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2014年11月17日 (月)

脳園【演劇集団ゲロリスト】141116

2014年11月16日 ウィングフィールド (110分)

生死の境界が歪んでいるような現実社会への警鐘か。
作家の感性豊かな脳内世界と交錯させて描かれているので、全容を掴むのは非常に困難であるが、分かる範囲では、自らが命を持ち、脳によって想いを与え受け止めながら時を進んでいる生き物であることを認識させられる話だったように思う。

 

ちょっと劇場が狭かったかな。見切れと、時折ぐずつく転換が、せっかく入り込んだ世界への浸透を妨げてしまうことが少々残念。
それでも、この独特な空気は非常に魅力的で、興味深い作品。

犬や猫たちの殺処分を行う保健所。
そこに取材に訪れた記者は、保健所に無断で入り込み、無許可で犬を殺処分していた老婆を発見する。職員たちは見て見ぬ振りをしていたのか、歯切れが悪い。
老婆はアルツハイマー病になっており、記憶の連続性が失われているようだ。
そんな老婆。彼女は未来の夢を見たという。そこは、人が物になって滅びて行く世界。
自分は女王、エロディアス。無関心な王様の妃。娘はサロメ。日々続く宮殿の宴にも物憂げで退屈そうに全てを捨てたような振る舞いをする。彼女の心を動かせるのは預言者の男だけ。サロメは預言者の生首を求める。

その世界観は妙に緻密で記者は老婆の言葉に心を惹かれていく。
そんな中、老婆の身元が判明する。
かつて保健所で働いていた彼女。犬猫を物のように殺処分する仕事に精神異常をきたしたらしい。そして娘が預言者ヨハネの名前を与えていた飼い犬までを殺処分する。そんな彼女の姿に娘は、親を捨てることを決意する。徘徊したまま放置して消息不明に。日本では消息不明になる者は決して珍しくない。
そして、その娘が、自分の妻であることに記者は気付く。
老婆の命はもう途絶えようとしている。
記者は妻を呼ぼうとするが、彼女は拒絶する。
説得されてやって来た彼女が見るのは母なのか、物なのか・・・

飼っていた犬や猫たちを殺処分する。命を奪うという罪悪感からか、それを物として。食べるために殺す家畜たちをけっこう平気で割り切っているのと同じ感覚だろうか。
潜在的に恐ろしいことだと理解しているからなのか、見て見ぬふりをする。最初はそうでも、いつしか、数々の日常の出来事や社会のもっと恐ろしい事件の中にそれは埋もれていき、もはや忘れて知らないといった状態になる。
記者の妻がそんな感じのように映る。

老婆は、見て見ぬふりから、知らない状態に至ることが出来ず、精神を狂わせることで、その記憶を消した。でも、自らが犬や猫にしてきたことと同じようなことを娘からされることになる。自分も物になった。
自らが犬や猫にしていた惨殺が、自分の身となって繰り返される宿命。
彼女の消したつもりの過去の記憶は、同じ立場になった今の自分のこれからと連続性を持ってしまい、未来の記憶を生み出してしまったかのようだ。

老婆はその未来の記憶で、自分自身を正当化しているかのようだ。
そこでは自分は女王。無関心な夫、この世界を非難しているかのような娘。
人は物となって死んでいく。それを病として、延々と宴を繰り返す。
娘は預言者を求める。あの飼い犬ヨハネ。しかし、その娘に、この妄想世界では預言者の生首を求めさせ、その死を娘にも受け入れさせようとしているように感じる。

老婆が記者の妻であることは、料理で気付く。
普通では作らないようなチクワにミソを入れるとかいう料理が同じことで記者が気付いたみたいだ。
老婆の精神は妻に伝わり繋がっていた。
物同士では出来ないことだろう。

体は脳に寄生している。体を作る物質たちは、体に寄生しているのか。突き詰めれば原子のレベルまで。
人は物を見る時、その実体化された形を見るのは当然だろう。
でも、それが命あるものの場合、そこには脳が存在する。体やそれを作る物質は物であっても、その脳は物ではない。
そのことを忘れてしまうと、安易に生き物を物にしてしまうような考えが生まれることの警鐘だろうか。
そして、その脳が生み出した想いは、たとえば料理のような形となって、誰かに伝わっている。想いを受け取った者は、それに気付けば、その人を物としては見ることが出来ないはずなのだろう。

脳園。
脳が生み出す、私たち自身の世界。
それは、生と死の繰り返しの中で、その人自身を超えて、拡がり続ける。
今、そこにあり、破滅と同時に消えゆく物とは全く異なる。
私たちが過去、現在、そして未来への記憶を刻む脳に乗って時を進む生命体であることを伝えているかのような話に感じる。

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