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2014年11月17日 (月)

秋の夜長の星降る美空【しろみそ企画】141116

2014年11月16日 芸術創造館 (130分)

想い合うということを、のどかな田舎のおばあちゃんの家を舞台に、楽しい仲間たちと共に描いた素敵な作品。
自分が想うことで触れることが出来る相手の自分への想い。
その通じ合った絆は、素敵な輝きを持ち、互いの願いを叶える力となるようなメッセージが組み込まれたような話でした。
素敵の一言が似合うとてもいい作品です。

奈津美とまなつは、お母さんと一緒に夏休み恒例となっているお婆ちゃんの家に遊びに来ている。
ダム建設でこのあたり一帯が沈んでしまう計画があるらしく、お父さんは役場の人と話し合いのために一足先に着いている。
これがまずかったらしい。誕生日前日に、先にお婆ちゃんの家にお父さんが行ってしまったものだから、楽しみにしていた誕生会が出来なかった。お姉さんの奈津美は仕方が無いことだと思っているが、まだ幼いまなつはお父さんのことをすっかり嫌いになってしまっている。と言っても、分かってはいるのだが、素直になれずといった感じか。

お婆ちゃんの家には、自然がいっぱい。
そんな自然いっぱいの中で、縁側に吊るされた風鈴の音はなんとも風情がある。
庭には、少々、気が荒いところがあるが、祖母の飼っている犬。久しぶりに会うお父さんに毎日、散歩に連れて行ってもらってご機嫌だ。みんなのことが大好きで話しかけようとするが、人には吠え声にしか聞こえないからいつも叩かれる。
庭の片隅には小さな池。そこにはザリガニが一匹だけ住んでいる。婆ちゃんがいつもチクワを餌に釣りをする。ちょっと抜けたところがあるが、犬とも格闘するぐらいの武闘派のようだ。
蟻の女王と下部の働き蟻二匹。先日の大雨で巣が流されてしまい、これだけになってしまったらしい。もっと高いところに巣を作っておけばよかったのだが、女王がわがままですぐにしんどいとか言って歩きたがらないから。それでも、働き蟻たちは女王支えるべく日々奮闘している。
フンコロガシは、大きな糞を必死に運ぶ。北へ北へ目指し、そこでお嫁さんと出会う予定。だから、いつかはこの庭を旅立つ日がやって来るようだ。
カマキリは自由気ままに日々を楽しんでいるようだ。交尾後、メスから食べられそうになったところを逃げてきており、後は冬は越せないので、残りの時間を楽しむだけなのだろう。
方向オンチという致命的な欠点を持つミツバチも飛んでくる。巣でもあまり活躍出来ず、はぐれてしまったので、もうこのままここに住みつこうかと考えているみたい。
縁側にはたまにナメクジも出没する。

そして、池の近くに紫陽花。
夏休みもそろそろ終わりを迎えようとしている。ちょっと前までは花が咲いていたが、今は葉っぱだけになっている。
そんな葉っぱの上で眠っていたカタツムリのみそら。
みそらは、目覚めるとそこには紫陽花の姫君、いや女王がいて、願いを一つ叶えてくれると言う。
人間になりたい。
女王はみそらにリュックのような貝殻を渡す。この貝殻を背負うと人間に一時的になれる。
そして、その願いを叶えるためには、貝殻の中に星をたくさん集めないといけないらしい。その星は、人の手助けをして、その人の想いに触れた時に現れるのだとか。
かくして、みそらは、人間の姿となって、奈津美とまなつの下に現れる。
みそらは、二人の想いに触れて、人間となれるのか・・・

この後は、奈津美とまなつが父との仲違いを解消するまでの話をメインに、奈津美に想いを寄せるが素直になれず嫌われていることに悩む悪ガキ、ザリガニと犬の確執、ミツバチに想いを寄せる蟻、孤立してしまいかつての自分を反省して新たな道を進もうとする女王蟻、威勢良く旅立ったもののなかなか壁を乗り越えられないフンコロガシ、みんなをいいところで手助けするカマキリなどの多彩な話が盛り込まれて展開します。
そんな中で、みそらは、皆が持つ想いに触れていき、少しずつ星を集めていきます。
そして、みんなのことが大好きになったみそらは、自分が人間になる願いよりも、ダム建設を辞めさせる願いを考え始めます。
でも、結論は出ず、時が過ぎます。

