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2014年11月 1日 (土)

姐さん女房の裏切り【千葉雅子×土田英生 舞台製作事業】141031

2014年10月31日 アイホール (60分)

面白過ぎて、途中、笑って鼻水出ちゃった。
そして、最後はどうしようもない切なさに少し、鼻の奥がツンとする。
真っ当な生活をしている人ではあり得ない設定なのだが、不思議とどこにでもあるような男と女の会話。
その中から、せつなく、やるせない男と女の姿を見出す。

<以下、あらすじがネタバレしていますが、再演だったり、既に公演を終えた所もあるので、白字にはしていません。ご注意願います。大阪の公演は日曜日まで>

田舎町で逃亡生活を続ける二人。もう20年になるらしい。
女はごく普通の女子大生だったが、世界の狭さに嫌気がさして、夜の仕事をするようになる。そこでヤクザの組長に見初められて姐さんとなる。世界が拡がるという期待もあったが、それ以上に、当たり前に指詰めなんかが行われる日常に自分を見失うようになってしまう。そんな時に、唯一、普通に会話できる人が、その組につとめる下っ端のチンピラの男だったみたい。
姐さんとチンピラなので、上下関係は語るに及ばずであるが、まあ、互いに想いを寄せていたことは間違いなさそう。
ある日、男は姐さんに強引に誘われて、一夜を共にする。その夜に、運悪く、組長が殺害され、姐さんの下に駆けつけて来た男の兄貴分にその事実を知られてしまう。当然のごとく、二人はただでは済まされない。二人は着の身着のままで駆け落ち。そして、今に至っているらしい。
生活費は姐さんの夜の仕事で賄う。
男は、その後、若頭殺害の犯人にも仕立てられたらしく、組にも警察にも追われる身に。だから、ほとんど出歩けない。たまにパチンコや、姐さんの店で飲んだりはするものの、やはり危険なので、部屋に引きこもり、体を鍛えるか、大好きなクロスワードをしているか、大好物のせんべえを食っているかの毎日。

そんな日々を過ごしながら、何とか20年も共に暮らしてきた二人。
今日もいつもと大して変わらぬ日となるはずだったのだが。
男がカンカンに怒っている。店を開けないといけないからもう行かないとダメだと言う姐さんに、店のことはバイトの女子大生に連絡して、自分の説教を聞けと言ってきかない。
姐さんは、子供のように駄々をこねる男をあやすように、ごめんなさいと謝りながら、ご機嫌をとっている。また、その態度が見下されているようで気に入らないらしく、もう、姐さんが何を言っても、ギャーギャーとうるさい。しかも、男は頭が悪いので、言っていることも支離滅裂で、訳が分からない。バカを相手にするのは大変といったところか。
この20年の間にすっかり立場は変わっており、こんな状況になったのも自分が男を強引に誘ったためという罪の意識からか、姐さんは男に気を遣い続けて甘やかし、男もすっかり調子にのって偉そうな口ばかりをきくようになっている。
今日はあまりにも言うことをきかないので、姐さんもかつての姿にちょっと戻って脅しをかける。ビビっておとなしくなるものの、今度は男は泣き出し、何でそんな酷いことを言うのかと逆ギレ。
取り付く島なしといった状況に。

そんな中、インターホンが鳴る。
ビビる男を尻目に姐さんが対応。
男はその間、姐さんの携帯にかかってきた女子大生バイトの子とくだらない話を。
宅急便の間違いだったらしい。
姐さんはそろそろ店に行かないといけない。
でも、先ほどまで焦っていたのに、何かビールとか飲んだりして落ち着き始めている。
昔話をし出して、駆け落ちの時の思い出を語り出す。
あの時、無人駅に降り立ち、缶コーヒーを買ってくれた。そして、着ている服が似合うと言ってくれた。
なんだかんだで楽しかった。
後悔しているのか、私のことを好きだから逃げてくれたのではなかったのか。
そんな質問に男は、うやむやにいい加減にしか答えない。
挙句の果てには、さっき電話で話しただけの女子大生のバイトの子が自分に気があるとか言い出す。
だったら、私と別れて女子大生と付き合いますか。
その質問にも男は、そうしてくれたらありがたいなんて答えをする。
姐さんの出掛ける準備が整う。真っ赤ないかした服装。姐さんにとっては大切な服。あの時、男から嬉しい言葉をかけられた・・・
男は気付かない。
男は何気なく姐さんの携帯をいじると、Sという人からの履歴がやたら多い。男じゃないのかなんて声を荒げる男に対して、姐さんは嫉妬ですかと。
男は、その質問にも、それだったら安心して女子大生と付き合えるから好都合だみたいな答え。
姐さんは、男の顔をチラリと見て、家を出る。
インターホンが鳴る。男が出る。発砲音・・・

