BIER -ビア-【モンゴルズシアターカンパニープロデュース】141109
2014年11月09日 芸術創造館 (85分)
高機能PDDの診断を受けた者が犯した事件。
私たちがそんな障害者と共に過ごす現実世界と、もう一つの繋がろうとする障害者たちがいる裏の世界を行き来しながら、より良き社会の在り方を考えるような作品でしょうか。
高機能PDDと診断された男が、ずっと身の回りの世話をしていた妹を刺した。
妹は重体。
裁判所では、危険な障害者の存在は社会不安を引き起こすと長期刑を訴える検事と、障害者を受け入れる社会作りを訴える弁護士が討論を繰り広げている。
そんな中、妹の頭の中では、歩けない女の子イドをトロッコに乗せて、必死にどこかへ向かおうとしているキルという女の子の世界が拡がる。
障害児を届けることの是非に悩むコウノトリ。井戸に閉じ込められた男の子をほったらかしにして水質調査をする人。戦争の中、異常と見なされる自分たちの同性愛を見詰める男たち・・・
キルは、刺された妹で、イドは障害者である兄と関わらないという、自らが生み出したもう一人の自分だったみたいです。
向かう先は裁判所。キルはもう一度、全てを背負って、どこかに閉じ込められてしまっている兄の手を掴むために進み始めます。
ずっとおかしな観方をしていて・・・
キルが刺された妹というのはいいのですが、イドを兄としてずっと観ていました。妹が人生を歩む中で、ずっと足かせになっているようなイメージで。
そして、これまでの兄との人生を走馬灯のように振り返っているのかなと。
コウノトリは、障害を持つ兄を新しく生まれる命として運ぶ頃の話。
井戸の中の男の子は、そんな兄をどこかに閉じ込めて、何かをしてはいけない、出てきてはいけないのですよと教育を受ける頃の話。
そして、社会に出て、様々な人から偏見を持たれ、自分がしたいこと、愛や欲望を攻撃されるような頃の話。
そんな感じでずっと捉えていました。
大きくズレているわけではないようにも思いますがね。
実際は、これらは兄という者に限定しているのではなく、障害者と呼ばれる者がたどる道のようなものかな。それを妹は見ることで、自分が抱えているイドの存在に気付く。それを受け止めた時に、兄のことが理解できるようになったみたいな。
まあ、難しい問題ですからねえ。
私にも家族に障害を持つ者がいます。妹ですが。
と言ってもよく分かりません。もう30年以上も前に医師に知的障害がありますと言われただけですから。
それから、そんな障害者が集う施設にも行きましたし、ちょっと遅れて普通の学校に行って、短大に行って、そして、今は普通に働いています。普通じゃないのでしょうが。でも、真面目によく働きますよ。感心するぐらいに。私よりかは懸命に働きますね。でも、やはりコミュニケーション的な障害は見られるようです。
今は社会もだいぶ改善されているでしょう。当時はまず学校の先生が理解に乏しかった。障害の一言で拒絶です。教育委員会とかに掛け合って普通学校に入学したはいいけど、先生自体が差別意識を持って接するのですから、そりゃあ生徒たちだって、偏見を持ちます。いわゆる二次障害だって発症することになるのは当然でしょう。普通にしてくれていたら、別に大丈夫だったように今でも思っていますが。
私は彼女とどう接していたかなあなんて思いながら見ていました。
よくありがちな言葉になってしまいますが、障害は個性なんていいますよね。
私はけっこう、それは本気で思っていて、妹も医師が障害なんて言うからそれを信じてしまっていますが、本当にそうかなあと今でも思っています。
何が普通で何が異常、障害なんて本当に境界線なんか無いでしょう。私には、今どきの若者とか言って、人を思いやる気持ちを失って平気にしている人たちを外で見た時の方が、よほど障害じゃないかと感じる時があります。でも、その人たちは違うんです。診断されるその時まではきっと普通なんです。
