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2014年11月30日 (日)

ワンダー三日月リバー【Micro To Macro】141129

2014年11月29日 カフェ+ギャラリー can tutku (90分)

突然、暗闇の中に突き落とされてしまった男が、自分の光を取り戻し、そして、自分を照らしてくれるものたちの存在を見出して、先へ歩を進め始めるまでの物語。
暗闇の宇宙の中で寄り添い合って時を刻んできた月と地球の姿をベースに、男と女の想い合う愛、繋がれていく生、未来を光り輝かせ切り開いていこうとする人間の強さを温かく、そして力強く描いているような話でした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

山奥の田舎町に引っ越して来たトリオ。苗字がハバタキなものだから、自己紹介で早速、みんなにからかわれる。
そんな中、かばってくれる女の子。ミャーコ。苗字がネコタ。何か気が合いそうだ。
後ろの席が二つ空いている。どちらでもいいみたい。どちらを選んでもミャーコの隣。同級生たちに冷やかされながら、席に着く。
選んだ席は屋上から聞こえてくる美しいバイオリンの音が聞こえる特等席だった。音楽が好きなトリオは授業中も聞き惚れている。ミャーコも音楽が好きみたいだ。
授業は、海の生き物の話みたい。ちょっとお調子者の同級生が本読みをさせられている。海の生き物の中には、暗闇の中で化学性物質により自らを発光させるような進化を遂げたものがいるみたいな話。所々、漢字が読めないものだから、こっそりと助け舟を入れる。後から、本当は全部、知ってたなんて強がりを言ってくるが、ここは大人の対応で謝っておく。別にそんな世渡り上手なわけでは無い。トリオは、素直にそうだったんだと本当に思う、嫌な気持ちにさせて悪かったなと思う
ような素直な子みたい。そんなところが同級生たちにカッコよく映り、トリオは仲間として認められていく。
お昼。お腹ペコペコ、弁当の時間だ。歌うは弁当ロック。ノリノリの楽しい時間。トリオは呆気にとられるが、ミャーコは寂しそうに教室を出て行く。家庭の事情で弁当を持って来ていないらしい。そして、いつも一人ぼっちでいる子みたい。

翌日は、地球と月の話。いい加減そうな先生だが、アイディア豊富なのか、本当にちょっと分かりやすい説明。満月と新月の時、月と地球は最も近付き、海も満潮になる。月の引力が最高になって引き寄せられるから。互いに引き寄せ合う。そんな関係をもう地球誕生からずっと続けている。どうしてそうなのか。この質問の答えはきっと奇跡だろう。
そして、また弁当ロックが響き渡るお昼の時間に。
トリオは今日は弁当を持って来ていない。ミャーコとお昼の時間を一緒に過ごしたいから。
ミャーコは、お昼、いつも屋上から聞こえるバイオリンに合わせて歌を歌う。そうすると、ちょっとだけお腹の虫が落ち着いてくれるらしい。そして、ミャーコはいつの日か、レコードに自分だけの音楽を残したいと思っている。
トリオはミャーコがしたいことを叶えようとする。
どこから用意したのかレコードの録音装置。真剣に自分のしたいことに向けて走るミャーコと、それを懸命に応援しようとするトリオの姿にいつしか、みんなも協力するようになったようだ。もっとも、一番張り切ってしまったのは先生だったのだが。
無事にレコーディング終了。宝物が出来た。
先生も褒めてくれる。みんなを引っ張る力がトリオにはある。その産物がこのレコード。大切にしなさい。辛い時はこれを聞くといい。
トリオはもう一つのミャーコの願いもいつか叶えてあげたいと思っている。この町は山に囲まれている。だから、海を見るのは大変だ。山を越え、三日月川を下ってようやく海にたどり着く。家族旅行でもない限り、子供だけではとても行けない。だから、ミャーコは一度も海を見たことが無いらしい。海は白いの。トリオは答える。いや、海は青い。でも、そのはるか向こうは白いか。

