薄暮(haku-bo)【intro】141005
2014年10月05日 インディペンデントシアター2nd (75分)
薄暮の時。暗闇で覆われるまでのわずかな薄暗い時間。
ぼんやりと自分の記憶を振り返り、頭の中を巡らせる。
そんな時間だからこそ、見えてくる自分の想い。
穏やかに流れていく時間の中で浮かび上がる郷愁感と自分と家族の大切な繋がり。
シンと冷たい厳粛な空気の中に漂う人の温かさを感じられる優しい作品。
私の物語。
北の地方都市。冬には雪が積もって一面、雪景色。田舎では無いので、夜は街灯や街の光があるから暗くはない。でも、明るくもない。
大黒柱としての責任感の強さを醸しながらも、そんな偉そうにもしない優しそうなお父さん。
いつも元気よく、口うるさい、やかましそうな肝っ玉お母さん。
ちょっと流されやすそうな感じで、あまり要領の良さが無いのか損することが多そうな感じのお兄さん。
長女なんだからと叱られることが多く、ちょっと卑屈になりながらも、持ち前の楽観主義みたいなところを活かして、その時を自分なりに楽しんでいるようなお姉ちゃん。
甘えん坊でわがままだけど、一番年下であることを巧妙に使って、自由奔放に生きることを許されているような妹。
漫画家を目指していた小学生時代。V6にはまった中学生時代。インターネットの虜になってしまった高校生時代。趣味の合う男性と会社で知り合い、恋に落ちるが、その人には奥さんも子供もいた。親の病気とやらで34万円も貸したにの。
妹は早々と家を出て、自由に生きる。沖縄でブラジル人と付き合っているのだとか。私はここに残る。降り積もる雪の中のウサギさんみたいに。
妹はいつも自由だ。親にもえこひいきされている。叱られるのはいつも私。食事の時も、雪かきの時も。悪いのは妹だと言って泣くものだから、さらに叱られる。兄は助け船もいれてくれないし。
時は流れ、妹に子供が生まれた。母は沖縄へと初孫を見に行く。私は行かない。
ふと、羽ばたこうかなと思う。私には羽根が生えている。もう、ウサギじゃない。自由に空へと舞い上がる鳥だ。でも、暗闇で物が見えなくなってしまった。ウサギだったら見えていたのに。鳥目だからか。それはそれで不便かも。
こうして、時間は流れていくのだろう。
あの世で、またみんなと再会。父が死に、母も死に。妹は私より先に死んでしまう。盛大な葬式をしたりして、やっぱりいつでも主役。私もひっそりと死んで、最後は兄。誰に見送られることもなく寂しく。やっぱりちょっとかわいそうな人だ。
そして、また、あの頃みたいに食卓を囲んで、妹のへらず口に頭をたてて、父や母を味方につけるからかなわず泣きわめき、兄は黙々とただ座っている・・・
長女である私のこれまでを綴っていくような話。視点は長女なのだろうが、途中、妹や第三者視点に切り替わったかのようにも感じられるところがあり、どこか遠くから、私とその家族を見ているような感覚。
ウサギ。白の雪景色に溶け込む。薄暗い中、ひっそりと、息をひそめて、ぼんやり見えるものを見詰める。自分が消えそうにも見えるが、確かにそこにいるという強い存在感も同時に感じさせる。
羽ばたく鳥へ。世界が広がるけど、逆に見えなくなってしまうものもあるのだろうか。自分の故郷、一緒の時を過ごす家族。心に刻みつけて、それを深く心の中に染み込ませたいみたいな感じだろうか。
家族の一人として、一人の女性として、今を生きる姿を穏やかに素直に優しく表現した雰囲気が心地いい。
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