作品中にカラスなんてことが出てきます。コウノトリはきちんと仕事をしないとカラスになってしまうらしいです。カラスになんかなったら黒いし異常だなんて恐れたりしていますが、自分が黒いなんて気付かないだろうなんて言葉も出てきます。
それでいいと思うんです。人から教えてもらった色なんか、本当かどうか分からない。その人の目がおかしいかもしれないのですから。自分が自分を見て何色をしているのか。黒いなら黒いなりに生きればいい。人に黒いと言われて、黒いとして生きるのはおかしいように思います。全然、白いのかもしれませんから。
きっと、私は妹に自分の色を自分で確かめろとずっと言ってきているように思います。親は医師に黒いと言われたから、そう育ててきていますが。だから、妹は黒いと思っているみたいです。でも、本当にそうかなあ。ちょっと黒いところはあるけど、カラスみたいには私には見えませんけどね。自分の方が、何かおかしな黒さがあるような気がするくらいです。私と親なら、そりゃあ親のことを信じるのは当然だから、そうなってしまっていますが。
そんな親も、父は亡くなり、母もそう長くはないでしょう。癌になってしまったので。
その囚われから解放された時、私は彼女の手を掴むべきなのだろうなと思います。そして、彼女の自分の色をもう一度見詰め直させて、その色で人生を歩んで欲しいように思います。もちろん、兄だから、一緒に、どんな時でも手を携えて。
繊細な問題なので、一般論ではなかなか感想を書くのは難しく、自分のことと照らし合わせることで感想に替えました。
普通とか異常とか障害とか。人同士ですから。作品中にも出てきますが、同じ形してますしね。きっと受け入れ合い、繋がり合えるはずなんです。それを当たり前に思える社会であって欲しいし、そんな社会を創り出す一人の人間でありたいように思います。
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コメント
17時半の回でしたか… 私は13時の回なんです… まァ年末までにはお会いしたいですねw 努力クラブのコントにしてもカストリ社のフラッシュフィクションにしてもまだまだ楽しみかたがわからないですわ。好みはカストリ社匿名劇壇側ですね。役者さんは努力カストリいずれも気になったり上手いなァと思う方は何人もいました。やっぱり匿名劇壇の息の合ったリズムのある演技は改めて好きやなと思います。「持っている男…」の福谷氏と東氏の掛け合い、佐々木氏と4人の女との掛け合い、「勇者あああああ」の杉原氏と石畑氏も好きかなあ。
投稿: KAISEI | 2014年11月10日 (月) 08時54分
不思議の国のアリスダイヤバージョン配役表
アリス 吉田亜未
庭師アラン 戸梶泰志
庭師バラン 永野翔一
時計兎 原田あずさ
チェシャ猫 ひよこ
青芋虫 福井清香
帽子屋 山本大輝
ヤマネ 橋本真衣乃
赤の女王 小松みなみ
ジャック 貴志展弘
人
グリフォン 宮武健一
ニセ海亀 竹重香織
白い騎士 大石祥生
ネズミール 今井美沙
ネズミック 辻志保
ネズミアン 泉里佳
ヘレン 田守悠花
教師 高橋奈津江
総勢恐らく約27人出演みたいで主要メンバーのみ思い出せる限りこんな感じやと思います。パンフにはスペードもしくはハートしか載ってないので… これ以外でお知りになりたければまた言うてくださいね。私は二列目に座ってましたがギリギリに来たので最前列通りました。すれ違ってますねw
投稿: KAISEI | 2014年11月11日 (火) 00時14分
>KAISEIさん
残念。
私も本当は13:00が良かったのですが、仕事の調整がうまくいかず・・・
匿名はねえ。しっかり計算されている巧妙さが凄いですからねえ。私も勇者あああああは好きですね。中野劇団にも同じようなRPGネタがありますけどね。
配役表、ありがとうございます。
ネズミ、ちゃんと名前あるんだ(*^-^)
投稿: SAISEI | 2014年11月11日 (火) 11時22分