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2014年12月 1日 (月)

プール【夕暮れ社 弱男ユニット】141130

2014年11月30日 京都芸術センターフリースペース (100分)

今から思うと最初から、何か圧迫されるものがあったような気もするが、途中から急にその圧が強くなり、どうしようもない息苦しさを感じる。
それでも、いつかその息苦しさからは解放されるような感覚も得る。
当日チラシの言葉を借りれば、水泳選手がとにかくどうであろうとひたすら水の中を泳ぎ、ゴールした瞬間に結果はどうであれ、顔をあげて息を吸うみたな感じだろうか。
その時の爽快、達成感を知っているから、息が苦しくても泳げる。そして、その泳ぎを見守ってくれている人も実はプールサイドにいる。だから、頑張って泳ぎ続けなさい。そんなことを伝えている作品のように思う。

クリーンセンターで特殊廃棄物の仕分け業務の仕事をする正一。妻を亡くしている。男手一つで育ててきた娘は高校受験を失敗して、今はプータロー状態。たまに、この仕事を手伝ったりはしているみたいだが。
家では反抗期の娘に色々と手を焼いているみたいだが、職場では仕事に誰よりも熱心で真面目に取り組み、気のいい優しさがあることが親しみを誘うみたいで、リーダーとして五人の作業員に慕われている。
厳しい肉体労働であるが、若い作業員たちは業務後、楽しみにしていることがある。
それは、このクリーンセンターに併設される温水プール。作業後に配布されるチケットでただで利用できるらしい。

正一は三日後に遠洋漁業の仕事に就くことになっている。プールにはほとんど行かない。いつか娘と一緒に行きたいのでチケットだけを家に集めている。それより、今は準備に大忙しの様子。
後任のリーダーはまだ若い女性。正一ほどの貫禄はなく、リーダーシップをとってまとめていけるのか不安な感じ。
いつも三人でプールに行く若い男二人と一人の女。女は正一のことが気になっているらしく、正一がいなくなる前に告白しちゃえよと男二人に煽られている。
もう一人の沢井さんという妙齢の女性は正一の飲み友達みたい。滅多にプールには行かないみたいだが、たまたま、行った時に若い女の正一への気持ちを知ってしまう。もちろん、大人なので、気を使って聞いてない振りをするのだが。
正一の娘は金髪にしたり、ベランダでオペラを夜中に唄っては近所のおばさんに叱られるオペラ歌手の友達とクラブに行ったり。さらには、モンゴルからの交換留学生と付き合ったりして、正一に心配をかける。でも、この留学生がなかなかいい奴で正一は意気投合。これなら、自分がいない間も娘を任せておけるか。安心したのか、夜通し、一緒に飲んでしまい、最終出勤日にお休みをしてしまう。

最終日、お別れの挨拶をきちんとしようとみんなが正一の家を訪ねてくる。若い女は最後だから告白してもいいかなと思っている様子。
ところが家には下着姿の正一と沢井さん。正一は自分がいない間に、家を娘をこの女性に任せようとしていたみたいだ。そして、これを機に再婚をと。
娘は大反発。若い女性は呆然。
無茶苦茶な揉め事の種を撒いて、正一は旅立つ。

若い女の怒りは収まらない。あいつは私の気持ちを知っていたのに影でコソコソと。
怒りは沢井さんに向けられる。若い男も、ちょっと若い女に気があるのか同調して、共謀して嫌がらせをすることに。
いじめが始まる。リーダーは止めることができない。止めようとしても逆に脅される。
沢井さんは精神的に病んで、もう正一の家にも行けなくなる。
残された娘。沢井さんが仕事に来なくなった穴埋めをするため、自分が働きに出る。
でも、今度はその娘がいじめのターゲットに。辛い日々が続く。
救いであった彼氏も、モンゴルに帰らなくいけなくなってしまう。
父から手紙は届くが、あまり漁業が上手くいっていないらしく、いつ帰れるか分からない状態。
娘の友達のオペラ歌手はイタリアに行って勉強をしているみたい。最初は楽しいという手紙が届いていたが、そのうち孤独の寂しさを訴えるようになる。
娘は逃げることなく、いじめらながらも働く。それは、父も頑張っているから。自分も頑張らないと帰って来れないからといった感覚みたい。
いつまで、こんな日が続くのか・・・

ちょっとした噛み合わせの悪さから、連鎖して崩壊する人間関係。
そんな怖さを散々、見せられて、ずっと息が詰まる閉塞感があるのだが、最後はハッピーエンド。
父が戻って来て、沢井さんも何とか立ち直る。彼氏も帰って来る。
いじめていた3人には、父がお仕置きを。また、昔の作業現場の雰囲気が戻る。
オペラ歌手は、帰国し、自分の周囲にいる人の大切さを噛み締めて歌を唄う。
あ〜、よかったと安堵を得る感じ。
でも、本当にそうだったのかな。まさか、娘が見ている夢だったなんてことはないかと疑ってしまうところもあるような、不安定な像で映し出されたラストだったようにも思う。
崩壊するのは簡単だが、壊れたものをまた再築するのは大変なことだろうから。

一人になって初めて分かる自分を想ってくれていた人の存在。
正一がいなくなってそんな気持ちになったのは、娘だけでなく、沢井さんや作業員の人たちもきっとそうだったのだろう。留学生もモンゴルに戻って、娘やその家族との楽しい時間の大切さを知ったかもしれない。
そして、正一自身も、娘が、沢井さんが、仕事仲間がいるから、自分は頑張っていることを遠洋漁業の中の地獄で知ったみたいだ。
地獄を知った者だから、日常の幸せを噛みしめ大切に思うことが出来る。そんなみんなの気持ちを、オペラ歌手の歌声と共に伝えてくるような感じで終わる。

