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2014年12月 7日 (日)

蔓延ル緑【空の驛舎】141207

2014年12月07日 カフェ+ギャラリーcan tutku (70分)

田舎町に立った産業廃棄物処理場を巡り、外観の繁栄とは別に崩れていく人の繋がり。
そんなもので、人の繋がりは壊れない。想い合ってきたこれまでがあるから。
大切なものを守るために人が戦わないといけない時、守らないといけないものを考えさせる話のように感じました。
そんな話を、厳しく伝える一方、人が想うことを優しく描いて、温かみを感じる作品となっています。

高知のある田舎村。
蛍が住む清流の上流域にあり、周囲は緑でいっぱいの自然に恵まれているようだ。
その村の中学校で同窓会が開かれる。前日に、飾り付けのために懐かしい面々が集まる。
中学3年間だけここで過ごし、今は都会でキャリアウーマンとして働くしおりは久しぶりに村にやって来た。
実咲は、村長の娘で、今ではこの学校の先生をしている。
明日香は地元の神社の娘なので、今でもここで仕事をしているみたい。
飾り付けの準備を真面目にしているのは実咲だけ。しおりと明日香は思い出話に花を咲かせている。
質実剛健なんて校訓が書かれていた額が無くなっている。新校舎にもう持って行ったの。いや、古いから捨ててしまった。あの裏に確か将来の夢を書いた手紙を入れておいたのに。
今は雨戸の無いところに住んでいる。ここは台風が来れば、雨戸を閉めきって真っ暗闇の家になった。外の様子も分からなくなり、何か箱舟みたいにプカプカ浮かんでいるみたいな感じだった。
今も台風が近づいているようだ。雨漏りは大丈夫だろうか。まあ、どうせこの旧校舎は取り壊され、新校舎ではそんな心配もなくなるのだろうが。いっそ、台風がこの旧校舎ごと持っていってくれれば取り壊し費用が浮くのに。
窓から見える景色はあまり変わっていない。
それでも、随分と村は変わった。明日香の神社の近くには駅が出来て、骨董品を観に来る人も多くなったのだとか。
学校だって新しい校舎が完成。道路も山深くまで舗装されている。運動公園とかだって出来た。
そんな予算がついたのは、全て、山上に立つ産業廃棄物処理場のおかげだ。
反対意見も多かったが、結局、住民投票の末、決まった。

スミレ。 その名前が出ると実咲も明日香も口をつぐむ。
台風のある日、増水した川に流され亡くなった。住民投票の前だった。
彼女は反対派の筆頭。村のジャンヌダルクなんて言われて、マスコミにはもてはやされていた。
村の自然を守らないといけない。自分たちの子供に残さないといけないとかではない。今の自然は未来からの借り物。借りた物なのだから、もっと綺麗にして返さないと。彼女の口癖だったらしい。

一人の女性が入って来る。利奈。 小学校の息子がいるシングルマザーらしい。
しおりは懐かしいとはしゃぐが、実咲と明日香の表情は重い。 彼女はスミレが亡くなった後も、ずっと反対運動を続けている。 もう決まったことだからと、村の人からは避けられているらしい。同窓会にも呼ばなかったのだとか。スミレも含めて、仲良し5人組だったのに。

年配の先生が入って来る。
文化祭の演劇の小道具が雨漏りで全部ダメになってしまったらしく、作り直すためのダンボールを探しているみたいだ。実咲は業務的な話しかしないように、距離をとった会話をする。スミレの兄だから。
演劇の作品は隠田。天災の時でも年貢を納められるように山の中に隠して作った田んぼ。結局、見つかり、庄屋の首がはねられる。代わりに取られた策は、川の上流を堰き止め、下流の農村被害を少なくする。でも、上流は水害に苦しむことになる。全体のためなら、多少の犠牲はやむなし。劇中の言葉らしい。
中学生が演じる作品にしては重いが、村の歴史を知るためにここ数年、上演し続けているらしい。