高校生になり、甲子園を目指す。
この町から、ミャーコを連れ出したい。そのトリオの想いはバットに宿り、センター越えのヒット。走る、走る。でも、残念ながら前の走者がホームでタッチアウト。甲子園ならず。そんなにうまいことはいかない。
社会人になる。お調子者だった同級生は、早々と町を出て都会へと就職を決めた。
トリオは地元の会社に。意地の悪い先輩に仕事を押し付けられるが、我慢して頑張る。そんなトリオを見て、先輩たちに仕返しをしてくれるミャーコ。あの頃とあまり変わっていないようだ。
ミャーコは猫を、トリオは鳥を飼い始める。キュートで何か面白味のある猫と、不器用で優しそうな鳥。ペットは飼い主に似るのは本当らしい。
レストランで二人は食事。トリオはかなり無理して頑張って高級フレンチに連れて行ったみたいだ。ステーキやらワインやらが出てくるが、慣れていないのか互いにぎこちない。
ミャーコはこの先のことをどう考えているの。行動以上にぎごちないトリオの回りくどいプロポーズ。想いを伝えるのが不器用なトリオらしい。それに対して、ミャーコは昔、勉強した地球と月のように、46億年ずっと寄り添い合いたい。まあ、それは無理だとしてもおばあちゃんになるまでずっとトリオと一緒にいたい。彼女の自分の想いにまっすぐな言葉。ずいぶんと性格は違う二人だけど、結局のところ、お似合いなのかな。結婚。
そして、子供が授かる。

二人に似たのか、子供、瑠海は音楽好き。かつてみんなで作ったレコードに自分で針を置いて聞いたり。
よし、今日はすき焼きにしようか。
レコード、海。かつてのミャーコにはもう一つ願いがあった。それがすき焼き。お腹がすくのを我慢していた昼休み。まだ、すき焼きを食べたことのなかったミャーコは、それにすごく憧れていた。すき焼きの願いを叶えたのはいつのことだったか。後は、海に連れて行くことだけ。これがなかなか忙しくて。
まあ、今日は瑠海の初のすき焼きとしよう。
ミャーコは瑠海を連れて、すき焼きの食材を買いに行く。
それからしばらくして、トリオの下に悲しい知らせが入る。
瑠海が川に落ちた。それを助けようとしてミャーコが・・・

三日月川で釣竿をたらすトリオ。
東京からやって来たらしい男の釣れますかの答えにぶっきらぼうにいいえと答える。
何が釣れるのか。釣れてないから分からない。会話はすぐに途切れる。
男は記者らしい。この川で、何回も同じ子供が落ちるという怪事件が発生している。その真相を突き止めに来たらしい。その真相から、エログロを交えて読者の興味をそそる記事を書くのが仕事だ。
トリオは何も答えない。ただ、イライラと悲しみの表情を浮かべる。
川上から何かがやって来る。船。船長と鳥と猫。
乗りますか。トリオはいいえと答えた瞬間、よろめいて、はずみで船に乗ってしまう。男も一緒に。
船は出発する。後ろから駆けてくる子供。瑠海。
あの子も乗せないと。無理やり船を止めて、子供も乗り込む。
船はどこへ向かうのか。船は進む。

トリオと瑠海は二人っきりになった。
瑠海は歌が好き。あのレコードに残された歌を歌う。
弁当は作ってあげられない。だから、お昼休みは歌を歌ってお腹がすくのをごまかしているらしい。
すき焼きを食べたがる。
ミャーコの影が瑠海に映るのか、トリオは瑠海がすることを全部否定する。
歌は歌うな。あのレコードも一切触るな。すき焼きは二度と食べない。だって、あの時、すき焼きを食べようとなんか言わなければ。
瑠海は自分で川に何度も飛び込む。そのたびに、鳥と猫は瑠海を救う。自分がいなくなった方がお父さんの気持ちがきっと楽になるから。

川の流れは過去へと時間を導いているのか。
巡り廻る過去のミャーコとの思い出。振り返る自分の選択の歴史。変わらぬ過去。
船はどこへ進むのか。
満潮になって川の流れが逆流になったのか、時は未来へと進む。
そこには、おばあちゃんになったミャーコとおじいちゃんになったトキオの姿。あの日、レストランでした約束。でも、それは守られなかった約束。トキオはずっと傍にいると思って人生を過ごしてきた。ミャーコもずっと傍にいたかった想いが消えることなくトキオを見守り続けた。
船は逆流に飲まれ、操縦できなくなった。トキオは船を自らの手で漕ぎ出す。前へ前へ。瑠海と一緒に。ずっと抱きしめてあげたかった瑠海と一緒に。
逆流を突き抜け、たどり着いた先は海。そこには自分で光り、暗闇の海を照らす生き物たち。ミャーコと出会った学校で先生が教えてくれたことは本当だった。
みんな、自分の光で、自分の進む道を照らしている。

