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2015年2月20日 (金)

paradise lost, lost ~うちやまつり後日譚~【桃園会】150219

2015年02月19日 アイホール (110分)

昨日に引き続き、観劇。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/150218-0837.html
これで、映像配信で見た作品も含めて、名作と名高いこの3連作を見ることが出来ました。

うちやまつりとは違って、遂に地中から出てきてしまった闇の恐怖感が狂気として心を震わせるような話でした。
でも、そんな出てきてしまった闇の中には、美しき自分の思い出もある。
見たくなくても見ないといけない。忘れたくても忘れさせてくれない。自分のこれまでを受け止めながら、これからの生を全うしてようやく、自分の帰りべき場所にたどり着く。そんなものが人生なのかなといった想いが残ります。

あれから6年。
団地は解体されて、あのこやまさんちの庭も今やどこか分からないくらいに整地が進んでいる模様。
そんな消えていくかつての団地の様子を見渡せる、とあるドライブインが舞台。
そんなドライブインである事件が起こる。
数席のカウンターと4人掛けテーブル席3つほどの黒をベースにしている店の中央には大きな黒い柱がある。そこに何者かが鳥よけの目を黄色ペンキで派手に落書きしたらしい。あたかも阪神タイガースの大ファンかのように。そして、鍵は壊されておらず、内部犯行も疑われる。
店は2階にあり、1階は地産品なのかナスの直売所となっている。そこで働く男はよく店にサボりにやって来る。最近、なかなか出来がいいそこそこの歳のバイトが入ったらしい。最後まで明確にはされないが、あの連続殺人事件の疑いをかけられた男みたい。もう、彷徨いからは抜け出せたのだろうか。未だに知り合いがいるだろうこの地にいるのは辛かろうに。それでも、ここに何かを残しているのか。見つからない物を探し続けているのか。幼き頃に無くしたビー玉を確か探していたはずだが。

店のマスターはただいま入院中。酔って怪我をしたらしい。命に別状は無いものの、かなりの怪我を負っている。今は、雇われのママさんが店を切り盛りしている。2件掛け持ちみたいだが、近々、お遊戯会で発表があるくらいの子供のためにも頑張らないといけないようだ。この人、不倫相手に旦那を殺された女性だ。あれから、母手一つでたくましく生きているみたいだ。この人も、ここから逃げ出さずにいる。一体、ここには何があるのか。何に引き止められているのか。
まるで鳥かごの中の鳥。店にはおもちゃだが、鳥かごにオウムが飾られていて、電池が消耗しているのか、時折、思い出したようにいらっしゃいませと弱々しい鳴き声をあげる。今のみんなの状況とリンクさせているかのよう。舞台も周囲にロープが張り巡らされており、こんな逃げられないかごや、事件現場の立ち入り禁止区域みたいな世の中と一線引かれたような場所を想像させる。

もうあの事件を知る人は少ない。
直売所の男もまさか、バイトがあの有名だった人だなんて思いもしていないだろう。
冴えないタクシー運転手である常連客に想いを寄せられている店で働く若い女の子などは記憶にもないはず。
でも、最近、深く埋め込んだあの忌まわしい事件が再び、顔を出し始めている。
工事現場ではまたかとばかりに遺体が発掘される。団地がぼんやりと幽霊かのように出現するなんて噂も立っている。
店にやって来る少しおかしな女性。うちやまつりでは一番、怪しい匂いをさせていた人で、犯人の疑いをかけられた男のビー玉探しを手伝うようなことをしている。当然、雇われママとは面識があるはずだが、共にどこかで会ったぐらいにしか思ってないのか、思い出したくないのか。どちらにせよ、結びつきたくないという互いの意志がそこに存在しているようだ。
何やらポチと呼ばれる男と一緒にいる。女性から犬扱いされることを異にしておらず、全てを阪神タイガースネタの言葉で紡ぐというかなり変わった人だ。工事現場で働いており、名前の通り、掘り返すことが仕事みたい。女性は社会のコミュニケーションから身を外に置き、常識的な概念や倫理観から外れたところがある。言葉は悪いが狂っているとしか思えない。でも、そんな人でもこうやって、共に通じ合える人を求め出会っているようだ。それはポチの方も同じなのだろう。彼も生身の彼女と触れ合うことで、妄想かのような阪神タイガーズの選手たちとの世界で、孤独ではなく、誰かと通じ合いながら生きているように感じる。
ちなみに、連続殺人事件の犯人は、娘と近親相姦をしていた父となったようだ。自供も全てしたらしいが、完全に気が触れたような人だったので、その自供が本物なのかどうかは怪しい。娘はこの地を去ったのだろうか。ここにいる鳥たちとは違って、自由にこれからを見詰めて何かを探す旅を始められただろうか。
同性愛の女性もやって来る。考古学研究室の教授と共に。まあ、実際は心理カウンセラーみたいだが。あの団地での生活がトラウマとなっているのか、未だ団地というものの囚われの身みたい。何かに襲われると思ってしまうのか、外の世界には出られないようだし、内に籠りながらもどこか怯えている。心理療法の中にいるようだ。
作家を名乗る男。冴えない風を見せているが、どこか全体を引いて見ようとしているようなところがある。それに、ここにやって来る人たちからの言葉を聞き取りたがっている。恐らくは、かつての仕事の癖みたいなものなのだろう。この人のここに残してきてしまったものは、真相なのか。
こんな面々からの会話や過去の回想、語られる昔話から、あの団地での事件が再び蘇り始める。

団地が解体されているとは思わなかった。
あの忌々しい元凶の団地。住人たちに深いコミニュケーションは無かったはず。
なのに、何でまだ、みんないるのか。いなくなったのは、みんな余儀なくいなくなるしかなかった。つまりは死を迎えた人たちばかりみたいだ。生きている者は、あんなことがあったのに、ここで、まだ団地の幻影が見られるようなところで時を刻もうとしている。
これは何なのだろうか。責任。まだ、何かを見つけ出していないから。彷徨っているのか。ジャングルの中で食べられるのを待っているのか。眠り続けて、目を開けることなく夢の中に自分を閉じ込めておきたいのか。帰り場所が見出せないのか。
人にはどこかに残してきたものがあって、それを見つけようと囚われてしまうようなイメージが浮き上がる。
空き地というのは、何かがあった跡の地だから、その建物や居た人たちがこの地で刻んだ数々のことがその地面の中に残っているような感覚。
それが今の自分よりも確かだから掘り返そうとするのかな。そんなに今を生きることが不安な世の中なのだろうか。
掘り返して見つかるものは、ビー玉みたいな美しき思い出だけではないだろう。自分の中にあった闇も一緒に出て来る。傷つけた人や拒絶した人。自分の狂気。そんなものが遺体のようなものみたいに思える。そして、それを知った時、自分を襲ってくるものの存在も見えてしまい、恐怖の中で怯えなくてはいけないことになるのではないか。
見たくなかった。だから、蔵の中に閉じこもって、いつまでも夢を見ていればよかった。そんなことを感じさせる昔話。でも、それは許されない。私たちは人を世を見なくてはいけないし、見られもする。
そんな人間の心理みたいなものを考えるが実際に何を伝えようとしているのかの正解は分からない。人それぞれ。この作品の登場人物たちがそうであるように、それも答えの一つかもしれない。
でも、人間っていい。その人生を各々が全うして、帰る場所に帰っていきましょう。そんなことを言っているような気がする。

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