翌日、台風は強まり、みんな来れない。 4人だけの同窓会に。
昔話をするしかない。そう言えば、同じように台風で蛍を見に行く会が中止になったことがあった。
そのうち、やはり産業廃棄物処理場の話になる。
初めは反対だった。でも、どうしようもない。下流の村にだって話に行ったけど、自分たちには関係無いと聞く耳を持たない。隠田のように、400年も昔から、この村は犠牲になる運命だ。
確かに神社の近くに駅が欲しかった。父は、神社の数々の骨董品をもっと多くの人に見てもらうのが夢だったから。駅を作るなんて、こんな機会以外に自分たちでどうすればいいのか。
利奈の子供が学校でどんな状況になっているか。みんなから無視されている。そんな大事なことを捨ててまで守らないといけないのか。
村は変わらなければいけない。国の施設。大丈夫。これから、いいように変わっていく。

そんな中、年配の先生がバケツを探しにやって来る。
また、雨漏りですか。そう、新校舎で。 そんなことはない。大丈夫なはず。
揺らぐ心を抑えて、それでも、自分たちの選択は間違っていないと信じたい。
全てが流れてしまえばいい。あの産業廃棄物処理場も、この村も。

年配の先生はスミレのことを語る。
自分もそんな気持ちがあると。
あの日、スミレは産業廃棄物処理場が台風被害などで危険である証拠を掴みに行ったらしい。緑のカッパを着て。今でも、スミレは走り続けているように思う。
スミレが、まだ幼い頃、ここに来た時、村の生活に馴染めなかったが、あの川で蛍を見て変わった。その蛍を、ここをもうすぐ去ってしまう女の子に見せてあげたいと言っていた。
そう、本当は蛍を見る会は中止ではなく、しおりが残念そうにしていたので、スミレは二人で見に行っていた。 スミレは、きっと、自分にとって大切な場所、この村に住んだ人たちを繋げる大切な場所を守りたかったのだろう。
先生は、額の裏から見つけた手紙を渡して部屋を去る。

手紙にはみんなの将来の夢が書かれていた。
花嫁に、先生に、都会に出たい。
しおりは、またこの村に住みたいと。 そして、スミレはみんなで蛍を見に行きたいと・・・

スミレがこれからもずっと繋げていきたいと願っていた想い。自分と4人を繋げるのが、この村で、そこにいる蛍だと思っていたのかな。
これを断ち切るようなものからは戦わないといけない。守り通さないといけない。
彼女の損得ない純粋な想いは、みんなの正しいことをした、こうするしかなかったという考えを変えるのには十分だったろう。
村のことを思ってしたこと、自らが犠牲になり周囲を守ることになる。私利私欲を否定し、いかにもみんなのことを想っているといった正当化を述べていたが、本当にみんなのことを想っていたのは誰だったのか。
もちろん、スミレがした行動は、村人みんなのためのような大きなものではないが、身近にいる仲間を想えないで、そんな大きなものを想っているなどとは順番がおかしいだろう。
スミレは、いつか叶うだろう、みんなと一緒に見に行く蛍を守ろうとした。
その未来の姿を常に想像して、逆算するように今を行動しているみたいな感じ。
自分の人生には未来がある。ならば、その未来がどうありたいかを考えて今を生きるなんて当たり前なのになかなか出来ない。将来の夢なんて言葉がある。タイムカプセルのように、その自分が描いた言葉を未来に見た時、たとえ違った人生でも納得できる。そんな生き方が正しいことを知っていても、不思議なことに、その道を閉ざすような決断を仕方ないとか、良しとして進もうとしてしまう。

今は未来からの借り物。とっても素敵な言葉だなあ。
残してあげたいなんておこがましい。元々、これから先の人たちのものなのだから。勝手にいじろうとすること自体が問題なのだろう。
生きているのは生かされている。今の自分は、周囲の人がいるから存在する。未来があるから、今がある。何かそんな考えが浮かんできて、より良き世の中、未来をなんて言う前に、まず自分を、今をもっと輝かせろと言われているような気がする。

