火曜日のゲキジョウ【匿名劇壇×ブレザー少女】141202
2014年12月02日 インディペンデントシアター1st (30分+30分 休憩10分)
今回は両劇団とも二人芝居。そして、男女の愛みたいなものを描く。
匿名劇壇は爽やかながらも狂おしく切ない男女愛と親子愛をリーディングのスタイルで魅せる。
ブレザー少女は、素直になれない揺れる男女が本気で向き合い愛を得るまでを描く。
男女の心情の動きに魅入りながら、そこに潜む愛に心地よさと切なさを感じる二つの作品か。全く、表現方法が異なるのだが。
・「リーディングハイ」 : 匿名劇壇
大学入学。自分や周囲が幼いのか、落ち着いて大人びた女性を発見。どうやら、自分と同じ新入生みたい。
次に出会ったのは数日後の心理学の授業。まひるという名前らしい。自分はしんたろう。少し話すと、けっこう子供っぽいところもある子みたい。心理分析では、二人は似ているらしい。それが嬉しい。
告白。自分のために、きっとまひるは生まれてきたんじゃないだろうか。
好きな色は何。せ〜の。連想ゲームみたいな言葉遊びは全然合わない。もう別れようなんて言われて焦る。ジャンケンして、自分が勝てば別れないで分かり合おう。ジャンケンホイ。今度はずっとあいこだ。
私が昨日行ったバーの名前は何でしょう。そんな取り止めもない会話を電話で2時間。話しているだけ、触れ合っているだけで幸せ。
2年後、子供が出来る。結婚しよう。子供が今、授かったことは予定外だが、ずっと一緒にいたい気持ちはずっと持ち続けていたから、この言葉以外は無かった。
両親にご挨拶。順番が逆になったことの謝罪と、何を言っているのか自分でも意味不明だがまひるへの熱い想いをお義父さんにぶつける。伝わったと思う。自分が去った後、お義父さんは軽くパニック状態になったらしいが。
卒業後、結婚。
しんたろうはまひるへの愛を反芻するように自分自身で確認する。自分は幸せだ。まひるには、その反転も存在しているようなことを言われる。
子供の名前はゆうこがいいだろう。まひるから生まれるのだから。
それから、3年後、まひるは交通事故で亡くなる。
しんたろうはそれから、まひるへの想いを綴り続けている。
その想いを受け止めるているのがゆうこ。本当は私が生き残らず、まひると一緒にお父さんはずっといたかったんだろうな。
ゴメンとしか言わないお父さんに、寂しさを感じながらも、無条件で絶対的な父の母への愛をまひるはしっかりと・・・
フロントアクトや当日チラシの作品紹介には、リーディングという形で何か目論んでいたことがうまくいかなかったみたいなことを言われたり、書いていたりして、温かい目で観て欲しいみたいな前置きがあったが、これは、言われなくても自然に温かい目で観てしまうような作品。
最近、公演があったフラッシュフィクションの微笑ましい男女カップルのネタや、どうせ死んでお別れになるとしても、出会うために生まれてきてくれたことへの感謝を愛へ変換して見せるような終末の予定なんかで描かれた愛の形が組み込まれて、心締め付けられるキューっとする素敵な話となっている。
作品名はランナーズハイみたいなイメージのリーディング版として捉えればいいのだろうか。走っているうちに、その苦しさや辛さが快感になって自分を高めていく。しんたろうも、想いを綴り、それを読み上げていく中で、まひるの死への悲しみや辛さが、愛していたことの幸せとなっていったのか。でも、走ることは孤独であることのように、読むことも自分の中だけで完結するような感じ。残された子供、ゆうこへの愛にまでは結びつかないような感覚が少し寂しく切ない気持ちが残る。それでも、ゆうこはゆうこで、そのリーディングに付き合うことで、自分が生き残った悔いや、父への寂しい想いを、自分の両親が愛し合っていたことへの尊さや誇りへと変換しているのか。
いつもは基準点5点をベースに、話が分かりにくいやら、感動したやら、役者さんが魅力的だったやらでプラスしたりマイナスしたりして点数評価をしているのだが、今回は、そんなこと関係無しに、これは素晴らしいと思ったので文句なく10点評価とした。
・「オプション」 : ブレザー少女
まさか本当にこいつが来るとは思わなかった。
急に自分の傍から姿を消した彼女。映画監督を目指しながら、パチンコ三昧のいい加減な生活で愛想を尽かされたところもあったのかもしれない。
男は、色々とネットを調べて、出張マッサージを呼んだ。来たのは元カノ。
そっくりさんだったらチェンジすればいいと思っていたが、女は部屋に入るなり、以前のように風呂に駆け込み、下着姿で部屋に現れる。
数千円もする高級シャンプーも使ったみたいだ。自分は数百円のシャンプーしか使わない。あのシャンプーは今でも置いてある。
私はプロの女。ということは、私としか付き合ったことのないあなたは素人童貞。私は素人童貞とは仕事をしないことにしている。彼女を作って呼んでくれたら。でも、そんなことは許されることではない。これはパラドックスだ。
