みるきーはわかってくれない【劇団サニー】150228
2015年02月28日 STAGE+PLUS (100分)
閉塞空間の中で焦燥感を抱きながら、懸命に生きる人たちの話かな。
淡々とはしているが、そのもがき苦しむ感覚は非常によく伝わってくる。
どうしたらいいとかの答えは一切無かったように思う。
だからこそ、頑張って欲しいと願う。ゴミになってしまわないで欲しい。ほんの少しのミルキーの甘みを信じて、そこから笑顔とこれからの希望を見出して欲しい。
そんな気持ちを切に抱く。というか、それしか、ないじゃないかといった感じかな。弱いなりに、誰もが頑張っているんだから・・・
舞台はアパートのゴミステーション。
そこでゴミを漁っては、写真撮影、ノートに記録して笑みを浮かべる女の子。元々、ルームシェアをしていた友達がやって来て、相変わらずまだやっているんだとあきれ顔。研究のためだと自分に言い聞かせるように女の子は反論するが、どう考えてもおかしい。
と言っても、友達も説教できるような立場では無い。彼氏が出来たからと部屋を出ていき、おまけに家賃は支払わず。ここに来たのも、浪費癖があるのか、それを彼氏に責められてケンカになって逃げこんできている。お金までまた借りようとしているのだ。
アパートには色々な人が住んでいる。
その住人達が、このゴミステーションで出会い、一時の触れ合いの時間を得る。
女子高生は、落としたライターを探しにやって来る。たまたまライターを拾っていた女の子がそれを渡すと、他に言うことはないのかと怒って立ち去る。どうやら、両親が姉ばかり可愛がり、自分はほったらかし。いい加減な男と付き合っていたのか、妊娠診断薬を買う。生理が来たので大丈夫だったと安心はしたものの、その彼氏とも結局、別れてしまっている。自分はゴミじゃない。もっと大切にしろとでも訴えているかのよう。
新興宗教にはまって、家庭を壊した女性。元々は反抗期を迎え、接することが出来なくなった息子との触れ合いに悩んでいた。そこで発覚した息子の同性愛癖。息子と共に、新興宗教に入り、いらないものをたくさん買わされ、夫は家を出て、ようやくおかしなことをしていると気付いて今に至っているらしい。家には、もはや何も語ることの無くなった抜け殻のような息子がいるらしい。ここには、その新興宗教で買わされた品物を捨てに来ている。そして、何かが変わると思っているのか、息子の可愛がっていた猫を探し歩いているみたい。失ったもの。自分が不要だと思って捨ててしまったものを取り戻そうとしているよう。
あっくんとかいう男は、最近、彼女が出来たらしい。となると、男の場合、色々と始末しないといけないものも出てくる。一時は、自分の欲を満たす愛すべき存在だったのであろう空気で出来た人形は、今や彼女との仲を切り裂く忌み嫌われるものとして捨てられる。覚悟は出来ているのだろう。自分がここで不要なものとして、朽ち果てていくことを。でも、その姿は、どこか一時、あっくんから得た愛情に誇りを持っているかのように映る。
女の子は実はそのあっくんに想いを寄せている。
でも、自分にそれを伝える勇気というか、手段を何一つ持ち合わせていないみたい。経験が無いから。
だから、彼のゴミを漁って、彼と接している感覚を得る。なぜか、ごみ袋の中に入っているミルキーの箱に残った飴玉を自分へのプレゼントだと勝手に考え、不安がピークにまで達したら、それを食べて、彼の甘い優しさを感じて心を落ち着かす。
いつまでそんなことをしているのか。
これまで、部屋を出て行った後も何らかの形で女の子と接し続けていた友達は遂に女の子を見限ってしまい・・・
焦燥感とか閉塞感かなあ。
こんな捨てられたゴミの集まる場所だからねえ。
女子高生は、ここに来て、誰からも見向きもされなくなって、捨てられてしまった数々のゴミと自分を同調させようとしたのだろうか。腐った時に、悪いことをするみたいな幼稚な感じかな。でも、若さだろうか。アパートの住人と接してはいたが、特に何があったわけでもなく、自分でこの場は違うことに気付いたような気がする。もちろん、片思いして人生捨てたかのような女の子の哀れな姿、捨ててしまったものを取り戻すことがいかに難しいかを教えてくれた新興宗教の女性、捨てられたものの末路を淡々と見せる空気人形との出会いが女子高生の心に何かを訴えかけたのだろうが。
新興宗教の女性は、気付いたら多くのものをゴミのように捨ててしまっており、それを取り戻すことは難しいという大きな悔いを心に抱いているが、また、何かを創り上げていくことも出来るのかもといった考えも持てたのではないか。それは女子高生を息子に重ねて、本当の想いを真摯に率直に吐き出したことで、自分を家族を変えられる感を得ているように思う。探している猫も戻って来たみたいだし、きっとこれからなのだろう。
