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2015年2月12日 (木)

〈SP水曜劇場〉熱帯夜(初演版)【桃園会】150211

90分。
2ヶ月ぶりの観劇を先日終えて、徐々に本格的に観劇生活を復帰しようと思った矢先に、何と腸炎で入院。
点滴生活2日目。口から食事も許されず、退院も、まだ数日間は出来ないらしく、暇な病室で鑑賞。入院病室という変な団体生活の中でのコミュニケーションがあり、何となく現状の違和感・不満や、先への不安・緊迫を感じる中での観劇に相応しい感じの作品。

1999年の初演作品。
1997年の酒鬼薔薇連続殺人事件、98年の和歌山カレー事件、99年のノストラダムスの世紀末あたりがモチーフになっているらしい。
その中で、理由なき殺人に至る人間や社会を見詰めたような作品だろうか。不安や気味悪さがまとわりつく話ではある。
この後日談として、うちやまつりやparadise lost, lostという作品があり、この再演が来週18日から始まる。もちろん、この作品を観ておく必要は無いらしい。登場人物の関係性ぐらいは役に立つみたいだが。
こちらは、上質なミステリー風作品に仕上がっているらしい。
今回、この作品を拝見した限りでは、桃園会作品だから難解で深いところは多々あるが、登場人物像が結構、露骨に気味悪さも含めて、素直に描かれており、そこに逆らわずに観れば、すんなりと楽しめるような印象も受ける。
興味深いので足を運びたい。まあ、退院して体調が復帰していればの話になるのだが・・・

舞台は高層団地が立ち並ぶ街の真ん中にある空き地。そこで団地主催の祭りが開催されている。
簡易テントを立てた場所が本部らしく、売り物にする予定のカレー当番の女性と祭り開催のために奔走した男がいる。
ただ、先日、この団地で連続殺人事件が起こり、まだ犯人が見つかっていないという状況の中で、子供たちのためにと強行したのが実情みたい。
そんなためか、男は祭りの重要性を女性に訴えかけているが、催し物で呼んでいた芸人にドタキャンされたりと、男が思っているほどに周囲が同調しているわけでは無さそう。この空き地も来年には、集会所を造ることになっているようだし、もう祭りはここでは出来ない。近場に公民館が既にあるのに、周囲は祭りより、団地の人が顔を合わせられる場所を求めたのだろう。
男も団地の人間関係を築くという考えには賛成のようで隣人を愛せなどと唱えている。
それに妙に同調する後からやって来た女性。この空き地に世紀末から身を救うためにシェルターをと進言していたような人だからちょっと宗教っぽい嫌な空気を醸す。隣人を愛せを団地のスローガンにしようなんて浅はかなことを言い出す。
カレー当番の女性はけっこう冷静で、隣人を愛せていないからそんなことを言わなくてはいけないのだから、それをスローガンにするのは良くないような意見を言うが相手にされない。いじめ、差別を止めようとか言っている間はそれが存在していることの証明みたいなものだから、その考えもまた正しいのだろうが、言葉にして自分たちを戒めないといけないのも愚かな人間だから大切なことでもある。そんな風に思うが、この宗教っぽい女性は、別に考えがあるわけではなく、自分のしたいことは、みんながしたいことみたいにしか捉えられないことからの行動のようだ。現に、ちょっときつい雰囲気の祭り開催に奔走した男の妻に同じような意見を言われたら素直に言うことを聞いている。まあ、妻がきつい雰囲気なのは男が浮気をしているからみたいだが。
何か頼りなさそうだがガードマンを買って出る男、祭りの巡回警備員のつもりなのか不可思議な空気で会場を歩き回っているような女、団地なので猫を飼うとかで揉めたりしたこともあるらしい怪しげな冷徹そうな女、ドタキャンした芸人の代わりにステージに立つと張り切る男・・・
そんな普段は恐らくは触れ合うことも無い団地の面々の集まる中、祭りが始まる。

2幕は祭りが終わった後。
何かよく分からないが双子の女性と一緒に祭りのために頑張った男はビールを飲んでいる。双子のシンクロした仕草が気味悪い。男は不機嫌そう。そりゃあ、あれだけ張り切ったのに、ほとんど人が来ずでは。宗教っぽい女は、来年も子供のために頑張らないとと言っているが、我が子には食が合わないとか言ってカレーも食べさせていない。その点を責めるが、いつものように巧い具合に言われて流される。少々、イラ立っていたことを逆に反省したりして。
コミュニケーションって何なのだろうか。
普通に生活していた中である日、訪れる悪者。それは、自分の敵なのか。もしかしたら、変わってしまった自分自身が悪者なのか。
そんなことを考えさせられるような童話のような作り話を交えながら、夫婦は久しぶりに会話を交わす。
浮気のこと。言葉にし合ったから少しは分かり合えたのだろうか。それとも、二人の仲に決定的な亀裂を走らせたのか。
団地の中にサイレンが響く。犯人が捕まったのか。残ったカレーをたいらげて片付ける女性・・・

最後は何のことやらよく分からなくなったが、こんなよく分からない登場人物の存在が不気味さを強めているのだろう。双子なんて、普通にホラーチックで気味悪いし。
人間関係が希薄になることから生まれる隣人を疑う心。いや、隣人は愛さなければという強迫観念から生まれる自分の崩壊、疑い。こんな連鎖が人を殺めるような衝動へと繋がるような感じだろうか。疑わしき隣人が犯罪を犯すのではなく、自分の中に生み出してしまった疑いある自分が敵となり犯罪を犯す。それがいつ来るのか。悪者はいつ表面に浮き上がってしまうのか。忍び寄る不安は世紀末の恐怖にも繋がるようにも感じるし、作品の最後に残るオケラの虫の音のように、まとわりついて決して耳から離れてくれない苛立ちを感じさせる。

色々と家庭事情がある中で、どうであろうとこんな祭り開催に力を注ぐ人たちは決して悪くは思えない。人のために行動できる。でも、我が子のためだという考えを持っても、もしかしたらそれは自分のためなのではないかと利己的であるという疑いが生じている。このあたりはどうしてそうなるのか。自分のポリシーにもっと自信を持っても良さそうだが。
人を想う。それが一方通行なのだろうか。想いを受け止める力が弱いように感じる。想うことは、人間って結局、優しいのか出来ているような気がする。それを受け止め合わないから、一方発信だけになる。見返りは求めてなくても、発信した想いがどこの誰に届き、どうなったかは知れないと不安になるのではないか。そんなことの繰り返しが、相手に対しいわゆる綺麗事しか言えなくなってしまい、より心の通じ合わない構図が出来上がってしまう。負の連鎖が社会を壊そうとしているような感じだ。何か、ノストラダムスの予言は当たらなかったのではなく、そんなスイッチが入ってしまったんじゃないのだろうか。あの頃から、どうも厭世観が強くなっているような気がしてならない。

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コメント

O~ よく読むと腸炎で入院ですって。。。 お大事になさってください。プロトテアトルや可能とおっさんの話はまた。配役表や当日パンフも取ってますよ。

投稿: KAISEI | 2015年2月12日 (木) 16時10分

>KAISEIさん

そうなんですよ(ノ_-。)
えらい目にあっててね。
ノロとかではなく、神経性みたいですけどね。
まあ、明日には退院してまた体制を整えますよ。

投稿: SAISEI | 2015年2月12日 (木) 18時11分

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