超贋作サロメ~冒涜版~【劇団衛星】141120
2014年11月20日 KAIKA (60分)
どう読み取ればいいのかよく分からない。
サロメをパロったコメディー作品かなと思って観に伺ったが、確かにそんな要素はかなり盛り込まれているが、笑いにしようといった感じはあまりしない。
と言って、サロメ本来の欲望やら生死やらの要素は封印してしまっているような感がある。
この話をベースに社会風刺をしているように思えて、登場人物を何かのメタファーとして置き換えてみたが、しっくりはこない。
1996年初演で、今、再演という時代に何か隠されたものがあるのか。
深く考えると難しくて頭を悩ます。
ただ、普通にシュールな面白さはあるのだが。
ユダヤのヘロデ王。
蟷螂拳法の達人で、彼の足が六芒星を描く時、その技の犠牲者が出る。
子供のようにわがままで、腹が立ったら妃のヘロディアスにあたったり、罪なき民を殺して、その骸を部下ナーマンに始末させる。
ヘロディアスも甘やかし放題で、抹茶パフェやらを作ってイチャイチャしながら食べたり、日々、トントン相撲に付き合ったりと子離れ、親離れを互いに出来ていない親子みたいな感じ。
預言者ヨハナーンは、石抱きの拷問を受けて幽閉されている。
神の洗礼を受けているからなのか、足は痺れていないとやせ我慢。
ヘロディアスは、ヘロデ王との結婚に批判的であるヨハナーンのことを快く思っていない。しかし、ヘロデ王は、彼を幽閉するのみで亡き者にするつもりは無いらしい。
娘、サロメはそんなヨハナーンに興味を惹かれ、彼に口づけをしたい欲望を膨らませる。ヨハナーンは、ちょっといいかななんて思ったりしながらも、何とか自制して、彼女を近づけないように振る舞う。
肝心の国政の方は、ローマ帝国の力を借りないと何も出来ないようで、ヘロデ王もヘロディアスもいけすかない使者を我慢して接待に勤しむ。
ストレスもたまり、ヘロデ王はサロメに踊りを要求する。サロメは願い事を叶えてくれる条件と引き換えに踊る。そして、その願い事として、ヨハナーンの生首を要求する。
ヘロデ王が、それは無理だと違う褒美を言及するが、サロメは要望を曲げない。
そんな中、イエスキリスト軍が国に攻め入ってくる・・・
最後は知っているサロメとは異なり、神の軍を退け、ヘロデ王とヨハナーンが対立することになるが、配下の者たちは、いつの間にかサロメに支配されており、サロメが全ての権力を手に入れるような終わり。
恋にとり憑かれた狂気だとか、生死の美学だとか、そんな要素を全部取り除いてしまったようなサロメ。
感覚的には社会風刺みたいな印象が残る。
幼稚な権力者ヘロデ王、それにただ媚びいるヘロディアス。
ヨハナーンは社会正義。と言っても、本当の正義感があるようには思えず、マスコミみたいな感じか。ヘロディアスの結婚には批判的な言葉を述べるが、罪無き民の命がたやすく奪われることを責めたりはしない。
しょうもないゴシップ記事には大々的に騒ぎ立てるが、国の平和が脅かされるような現状に関してはその情報を封印してしまうようなイマージ。
ヘロデ王がヨハナーンを幽閉して支配下に置いて、決して殺したりはしない関係は何となく権力者とマスコミのずぶずぶの関係を思わせる。
ナーマンは一般大衆か。権力者には不本意でも従順に従うしかない。そして、マスコミは忌み嫌いながらも戦うべき相手とはならない。その予言にも、ついつい踊らされてしまうのかもしれない。
こんな異常な国に攻め入ってきた神の軍。それすら、国は排除してしまう。神は救ってくれないという無力感。でも、本当のところでは、権力者もマスコミも大衆を動かせていない。
いつの間にか、大衆はサロメに魅惑されてしまっていたみたい。
サロメは国を救うヒーローなのだろうか。きっと、それは違うのだろう。でも、大衆はそれにすがりつくしか無い選択をせざるを得なかったのか。
話を2割ぐらいしか聞いていないようなわがま娘に惑わされる世の中。
人の話は聞かない、わがまま。思い通りならないと気が済まない。
目的達成のために冷静過ぎて、人間味が無い。
権力者に対して反抗的。マスコミに好奇の目を向けながらも、その力を独占せんと切り捨てようとする。
でも、どこか魅力がある。そして、その魅力を巧みに利用して支持を取り付ける。
そんな人が世を支配するであろう予言だろうか。
何か、そんな人に大阪は確かに支配されているような気がしないでもないのだが・・・
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コメント
25日11時~観劇。だいぶ深読みされてますよね。蓮行さんによると初演のテキストをそのままやったとのこと。単なるパロディなのかな~と思いましたが…劇団衛星は初見なのでわからないです。社会派の作品もいくつかされてるみたいですね。『サロメ』は今年ニットキャップシアターに続いて2回目。「ヨハナーン」と呼び方は決まりがあるみたいですね。私は23日11時~見た『オイディプス』の方が好きかな~SAISEIさんは反橋下派でしたかw
投稿: KAISEI | 2014年11月28日 (金) 00時21分
>KAISEIさん
コメントありがとうございます。
他の記事にも一つ一ついただいたみたいで(゚▽゚*)
パロディってほどでもないし、社会派作品としてはちょっとおふざけ部分が多過ぎるしで解釈しにくかったですね。
オイディプスは残念ながら観れず・・・
ちなみに、橋下さんは嫌いではないですよ。あれぐらいしないといけないことも多々あるとは思うので。
投稿: SAISEI | 2014年11月28日 (金) 15時56分
ご来場ありがとうございました!