作品名はどういう意味なのだろうか。
ある閉鎖空間に溜まった水。徐々に汚れも溜まり、それを消毒剤を放り込んで泳げる環境にする。
そのうち、そのドロドロは、抑えきれずに出てきてしまうような印象だろうか。
ある時、急に自分がドロドロの中にいることに気付いてしまう。そこでもがき苦しむ。
その中でも、泳ぎ続けていれば、いつの日か、一度、水を抜かれるように、フレッシュな環境が訪れるみたいな感覚かな。

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コメント

29日19時半から最前列真中近くで観劇。評価は難しいがそれなりに良かったと思う。チラシの概説を読んだイメージと違った感じ。途中のイジメシーンは繰り返されてるうちに最初は笑いも起きていたのに途中でちょっと客席が異様なムードになったのを背で感じた。8月のレトルト内閣の公演で気になった佐々木ヤス子さんと努力クラブの佐々木峻一さん目当てで行きましたが今回は桜井さん役の役者さんが一番お気に入り。モンゴル人留学生役のもおもしろかったですね。私も題名が気になったんですよね~最近頭をSAISEIさんに任せてますわw題名と内容がピッタリな場合とどういう意味か悩む場合がありますよね。

投稿: KAISEI | 2014年12月 2日 (火) 01時18分

>KAISEIさん

繰り返しをうまく使いますよね。
イジメシーンもそうですが、オペラ歌手とおばちゃんの掛け合いなんかも笑いが、そのうち何か異様な怖さを醸すような感じで。

お目当ての役者さんがピッタリはまりましたね。私も最近、色々な公演で注目している美人さんと、努力クラブで独特の雰囲気が妙に気になるダブル佐々木を目当てで観に行ってみました。ここだけの話、水着姿を期待してフラフラと足を運んだのが正直なところなのですが(^-^;

題名の解釈は難しいです。
観終えて、その作品名の意味合いが自然に浮き上がるような観劇をすればもっと観劇が楽しくなるとある舞台監督さんから言われているのですが、なかなかその域までは・・・

投稿: SAISEI | 2014年12月 2日 (火) 01時36分

早い返信ありがとうございます。驚きましたが返信を読んで思わず笑ってしまいました。九割がた同じです(笑)佐々木ヤス子さんは昭和を知らない世代なのに耐える女を好演されていたのがとても印象に残ったのですが確かに美人ですよね(笑)ちょっと調べてみると美人なのに豪快で中身がオッサンらしいです(笑)PANDORAなどに出演されてた川原梓さんもそうですが神戸大ジゲキ出身の美人女優は変顔するのも好きみたいですね(笑)

投稿: KAISEI | 2014年12月 2日 (火) 02時04分

>KAISEIさん

川原さんもジゲキご出身なんだ。
あそこは、個々の役者さんの能力も、そして全体的な魅せ方もクオリティー高いですからね。
佐々木さんは、かのうとおっさんできっとより弾けた姿を魅せてくれると思っています。

投稿: SAISEI | 2014年12月 2日 (火) 09時30分

PANDORAの川原さんの相手役変わらはったでしょ。川原さんが後輩連れて来はったんです。リンクスにも出演されてたキング&ヘビーの片割れさんですね。ちなみにこのときの振り付けが佐々木ヤス子さん(笑)キンヘビ旗揚げ公演プロデューサーは○田1○6○さんです(笑)
御母堂具合がお悪いんですね。大事になさってください。

投稿: KAISEI | 2014年12月 2日 (火) 13時13分

>KAISEIさん

情報通ですなあ。

そういえば、来年だったか、キンヘビ、でかい公演しますよね。
自由劇場でやった公演の再演みたいですが、なかなか奇抜な設定の面白い作品だったで楽しみにしています。

母はねえ・・・
乳がん再発、末期に近い状態で、訪問看護やらホスピスなどの手続きに奔走していて(ノ_-。)

投稿: SAISEI | 2014年12月 2日 (火) 17時22分

SAISEIさんに言われると面映ゆいですね(笑)
レトルト内閣では佐々木ヤス子さんとたはらもえさん、片岡結衣さんが印象に残りました。佐々木さんとたはらさんを調べたらジゲキ出身だったのでジゲキのレベルの高さがわかり9月半ばの公演行くつもりだったのが行けなかったんです(泣)
PANDORAは西田美咲さん川原梓さん山本誠子さんの3人が印象に残りました。西田さんは目が行く存在感をお持ちです(華がある)し川原さんは後半の勢いがすごかった。魂を持っていかれる熱演でした。山本さんも悪ガキの演技上手いなあと思いました。西田さんとは2回お話させていただいています。私もファンですよ~7月の真っ暗な中鍋をつつく公演で好きになりました。佐々木ヤス子さんにはプールの際ご挨拶させてもらいましたが〔石田1967さんと一緒にいたのもあるのかもしれませんが〕丁重な挨拶をいただき非常に好感を持ちました。ちなみに昨日the edgeは仕事延長のためキャンセル、レトリバーズも行きませんでしたか(T_T)
歳をとると不景気な話が増えますものね。でも肉親はほんとに大事やと思います。

投稿: KAISEI | 2014年12月 2日 (火) 17時57分

>KAISEIさん

ジゲキは私も行こうと思いながらなかなか・・・
ずいぶんと役者さん方とも交流を深めているみたいで(゚▽゚*)
そういえば、石田さんとあまりお会いしていないなと思っていましたが、相変わらず京都にも足を運んで精力的なことで。
仕事が絡むと本当に・・・
ドタキャンが申し訳ないから予約をギリギリまで待っていたら、満席なったりするし。
難しいものです。

投稿: SAISEI | 2014年12月 3日 (水) 18時44分

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