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2014年11月 7日 (金)

LAUGH DRAFT【劇団ガバメンツ】141106

2014年11月06日 インディペンデントシアター1st (85分)

抑え込まれた欲望が生み出す狂気。
これを、男たちの愚かな姿を見せながら、大きな笑いに変えているようです。
同時に、人は容易に狂い、思いもしない道へと歩もうとしてしまうという、人の脆さも浮き上がるような話でした。

<以下、ネタバレしますのでご注意願います。公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

2年間の兵役中の8人の男たち。残り6ヶ月。
売れない漫画家、二次元の女子高生と付き合っているオタク、バツイチのダメ男、一人優遇される芸能人、すぐ脱ぎたがる筋肉バカ、いつも一言多いお調子者、自分に自信が無くうじうじした男色家、マザコン。
兵役なので強制であり嫌々我慢していたり、みんなやってるからなんとなくだったり、好きな人がいるからだとか、もう死んでしまいたいくらいに厭世感を抱いているとか、とりあえず面白そうだと大事なことに背を向けて逃げていたりと、まちまちな理由で参加している。
どうせ戦争なんか起こるわけないし、これは訓練。決められた時を我慢して過ごせばいいと、そんな感じ。
と言っても、兵役は兵役なので、酒、タバコ、女が禁止など当たり前。鼻唄一つで鬼軍曹から咎められ、全体責任と称して、罰を受ける。時代なのか、軍曹もかつての戦時中のように、思いっきりぶん殴って指導したりすることは出来ないようだ。こんな時代だから、兵役に来ていただいているぐらいの感覚で接するのが基本精神となる。だから、少々、嫌味ったらしくも厳しい言動で軍曹はみんなを威圧しようとしているが、それほどこたえていない。しんどいことからはすぐに逃げて辞めてしまう連中ばかりだから。
みんなは、不条理なことに対してもいうことは聞くが、その場がしのげればいいぐらいの感覚みたいだ。

 

男だけの閉鎖空間。やはり、本能的な欲望は抑えられない。
女。みんなは、漫画家が書いた女の絵でその欲を満たしていたが、優遇される芸能人が検閲を通った通販雑誌を読んでいるのを見つけてしまう。
そこには、少々年齢層が高いとはいえ、商品の感想を書いた女性の写真の数々が。
中学生のように、誰がタイプかなんて、いっせいに指さしをしたりして。そして、一人だけ自分には彼女がいるからと、斜に構えていたオタクの男に悪ふざけをして、青汁の体験談を書いていたブスのフサエという女性の写真と無理やりキスをさせてしまったりする。オタクの男は、自分の彼女に、と言っても二次元の女子高生なのだが、浮気をしてしまったと謝り、悩み始める。そして、妄想の世界で、そのフサエを登場させて、抑えきれない想いをぶつけ始める。
フサエはそのうちに、全ての男の妄想となって登場し、男たちを狂わせる。
そんな中、男たちには本当に戦争の足音が迫っていた・・・

 

笑いたっぷりの展開なのですが、終わってみたら何か不気味なものが残ります。
フサエというブスに盲目的に囚われた男たちは、いつの間にか本当に自分が想わなくてはいけない存在を忘れてしまいます。それは母や家族、彼女と、各々、いたはずなのに。
元々、そんな存在から逃げて、そして、ここでの極限生活からすっかり洗脳されてしまったかのよう。
これが、本当の戦争という状況に対面することでようやく再認識する。いや、もはや手遅れで、認識はするものの、諦めや自分たちはもうおかしくなっているからと正当化して、その戦争へと歩んでしまう。

本能的な欲望を抑え込むようなコントロール下では、人を容易に狂わせてしまうのでしょうかね。人を傷つけたくないとか、家族を愛したいとかいうことも本能的な欲の一つだと思うのですが、それを消すのは、もっと生理的な本能を抑え込んでしまい、それを追い求める心で支配されるような状況に追い込むみたいな。
人が戦争に向かってしまう一つの心理を突いているようで、なんか恐ろしい印象が残ります。
みんなは、自分たちが座る箱を叩いて、音響効果を出す。これが、自らで自分たちを奮い立たせ、同時に互いにも影響を与えてしまうような集団心理を表現しているようで、これも気味が悪い。

 

個人的には企業の新入社員研修みたいな印象も受けます。
社会の実態をまだあまり知らないからとりあえずは、研修担当社員に従っておく。本当は、その担当社員だって、厳しく言っていることが守られているわけでも無く、会社に対してそんな大きな責任感を持っているわけでもない。
担当社員だって、威厳を保たないといけないから必死。本気で逆らわれたら、なす術なしだし。
暗黙の了解のように、新入社員と担当社員の微妙なバランスが研修期間中は保たれる。
新入社員はフサエのような、無理やり生み出した支えややりがいみたいなものを崇拝することで意識を保つ。全ては、これから会社のお役に立つためという大義名分の下に。
そして、その日はやって来る。会社のお役にたつために歩み始める時が。不思議とすんなりと歩を進める自分がいたりして。
最後のオチは、軍曹ですらフサエの虜になっていたような締め。そんなところから、会社という組織で盲目的に働く人間の出来上がりみたいな感覚を得ました。
こういうのは後から知るのですが、それでも、今またそんな場に置かれたら同じことを繰り返す自分がいるような気もします。

 

男の愚かな性への欲望を見せて、笑わせ、同調させながら、いつの間にか、おかしな目的地へ連れて行かれてしまっているような話。
人の脆さが浮き上がり、自分は大丈夫と思っていても、どうなるか分からないという不安感を残しながらも、やっぱり楽しく面白かったという絶妙なバランスに唸る作品でした。

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