産業廃棄物処理場を取り上げているが、具体的な危険性や問題点などを挙げている訳ではなく、恐らくはメタファーみたいなものと考えていいのかな。
この田舎町が人生を歩む自分の心みたいな印象を受けたが。
どうしようもないことはたくさんあり、それを受け入れないといけないことはあるだろう。国から押し付けられるこの産業廃棄物処理場みたいに。そして、冷静に分析すれば、その受け入れることが全て悪いことばかりでなく、良いことだって考えられる。このへんぴな田舎町が外観上、発展を遂げようとしているように。リスク&ベネフィットは綺麗事だと言え、より良く生きる上では大事な考えだ。いつまでも田舎町では世についていけない。それなりの進化は必要だろう。人に例えるなら成長みたいなものか。
でも、それで本当に良かったのか。リスクを押し殺し、ベネフィットを大儀に自分を勘違いさせる、洗脳するようなことをしてしまうことはないだろうか。
絶対に大丈夫なんてことはない。リスクが少ないということは本当か。ベネフィットと考えることは本当に自分にとってそうであるのか。
受け入れたことで、必ず自分は変わってしまう。その変わった自分は、本当に自分が進みたかった人生の道を歩める自分なのか。気付いた時に、元に戻れるのか。
未来の自分をちょっと想像すれば、そこにきっと答えはあるはず。
違うなら、今、苦しくても、そんな降りかかってきたおいしいものに惑わされず、歯を食いしばって今にしがみつけ。自分が、自分の心という土壌で育った草や木ならば、その土から抜け出すようなことをせず、根っこを生やしてそこで成長する覚悟をしろ。
変わらないといけない。でも、変えてはいけない、守り通さないといけないものもある。それが自分だ。 そんな厳しいメッセージを感じ取ったような気がする。

描いていることは、題材に産業廃棄物処理場を使っていることや、人の死も絡んでいるので、厳しいところがあるし、妬みや打算的な汚さが露骨に出てくる。設定となる天候だって台風という荒れ模様。
でも、不思議と暗さや嫌味さが全く感じられない。
一つは、独特の、多分、高知弁で語られる会話の妙か。
そして、何よりも自然に沸き上がる想いをそのまま素直に描いているからではないかと思う。
みんな仲良しだった。だから、その仲はずっと続いて欲しいし、その原点となる村が大切。そんな当たり前が、周囲に惑わされることなく、願いとなって表現されているみたい。
だから、とても優しく、人の想いの温かさを感じる作品となっている。

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コメント

これも行きたかったのですが今回は見送り(泣)某劇団の忘年会参加のためこの土日は計3本観劇。SAISEIさんので楽しみます。次の土日は
(土)
電光仮面
ゴースト
ゲルダ
(日)
くるみ割り人形は白鳥の湖にいる
マザー4
の予定。電光仮面が140分ということで予約はまだです。ゴーストは120分、くるみ割りは60分とのこと。あまり行かない劇場に行くのも楽しみです。

投稿: KAISEI | 2014年12月 8日 (月) 00時29分

>KAISEIさん

私は今週は、学会で香川に行かないといけなくて。
恐らく、金曜日の梅棒だけかな。
日曜日に学会が終わって間に合えば、関西大学万絵巻の卒業公演を観たいと思っていますが、恐らくは厳しく・・・
ゲルダを観逃すのは痛いです。

良き観劇の週末を(゚▽゚*)

投稿: SAISEI | 2014年12月 8日 (月) 18時38分

学会。懐かしい響きですね~(笑)私も院生の端くれでしたが…デカいのには行ったことがないな~梅棒ですか…ブラックタイツの公演のゲストに来られてましたわ。ゲルダなどはまたコメント入れます(笑)万絵巻さんお好きですね。いいところは何でしょう?行ったことないので…

投稿: KAISEI | 2014年12月10日 (水) 00時19分

>KAISEIさん

学会。一時は、毎月のように行っていましたけどね。最近は発表をあまりしなくなったので、気楽なものです。
梅棒さん、いいですよ。感動すると思うんですがね。
万絵巻さんは、学生劇団を観に行くきっかけになった劇団なので、ちょっと特別扱いかな。
なかなかやるなあと素晴らしい時と、う~ん、ちょっとなあという時が交互ぐらいにあるかな(゚ー゚;

投稿: SAISEI | 2014年12月11日 (木) 12時00分

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