どうやら、姐さんと組は最近、連絡を取り合っていて、男を引き渡せと迫られていたのでしょう。さすがに亡くなったとはいえ、先代組長の女であった姐さんの命を奪うのは、ヤクザの世界でも義理に反するのか、姐さんの身は守られているみたい。
冒頭で、男が怒っている理由をクイズ形式にして、姐さんに答えさせるシーンがあります。男はチャンスは3回なんて偉そうに言いながら。
ラストは、これが逆の立場になって、姐さんからの最後のチャンスを男は与えられていたのでしょう。男は全く気付いていないようですが。
結局はあなたのことを愛していますと言わせたいような数々の質問に、ことごとく誤答を繰り返す男。
見ている者としては、違う、どうしてそんなことを言うんだ、嘘でもいいからこの場は一緒にいたいとか言っておけとか、心の中で男を見守ります。
それを男は、ことごとく裏切るわけです。作品名は姐さんの裏切りですが、私としては、ダメ男でも、やっぱり男同士、気持ちは分かるから応援していたのにと、むしろ男に裏切られたような気分です。

でも、これは言えないですよね。私はそう思うのですが、普通は違ったりするのかな。
女の直感なんてよく言われますが、男にも似たようなものもあって、こんな、誘導されるような形での質問には、なんか感づいてしまうものだと思います。
たとえ女のことを本当は想っていたとしても、何か本能的に防御機能が働き、女の求める、言葉で愛を示すことを避けてしまうように思うのです。

しかし、20年ですよ。それがどうして、この日に限って。
私の個人的な経験ですが、7年付き合っていた女性にある日突然フラれたことがあります。と、私はそう思っていたのですが、もしかしたら、それも、この作品みたいなことがあったのでしょうか。
女は別れるとか見切るのが突然でバサっとされるみたいなことを私は思っていますが、この作品を見ている限りでは、けっこう、熟考を重ねて、危険信号も十分発信しているようですね。
数々の戻せるチャンスを見逃した男。気付くことが出来ない男に、それを知ってか知らずか、気付かせようとする女。何か、哀しいです。
男はきっと最後に、姐さんの赤い服に気付いていれば、別の分岐をたどったように思うのですが、それは男の甘い考えでしょうか。ここでは、もう決まっていたのか。もしかしたら、正解を男が出しても、もはや道は変わらなかったのか。
ちなみに私の最後は、前日に古くなっているお箸をプレゼントされて、普通にありがとうと言って、次の日に別れようと言われました。私は、その箸をどうしたら良かったのか未だ分からず、今でも持っています。

舞台は遠近法を効かせたようになっており、奥に窓からの田舎町の風景が見えます。
そして、前面に向かって天井と床が斜めになって開いたような形。
何となく、時間の流れを感じさせる舞台です。二人の20年を詰め込んだような。
窓から見える景色は、あの20年前の二人が駆け落ちした頃の風景のように感じます。そして、長い時を経て、色々あったとはいえ、二人は仲を築き上げてきた。それは、これからも拡がり続けるはずだったのですが、舞台と同じように、最前面の先はそこで止まってしまっており。
二人は、過去しか見えず、未来はどこかで行き止まりになっていたような感覚が、侘しい想いを強めるようでした。

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コメント

とても素晴らしい劇評ですね。ため息が出ます。観に行きたくなりました(笑)私も最初は予定に組み込んでいたのですが価格や場所で除外した作品です。ある程度年齢を重ねると自分の経験を思い起こしながら共感したりするものですね。

投稿: KAISEI | 2014年11月 2日 (日) 14時09分

>KAISEIさん

コメントありがとうございます。

男と女の会話劇ですから、感情移入しながら、もどかしい気持ちで・・・
色々と自分のことを思い出しながら、今の作品を楽しむのは、歳をとった者の特権かもしれませんね。
なかなか、心苦しい時もありますが、今となっては楽しいこともたくさん。

アイホールは京都からは確かにきついですね。
なかなかのお薦めだったので残念です。
来週はとりあえず、ガバメンツを木曜日、子供鉅人を月曜日の千秋楽に予約しました。後が、なかなか日程決まらず・・・

投稿: SAISEI | 2014年11月 2日 (日) 15時59分

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