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2014年11月23日 (日)

第6区極東監獄学園【崖淵五次元】141123

214年11月23日 シアトリカル典應院 (140分)

まず、悪いことから書けば、最初の30分ぐらいはちょっとひどかった。
妙にバタついているし、大人数ということもあってか、統制がきちんととれていないような形でのエンタメ風の演出が非常に見づらい印象。
そこから、こちらが見慣れてきたのか、役者さんの調子が本来のものになったのかは分からないが、徐々に盛り上がりを見せる。
そして、盛り上がってくると今度は話がごちゃごちゃしてくる。
と、そんな感じで総じて、バタバタしていたなといった印象が強いのが感想。
1stだからかな。きっと、次のステージからは、この感想は消えるだろう。話のごちゃごちゃさも、全体的な統制がバッチリきまることで緩和されることでしょう。

ただ、とても立派な考えを組み込んだ作品だなあと思う。
厭世感強い、今の世の中で、この若い方々が創り出した作品から感じられる生き様は、頭が下がる思い。
自分たちが、何を成し得ないといけないのかを見詰めながら、皆でより良き社会を作ろうとする信念がうかがえる素晴らしい話だったように思う。、
後半は、上記したバタバタも消え、熱のこもった自らの想いをぶつけ合う戦いとその語りに魅了される。

<以下、あらすじがネタバレしますので公演終了まで白字にします。公演は明日、月曜日まで>

学生を能力別に第1区から5区までに分ける教育制度。
そんな学区制度を統率するのが大企業のお偉いさん達。彼らは、学校に出資することで全権を掌握し、学区に応じた学生の就職を決める階級社会を発展させようとしている。
こんな制度はおかしい。そう異議を唱えたのが、最優秀学区である1区の3人、勇吾、霧子、英士。
廃止に向けて活動し、遂に学区の全権を握る理事長の座に英士が就くことになった。
これで学区制度は終わりを迎える。しかし、英士の理事長就任の所信表明で驚くべき発言がなされる。
この学区制度は継続する。さらに、どうしようもない不出来の学生を集めた第6区を創設すると。そして、勇吾と霧子は学区制度に異論を唱える不穏分子として、6区に送り込まれる。

それから3年。
英士は理事長としての地位を確立し、大企業のお偉いさん達とも通じ合うようになっている。

霧子は自分の道を歩み、6区の学校を卒業し、そのまま教師となっている。何やら怪しげな研究をしているみたいだが。
勇吾は、英士の裏切りがショックなのか、どうにかしたいが何も出来ず、未だ2年生としてくすぶっている様子。
そんな2年生に、2区で暴力事件を起こして6区に送られてきた泉。彼の暴力事件で母は気を病み亡くなってしまったらしい。もう二度と暴力は振るわないと心に決める泉。落ち込む彼を6区の先生は励ます。元々、1区の先生で霧子と一緒に6区にやって来たみたい。底抜けに明るく、6区の生徒達を蔑視することなく、いつも元気付けてくれるいい先生みたいだ。
同級生には霧子を師匠と慕う女の子。可愛らしい風貌とは別に何やら怪しい過去があるみたい。泉の生き別れの姉なのだとか。
そんな女の子といつも一緒にいる元3区で喫茶店経営を両親が失敗したことで6区に送られてきた女の子。修羅場を知っているのか性格はきつそう。そんな子にちょっと想いを寄せているおとなしそうな男の子。いじめられっ子でここに送られてきたみたい。

3年生は、わがままお姫様みたいな生徒会長に、その護衛としてバッチリ決めている女の子と、なよなよして腰ぎんちゃくみたいな男の子。
1年生は、まだ若いのか、ここからのし上がるみたいな感じで、上級生にたてつく生意気な男の子。
そして、何年生なのやら、引きこもり何年も留年している間違った忍び風の男。

教頭は英士の理事長就任により、格下げとなった男。何とか1区に戻ろうと上層部に媚びへつらいながらも、何か策略を練っている。
何やらウサギの姿をしたおかしな3人組を学園に偵察も兼ねて送り込んで、チャンスを伺っているらしい。ウサギ二人はキュートな姿だが、一人はウサギの姿が全く似合わない男。元企業戦士としてがむしゃらに働いていたらしいが、それが原因で飼っていたウサギを寂しがらせて死なせてしまう。どうも、それが原因で自らをウサギにしてしまったおかしな過去を持つ。
そんな地位に執着している彼を冷静沈着に見守る有能な側近の女性。

そんな良くも悪くも、この3年で確立した6区に、理事長、英士がやって来る。
ゲームをしよう。ゴーグルを奪い合うとかいうゲーム。
生徒たちが勝てば、6区は廃止。負ければ、ここは継続どころか、監獄のような扱いとする。
6区の存続をかけ、各々の思惑が交錯する戦いが始まる・・・