三日月川で釣竿をたらすトリオ。
船がやって来る。船長はある雑誌の記事を見せる。
暗闇の海に輝く無数の光る生き物たちの素敵な風景のことが描かれている。
乗りますか。もちろん。みんなと一緒に。
自分が、瑠海が進む道は今、一つしかない。本当に月になってしまったミャーコの力に引かれて、彼女が願う私たちの未来へ・・・

妻を失い、残された子供と過ごす男。その妻の死とどう向き合い、生きる子供とどう向き合うのかが分からなくなったのか。
妻への想いは大きかった。だから、その妻の面影を残す子供への想いは大きな愛と悲しみを交錯させる。
男の目は過去にしか向かなくなっている。いや、それすら向いていないくらいに。
記者の男はかつての同級生なのだろうか。それに気付かないぐらいに、トリオは過去を拒絶したのか。過去への絶望。それは、時が進む限り、常に瞬間、瞬間の今が絶望に通じてしまっているように感じる。
海。青いけどその向こうは白い。そう答えるトリオは、目の前に広がる景色の先が見えていたようだ。自分たちの未来は、そんな光り輝く無色な部分。そこに自分たちは向かい、その色を自分たちで見出す。そんな自分たち、トリオとミャーコで切り開く未来への希望を感じる。
月。表と裏のどちらに行きたいか。ミャーコのトリオへの質問。ミャーコがしてみたいこと、行ってみたいことを叶えてあげようとずっとしてきたトリオ。そんなトリオはどちらを答えるのだろうか。二人とも見える照らされた表ではなく、自分たちで照らして、そこにあるものを一緒に見よう、触れようと裏の世界を答えるような気がする。それに、ミャーコが月なら、彼女の悲しみが眠る裏の暗闇をきっと照らしてあげたかったはず。
そんなはるか先の自分たちが輝くことを思い、常に行動していたトリオだったからこそ、みんなが心惹かれ、一緒に歩こうとしたように思う。
でも、トリオは、もう何も見えなくなっている。海は暗闇にしか見えないだろう。青さすら見えない彼に、その先の光る部分など感じられるはずもない。
見えている光る月すら、きっとトリオは見えていない。月になると言ったミャーコを思い出すことは苦しいだろうから。仮に見ても、そこに暗闇があることすらもう感じられなくなっているようだ。

そんなトリオが、月の引力に導かれるように海へと向かう。
そこで、見た暗闇に生きる海の生き物。そのものたちは自分の道を自分で照らす。
トリオの心にもほのかな灯がともったのだろうか。
彼の弱い光は、自分のすぐ足元を照らす。そこには、暗闇で身を潜め、悲しみと苦しみの中で打ち震える瑠海の姿がようやく映ったのではないか。
ミャーコの死への悲しみは決して消えない。かつてのように世界は輝かず、暗闇に突き落とされたことは現実だろう。
でも、そこから、瑠海と一緒に先を照らしながら歩いていかなくては。
自分が見ないといけないのは変わらぬ過去ではなくて、これから切り開く未来。ずっと、そうして生きてきたはずだから。
月になったミャーコの引力に導かれ、二人は時の流れを進む。
トリオが地球なら、これまでも、これからもずっと寄り添いあって、引き合いながら進めるはず。そして、二人から生まれた大切な星である瑠海もまた、トリオにとっては、自分の力で引き寄せ導くもの。同時に引き寄せられ導かれるものなのだろう。
そして、二人の光はきっと弱い。人生という膨大な海の先々まで照らすほどの力は無い。そんな二人を太陽のように照らしてくれる周囲の仲間たちがいる。
二人は、いつも絶対に傍にいる月と共に、数々の星たちと出会い、寄り添い合いながら、そして、常に自分たちを照らしてくれる太陽に感謝しながら、この宇宙を先に向かって進むのだろう。
暗闇の宇宙の中で迷子になったかのような男が、自分の周囲にある太陽、月、そして生み出された大切な星を見つけ、また軌道を取り戻していくような宇宙の中で見出した人の奇跡の物語って感じだろうか。

