たとえば零れたミルクのように【SSTプロデュース】141012
2014年10月12日 船場サザンシアター (55分)
よくは分かりません。
感性勝負の観劇の感想は、なかなか苦しいものがあります。
何か、思いのままに生きていくことって素晴らしいなといった感じになる作品です。
自分は確かにここにいるし、そこで生まれた想いも本物。それを大切にしたいし、その生まれた想いを受け止める人がいて欲しいとも思う。人恋しさがつのるような感覚が残ります。
駅のホームのベンチに腰掛ける女。ベンチの下には大きなカバン。女の横には、大きな牛乳瓶が置かれており、女はコップに牛乳を注いで飲んでいる。
そこに、女がやって来る。先にいた女にうながされ、ベンチの端っこに座る。
女は汽車に乗るためにやって来た。夢を見るための汽車に。でも、その汽車は、ついさっき行ってしまったのだとか。
落胆する女に牛乳を勧め、ゴクリと一杯。
二人はロマンチックな満天の星空の下、会話を繰り広げる・・・
買ってもらった36色のクレヨンでティッシュペーパーの箱をけっこう精密に描いたが、親にがっかりされ、そこにリンゴとウサギと人形の絵を付け加えて、個性的だと褒めてもらった話。個性的であるためには、そうでなければいけないと学んだ。お菓子を食べればおいしい、歩いたら疲れたとか、そんなことも学んでいった。今は寂しいから、汽車に乗ろうと思っている。
線路の始まりと終わりの話。夢を見るための汽車は、その始まりと、終わりがある。その間に自分はいる。
女のカバンの中に入っていた時計。かなりでかい。二重らせんの可愛い赤色のリボンが付いている。でも、針は無い。時間ではなく、質量を計るから。長年、連れ添った人からもらったのだとか。瞬間は永遠だと言い残して。
女が手にしていたトマト。一個しかないので、どちらが食べるか。あなたにあげた。いや、もらっていない。と譲り合いのケンカ。トマトを使ったコックリさんで決めようとする。
星。星は綺麗。悲しい。感受性が無いから分からない。
線路が星明りに照らされる。流れ星。汽笛が聞こえる。汽車がやって来る。
そこに在ることが全て。それが質量。始まりも終わりも、面積も体積も無い。物語は失くした時に生まれる。
終点は赤い星、アンタレスかも。出来過ぎだけど、夢がある。
床に広がるミルクのような活気。触るとザラザラした時間。
時計とトマトを渡して、牛乳を持っていた女は汽車に乗り込む。
一人ホームに残る女に静寂の時が訪れる・・・
白い衣装を纏った女性二人。
夜の闇の中、その白が星のように輝いて、確かに在った。質量として、この宇宙の中に。
汽車が来るまでのわずかな時間。それは二人の中で永遠の時間。
自分には感受性が無いからと、感情を抱くことに不安を覚えてしまっているような女。夢を見る汽車に乗れば、そんな失った感情を取り戻せるように考えたのだろうか。
でも、この一時を共に過ごした女によって、そんな感情を持つ自分を取り戻していくかのよう。それは、その女が、これまでに失ったことから、抱きたくない感情があって、そこから逃げようとしている悲しみを知ったからのように感じる。
夢の世界に向かい、その悲しみを綺麗に変えるのは、きっとこの女。そんな風に思って、汽車に乗り込む女を見送ったように思う。
作品名は何でしょうかね。あのことわざが絡んでいるのでしょうか。
星を見て綺麗に思う。そんな感情は勝手に溢れてくるもので、その想いがそこに在った。心に戻すことはもちろん出来ない。その想いを汲み取ってくれる人がいれば、そこから、その想いは拡がっていくみたいなイメージでしょうか。
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