と、こんな話なのだが、登場人物相関が既に複雑な上に、バトルが開始してからは、かなりごちゃごちゃしていて、分かりにくい。
裏切りやら、隠された思惑が次々と露出して、話の展開がちょっと混雑してしまっている感が否めない。
一応、企業、学校、生徒といった権力構造がベースとしてあるようで、このおかしな学区制度は、どこに問題があり、どこを崩せば、改革できるのかを問うているような感じ。
勇吾は学校を変えれば、全てが変わると思っていたのだろうが、英士は一歩、踏み込み、企業から叩き潰さないと変わることは無いといった考えを持って、理事長として行動を起こそうとしていたみたい。
その策略が6区だった。
模範的な生徒である優秀な100点満点の人たちを組織化して発展を考えていた企業。確かにそれを潰したら、発展は途絶え、その制度を潰したこと自体がおかしかったという結論に導かれ、また元の世界に戻ってしまうかもしれない。
そのためには、あなたたちが0点扱いしたダメな人たちが、そこから1点でもいいから点数を自ら創り上げ、そこから発展する可能性と事実を見せなければいけなかったのかもしれない。
数字の大小の強みなど、ちょっとしたことですぐに壊れる。実際に、話のラストはあれだけ優秀な生徒を集めた大企業が株価暴落などで、一挙に破綻まで追いやられている。
崩れたらもうお終いではなく、そこからまた這い上がる強さを人は持てる。それを信じられることを教えることが真の教育なのではないかと言っているかのよう。

勇吾、英士、霧子は、6区創設の際にその歩む道を分けることになった。
自分の過去の経験などから、各々の思惑、欲望、理想の中で道を歩もうとしている6区の人たちと触れ合って、その3年を過ごした勇吾。企業、学校という組織全体の懐に入り込み、今の世の中の本当の問題点を探ろうとした英士。自分が出来ることを極めるために、逆境の中でもその道を真摯にひたすら進めて、戦いの時に備えていた霧子。
互いに自分の目で見てきたもの、自分の足で歩んで経験してきたことが、ぶつかり合って融合した瞬間。その時、本当により良き社会への改革の始まりが生まれたようである。
そして、3人がそんな棘の3年を過ごせたのも、互いに信じ合える仲間がいたからこそだということなのだろう。
この作品では、教育制度にスポットを当て、学校と生徒、その上層にある企業といった歪んだ権力構造が描かれるが、引いてマクロ視点で見てみれば、会社・部署・社員、国・地方・民、世界・日本・国民、宇宙・地球・人類みたいな構図でも同じような感じではないだろうか。
幸せを得るために、一人一人が出来ることは、自らで道を創る信念であり、それが辛く厳しくあっても、自分が信じ、そして信じてくれる人の存在がその道を歩む原動力となるのだろう。
問題は、どの構図でも上層に行けば行くほど、その姿があまり見えず、正しき道に誘導してくれる人がいないということだろうか。上層に行ってしまえば、もう信じられない存在になってしまうことは、まあよく経験することだし。そう、思うとこの英士の偉業は全くをもって素晴らしく、最後までその道を貫かせた仲間たちの想いの強さに感服する。

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コメント

ご来場いただき誠にありがとうございました。
崖淵五次元劇団員・林和弥です。
自分達の芝居から色々と掬い取っていただきありがとうございます。
観るだけで元気が出る芝居を目指し精進して参ります。

また、次の公演でも宜しくお願い致します。より満足度の高い作品を観てもらえるよう劇団員一同励みます。

投稿: 林和弥 | 2014年11月26日 (水) 22時15分

>林和弥さん

コメントありがとうございます。

大活躍でしたね。
殺陣とかも出来る役者さんなんですね(゚▽゚*)
最後の熱のこもった演説語りも良かったです。

そうですね。今回もポジティブな考えを抱こうと思わせるような話だったように思います。
また、次回も期待しております。
益々、ご活躍ください。

投稿: SAISEI | 2014年11月27日 (木) 12時01分

ちょっと気になっていた作品。日曜日がまったく使えなかったので今回は見送りました。SAISEIさんブログで楽しみます。

投稿: KAISEI | 2014年11月28日 (金) 00時49分

>KAISEIさん

大阪の学生演劇出身の方がたくさんでした。
力強さは抜群ですが、話の構成や展開はまだ巧さを感じるほどでは無く。
でも、頑張っている姿がとても素敵な作品でした。

投稿: SAISEI | 2014年11月28日 (金) 16時08分

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