いつもにはない感じの脚本と演出、それに役柄と、最もサロメに振り回されていたのは私だったのだろうなぁと思います(笑)
オイディプスもサロメも共に「超贋作」「冒涜版」であることにちがいはなかったのですが、古典のイメージから崩してめちゃくちゃにしたのがオイディプスなのに対して、サロメは割と原作に忠実に(落ちなどは違いますが)、その無駄に荘厳な感じまで再現しつつ、言うてることめちゃくちゃやん!的なパロディ化の仕方なのかなぁと思いました。
私が演出するとしてもオイディプス寄りな感じにするかなと思いつつ稽古していたので大変ではありましたがすごく勉強になった公演でした☆
恥ずかしながら自分がサロメを演じるまではサロメの原作を全く知りませんでした(笑)
内容をあらかじめご存知だったお客様の感想を読むことができてこれまた勉強になりました!
本当にいつも丁寧なレビューをありがとうございます!!
投稿: よんぽ | 2014年11月28日 (金) 23時34分
おっΣ(゜∇゜)主演女優様来了。コ○ン○が…前回のコメントで書き忘れたのですが百歩神拳は少年ジャンプの『闘将拉麺男』か『ジャングルの王者たーちゃん』で出てきたはず。蓮行さんは少年ジャンプファンなのでは?私は単なるパスティーシュもしくはパロディではないかというのが結論ですね(笑)『サロメ』は旧約聖書にある話ですがオスカーワイルドの脚本が土台ですね。日本初翻訳は森鴎外だとか。あの松井須磨子が日本では初めて演じたらしいですwいずれにせよ蓮行さんに直接訊かないとわかりませんね(笑)
投稿: KAISEI | 2014年11月29日 (土) 02時38分
>よんぽさん
コメントありがとうございます。
いえ、しっかりとしたサロメでしたよ。
お得意のしたたかさも感じさせて(゚ー゚)
そうなんです。
確かにラストは違いますが、原作のサロメに忠実だなあと思う一方、実は無茶苦茶に崩しているということも分かり。
この独特の崩し方が、面白く笑えるという感想と同時に、何を隠しているんだと不思議な感覚を呼び起こしたみたいです。
まあ、知的だけど、かなりおバカなところもあるこの劇団っぽいようにも思えますが。
オイディプスも観ておきたかったのですが、なかなか厳しく。
年末の公演は伺えるか分かりませんが、また舞台でのお姿、楽しみにしております。
投稿: SAISEI | 2014年11月30日 (日) 12時00分
>KAISEIさん
そう、漫画を読むのを30年前の中学卒業の時ぐらいにやめてしまったので、元ネタが分からないことが多いのです。
こんなに、漫画やアニメがけっこう絡む演劇を観るようになるのだったら、ずっと読み続ければよかったですわ。
原作を知っているといっても、本当にじっくり読んだこともなく、何かあるのかなあ。
まあ、結局のところは、原型を残しながら、どこまで崩せるかの技を魅せるような感じですかね。
投稿: SAISEI | 2014年11月30日 (日) 12時04分
読む必要ないんちゃいますw昔と違って趣味も多様化してますしこれからどんどん若い人が出てきたらその都度チェックしないとダメですもん(笑)私もジャンプ断ちして15年くらい。ナルトやトリコはダメですもん。SAISEIさんは拉麺男・たーちゃんギリギリ読んだあはらヘんくらいですね。
投稿: KAISEI | 2014年11月30日 (日) 20時26分
>KAISEIさん
キン肉マンやら、キャプテン翼やらが普通に連載していた頃が最後ですね。
アラレちゃんが終わり、あのドラゴンボールの連載が始まった頃が私の最後です。
ラーメンマンやらたーちゃんも名前は知っているぐらいかな。
まあ、おっさん化しているということですわ・・・
投稿: SAISEI | 2014年12月 1日 (月) 19時38分