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2014年10月 8日 (水)

火曜日のゲキジョウ【ラージサイズアイスカフェオレ×フルーツケイク】141007

2014年10月07日 インディペンデントシアター1st (30分+30分 休憩10分)

今回はかなり見ごたえのある作品が並ぶ。
絶妙な推理モノに、心温まる心情描写が素晴らしい作品。
共通して言えるのは、役者さんの個々の魅力が連携し合うことで、見事なまでに舞台に惹きつけられる空間を創り出していること。
演劇の魅力を存分に味合うことが出来た2作品。素晴らしい。

・「フーダーニット」 : ラージサイズアイスカフェオレ

離島のリゾートホテルにやって来た新婚夫婦。
ちょっと訳ありっぽく見えるのは、そこそこの歳を迎えた二人だからか。
色々とあったみたいだ。妻は元旦那のDVに悩まされ、男はその相談によくのっていたらしい。その旦那は交通事故で亡くなった。それだけなら、特に問題なく、むしろラッキーだったぐらいなのだろうが、妻が生命保険の勧誘の仕事をしていたためか、保険金詐欺を警察に疑われたらしく、言われもないことを厳しく追及されたようだ。そんな辛い過去を持つ妻だからこそ、男は命に代えてでも、今度は自分が守り抜くと心に決めている様子。
この離島を旅行先に選んだのは妻。エメラルドグリーンのオーシャンビューを期待していたが、あいにくの嵐。
船もだいぶ揺れたようで妻は、船酔いが厳しく、すぐに部屋で横になる。
ホテルと言っても小さなペンションみたいなところで、夫婦がこじんまりと経営しているみたい。
オーナーである夫は、一流ホテルのシェフ経験があるとかで料理には自信があるらしいが、いまひとつ冴えない。ちょっと抜けているところがあるが、底抜けに明るい元気いっぱいの奥さんが、そんな旦那を支えながら頑張っているようだ。
それでも、経営はかなり厳しいのだろう。オフシーズンだとはいえ、この日も客は、コンサルをしているとかいう怪しげなおっさんに、東京から来ている興信所で働いているとかいう一家。メガネをかけたガキが色々と偉そうにでしゃばったりしているらしい。
部屋にホテルの奥さんが酔い止めの薬を持って来る。一緒に奥さんの荷物も。男の方の荷物はまだロビーに置きっ放し。
男は妻に薬を勧めるが、だいぶ楽になったからと飲むのはやめておく。
食事まで、まだ2時間ぐらい。二人は見つめ合い、これからの幸せな時間を誓い合いながら、いちゃつこうとする。
そんな中、突然、叫び声。そして、停電。料理中だったホテルのオーナーが殺される。離島なので、明日の朝までは警察は来ない。興信所の一家がしゃしゃり出て、肉叩きが凶器だと断定。
その肉叩きがなぜか男の旅行カバンの中に。さらに、部屋に入って来たコンサルの男が酒に酔いながら、酔い止めの薬を飲んで死ぬ。薬の瓶に青酸カリが塗られていたらしい。
興信所の一家は、男を犯人だと疑い始める。自分には犯行動機が無い。この中で、動機がありえるとしたら、それはオーナーの奥さんでは無いのか。男は、そんな推理をするものの、興信所の一家は考えを曲げることはなさそうだ。さらには、妻が過去の夫との話をしてしまったものだから、妻までもが疑われることに。
明日、警察の取り調べを受けるなんて、あの時のことを思い出して、もう耐えられないと涙を見せる妻。
妻は自分が守ると決意した。男は、自分が犯人だと名乗り、妻から疑いの目をそらそうと考えるが・・・

