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2014年12月 6日 (土)

ロミオ&ジュリエット【劇団空組】141206

2014年12月06日 ABCホール (150分)

初日が終わり、笑って泣けるという感想が私のTwitterのTLを飛び交う。
笑いは、いつもながらの若い女の子らしい、私のようなおじさんにはちょっと付いていけないところがあるけど、まあ面白いことを色々と組み込んで、楽しい舞台になっているのだろうと予想する。
そして、泣けるのが話として泣けるのか、しっかり作り込まれた作品の素晴らしさに感動して泣けるのか、どちらかが分からなかったが、これは後者だろうと思って足を運ぶ。10周年記念公演なので、いつも以上に気合が入っているのだろうなと思っていたから。

笑いの予想は正しかったが、泣ける方はちょっと予想と違った。もちろん、いい方向で。
後者の泣けるもあったのだが、前者の話としても泣けるように仕上がっているように思う。
ロミジュリは、基本的に私は泣けない作品だと思っている。何か悔しい想いが出てきて、泣けるとしても、どうしようもないもどかしさに悲しみの涙を誘われるだけなのだが、この空組スタイルのロミジュリは確かに話として泣ける。感動の涙が浮かぶ。最後に想いを込めたそんな素敵なラストを用意している。
とても素敵なロミジュリだと思う。

モンタギュー家とキャピレット家は、互いに憎しみ合い、抗争を繰り広げている。
そんな両家に、これ以上のいざかいを起こさぬように大公からお咎めを受けるが、両家の家長はもちろん、従う血の気の多い若い者たちは、聞く耳を持たない模様。

モンタギュー家の一人息子であるロミオは、美しいロザラインに片想いしており、心ここにあらずの状態。友人たちは、からかいながらも彼を心配している。
キャピレット家の一人娘であるジュリエットは、彼女を心から愛してくれる元気のいい乳母をはじめ、身の回りの世話をする給仕たちに大事にされて、純粋に育つ。そんなジュリエットを妻に迎えたいと考えている大公とも縁深い貴族のパリス。キャピレット家は、お家繁栄のために、いい話だとパリスをはじめ、多くの貴族たちを招いて舞踏会を開催する。
その舞踏会にはロザラインも出席する。彼女に片想いするロミオは心配でたまらず、友人たちと共にその舞踏会に潜入する。
そこで、出会ってしまったロミオとジュリエット。二人は、運命に導かれるように、互いに心惹かれ合う。そして、教会に向かい、婚姻の誓いを交わす。神父も二人の結婚が、両家のいがみあいを解消すると考えたみたいだ。

しかし、その直後、ロミオは路上で両家の争いに巻き込まれる。
キャピレット家のティボルトが、モンタギュー家のマキューシオを殺害。マキューシオと親友であったロミオは逆上して、ティボルトを殺害する。ティボルトはジュリエットの従弟であり、大公の甥にあたる。
この事態に、大公は激昂するが、ロミオを死罪にはせず、両家の長年の争いがこんな事態を招いたのだと、慈悲の心をもって追放処分とする。
ロミオはジュリエットに会いに向かい、しばしのお別れを告げる。
神父がいつしか、両家の憎しみが解消された時に、二人の結婚を公表し、必ずロミオを連れ戻すという約束をして。

ロミオは街の外で、許される日を信じて隠居生活を続ける。
ところが、ジュリエットは、家長の命でパリスと結婚をしなくてはいけないことになる。
母は父には逆らえない。いつも自分の味方であった乳母にも従うべきだと諭される。
ジュリエットは教会に駆け込み、神父に救いを求める。
神父は、ジュリエットに仮死状態になる薬を手渡し・・・

きちんと原作を読んだことはありませんが、忠実なロミオとジュリエットになっているのだと思います。
ロミオの心の葛藤を4人のおかしなキャラに描かせたり、運命に左右される二人の物語らしく、運命という黒づくめの擬人化されたキャラが存在したり。
そんな演劇的な手法に加えて、ミュージカルではありませんが、ダンスや歌のエンタメ要素を盛りだくさん。セリフの一つ一つは、コミカルだったり、熱のこもった心情を身体表現で魅せる。
やれることを最大限にまで組み込み、この揃った、気の合う仲間じゃないと創り上げられないロミジュリを完成させたようです。

ラストも素敵でした。
どこかで道を変えられる分岐のチャンスはあったものの、結局はどう進もうと悲劇の結末に向かってしまう。このこと自体が悲劇そのものであると思わせるような作品ですが、最後は、導かれることの無かったみんなが望む姿を描き出しています。悲劇的な結末に、ただ悲しみや悔しさの涙を流すのではなく、そこから本当に導き出したかった幸せの形を想像して、現実には無理だとしても、その実現を祈るような優しい想いを感じさせるところが、この作品を悲劇から脱却させて、二人の尊き愛の物語へと昇華しているように感じます。
愛の幸せな形は、運命という言葉あれど、自分たちで創り上げるという強い意志でしょうか。

