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2015年2月15日 (日)

宇宙戦争が始まったけれど、白井宏幸に守れるもんなんて大島優子の写真集ぐらいしかなかった【エリーの晩餐会】150215

2015年02月15日 イロリムラ プチホール (55分)

観劇復帰2本目。
久しぶりだから、ちょっと私の頭がおかしくなっているのだろうか。
そりゃあ、もう滅茶苦茶な作品だったが、これは傑作だと確信して劇場を後にする。
無茶苦茶な展開で話は進むが、どこか一本筋があり、その話は力強い想いに溢れている。その脇を固めるかのように、お下劣で、おバカを熱く真剣に醸す本物の役者さん方がいるといった感じか。
いいじゃないか、いいじゃないか。やっぱり、演劇、いいじゃないかと満足した気持ちで一杯になる。

田舎で農家を営む母を一人残して、役者を夢見て上京。
オーディションに全く受からず、夢破れ、今は中崎町の貧相なアパートの一室で特に何をするわけでもなく空虚な時を過ごす。
部屋には大島優子の写真集と、プレミアフィギアを含む数々のアイドルグッズ。
隣の部屋に住む綺麗な古川さんの下着を盗んでは部屋で着用して妄想にふける。
もちろん、彼女はいない。35歳、変態で童貞、白井宏幸。
いつものように恍惚の表情を浮かべながら、妄想世界に入り込んでいたら、部屋になぜか父が現れる。
亡くなったはずの父。農家の母と結婚しながら、農家を継がず、全部、母に押し付けてこの世を去った父。まあ、息子の自分もそのことを強くは責められないが。
父はこんな生活は辞めて、母の下に戻って農家をしろなんて勝手なことを言ってくる。

そんな中、部屋のチャイムが鳴る。
扉を開けると入り込んできたのは、萌えるメイド姿の可愛らしい女性、栗田さんとその上司にあたるらしい戦闘服に身を包むイケメン男、土肥さん。
二人は地球防衛軍。外では宇宙戦争が始まっている。今は野々村元議員が泣きながら必死に宇宙人と戦っているところだ。
二人曰く、宇宙人の黒幕は大島優子らしい。
その大島優子が、想像を絶する不細工な姿で部屋に乗り込んでくる。大島優子は白井に好感を抱いている様子。
地球防衛軍からは地球を救うために大島優子を倒してと言われ、大島優子からは地球は放っておいてトリンドルとかも一緒に宇宙に旅立とうと言われ。
さらには、隣の古川さんも現れる。何やら未来から来たとか言って、白井のこれまでをずっとストーカーしていたとか言い出し、白井に都合のいいおかしな妄想を抱かせる。
正直、地球なんかどうでもよくって、可愛い子とセックスできるのはどの選択肢なのか心揺らす白井。

果たして、白井は地球を守ることが出来るのか。
明らかになる白井の出生の秘密。
男女愛、親子愛を絡ませながら、どうしようもないド変態、白井がたどり着いたところは・・・

といった、とても文章では説明できないお話。
下ネタを交えながら、大バカっぷりを突き抜けた熱き魂で真剣に演じられるので、笑いよりもあっけにとられる。舞台上の熱きおバカな姿は笑いよりも感動を生む。
最後、白井は自らが魔王となって地球を征服することも出来るし、防衛軍の一員として地球を守ることも出来る。要は何だって出来ることに気付く。でも、同時に、大切な母を安心させてあげることも出来ず、父とも生前、ぶつかり合うことから逃げ、宇宙戦争なんて規模の大きいことに直面したら、大事な大島優子の写真集を持って逃げまどうぐらいしか出来ないことにも気付く。
何だって出来ると思って田舎を飛び出しながら、チマチマした生活を送ってきた白井自身を見詰めることが出来るようになったのだろうか。
自分の弱さを噛みしめ、その中で、まだまだ何だって出来るんだという希望溢れる想いを得たことは、これからの白井を強くさせるように感じる。

ラストは自分自身かのような田舎でとれたサツマイモと大島優子の写真集。そして、ワインで乾杯する白井の姿で締められる。
暗い地下のようなところでくすぶって、日の目はまだ見てないけど、母と父の愛情をたっぷり受けて、育ったサツマイモ。
きっと美味しいに違いない。
外にいる軽々しく生きるリア充たちのような華やかなワインにだって負けやしない。そのイモの美味しさで、ワインなんてきっと飲み干してしまえそうだ。
これからの白井の素晴らしき人生、美味しさを世に知らしめていく人生に乾杯。

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コメント

 私の観た次の日に観劇されたんですね。わたしは年末の「マザー」の方が良かったかな。。。

投稿: KAISEI | 2015年2月21日 (土) 00時15分

>KAISEIさん

そっか。ニアミスだったんですね。
マザーは、私が観劇お休みのギリギリの公演ですね。
本来なら伺っていたんでしょうが・・・
白井さんびいきなところもありますかね。私は、なかなかいけてる作品のように思いましたけどね。

投稿: SAISEI | 2015年2月21日 (土) 01時45分

まだエリーさんの芝居はストライクど真中はないかな。「マザー4」もおもしろかったのですがDVDを買うほどでは…動きの少ない芝居でした。ある意味スゴい芝居とは思いますが…今回のも面白かったんですよ。近かったし。いい役者さん出演されてましたし。ただ何か足りなかったんですよね~でもその何かが言葉にできないんです。主宰のエリーさんは私にとってはとても言い方で好感を持ちました。

投稿: KAISEI | 2015年2月21日 (土) 03時15分

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