自分が頑張らないから出て行ったのか。もう、パチンコは辞めたし、頑張っている。でも、頑張ってどうにかなるものでもない。一流の映画監督たちとは一線を自分は引いている。それでも、努力している。100点は無理でも、60点でやっていけるように。
パラドックスを打ち破る術も見つからぬまま、時間が来る。女は最後までずっとわざと攻撃的な会話を仕掛けてきたようだ。まるで、ブラックリストに載って、二度と呼ぶことが出来ないようにするためみたいに。
それでも、女は去り際に、100点を目指す頑張りを捨てないで欲しいことを伝える。それに男は、ああは言っても、まだチャレンジする精神は捨てておらず、次の仕事もけっこう勝負しようと思っていると答える。
二人でやり直せるんじゃないのか。互いに60点の生き方なんて線引きをしないで頑張れば。シャンプーだってあるんだし。
パラドックスの答えは男の仕事である映画の中にあった。それは・・・
ラ・マンチャの男の従者の言葉がオチとなるようですが、よく分かりません。知らないので。今、ネットで調べてみましたが、しっくりくるものも無く。慈悲の心みたいなことを言っているのは覚えていますが。要は、立ち止まりどこへ向かえばいいのか分からなくなっている人を許すような感じでしょうかね。
男は選んだ。自分自身を見詰め、その限界を知りながらも果敢に挑戦してみる道を。だから、男は女を選んだ。今の場所から女を連れ出し、自分と一緒に進んでくれる大切な女性を。だから、彼女を出張マッサージで選んだ。そして、彼女が使うシャンプーを選んで買った。そんな感じの話のように思うのですが。
6点評価。基準点の5点に映画などの元ネタが分からないことと、少々、パラドックスにこだわりが強いのか、話が混乱し気味なので-2点。ビジネスとしての娼婦と男に想いを残す女の切り替えで多彩な表情、言い回しの玉一祐樹美さん(京都ロマンポップ)、不器用ながらも一貫して女への深い想いを見せる浜崎聡さんの真摯さが上手く噛み合った会話の展開の妙に+2点。あと、玉一さんが目の保養になったので+1点。
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コメント
匿名さんの評価が高いですね~(笑)SAISEIさんのアドバイスもあったので舞台に向かって最前列左端にて観劇。席取後二階に上がって虫養いして戻ってみると隣は石田さん(笑)役者や関係者が多かったみたいですね。匿名さんは最初いつものようなテンポがないなと思ってちょっと失望。同じことを思った人もいるんじゃないかなあ、しばらくたつとそんな雰囲気を背に感じる。途中からいいテンポとなって最後はいい感じになりましたがいつものパンチはきいてなかったかな…ハードル上げ過ぎかな…匿名さんは練った脚本にほんまに役者の技量で勝負してきはるのでイマイチ杉原さんも松原さんもキレが感じられなかったかな。SAISEIさんも書かれてましたがカストリ社のネタ(バーパラソル)やポリアモリーの杉原さん演じる春本しんたろうが出てきたりしてましたね(笑)他にもあったそうですが私は上記2つしか気がつきませんでした。ブレザー少女のほうはSAISEIさんが仰った通り玉一さん七変化でしたね。玉一さんも一人芝居できる技量あるんちゃいますかね~。『リングにかけろ』の必殺技がでてきたりしましたね。勝負としては出だし悪いと思ったものの30分が早いと感じた匿名さんが途中でちょっと厭きたブレザー少女を破り勝ちで予想通りの結果。何回も共演しているとはいえ急増ペア(トリオ)が匿名さんの牙城を崩すのは難しいです。ちなみに上記匿名劇団を匿名さんブレザー少女が敬称略なのは語呂によるものであり他意はありません。
投稿: KAISEI | 2014年12月 3日 (水) 04時21分
>KAISEIさん
そっかあ。私は今回の匿名さん、かなり評価高いんですけどね。
しんたろうはポリアモリーでしたか。気付きませんでした。色々と遊び心を入れた作品だったみたいですね。
ブレザーさんは、今後に期待出来るコンビっぷりを見せられていたように思います。
投稿: SAISEI | 2014年12月 3日 (水) 18時48分