役者さんはダンサーさんも含めて総勢40人。この回は日替わりゲストとかで現役女子高生の落語をされる方や知らぬ間に結婚されてお幸せな演出補佐の方などもご出演。
皆さん、キャラはかなり立たせていますが、中でも目を惹いた方々。
まあ、ロミオとジュリエットは当たり前か。ロミオ演じる卯津羅亜希さんは、はまり過ぎの役どころ。いつもながらの男前のかっこよさ。今回は少しおとぼけを抑えて、葛藤の苦しみをより表に出した演技が目立ちます。ジュリエットは、これまた美人ではまり役の岡田由紀さん。何不自由なく育ってきたお嬢様の空気を醸しながらの純粋でまっすぐの姿。その笑顔とは真逆に悲劇の道へとたどるどうしようもない運命のもどかしさを感じさせます。このジュリエット役は、公演によって変わるみたいです。
乳母の杉野香奈恵さん。妙齢なのにまだまだ、女として現役といったコミカルなおばちゃんの姿とジュリエットを真摯に愛する母の姿を交錯させた巧みな芸達者っぷりを魅せていました。
ティボルト、巴遥さん(演劇カンパニー未来計画 TOP)。憎しみに憑りつかれた狂気。生まれによって定められた、自らに課せられた運命を打破できずに死を迎える姿は悲しく愚かに見えます。
ロザライン、濱辺緩奈さん(演劇集団よろずや)。相当な美人さんですね。女の巧妙さも醸し、ゾクッとするいい女、いや悪い女を演じます。
教会に身を寄せるロミオに憧れる女の子、華さん(演劇秘密結社ピーピー・スー)。感情剥き出しの子供のような心情表現の弾け方がとても可愛らしく。
ロミオの心の中の4人組。作畠杏奈さんかなあ。役名を聞き取れなかったので。いい間合いでツッコミを入れて笑いを誘っていました。
ジュリエットの給仕やロミオの使用人みたいな役の丸小野真穂さん。ダンスとか動きに力強さがあり、パワフルな熱に魅力を感じました。

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コメント

評価が高いですね。古典劇ですが基本ラインはおさえながら現代でも楽しめるように演出してありましたね。ネタはドラゴンボールがありました。イケメン7人集めるくだりですが…個人名もアゲて褒めたはりましたね~。私は実は都合で30分ほど遅れまして後から二列目の舞台に向かって左側で観劇。良かったんですがそこまでとは。役者さんの細かい表情がわかりにくいせいもあるのか特に泣くなどの感情が揺り動かされることはなかったかな…でも後の女性が泣いたはった気が(笑)場所は関係ないのかな?女性が男性を演じる場合女性らしさが消し去られているかどうかが気になるのですが全体的にどう感じられましたか?主役級は特に問題なかったと思いましたが(上から目線w)この前のしろみそさんで妹役を演じられた丸小野真穂さんが出演されてましたね。

投稿: KAISEI | 2014年12月 7日 (日) 23時59分

>KAISEIさん

けっこう、観続けていて、どんどん進化していることが感じられるので、少し贔屓目はあるかな。
あれだけ、女性が揃っているので、様々なタイプがいらっしゃいましたね。
中には男性役は苦しい方もいたようには思います。
主役は男性役が鉄板ですから。
まあ、ここは個々の魅力がうまく全体のまとまりに繋がるような、連帯感が大きな魅力だと思います。

投稿: SAISEI | 2014年12月 8日 (月) 18時32分

何回も観ておられるんですね(笑)石田さんは今回初めて観はるみたいなこと書いたはりましたが(笑)毎回何かがあって見逃してしまう劇団ってあるんでしょうね。女性ばかりの劇団というと劇団音芽やさくらカンパニーを観に行ったことがありますがSAISEIさんはありますか?

投稿: KAISEI | 2014年12月10日 (水) 00時51分

>KAISEIさん

観に行こうと思っていたのに、何でか仕事が入ったりで、縁が無い劇団ってありますね。
先日、観劇したMicro To Macroは必ずと言っていいほど、公演の週に、仕事と家庭でややこしいことが起こります。それでも、何とか観に行けたりはしてますが。

さくらさくらカンパニーは名前は聞いたことがありますね。音芽は初めて。来年3月にドーンセンターで公演がありますね。覚えていたらチェックしてみますわ。

投稿: SAISEI | 2014年12月11日 (木) 12時06分

さくらさくらカンパニーは5月に『笑運幕末グラフィティ新撰組』(at芸創)が私の中ではハズレだったので(5月は斬撃ニトロの新撰組も撃沈。新撰組ネタにはトラウマがw)12月の公演は見送りました。劇団音芽は3月に観た『オペラ座の怪人』(atABCホール)が全曲オリジナルの力作で怪人役の女優さんの男ぶりは良かったです。私にとっては初めて一緒に写真を撮ってもらった大切な劇団ですね。本公演では初めての再演だったはずです。本公演以外では宗教系の劇を寺院や教会でやったはる観たいですね。学会いってらっしゃいませ。お土産よろしくです(笑)←ウソですw

投稿: KAISEI | 2014年12月12日 (金) 01時47分

>KAISEIさん

出張から戻りました。手ぶらですが(^-^;
音芽さんは、ちょっと興味深いですね。機会あれば。
別の記事に書きましたが、ちょっとしばらく観劇お休みです。
寂しいですが、仕方ありません。
また、いい劇団、見つけておいてくださいね(゚ー゚)

投稿: SAISEI | 2014年12月14日 (日) 11時46分

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