OSAKA 24区【ThE 2VS2】150220
2015年02月20日 インディペンデントシアター1st (70分)
今回は大阪万博のパビリオンをベースに短編集を繰り広げる。
大好評だったらしい東京公演を終え、今や東京でも名が通じるようになったこの劇団。
これまでに蓄積した実力と、これからの発展を期待させる更なる進歩をイメージさせようとする公演だろうか。
白い箱という無機質なモノの中からも、自分たちにかかれば潜む面白さを引っ張り出せるみたいな前衛的な作品が並ぶ。
たしか、大阪万博は数ある万博の中でも経営的に成功した博覧会だったと聞く。
この公演も、・・・
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。6作品。私は2本がホームラン。そのうち1本は場外。なかなかいい当たりのヒット2本。ポテゴロ1本。空振り1本。って感じでした。皆さんも確かめに足を運んでみてください>
・俺だけが知っている
白木屋に現れた殺し屋。もちろん、正体は誰にも明かせない。
いつ狙われるか分からないからなのか、店員は決して後ろに立たせず、迷惑な話だが容易に注文だってしない。空いている窓に神経を使い、いきなりトイレに行って逃走経路を確認。
でも、今日はオフなのでそんなことを気にする必要はない。ただ、友達と飲む約束をしているだけ。テレビでは美人キャスターが銀行の5億円強奪事件を報じる。
この事件、裏に大きな組織が動いていることを知っている。そう、俺だけが。
友達がやって来る。仕事は秘密調査員。もちろん、誰にも秘密の職業だ。テレビで再び銀行の事件が。
この事件、裏に大きな組織が動いている。そう、俺だけが知っている。
飲み始めた二人。仕事柄、匂いで怪しいことが分かってしまう。
グダグダの駆け引きが行われる中、店員が・・・
殺し屋と調査員。店員。キャスター。
キャストの少なさからか、話の着地点が何となく想像できてしまうところが残念かな。二人の全く無意味な駆け引きは面白いけど、最後はこいつだなと思ってしまうから、どんでん返しにならない。
・おみまい
トラックに轢かれた割には元気そうな男。
持っていたサッカーボールがクッションになったらしい。
翼くんか。見舞いに来た友達の男二人とそんなおふざけのツッコミを入れてワイワイと。
ほら、お見舞い。二人は各々持って来た袋を男に放り投げる。
手渡された紙袋の中身は、あの阪急百貨店にしか売っておらず、並ばないとなかなか買えないバトンドール。
それも二人とも。しかも、同じ味。
友達二人は、同じ行列にいたことを語り合いながら、大変だったと男に話す。
お前は1時間で済んだけど、俺は後ろだったから2時間待ちだった。ちょうど自分までで後ろの親父はカンカンだったとか。
・・・。何で?まとめて買えばいいじゃん。
そんな男の疑問は二人には通じない。何を怒っているのやら。
そんな中、もう一人の友達の女が紙袋を持って現れ・・・
軽快なテンポの会話。その中にさりげなく入れ込んであることが最後のオチに繋がる。
この劇団らしい、バカバカしい会話だけど、実は巧妙に構成されていることに感心する作品。
ただ、ふ~んっていう程度に落ち着いちゃったけどなあ。何か見逃しているところがあるのかな。
・リバーシブル
自信無さ気に彼女にサプライズプレゼント。彼女は凄く甘い声を出して喜んでくれている。
競馬で当たった100万円で頑張ったんだ。
でも、急に彼女は怒り出す。
何なのこれ。どうせドンキで買ったんじゃないの。
おかしいなあ。自分ではかなり頑張って上手くいったと思ったんだけど・・・
あ~、全然、気持ちよくならないわ。がっかりする女。
思わず拍手したくなるくらいの巧妙な作品。
この天才的な素晴らしさを文章にする力が私にはありません。
ただ、見ていれば、看板役者の長橋秀仁さんのいつものダメ男が、真摯に女性に接するものの、その自分よがりで気持ち悪いことからうまくいかないというやり取りの話。ちょっと、男、可哀想。女、ちょっとひどい。ってなります。
でも、これをリバースすると、お得意の下ネタとなって浮き上がり、男、最低だなって話に見事に。
いやあ、素晴らしい。こういう作品を普通に出してきてしまうところが、ここ好き。
・No.3
自分には名前が無い。No.3と呼ばれる。下層階級だから。ずっとそうだった。今でもかつての思い出がフラッシュバックする時がある。
上層階級の男から、奴隷のように扱われる日々。奴だって数字で呼ばれる。でも、あいつはどこか絵になる。そこが違いか。
同じ下層階級の女性、No.7。彼女もひどい扱いを受ける。でも、彼女にはどこか輝ける場所があるような気がする。
そんな自分たちをニヤニヤ見詰める謎の男。自分はおまえたちとはちょっと違った存在。何にでもなれるんだとばかりな雰囲気を漂わせる。
革命を起こさないか。
そんな言葉を、その男からNo.3は聞き・・・
トランプってことみたい。
なるほどねえ。何でもネタにしてしまうんですね。
自分とは何なのか。力を合わせれば、こんな自分でも世を変えられるのではないか。
No.3の命をかけた試みは、この世自体の否定みたいな形で終末を迎えます。
・息子
会話が無くなった夫婦。
家庭に無関心な父。母は息子に愛情の全てを向ける。教育ママの出来上がり。
こんな圧迫した空気の家庭では、ストレスも溜まってしまうというものだ。
息子が元気ないみたいなんだ。友達に相談。
こんな相談をするようになるなんて、俺も歳をとったのかなあ。
友達は刺激を与えてやろうとある試みを・・・
息子のムスコね。
題名だけで、息子の意味合いが想像できてしまうくらいに、下ネタが定番になってしまっている。そして、その期待は裏切らない。
ネタバレした状態でスタートしながらも、途中、何重かにミスリーディングさせるかのような構成はさすが。
・ソーシャルフットワーク
新しく入って来たバイトの子に一目惚れする店長。
店長は、その子に自分自身をぶつける。
華麗なフットワークで、相手の懐に入り込み、一発喰らわす。
何とかダウンを奪って、勝利を得たい。
店長の恋の行方は・・・
Twitterをベースに、店長のネット人格のキャラを女にぶつける話。
ロックがかかっている相手に振り向いてもらうためになりすましをしたり、現実とは程遠いキャラだったりと、ネットでの恋愛事情を見事に表現。
これまでに拝見した実況ネタの作品を、より進化させた感じかな。
これも非常に巧く出来ている2VS2ならではの面白作品。
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コメント
2VS2初観劇。試作と言うこともあって粗い作りと言う印象。ただリバーシブル・ソーシャルフットワークの発想は好き。あとはNO3かなァ。練られたらもっと面白くなるという印象でした。
投稿: KAISEI | 2015年2月24日 (火) 12時32分
>KAISEIさん
お初でしたか。
私も好きな作品は同じかな。
確かに練り不足は私も感じています。
以前は、作品の間の幕間にももっとこだわって、公演全体が一つの大きな作品に仕上がっているぐらいの感があったのですがね。
色々なことにチャレンジしながら、短編ジャンルでの最高峰を目指しているのでしょう。
投稿: SAISEI | 2015年2月25日 (水) 12時49分
ショートは難しいですよね。キレがいりますし。小説でもショートのほうが難しい感じもしますね。ただ名作ショートは記憶に残ります。キレのあるショートを期待したいです
投稿: KAISEI | 2015年2月25日 (水) 22時55分