鳥や猫は、二人の心そのものといったような象徴なのだろうか。
現実は、この話のように様々な悲しいことや辛いことに出会って、人はその外を何かで覆ってしまう。それでも、その心の中にある想いは実はしっかりと潜んでいる。
ラスト、それが解放されて、二人の本当の心が触れ合う姿が描かれる。
トリオと鳥、ミャーコと猫のシンクロする姿をフラッシュで見せているのだが、ここが凄い。
本当に重なり合って同一化するんじゃないかと思うほどの同調具合で、心の底からの二人の想いがぶつかり、大きな愛の塊となって舞台上に散らばる。
あまりに凄かったので、感動して泣けるというかは、正直、怖いといった感情の方が実は残っている。
芝居というスタイルであっても、本当に人の心が本気でぶつかり合うのを見た時は、その心の震えがそんな感情を引き起こすように思うのだ。

あと、話として全く関係ないが、バイオリンの生演奏が非常に心地よく、奏者の方をなんて素敵なんだと観ていた。それが、野球シーンでは、あの美しい音色を奏でるバイオリンをキャッチャーミットにして、飄々とご自分もキャッチャーになっている姿が妙に面白くて。
何かツボにはまって、しばらく思い出し笑いをし、こうしてブログを思い起こしながら、この作品の素晴らしさ、感動を何とか伝えられないかと苦労して書いている間にも、ちょこちょこ頭の中をよぎって邪魔になっている。

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コメント

これはSAISEIさんのおかげで見れた一本。当初予定してませんでしたがミクマク(って略しはりますよね?)の名前は聞いてて前に返信コメントもらったときに予定に入れたはったので意識させられチラシもどこかの公演でもらったときにビビっときたので時間確認したら行けるやんとw良かったです。大阪にもいい劇団いっぱいあるなって思います。今まで見てきた劇団とまた切り口が違って新鮮でした。生演奏やっぱりいいですね。
この土日近辺はギリギリまで迷って
木:そとばこまち
土:ミクロトゥマクロ・光の領地・夕暮れ社弱男ユニット
日:うてな・本若
月:edge・チームレトリバーズ(予約思案中)
火:火曜日の劇場
でした。

投稿: KAISEI | 2014年11月30日 (日) 22時37分

>KAISEIさん

ミクマクを観ていただけたのは嬉しいですね。
なかなか、心に響く作品を創られるいい劇団でしょ。

私が日程調整できずで観逃した公演をたくさん観られてますね。
そして、このスケジュールはなかなかハード。疲れを溜めぬよう。まだ、年末に向けて公演激戦週が続きますから。
光の領地は抑えておきたかったし、EDGEも月曜日に観たかった。本当は行く予定だったのですが、母親の容態が良くないので・・・
火曜日は行きますよ。多分、入れ違いになるのでしょうが。

投稿: SAISEI | 2014年12月 1日 (月) 19時43分

いや~良かったですよ!ミュージカルではない音楽劇でしたね~生演奏は3月の劇団音芽の『オペラ座の怪人』以来かなあ(音楽部分が多いという意味では。プロジェクトウズ『PANDORA』などは除く)。あまりに良すぎてDVDを買いませんでした。気持ちよく劇場?を後にしましたから。石井さんとお話ししたかったです。SAISEIさんが今回含めて過去公演で良かった作品は何でしょうか?今回のDVDは次回買うと思いますが…この日は3本当たりでした。『ひなの砦』も知的な笑いのいい作品でした。

投稿: KAISEI | 2014年12月 2日 (火) 01時32分

>KAISEIさん

あれっ、返信忘れているわ。
もう、見ないかな。申し訳ないです。

気持ちよく劇場を後にする。これ、観劇の醍醐味の一つだと思います。
わずか数時間で人の心を変える力のある作品と出会えたのですから。

石井さんは、少しだけお話したことありますが、ご本人自身も作品と同じように温かみのある素敵な方です。
一応、ここの一番は、初演のハネモノ/ブルーヘブンかなあ。

投稿: SAISEI | 2014年12月16日 (火) 13時38分

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