推理モノ。
舞台に登場するのは、新婚夫婦、ホテルの夫婦、怪しいおっさんだけで、興信所一家は見えない存在になっています。まあ、あの漫画を思い起こさせるキャラ設定になっており、ありえないようなこともありみたいな空気を漂わせて、ちょっとご都合主義的な展開を許容させてしまう巧い設定です。
30分で綺麗にまとめた、なかなか見ごたえのある作品でしたが、これは犯人が結構、推理しやすいところがありますね。
二組の夫婦。男と女。そして、フェイクとして怪しいおっさん。この構図を見て、さらに、新婚夫婦の妻に何やら過去があるという話ならば、女同士がグルで男を陥れるラストは、途中で見えてきてしまいます。
また、女優さんが凛とした美しさの中に隠された闇を持つ妻、明るい純粋さの裏に隠された影を持つ奥さんと、表面の美しさや愛らしさに騙されているような雰囲気をプンプンと匂わせるような方々でしたから。そして、対する男たちが、どうも幼稚というのか、女にはかなわないんだろうなと思わせるような、よく言えばいい人、悪く言えばダメ男の空気を漂わせていましたから。
何となく分かったからといっても、話への惹きつけが無くなった訳ではなく、今回は一人の初舞台の役者さんを守らないといけなかったからか、いつも以上に、役者さんの見事な演技を楽しむ時間となりました。
基準の5点。分かりやすい話に+1点、オチがだいたい分かってしまったことに-1点、新婚夫婦の妻役の山本香織さんの(イズム)のゾクゾクする魅力的な演技が非常に目を惹いたので+2点の7点評価。

・「誰にも見せない打ち上げ花火」 : フルーツケイク

夏子、28歳。
田舎の花火職人の家に生まれ、18歳で天才花火職人として名を馳せるものの、19歳で男を追って東京に。それ以後、田舎には一度も戻っていない。
そんな夏子の夢枕に婆ちゃんが立つ。もう、死にそうだから帰って来い。どう考えても、死ぬとは思えないような元気な婆ちゃんの姿ではあったが、夏子は意を決して田舎に戻ることにする。
田舎では、妹が花火職人の跡を継いで、頑張っていた。
お婆ちゃんは寝たきり状態にあるらしい。えっ、でも、ここにいるけど。生霊なのか、夏子にしか見えていないらしい。
お婆ちゃんは、妹の花火作りを手伝ってやれと言う。そして、その気があるならば、ここに戻って来ればいい。ここはお前の家なんだからと。
花火職人として才能のあった夏子。妹はそんな姉に憧れていた。でも、勝手にやめて出て行ってしまい・・・
自由気ままに勝手に出て行った夏子。男を追いかけた。それもある。でも、父が亡くなり、自分に全てが降りかかってくることに怖さを感じたのもあった。東京での生活は何度もくじけそうになる。今だって・・・
10年ぶりの再会で、姉妹は自分たちの想いを相手に伝え、そして受け止め・・・

朝田大樹さん(TheStoneAge)らしい、優しい空気の素敵な作品。そして、それを、持ち前の個性的なキャラでコミカルさを醸しながらも、しっかりとその温かさを伝えてくる良作。
自分に嘘をついていることってありますよね。そして、それがいつしか、嘘ではなく、自分の本当の想いなんだとしてしまうことも。そうしないと、生きていけないことも多いから。
でも、それはけっこう辛いこと。年月を重ねれば重ねるほど、その自分への嘘は、自分の心の中に重くのしかかってくる。そんな時に、かけてもらうちょっとした言葉と、自分の辛い想いをさらけ出すことのできる人と過ごす時間。
いっぱいいっぱいになってしまった心のガス抜きみたいな感じかな。ほんの少しだけ、ガスが抜ければ、また頑張れる。だって、自分には想いを受け止め合える大切な人がいるんだから。
ガチガチに固まってしまった体と心が柔らかくなる。そんな人生のひと時を描いたような、元気付けられる優しい話だった。
基準の5点に、素敵だから+3点。役者さんの見事な連携にさらに+1点をと思いましたが、これまで拝見した火ゲキ作品との整合性もあって、8点評価にしておく。今から思うと、9点だったかな。

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