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2014年11月 8日 (土)

不思議の国のアリス ダイヤバージョン【ジョーカーハウス】141108

2014年11月08日 インディペンデントシアター2nd (105分)

また今週もなかなかの公演激戦週で、うまく日程を調整できないし、今回はスルーさせてもらうかと思っていたが、ちょうどいい具合に追加公演があって、当日直前予約で飛び込む。
全4種類のバージョンのうちの一つ。
とりあえず、えん魔さん作品だし観ておくぐらいの感じで伺ったら、すっかり感動してしまう。
心に突き刺さる学ぶこと、頑張ること、成長することに対する人生訓のような素敵な言葉に、不安を心に抱きながらも懸命に頑張ろうとするアリスの姿に心震わせる。
自分に打ち勝つ。そんな不屈の精神を手に入れるまでの一人の少女、そしてその周囲の人たちの成長物語を、よく知られる表題作のストーリーに絡めながら、楽しくも温かく力強く描かれた素晴らしい作品だった。

<以下、ネタバレ少ししていますが、東京公演を既に終えており、情報は出回っていると思うので白字にはしていません。ご注意願います。公演は日曜日まで>

演劇学校に通う女の子アリス。
もうすぐ、あの有名な妖精パックのオーディションを控えているが、とても合格できるような状態では無い。セリフもたどたどしい上に、明るく元気なパックとは真逆で、暗くオドオドしている。
先生も、今の状態ではオーディションを受けない方がいいとまで考えているぐらいに深刻な状況。
どうもアリスは悩んでいるらしい。
課題練習のロミオとジュリエット。ロミオ役は、みんなの憧れの的である男性に当然のように決定。その男性が自分と呼吸の合うジュリエットを選ぶことに。
実力もあるし、ロミオ役の子にも好意を寄せられているアリスが選ばれるものだと、周囲もアリス自身も思っていた。でも、選ばれたのは仲良しの友達。
自信喪失、嫉妬。友達を避けるようになり、レッスンにも身が入らない。
と、そんなある日、アリスは、どうしたらいいんだろうと猫に話しかけている時、時計を見ながら遅刻だと焦るウサギを見かける。後を追いかけて、たどり着いたのは、不思議な国。
元の世界に戻らないと。アリスの旅が始まる。

一生かかっても読み切れない本を互いに読み合って情報共有する読書好きのネズミ。
必死に学んで、不屈の精神で絶対に法律家になると頑張る青芋虫。
赤の女王の不条理な妬みにより殺されてしまった、全ての動物たちに優しかった公爵夫人に飼われていたチェシャ猫。
赤の女王に、白混じりの帽子をプレゼントしたばかりに時間を奪われ、二度と来ない誕生日を毎日、記念日と称してお茶会を開いて祝う帽子屋と可愛らしいやまね。
赤の女王の趣味であるクリケットの道具にされて虐待されるフラミンゴとハリネズミ。
ライオンとユニコーンの伝説の獣である紋章とニセ海亀。
怪物ジャバウォックからアリスを守るという剣士。
ちょっと口の悪い、森に美しく咲く花たち。
大きなカラスにさらわれてしまう双子のトウィードルダムとトウィードルディー。
アリスは、この不思議な国の中でこんな奇妙な者たちと出会い、その生き方に触れ、自分自身を見詰め直していく。
今、自分がしなくてはいけないこと、言わなくてはいけないこと。自分の意志でそれをするために元の世界に戻らないといけない。

そんな、アリスだったが、赤の女王に捕えられ、いわれなき罪を被せられ、裁判を受けることになる。
赤の女王に理屈は通じない。召し抱えるジョーカーによって首をはねられるのも時間の問題。
チェシャ猫は、この国の住人になると宣言すれば、不思議な能力を一つ身に着けることが出来る。そうすれば、亡き侯爵夫人からもらった姿を消せる能力を渡すことが出来るから、それでとんずらすればいいとアドバイスする。
でも、それでは、元の世界に戻れない。この世界も確かに楽しい。でも、自分にはしないといけないことがあり、それから逃げたくない。
アリスは自分の意志で赤の女王と戦うことを決める。
どうあがいても勝てない相手。戦いの結末は初めから分かっている。
その時、アリスが旅の中で出会った奇妙な者たちが、アリスのために力を貸そうと次々と現れる。
諦めたらお終い。諦めなければ、何度でも何度でも戦える。
そんなみんなの姿から、アリスは自分が倒さないといけない相手は、自分自身が生み出したもう一人の自分であることに気付く。
自分が囚われている本当の怪物、ジャバウォック。自分が歩みだせないのは、自分が創り上げた弱く愚かな自分。
アリスはそんな自分と決別するために、仲間たちと共に剣を振るい・・・