そんな中、みそらにとんでもないことが。起こるのでは無く、気付かされたというか。
カタツムリじゃなかったようです。ナメクジ。みんなは気付いていたのでしょうが、黙っていたみたい。
ナメクジは人間に嫌われる。奈津美やまなつからも。
それがショックで、みそらは、川に身を投げますが、ザリガニに助けられ、九死に一生を得ます。
昏睡する中、紫陽花の女王は、想い合うことに姿や形は関係ないことを教えます。
実際に昏睡から目が覚めた時、みんなからどれだけ叱られ、喜ばれたか。

奈津美とまなつが家に戻る日がやって来ました。台風が来ているのか、天気はひどく荒れていますが。
ダム建設は決定され、数年後にはここも水の底になるみたい。お婆ちゃんもここを離れて、みんなと暮らすことに寂しいと言いながらも納得した様子。
みそらは、二人に別れの挨拶をしません。
結局、ダム建設を廃止することは願いとして無理だったみたい。星が足りないのか、そもそも、この家の範囲内でしか通用しないのか。と言って、人間になることがいいことなのかはまだ結論が出ないみたい。会えば、悲しくなるし。
奈津美とまなつがみそらの名前を呼んで、また会おうねと言ってくれます。でも、またはきっと無い。虫だから。

天候がだいぶ荒れてくる。
この家にも危険が迫る。ダム建設うんぬんの前にこの増水で家がダメになってしまう。
みそらは考えます。家を増水から守って。この願いなら叶うのじゃないか。星だってけっこう集まったし。
みそらが貝殻の下に向かおうとした時、留守番中の犬の鎖が外れ、犬が大暴れ。色々とあって、虫たちやザリガニに恨みを持つ犬は、みそらを邪魔しようとします。
そこに次々と助けに現れる虫やザリガニ。みんなのみそらへの想いを受け取り、みそらは、貝殻に願いを。
貝殻の中はいつの間にかみんなからの想いで星がパンパンになっていました。そして、その星の瞬きは無くなっています。願いが叶ったのでしょう。

目を覚ますとみそらは、紫陽花の葉っぱの上。
家では、奈津美やまなつが楽しそうに縁側でおしゃべりをしている。残り少ない夏休みをこのお婆ちゃんの家で過ごすようです。
奈津美が近づいて来ます。うわっ、ナメクジ。すぐに離れて家に戻ろうとする奈津美。
でも、振り返ってじっと紫陽花を見詰める。何やら涙がちょっとだけ。
風鈴の音が鳴る。二人は自然にみそらって言葉が。何だろう。不思議な顔をして見合わせる二人。でも、アイスを食べに急いで家の中へ。
風鈴の音が大好きだったみそら。ほんの少しだけ、自分や虫たちのことを好きになってくれたらそれでいいと微笑むみそら。

メインのみそらをはじめ、その家族や悪ガキ、そして庭に住む数々の仲間たちが相手のことを想う姿がたくさん出てきます。
それは、誕生会の約束を破られたとか、いつも生意気だとか、ちょっと反抗してみたりと、ちょっとしたことで止まってしまうことがありますが、決して断ち切れることはありません。
心の芯で、相手と心を通わせたいといつも願っているから。
そんな素敵な人たち、虫たち、動物たちがいつまでも、想いを育み合えるこの家がずっと続くことは、お婆ちゃんが一番強く願っていたことでしょう。
紫陽花の女王は、そんなお婆ちゃんの心に応えるために生み出されたようです。
現実として、いつかはこの家にも終わりは来る。でも、ここで得た数々の思い出を心に刻んで欲しかった。そのために、明るく純粋な心を持つみそらにその願いを託したかのようです。
姿、形違えども、それこそ、ちょっとした考えが違ったり、スレ違ったりしても、相手を想えば、それは想いとなって返ってくる。その時、通じ合った絆は星のように輝いていて、自分や相手がしたいことを叶える力となるといった感じだろうか。
素敵な話でした。

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コメント

わかりました。SAISEIさんが(笑)しろみそ企画行けない予定やったんですが金曜日夜に予定がついて行くことができたんです。最前列舞台に向かって右端にいらっしゃいませんでしたか?この週末はお忙しかったみたいですね?

投稿: KAISEI | 2014年11月17日 (月) 12時07分

>KAISEIさん

その通りです。
え~、声掛けていただければ・・・
と言っても、すぐに帰ってしまいましたからねえ。仕事に戻らないといけなかったんです。

今週は土曜日がほぼ全日潰れまして。それでも、ドーンセンターの公演は観に行きましたけどね。

年末に向けて、色々と仕事もバタバたしそう。
公演数も多くなるし、調整調整の毎日です(゚ー゚)

投稿: SAISEI | 2014年11月17日 (月) 17時55分

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