる話なのだが。

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