ここ覗かさせてもらうようになって初めて割れました?(笑)まあ微細な差異はあったはずなんですけどね異なる個体である以上(笑)いや匿名さんトータル良かったと思うのですがやっぱりハードル上がってるんですかねェ…『二時間…』がおそらく今年の一位か二位になるので期待度が高いのかな…あとはまだ短編が馴染めない気がします。また観た回が違うのでそれもアルかも。例えば暇ステ『トウシンダイ』最終日木村雪夏さん声が突然出なくなったとか…もしくはショウダウン『マナナン…』私は初日初回に行ったのですがイマイチやったんです。前に一人芝居の質問をしたと思うのですがこれも含んでたんです(笑)『錆色…』も今年一位か二位なので期待して行きましたが思ったほど…まァ林さんだから一人芝居行ったので。あまり喉の調子が良くなかったみたいではっきり聞き分けられたのは3人良くて5人やったんです。でも翌日観に行かはったSAISEI さんもご存知のAMさんは絶賛。私の意見に対して朝やし声出なかったんちゃうにちょっと納得(遊眠さんはケースバイケースと否定w)私が観た一人芝居の中で林さんのものは最高とまで言われてました(『マナナン…』とは言われてませんでした)。SAISEIさんも絶賛でしたよね…確かに二時間以上一人はスゴいのですが…と思ってたら最近初回ヒドかったでしょと分かってくれる人が(笑)東京の最後の方はメチャ良かったそうですが。なので今度は東京→大阪なので大千秋楽に行こうと思っています。あと過去公演では満月動物園『ashmelody』やBaghdadcafe『returnplanet』は私はイマイチ合わなかったですがSAISEIさんは褒めたはった気が(笑)まァスローテンポのものや彼方此方ストーリーが脱線するものが好みじゃない性癖みたいです(笑)
投稿: KAISEI | 2014年12月 4日 (木) 01時01分
>KAISEIさん
自分でもどのような作品がドンピシャなのか未だに分かりませんね。
観る回によって違うのは本当によくあることみたいで、私も何回も経験あります。あれだけ感動したのに、友達連れて行ったらいまひとつだったりすることとかも。
まあ、その時その時の魅力ってのも、観劇の醍醐味でしょうから。
投稿: SAISEI | 2014年12月 4日 (木) 12時34分
どうでもいいことなのですが日付間違ってませんか?(笑)141202では(笑)
投稿: KAISEI | 2014年12月 4日 (木) 23時13分
>KAISEIさん
本当だ(゚ー゚;
なんか色々とバタバタしていて、すっかり日付感覚がおかしくなって。
やっぱり、その日のうちにブログ書かないと訳分からなくなりますね。
ありがとうございます。
お会いできたはいいけど、なかなかじっくりお話しできず。
いつか、ゆっくり語り合いましょう。
投稿: SAISEI | 2014年12月 5日 (金) 00時09分
SAISEIさんほどの方にそう言っていただけると嬉しいですね(^w^)ほぼこのコメントでのやりとりですが私も一度ゆっくりお話ししたいです。時間があえば近くまで行きますよ(笑)今年度はムリですが(笑)ちなみにかのうとおっさん佐々木ヤス子さんがアフターしはる回で予約しました(笑)人生ゲームにつられて早々と(笑)演劇はナマモノだとほんまに思います。この前福谷さんにも言ってたんですが『二時間…』の時7人中6人の役者が好きになってその場で役者全員の名前を覚えるくらいの衝撃を受けたんですね。実は佐々木誠さんだけ印象が薄かったんです(その後DVD『ポリアモリー』で9人全員好きになる。この劇団で佐々木さん一人だけ下手なわけないという確信はありましたから。ちなみにDVDは物販で佐々木さんから購入w)。でもスペドラの劇評で佐々木さんが一番目立っていたと書いていた人もいるんですよね~(笑)食物と同じで旨い不味いも好みによるのかな~それだけに勧めて喜んでもらえたりするて嬉しいですね。でも匿名さんはキャラがたってますよね。
投稿: KAISEI | 2014年12月 5日 (金) 01時23分
>KAISEIさん
いえいえ、単なる観劇にはまったおっさんですので。
かのうとおっさん、もう予約しましたか。私も早くしないと。
不思議なものですね。匿名さんで一番最初に覚えた役者さんは、私は佐々木さんなんですよ。何とも言えない味があるなあと思って。
まあ、あそこは本当に個々の役者さんのキャラの立ち方が凄く、それが作品中にいつも上手くはまりますよね。
投稿: SAISEI | 2014年12月 5日 (金) 14時09分
そうなんですよ。『二時間…』はヒキコまれすぎてその後観た伊藤えん魔プロデュース『コロニー』が色褪せて見えました(笑)DVD『ポリアモリー』は1ヶ月くらいハマって見続けたのですが東さんの高い声、吉本さんのハリのある声、松原さんの冷静なSっ気タップリ(もしくは上から目線)な声、杉原さんのハイテンションな爆発力、石畑さんの変なアクションを交えた爆発力、福谷さんの絶妙な間と少し割れたような声の強弱、佐々木さんの演技によって使い分けた声が絶妙に絡まり合って奏でられるmelodyに快感を感じたんです。
佐々木さんは今では好きですよ。イケメンですよね。イケメンの暴力的なのも匿名さんの見せ場なんですかね?私はあまり好きではないですが…リンクスの4人の女とのやり取りはとても匿名らしく秀逸でした。私が匿名に求めているのはあのリズムなんですよね(笑)
投稿: KAISEI | 2014年12月 5日 (金) 16時04分