女の子は・・・
これをどう捉えればいいのやら。感じたままなら、私には最悪の末路を想像させる。それも、どこか腹立たしい感情を持って。
自分が捨てられるということ、ゴミになるということ、そして、やがて、本当に全てから忘れ去られて消えてしまう。この恐怖を淡々と語っていた空気人形。彼女のこれからの世界は闇に包まれて、いつしか存在自体が消えてしまう。
空気人形は捨てられた。でも、一時、あっくんと想いを通わせたという誇りを持っている。女の子はどちらも無い。別に捨てられてもいないし、まだ、想いをぶつけることもしていない。
要は自殺しているかのように映る。自分で自分を捨ててしまうなんて汚い。焦りを感じて、閉塞したこんな場に逃げ込み、まだ、やって来る人と接しながら、まだ自分は捨てられていない、ここにあるゴミとは違うと安堵を得ているようで。
自分はゴミじゃない。ゴミを漁っている間は自分はゴミではない。そんな虚像を作って、優位な立場にいるように感じてしまう。
最後に女の子は友達から厳しく突き放されて、遂にゴミとなる。彼女は闇の世界へと迎え入れられたかのようなラスト。でも、ゴミとなった彼女を、女の子がしていたように、掘り返して、その中に残る彼女の心を抽出してくれるような人がいるのだろうか。
きっと、誰かが、彼女をゴミのままではいさせない。彼女は空気人形と違って人間だから、決して消えず、また、この場から一緒に連れ出してくれる人がいるような気がする。そこに、人間としての希望を感じるしか無いような厳しいラストだった。
女の子を演じるたにがわさきさん。彼女のもがき苦しみながら、ほんの少しのこと、それこそ、ミルキー一つで本当にちっぽけな安堵を得て笑みを浮かべる姿からは、必死にこんな中でも頑張っている人の真摯な姿が感じられる。
だからこそ、頑張ってこのままゴミにならずに、本当の自分を周囲の人の力を借りてでも見出して欲しいという祈りを心に抱かせて、この話を見詰めることが出来るように思う。
| 固定リンク
「演劇」カテゴリの記事
- 【決定】2016年 観劇作品ベスト10 その3(2016.12.31)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その2(2016.12.30)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その1(2016.12.30)
- メビウス【劇団ショウダウン】161209(2016.12.09)
- イヤホンマン【ピンク地底人】161130(2016.12.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
入れ違いですね~ 私は11時の回でした。千秋楽行かれたんですね。劇団サニーは旗揚げも行ってまして。内容は別にしてここは制作が弱いんですよね~ 接客などまだ学生劇団の悪いところが出てる、という感じ。
投稿: KAISEI | 2015年3月 1日 (日) 00時30分
>KAISEIさん
本当は私も11:00に伺えれば、その方が都合が良かったのですが。
仕事の状況が分からずで、安全な15:00にしてしまいました。
制作さん。私の中では、いいとは言えないですが、まあまあといったところじゃないですかね。ちょっと、頼りない感じだったかな。
たまに、ひどいところありますから。観る気が損なわれますよね。
投稿: SAISEI | 2015年3月 1日 (日) 11時04分
今回の制作さんは慣れていないだけですかね。ただ旗揚げはその頃私は前日か当日にMAILもしくは電話で予約してたんですが当日朝の10時過ぎに電話をしたらめんどくさそうな感じでありがとうございますもなくキラれたことが昨年度観劇の三大不快事件の1つとなってましてその後の客出しも知り合いにしか声をかけない感じで学生劇団に悪感情を抱くきっかけとなったんです。まあおもしろかったこともあって行きましたが相変わらずと思いました。客の立場に立ってないんですよね。二列目狭すぎて足入らないですよ。あの辺に気がつくようにならないと。制作甘く見てると作品良くても成功しないですよ。私は次回はないな、という感じです。11月のミクマクの公演に出られていたたにがわさん、8月の森林浴の大休さんが出演されていたの気がつかれてましたか? いとうさんもどっかで名前を見た気が
投稿: KAISEI | 2015年3月 1日 (日) 21時31分