アリスの不思議な国をベースに、人が学ぶこと、成長することを教えるような話。
継続は力なり。
成功するまで失敗を繰り返す。
変化を恐れない。
等身大の自分、大きくなった自分、小さくなった自分。その扉の向こうに行くために自分を変える。
自分の意思で道を選択する。
答えを見つけずに、いつまでも楽しい時間を過ごしていてはダメな時もある。
言葉にしたら、責任を持つ。
今の状況を冷静に見極めて、出来る工夫もってトラブルを乗り越える。
戦いたくない時でも災いは突然やって来る。
叫んで助けを求めればいい。
美しく咲き続ける。誰かに見つけてもらうその時まで。
数々の人生訓がメッセージとして浮き上がる。
才能、時間、金やら色々なものに縛られて歩みを止めてしまう時。でも、自分が本当にしないといけないこと、したいと思っていることを見詰めれば、一歩を踏み出すことが出来るはず。
諦めるな、失敗したってまたやり直せる。自分がこうしたいと言ったんだから最後までやり抜こう。助けてくれる仲間だってきっといる。そして、そんな頑張るあなたを見てくれている人もきっとどこかに。
そんな不安から立ち止まってしまった人たちへの大いなる激励を込めた温かくも厳しい作品だった。

赤の女王のように理不尽に攻撃をしてくる者はきっと普通にいる。でも、その人は敵ではないのかもしれない。本当の敵はそれに屈し、それを言い訳に諦め、進むことを辞めてしまおうとする自分自身だと伝えているように感じる。そんな自分を打ち消すためにも、常日頃から学び、懸命に頑張る努力を怠らず、成長しようとする意志を捨てない強さを持って欲しい。そして、そんな自分だからこそ、周囲も一緒に頑張ろうと励まし協力してくれるのだと。
この見事なまでに仕上がった作品を懸命に創り上げた方々の熱演光る公演だったからこそ、そんな言葉が強く身に染みる。

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コメント

他人事ながら何か嬉しい劇評やな、と。ニアミスですね~ 同じ会場にいました(笑) 予定にいれてないと仰ってましたが順調に観劇されてるのと11時からの公演があるので来はるんちゃうかな? と思ったのもいつのことか。今日はギリギリ入場だったこともありますが全く念頭にありませんでしたw 本日はジョーカーハウス・シアターOM・努力クラブのハシゴ。ゑん魔さんのは『コロニー』『百物語』に続いて3回目(『百鬼夜行』は台風で見逃す)。冒頭に戻りますがゑん魔作品で初めて感動しました。ただアリス役の吉田亜未さんが上手いのか下手なのかわからなかったんです。素人くさい部分がどこまで演技かなと。ドアの開け方など動きが『バーナデッドと霧の鍵』と似てるところがあると感じました。演技の仕方など方法論があるんですかね? ちなみに今回パンフレットを買っちゃいました… 前にSAISEIさんがパンフレットを購入するのは云々、というのを読んでいて私も同感だったのですが手が出ちゃいました… ゑん魔作品は配役表つけないし不便ですよね。もし買っておられなければ配役などもしお尋ねのことあらばお役に立ちたいと思っております。お気軽に(笑)明日はカストリ社2本、明後日は子供金巨人に行きます。今週末から始めは恐らく被りませんね。

投稿: KAISEI | 2014年11月 8日 (土) 23時08分

>KAISEIさん

コメントありがとうございます。

11:00からの観劇は久しぶりでした。
最近、仕事の都合上、どうしても土日はお昼までは抜けられないので。
まさか、いらっしゃるとはねえ。入り口側の最前列端っこに座っていたのですがね(゚ー゚)

えん魔さん作品では、私も惑星ボーイズに次いで久しぶりに感動しましたわ。
演技の上手い下手は私もよく分かりませんが、感動したのだから、きっとその熱は伝わったのでしょうね。
細かな演出はきっと、流れがあるのだと思います。昔から観劇をされている人は、血統図みたいに突き詰めれば3つぐらいの劇団に分かれれるのだとかいう話を聞いたことがあります。

パンフレットはねえ。キャストを調べるためにも購入しようと思いましたが・・・
今回は若手の方の公演だったし、名前を万人に覚えさせるためにもキャスト表、欲しかったですね。

投稿: SAISEI | 2014年11月10日 (月) 00時59分

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